【ネタバレ】実写『となりの怪物くん』感想・考察:滑り台ヒロインにも花を持たせてくれよ!

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね4月27日より公開になりました実写映画版『となりの怪物くん』についてお話していこうと思います。

ナガ
土屋太鳳さん主演なのに、見終わった後に浜辺美波さんしか頭に残らなかった…(笑)

非常に切ない演技で、出演したシーンは少ないながら、見終わった後に強く印象に残りましたね。

数ある少女マンガ実写の中では、比較的出来が良い方だとは思います。

今回はそんな『となりの怪物くん』について語っていきましょう。

本記事は一部作品のネタバレになるような内容を含んでいます。作品を未鑑賞の方はご注意ください。

良かったら最後までお付き合いください。




実写映画版『となりの怪物くん』

あらすじ・概要

菅田将暉土屋太鳳が主演を務め、講談社「月刊デザート」で連載されたろびこ原作の人気少女コミックを実写映画化。

イケメンで天才だが予測不能な行動で周囲から怖がられる超問題児の春と、冷静かつ淡白なガリ勉の雫。

お互い友達が1人もいない2人は高校入学直後に隣の席になり、不登校の春の自宅に雫がプリントを届けに行ったことで知り合う。

それ以来、春は雫にすっかり懐いてしまい、はじめは無関心だった雫も、春の純粋さに触れるうちに少しずつ惹かれていく。

やがて2人の周囲には夏目、大島、ササヤンら個性豊かな友達が増え、春のライバルであるヤマケンの登場によって三角関係まで勃発する。

共演に「曇天に笑う」の古川雄輝、「亜人」の山田裕貴。「君の膵臓をたべたい」の月川翔が監督を務め、「高台家の人々」の金子ありさが脚本を担当。

映画com.より引用)

予告編

ナガ
予測不能で、ただどこか愛嬌を感じさせる菅田将暉の際だった演技をぜひご覧ください!




実写映画版『となりの怪物くん』感想・解説(ネタバレあり)

本作に対する3つの不満点

ということでまあ大絶賛の記事にはなると思うんですが、この作品の素晴らしい点を挙げていく前に、まずはいくつかある不満点の方を消化しておこうかなと思った次第です。

今回はそんな実写映画版『となりの怪物くん』に対する3つの不満点を書いていきます。

 

浜辺美波が可愛すぎるのに出番少なすぎる

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(C)2018映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社

本作の監督は映画『君の膵臓をたべたい』浜辺美波さんを覚醒させた月川監督です。さらに本作には彼女が出演しています。これだけで私は心が躍ったものです。

私は彼のことを浜辺美波の魅力を最大限に引き出せる監督だと思っていますからね。

しかし蓋を開けてみたらですよ、浜辺美波が演じている大島千づるは全然出番がないんです。

これはどういうことなんですか??

ナガ
そんなことしたら・・・急性浜辺美波中毒で死んでしまうじゃないですか!!

出番が多かったらそれなりに浜辺美波成分が分散されて、程よく摂取できるのですが、あんなに出番を減らされてしまうと、短期間に集中的に成分を浴びることになってしまうのです。

しかも月川監督のフィルターを通して見る最高級の仕上がりの彼女の映像ははっきり言ってその美しさが凶器であるとしか言いようがありません。

それを3つか4つのシーンだけ作品に忍び込ませておいて、忘れかかった頃にブッ込んできて来るのはあまりにも卑怯としか言いようがありません。我々のためにももっと浜辺美波の出番を増やしてほしかったというか、もはや2時間月川監督が撮る彼女のデモ映像でも1800円、いや3000円くらい払う価値があると思いました。

可愛すぎるのに出番が少なすぎる。それってもはや罪ですから。

 

浜辺美波が報われなさすぎる

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(C)2018映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社

さて『君の膵臓をたべたい』でも膵臓の病気で余命僅かになった少女という過酷な役を浜辺美波さんに課していた月川監督ですが、本作でもまたやってくれましたね・・・。

実写映画版『となりの怪物くん』の登場キャラクターのほとんどにはきちんと「救い」のようなものが与えられているんです。池田エライザ演じる夏目あさ子にも、古川雄輝演じる吉田優山にも、山田裕貴演じる山口賢二にもきちんと「希望」が示されています。

ナガ
しかしですよ、浜辺美波演じる大島千づるにはそれが無いんですよ!!

