【感想・批評】映画「テラフォーマーズ」:実写版は傑作では無い。しかし駄作ではない。

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『テラフォーマーズ』についてお話していこうと思います。

映画「テラフォーマーズ」は同名のコミックスを原作とした映画作品である。数々の邦画を作り上げてきた邦画界の重鎮三池崇史さんがメガホンを取り、主演には伊藤英明さん、その周りを菊地凛子さんや滝藤賢一さんといった実力のある俳優陣、山下智久さんや小栗旬さんといった二枚目俳優陣たちが固めた。

今年度の邦画の中でもかなり予算がかかっている今作品。しかし、公開週末興行がわずか1.5億円にとどまり、最終興行収入が10億円にすら及ばない大コケとなってしまった。そして評価面でも公開日以降ヤフーレビューやフィルマークスといったレビューサイトで軒並み低評価をつけられ、全く振るわない結果となってしまった。

私はこの作品を見るつもりはなかった。この作品を劇場で見ることになったのも、いわばランダムに見る作品を選んだ結果だった。こんな不純なきっかけで見ることになった作品だった。

そして鑑賞を終えて、正直言うとよい作品を見たという気分ではなかった。お世辞にも傑作とは決していうことはできない作品だった。しかし、この作品はそれほど叩かれる作品だったのだろうか?私はこの映画「テラフォーマーズ」という作品は全く身構えることなく、気軽に見れる今年一のエンターテイメント作品だったと思う。

映画「テラフォーマーズ」は確かに各所で低評価をつけられ失敗作の烙印を押された。しかしおそらく映画「テラフォーマーズ」を失敗作だと思っている人の中にはこの作品を見てすらいない人が大勢いると思う。今年の夏映画である「君の名は」は試写会の評判や公開後の絶賛評価の伝播が大ヒットの一つの要因と言われている。おそらく映画「テラフォーマーズ」で起こったのはまさに逆の現象だ。

一部のインターネット等で大きく取り上げられた批判意見がまるで総員の評価であるかのごとく拡散された結果、劇場に足を運んでくれる人すら少なくなってしまった。おそらく劇場でこの作品を見たのはキャストのファンと一部の原作ファンくらいのものだろう。

ほとんどの人が見ていないにも関わらず、この作品は失敗作だという一部の大きな声だけが独り歩きしてしまったのだ。確かにこの作品を見た私も、傑作だなんて言うつもりはない。しかし見てもいない人に駄作に一言で片づけられてしまうような作品では決してないのである。

かくいう私はこの作品にじわじわとハマってしまい気がつくとBlu-rayを購入してしまうほど、ドはまりしてしまった。(アイキャッチ画像は私の私物です)

今回の記事ではそんな映画「テラフォーマーズ」がなぜ批判されるのか?また逆にこの作品の魅力はどこにあるのか解説していきたいと思う。

映画「テラフォーマーズ」の欠点

映画テラフォーマーズが批判される理由のおそらく大半はCGやキャストの衣装といったもの安っぽさないし予算のかかった作品にもかかわらず画面から漂うB級感ゆえだろう。確かに画面から漂うチープさはどうしても否めない。特に宇宙船内部の描写は酷い。全く奥行き感がなく、セットとCGの境目も粗い。それゆえ宇宙船内部で展開されるシーンは見ていても見苦しいところが多々ある。

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©貴家悠・橘賢一/集英社/映画テラフォーマーズ製作委員会 映画「テラフォーマーズ」より引用

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©貴家悠・橘賢一/集英社/映画テラフォーマーズ製作委員会 映画「テラフォーマーズ」より引用

バグズ二号内は物語において重要な舞台である。インターステラ―のスタッフを交えるなどして、かなり力の入った出来になっている火星の風景が素晴らしいだけに余計にチープさが目立っている。せっかく予算の大きい作品だったのならバグズ二号内部のセットはもう少し、いやかなり力を入れるべき要素であっただろう。

またメイキングからも分かる通り、CG合成の兼ね合いもあってか、かなりアクションシーンを細かく分割して撮影したせいでアクションシーンがチープであまりスペクタクルが感じられない。せっかく火星のシーンの撮影やCGに力を入れたにもかかわらず、アクションがグリーンバックの小さなセットでチマチマととられた様が透けて見えてしまうため非常にもったいない映像に仕上がっている。

