【感想・考察】「響け!ユーフォニアム」オンリー1ではなくナンバー1になれ!

アイキャッチ画像:©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

現在、テレビシリーズ第2期が放送中のアニメーション作品「響け!ユーフォニアム」。

今回は、この作品のテレビシリーズ総集編映画が11月にいくつかの映画館でリバイバル上映されることになったということでこの作品の魅力を改めて語っていきたいと思います。
以前に書いたこの作品の番外編「かけだすモナカ」に焦点を置いた、葉月視点の記事のリンクを掲載しておきます。

参考:「かけだすモナカ」は日本アニメ史に残る神回だ!

作品概要

この「響け!ユーフォニアム」という作品は京都北宇治高等学校の吹奏楽部を舞台にした、王道部活モノのアニメーション作品である。

 

 

 

 

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

メインキャラクターは上記の画像の4人です。

右上に位置するのが主人公である大前久美子。担当楽器はユーフォニアムで、小学生の頃からユーフォニアムを演奏しています。ドライな性格で、その性格が自身の吹奏楽への姿勢に表れている節が散見される。物語の進行につれてそういった心情に大きな変化が生じていくこととなります。

左上に位置するのが本作のもう一人の主人公である高坂麗奈です。幼少期からトランペットを演奏し、常にトップをひた走らんと邁進する久美子と対照的な性格の人物となっています。部内のトラブルに巻き込まれながらも自分が特別であると証明したいという強い決意を貫いていきます。一方で、顧問の滝先生に思いを寄せています。

左下に位置するのが加藤葉月です。この人物に関してはリンクを貼った番外編の記事で語り尽くしているので簡単に。中学生まではテニス部に所属。高校から吹奏楽部に入部し、チューバを担当。この物語を通して一番苦しみ、悩む、そして一番成長した人物だと私は思います。

右下に位置するのが川島緑輝です。担当楽器はコントラバス。部内で唯一のコントラバス担当のため部内で明確な競争はないが、ひたすら自分との戦いを続けた証がその指に滲み出ています。友人思いな性格のために悩む一面も見られます。

ここまでが簡単なキャラクター紹介となります。

次に簡単なあらすじに触れておきたいと思います。

北宇治高等学校吹奏楽部は言わずも知れた吹奏楽弱小校です。そこに上記4人を含む新入生と顧問の滝先生が入ってくるところから物語が始まります。

初めは滝先生に対する反抗意識から練習に打ち込み始めるが、全国大会を目標に掲げた吹奏楽部は次第に団結し、その思いは京都府大会へと向かっていきます。

久美子と麗奈の過去、トランペットのソロ問題や2年生の集団退部の過去など様々なトラブルに直面しながらも、それを乗り越え見違えるほどに成長した北宇治高等学校吹奏楽部は京都府大会に臨む…。

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

これがテレビシリーズ第1期の簡単なあらすじとなります。

『響け!ユーフォニアム』の魅力

ここからこのアニメーション作品の魅力を存分に語り尽くしていきます。

①スロースタートな脚本

この作品、実は私は放送当時5話くらいで視聴をやめてしまったのです。というのも前半は恐ろしいほどに地味で見せ場が少ないんですよ。しかし最近になって全話通して視聴してみて感じたのは、いかにこの前半のスロースタートが重要な役割を果たしているかということでした。

基本的に物語には山場とそうでないところの差異が明確に存在しなければなりません。ずっと山場、ずっと単調では物語として成立しないのです。

この作品は後半部分に山場が連続的に存在しています。後半部分の話は全て山場といっても過言ではありません。だからこそ全話通して見てみて、その山場を感じることができるのはひとえにシリーズ構成の妙です。

前半で何気なく描かれた描写が、何気なく発せられたセリフが、秘められた感情が、散りばめられた布石が、後半部分において結実していく。前半部分が淡々と描かれた故にエモーショナルな後半部分が対比的に印象づけられるようになっているわけです。

毎週放送のテレビアニメシリーズでは視聴者を飽きさせないためにできるだけ山場を隔週でもってくる傾向にあります。しかし、この響け!ユーフォニアムという作品はまさにその13話全てで完成する1つの映画作品のような脚本と構成になっているということです。

この作品をこれから見る方はどうか前半部分だけで退屈だと、視聴をやめないでいただきたい。最後まで見れば必ずその意味がわかるはずです!

②感情表現と山田尚子式フォーカス技術

京都アニメーションの作品の魅力はやはり繊細な心情描写です。また山田尚子さんが今作に参加していることもあり彼女が得意とする実写さながらのフォーカス技術が散見されます。

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

このフォーカス技術をはじめとする山田尚子作品に通じる特徴に関しては以前の記事で触れたのでリンクを貼っておく。

参考:映画『聲の形』に見る山田流フォーカス技術とは?

一流の俳優が一瞬の表情で微妙な感情を表現できるように、この作品ではアニメーターさんが描くワンカットワンカットに登場人物の感情が込められています。表情であったり、仕草であったり、細かいところにまで気をつかったその渾身のカットが連続的に登場します。そしてその全てが登場人物たちの人格となっていくのです。

説明することなく、その絵だけで全てを表現してみせる。そんな映像作品の醍醐味を体現しているのがこの『響けユーフォニアム』という作品のアニメーションです。

この作品を見る時は、まばたき禁止です。見逃して良いカットが1つもありません!