学級委員として周りに仕事を押し付けられる損な役回り、そんな時に自分を認めてくれた春に好意を示します。

そしてバレンタインに彼にチョコレートを渡そうと呼び出すも、春は雫のことしか見ていないんだと悟り、身を引きます。しかもチョコレートは渡せないまま・・・。

そして卒業式の日を迎えて、千づるは雫たちに一緒に写真を撮ろうと提案するのですが、このシーンでシャッターをきっているのが千づるで彼女は写真に写っていないんですよね。

その後のシーンで、雫はすぐに教室を出て行ってしまいますし、誰かが千づるも一緒に撮ろうなどと言った声を掛けている様子もありません。

いや月川監督、浜辺美波に酷な役回りばっかり押しつけすぎじゃないですか??

ナガ
全くもぅ・・・あんた分かってるよ!!!!(笑)

いや今作の浜辺美波の使い方は計算しつくされてる感じがしますよ。

まずチョコを渡せなかったシーン。

日本中の浜辺美波ファンがそれ俺にくれよぉぉぉぉ!!!!と叫んだはずです。

次に卒業式で彼女が写真に写れなかったシーン。

全世界の浜辺美波ファンが俺と一緒に撮ってくれぇぇぇぇ!!!!と発狂したはずです。

そして最後にやっぱり報われなかった彼女を思って、

俺が結婚してやんよぉぉぉぉ!!!!(某Angel Beatsの第10話風に)と昇天したはずです。

ナガ
月川監督・・・確信犯でしょ・・・(笑)

 

浜辺美波のあのセリフが無いじゃん!!

原作の大島千づる最大の見せ場と言うとあのセリフですよね。

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(C)ろびこ/講談社

はい、いただきました。これが『となりの怪物くん』の中で1,2を争う名言と言われていますね(大嘘)。

アニメ版では、花澤香菜さんが大島千づるの声優を担当していたので、彼女の声で「キンタマ」というワードを聞くことが出来ました。

しかしですよ・・・あろうことか実写映画版『となりの怪物くん』ではこのセリフはカットされてしまったんですよ!!

浜辺美波の声でこのセリフを聞くために見に行ったと言っても過言ではなかった(過言です)のでこのセリフが登場しなかったことには相当心を痛めております。




本作の4つの素晴らしいポイント

ナガ
ここまでは作品の不満点を極めて冷静かつ理知的な視点で捉えてきました(大嘘)。

ここからは本作の魅力や素晴らしい点について解説していけたらと考えております。

 

主題歌西野カナが重要な役割を果たしている?

本作の主題歌を担当しているのは、ティーン女子の切ない恋心の代弁者西野カナさんです。

私自身は正直あまり西野カナさんの歌は聞きません。

ただ私がちょうど学生をやっていた頃に西野カナさんの「Best Friend」や「会いたくて 会いたくて」なんかが大ヒットしていました。ですので少し懐かしさもあるんです。

ヒット曲を時を経てから聞くと、その当時のことを思い出したりするじゃないですか。これって誰しも経験したことがあると思うんです。

ナガ
ちなみに私の青春はこれですね。

私がどんな青春時代を過ごしていたかお察しの方、皆まで言わないでください!!(笑)

さてそんな風に音楽には時を超えて、自分の過去を現前させる力みたいなものがあると思うんですよね。

昔好きだった曲を久しぶりに聞いた時に感じる懐かしさや、昔付き合っていた恋人との思い出の曲を久しぶりに聞くと切ない気持ちになることって誰しもあると思うんです。

本作の冒頭で西野カナさんの「Best Friend」が「2010年のヒット曲です!」とパーソナリティに紹介されながらラジオから流れてきます。現在の時間軸でその放送を聞いている雫はその楽曲が大ヒットした当時である自分が高校生だったころを思い出します。