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©貴家悠・橘賢一/集英社/映画テラフォーマーズ製作委員会 映画「テラフォーマーズ」より引用

バグズ手術を経て身に着けた能力でメンバーたちが戦闘するアクションシーンは本来ならばこの作品の大きな見せ場の一つになるべき要素だったにもかかわらず、あまりにおざなりな出来のためにむしろウィークポイントになってしまった。

やはりアクションシーンやバグズ二号の内部舞台装置と言った部分で、映画において最重要と言っても過言ではない視覚的なスペクタクルや説得力が欠落してしまったことがこの作品がわかりやすく失敗作だと言われる批判であろう。この作品が大好きな私自身もその批判点を否定するつもりはない。

確かにここまでの記事を読んでいただくとこの作品は鑑賞することもなく駄作の烙印を押されても仕方ないような作品だと思われるだろう。しかしこの映画「テラフォーマーズ」にはそれをかき消すと言っても過言ではないくらいの魅力がある。ここからはその魅力について熱く語っていきたいと思う。


映画「テラフォーマーズ」の魅力

まずこのテラフォーマーズの最大の魅力は限りなく原作、つまり二次元の世界観に近いということだと思う。マンガやアニメには二次元という世界においてだからこそ成立していた世界観や設定やセリフといった要素が多くある。それを三次元である実写映画にするときに一番難しいのは、やはりそういった二次元の世界だからこそ成立していた、説得力のあった要素をどのようにして三次元の世界でも説得力を持つものにしていくかということである。

この技術が極めて高いのがマーベルやDCといったアメコミ原作の映画たちである。

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©2016 Marvel 映画「アベンジャーズ」より引用

アメコミヒーロー映画は一歩間違えればとんでもなくカオスな世界観を孕んだ映画である。おもちゃ箱から取り出したようなヒーローたちが現代の我々が生きる世界で戦いを繰り広げるのだ。どう考えてもあり得ない設定なのだが、妙に説得力がある。もはやこのヒーローたちは今まさにこの世界に現存しているのではないだろうかとすら思わせる。これはコミックをそのまま映画に起こすのではなく、ヒーローをいったん二次元の世界から引っ張り出し、三次元の世界の世界でリアリティを持たせるために様々な面で再考証を突き詰めたゆえの結果なのである。アメコミヒーロー映画はいわば限りなく三次元に近い世界観を実現したのである。

今年の邦画に「四月は君の嘘」という作品がある。これは同名の大人気青年コミックスを実写化した作品である。この原作は読んでいただけるとわかるがまさに二次元だったからこそ違和感なく見れた作品である。独特の心理描写やポエム調のセリフ、マンガだからこそ絵になっていたシーンの数々、設定。どう考えてもそのまま実写映画にしてしまうと違和感が生じてしまう原作である。

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©2016フジテレビジョン 講談社 東宝 新川直司 映画「四月は君の嘘」より引用

この映画は設定段階で登場人物の年齢や髪の色などの設定を現実味があるものにしようとかなり変更してきた。だから私はこの作品はジャンルは違えどアメコミヒーロー映画が経た過程同様、二次元だから成立していた世界観を一旦忘れて、「四月は君の嘘」という作品を三次元において再構成してくるものだと踏んでいた。しかしふたを開けてみるとこの映画は非常にどっちつかずな内容になってしまった。ポエム調のセリフをほとんどそのまま採用して、マンガ独特の現実味のないシーンをそのまま実写に置き換え、二次元だからこそ成立していた演出を何の工夫もなく実写映画でやろうとした。そのため設定や展開において三次元に寄せようとしてしまったことと相まって非常にカオスな映画に仕上がってしまった。まさに二次元にも三次元にもなりきれないどっちつかずな映像作品が誕生してしまったのだ。

ここまで二次元であるコミックスやアニメを、実写化して三次元で表現した作品の成功例と失敗例の身近なものを取り上げてみた。この2つが取ろうとした、取ったアプローチはまさしく原作を限りなく三次元に近いものにするというものだったと思う。そしてアメコミヒーロー映画はその一つの完成形である。そして邦画はこの成功にならって半端な予算でこのアプローチを模倣し、失敗してきた。

では、テラフォーマーズはどうなのか?テラフォーマーズも同様に失敗したのか?