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③「特別」になるということ

ここが今回の記事で一番書きたかった部分になります。

突然だが、「世界に一つだけの花」という槇原敬之作の楽曲がある。私はこの楽曲のメッセージ部分に当たるサビの歌詞があまり好きではないんですよ。

ナンバー1にならなくてもいい
もともと特別なオンリー1

というお馴染みのフレーズがある。確かに言っていることは間違ってないし、言わば真理に近いと思います。しかし、このフレーズに私は一種の甘えや諦めの感情を感じてしまうのです。

ナンバー1にならなくてもいい?そんなわけがありません。ナンバー1を目指さなければならないに決まってるじゃないか?ナンバー1になろうと努力すらせずに、自分自分だからなんてことを言うのは、はっきり言って「逃げ」のように感じられるんです。

この歌詞はナンバー1になろうと努力し、それでも達成することができなかった者がその果てに悟る真理のようなものであり、その努力すらしない者のためにある言葉ではないのだと私は思っています。

この作品ではまず顧問の滝先生から部員に一つの問いかけが提示されます。仲良く楽しい部活生活を送るのか、全国大会を目指すのか?前者は言わば、ナンバー1になる努力を放棄し、自分たちらしくオンリー1な演奏をしましょうというもの。後者はナンバー1になる努力をするというものです。

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

ここで部員たちが下す決断は後者。彼らは果敢にもナンバー1を目指す決断をするのである。

どちらの決断をしても得られるものはあるし失うものもある。そんな彼女たちの姿が教えてくれるのは青春全部をかけてナンバー1を目指すことの意義である。

この作品はまさに鑑賞する者を映し出す鏡のような作品である。その人がどんな道のりを歩んできたかでこの作品の見え方は大きく変わってくるでしょう。

そしてこの作品でずば抜けてそんな想いが強いのが高坂麗奈というキャラクターです。

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

彼女は吹奏楽部唯一のソロ枠を巡って3年生の先輩と争います。吹奏楽部の過去や2年生の3年生に対する想いなどが交錯し、麗奈はトラブルに巻き込まれながらも自分がナンバー1になる、特別になるという決意だけは絶対に揺るぎません。

特別になるには、その覚悟と勇気と、それに見合う努力が必要です。それでも、そこに立つことでしか得られない何かがあるんです。それは頂の景色。

彼女の姿に影響されるのは観客だけではありません。主人公の久美子もそうです。

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

第12話でユーフォニアムの難関パートの演奏から外された彼女は初めて、高坂麗奈という存在の偉大さに気づかされます。そして自分がそこから逃げていたことにも。そんな彼女が自分も特別になりたい!ならなければならないんだ!と気づかされるのです。

上手くなりたい!という心からの叫びと真実の涙は、彼女のこれまでの諦めを断ち切ったこと、そしてナンバー1になりたいという強い想いの表出でもあります。

④扉を開けられなかった者たちへ

この項目で述べたいことは、私のかけだすモナカの記事で書かせていただいたので簡単に。

この作品では、コンクールメンバーになれなかったキャラクターたち、つまり、コンクール会場の扉を開けられなかった者たちにもスポットが当たります。

彼女たちはコンクールに出れないのに、なぜ本気で、心の底からメンバーをささえたいと思えるのか?

なぜ、メンバーに選ばれなかったにも関わらず、迷いなく、吹奏楽部に入って良かったと言えるのか?

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

そんな彼女たちの葛藤と彼女たちなりの想いの昇華が、絶妙に織り交ぜられています。

支える者と支えられる者。両者の想いが丁寧に描かれた故に、『響けユーフォニアム』よいう作品には物語に説得力と厚みが生まれたのです。

⑤迫力の演奏シーン

 

 

 

 

©武田綾乃・宝島社/「響け!」製作委員会 「響け!ユーフォニアム」より引用

テレビシリーズでは少し物足りなかったラストの京都府大会の演奏シーンが映画版ではかなりパワーアップしています。演奏シーンのアニメ化で描写を避ける傾向にある、手元の作画にもこだわり、非常に繊細かつダイナミックな演奏シーンに仕上がっていました。これは映画館で見る価値のあると断言できます。

おわりに

この作品の魅力はまだまだ語りつくすことはできません。

しかし、普段映画を見ている方にも自信を持ってオススメできるアニメーション作品であると断言できます。

何かに打ち込んできた人、ナンバー1になる努力をした経験のある人には非常に共感できる節の多い作品でありますし、そうでない人にも大きな影響を与えるであろう普遍的なテーマ性を持つ作品となっています。

萌えアニメだなんて切り捨てないでいただきたいのです。一流の映像作品なのです。

またこの作品は脚本の性質上、非常に映画向きです。ゆえにテレビシリーズを映画として再編成した劇場版は、1つの映画作品としても大変完成度が高い仕上がりです。

11月前半から、各地でリバイバル上映がスタートします。この機会にぜひ劇場でこの素晴らしい作品を体感してください!!

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