この演出はすごく効いていると思いませんか。

主題歌が西野カナさんだと聞いた時にティーン層を取り込むためのただのタイアップだろうなと思っていたんですが、まさか作品の中でこんなに有効に機能しているとは思いませんでした。

 

前半の過剰演出から後半の魅せる演出へ

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(C)2018映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社

本作『となりの怪物くん』の前半部分の演出は正直言って味付けが過剰だなと思っていたんですよ。

いちいちモノローグで状況説明をしたり、心情説明をしたり、マンガっぽい動きやエフェクトを取り入れたりととことん「ダメな実写化映画」のステレオタイプを突き進んでいました。

しかし中盤を過ぎたあたりから急にそんな作品の雰囲気が変わり始めます。

1つ目の素晴らしいシーンは春が誕生日にあの歩道橋で雫に母親と電話するように後押しして、自分の電話を渡すシーンですよね。

このシーンで素晴らしいのが雫の口から初めて「友達」という言葉がデルタイミングなんですよね。

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(C)2018映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社

「これ友達の電話。」

雫はおそらく母親に携帯電話を変えたのか?と聞かれたんでしょうね。

それに対して雫が反応したセリフの中で初めて「友達」という言葉が出てきたので、これは素晴らしいなと思いました。

いかにも気取ったセリフ、気取ったシーンを用意して雫に「友達」というワードを口に出させることはできたでしょうし、そうすれば安易ではありますがお涙頂戴のシーンにはなったと思います。

ただこの作品はそれをせずに何気ないセリフの中で、雫に春との関係を説明させるんですよ。飾り気がなく演出もほとんどないシーンですが、だからこそ前半とのコントラストが効いてきて、このシーンが印象的に見えます。

ナガ
いやぁ上手いですね。

2つ目の素晴らしいシーンは春がいなくなった後の雫の高校生活をダイジェスト的に描いた一連のシーン中に2度3度ほど挿入されている、春のいなくなった歩道橋を見つめるシーンです。

誰もいなくなった歩道橋を見つめているということは、彼女が春がいなくなった寂しさを感じているのだということは映画を見ている方であれば分かったでしょう。

ナガ
しかし素晴らしいのはここからです。

実は歩道橋のシーンってあの一連の流れの中で時を変えて2度3度と繰り返し登場しているんです。

これってまさしく本作の雫の変わらない思いの表れですよね。

山口賢二から告白された時に雫はいなくなってからずっと春のことを考えていると告げました。

そんな彼女の春に対する時間がどれだけ過ぎようとも変わらない思いが、春のいなくなった歩道橋を見つめる彼女の視線に強く表れているんです。

このように前半でも過剰とも言える演出を施したことで、後半で静かで語らない演出がグッと魅力を増しました。

 

大人には入れない聖域としての青春

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(C)2018映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社

青春映画における大人の役割は非常に重要です。

大人をどう関わらせるのか、はたまた大人を排除して子供だけの聖域を作り出すのかによって作品の在り様が大きく変化します。

例えば先日公開された『ちはやふる 結び』なんかは徹底的に大人を「青春を終えた者」という立ち位置で作品の中に登場させ、子供たちに大きな影響を与えました。

一方の実写映画版『となりの怪物くん』というのは徹底的に大人を描かかない作品なんです。例えば速水もこみち演じるみっちゃんは池田エライザ演じる夏目あら子に告白されるも自分を諦めて欲しいと遠ざけますよね。

映画版でその理由をあえて描いていないのは、大人を春たちの世界に外部化するためだったんでしょう。

他にも春や優山の父親は春によって、彼らのへの介入を拒まれてしまいました。担任の先生も春に「嫌いだ。」と一蹴され、物語にはほとんど絡んできません。

また面白いのが雫の家ですよね。あの家では雫が家事をしているのに、父親は何の手伝いもしようとしません。また母親は電話の声ですらほとんど知りも得ません。

このように実写『となりの怪物くん』の中で大人を排除することで青春時代の友人関係、絆、思い出、恋愛・・・様々な出来事の純度が増しています。

子供たちだけの世界だからこそ未熟で、もどかしくて、なかなか前に進めないけれど、それでも確かに支え合って青春を謳歌する彼らの姿がより一層眩しく見えます。

雫の家の父親の描写なんかは少し異常ですらありましたが、大人を子供の世界から、青春から排除することで監督はより純粋な青春映画に仕上げようとしたのではないでしょうか。

話は逸れるのですが、わたくしナガは昔女性から「速水もこみちに似てるね!」と言われたことがあります。

あっ、顔が似ているってことじゃないですよ?

「速水もこみちに似てるね!!肌の色!!」と言われました。

*ここから結末部分についての解説があります。ネタバレにご注意ください。




冒頭の演出・そしてラストシーンへ

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(C)2018映画「となりの怪物くん」製作委員会 (C)ろびこ/講談社

ナガ
冒頭の怪物くんこと春の殴り合いのシーンに違和感を感じませんでしたか?

そうなんです。彼が他の生徒を殴るとまるでアクション映画化のように生徒が重力に逆さいながら吹っ飛んでいくんですよ。

この最初のわざとらしいくらいに過剰に味付けされた春のシーンは、彼が『となりの怪物くん』という作品の中においても少し異質な存在であることを視覚的に表現しています。

校庭で雫の名前を呼んでいた彼が3階か4階のベランダを掃除していた雫の元に壁をよじ登ってやって来るシーンもそうですよね。これらの春の過剰なまでの演出は彼が「怪物くん」であることを視覚的に明示しています。

そして皆さんがおそらく「なんだこれ?」と思ったであろうラストシーンの2人の抱擁のシーンですよね。

ジャンプした雫がそのままふわふわと宙に浮きながら春の下へと飛んでいき、そしてキスをします。

多くの人が首を傾げたであろうこのシーン(ないし演出)ですが、実はものすごく深い意味があります。

本作の中でマンガチックでアクション映画のような動きをしているキャラクターって春だけなんですよ。

だからこそ彼が「怪物くん」であることが明確になっていたわけです。

しかしラストシーンで雫もまた恋愛映画にはあるまじきマンガチックでアクション映画のようなジャンプ&フライを見せています。一見違和感がある演出ですが、これはまさしく春と雫がようやく心を通わせたということを視覚的に示した演出なんですよ。

春が「怪物くん」だったように、雫も「怪物くん」になって最後の最後にようやく2人は1つの世界で合流することが出来たわけです。

安っぽい演出だなぁと非難している方も多いであろうあの演出ですが、よくよく考えてみると監督の確信犯的な演出であることは明確です。

 

おわりに

いかがだったでしょうか?

今回は映画『となりの怪物くん』についてお話してきました。

最近少女漫画の実写映画をしばしば劇場で見るんですが、こういうお宝に出会えてしまうので止められないですね。

このタイプの作品はやはり見ないで批判する人が多すぎるんですよ。印象だけで語るのは止めてくださいね。

日本の少女漫画の実写映画は数も多くかなり玉石混交です。石も多いですが、たまにとんでもない玉を掘り当てることが現にあるんですよ。

本作『となりの怪物くん』は正直かなりの大当たりでした。

と言いますか、後半のシーンは正直泣きすぎて周りにドン引きされているんじゃないかと危惧しておりました。さらにはこの映画エンドロールでもうひと泣かせしてくるので油断なりません。

「アベンジャーズインフィニティウォー」も「名探偵コナン」も混雑しているでしょうから、ここはあえて『となりの怪物くん』という選択も私は素晴らしい決断だと思います。

ぜひぜひ劇場でご覧ください。

 

また本作『となりの怪物くん』の監督を務めた月川翔さんがなぜこんなにも役者を生き生きとさせられるのかを映画『響』のレビュー記事の中で考えてみました。良かったら読みに来てください。

参考:【ネタバレ】映画『響』感想:ヒッチコックとは対照的な月川監督の役者ファーストなアプローチとは?

 

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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