私はそうは思わない。むしろテラフォーマーズは全く逆のアプローチをとったと思う。つまり三次元の世界観に寄せようとするのではなく、実写にもかかわらず二次元の世界に近づけようとするアプローチで映画をを製作したのである。

テラフォーマーズの突飛もない、現実には絶対にありえない世界は、結局のところ絶対にありえないのだから、無理に説得力を与える必要はないというスタンスなのである。だからこそ地球のシーンでは『ブレードランナー』オマージュともとれる世紀末感ある舞台を用意するなど、徹底して現実から隔離された世界観を追求したのである。それゆえ確かにこの映画には全くといっていいほど説得力がない。しかし絶対にありえないものは絶対にありえないんだというスタンスで映画を楽しむことができる。完全なるフィクションである。

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©貴家悠・橘賢一/集英社/映画テラフォーマーズ製作委員会 映画「テラフォーマーズ」より引用

またこの作品はマンガの空気感も絶妙に再現している。私がこの「テラフォーマーズ」の原作の第一巻部分を読んで感じたのは、圧倒的な出オチ感である。歴戦の強者を匂わせる男があっさりと敗北したり、意気揚々と戦いに挑むキャラクターたちが次々と殺されていく。なによりジョージたちテラフォーマーなんてキャラクターはビジュアル的にも出オチ感の塊である。そんな空気感はこの映画でもきちんと反映されている。確かにディテールにおいては原作から変更された部分が多くあるが、この映画は「テラフォーマーズ」の原作が持つ核の部分をきちんととらえている。

つまりこれはコミックス原作をできるだけ二次元に近い状態で実写化するとどうなるのか?という三池崇史監督の新しい挑戦なのかもしれない。

はっきり言わせてもらう。テラフォーマーズという作品を三次元におこして、現実味と説得力を与えるなんてことは、ハリウッド大作級の予算と最高のスタッフをそろえても容易ではないと思う。ましてや邦画対策の予算なんてせいぜい10億円かそこらだ。どう考えてもそのアプローチでは失敗が目に見えている。だからこその三池崇史流の時代に逆行するかのようなアプローチが取られたのだと思う。

三池崇史監督は映画界のさまざまなものと戦ってきた監督と言われているが、この作品でもその情熱は全く衰えていないことが見て取れた。

映画テラフォーマーズは三池崇史監督だから失敗したという見方は間違いであると断言したい。むしろこの作品は、三池崇史監督だからこそここまで見て楽しいエンターテイメント作品として昇華されたのである

参考:三池崇史監督は世界と戦ってきた映画監督である!

映画における「余白」

もうひとつ取り上げておきたいのは映画における「余白」という部分である。例えば、全く隙のない完全無欠の傑作映画なんてものがあったとする。果たしてそれは「映画」として本当に素晴らしいのだろうか?私はそうは思わない。映画には「余白」というものが存在すべきである。

それはつまり鑑賞するものに委ねる部分が必要であるということである。この例として私が思い浮かべるのはトム・フーパー監督とポールトーマスアンダーソン監督である。前者は「英国王のスピーチ」や「リリーのすべて」を手掛けた監督。後者は「ゼア・ウィルビーブラッド」や「ザ・マスター」を手掛けた監督である。

前者はどちらかというと完成された映画を作る監督だと思う。映画の中ですべてを描写しきろうとする、だからこそ見ていてわかりやすい反面、作品に厚みがない。後者は逆に描写を最低限にとどめ、多くを観客に委ねる。

私の個人的な好みはまさしく後者である。私は映画というものはそれ単体で完成されたものではなく、鑑賞した人の中でその人の考え方や生き方、信条、宗教、趣味さまざまな要素が映画を咀嚼し、一つの映画体験として完成されるものだと思っている。だから余白の少ない、完成度の高い映画にはあまり心惹かれない。

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2013-09-20

 

では映画「テラフォーマーズ」はどうなのか。私はこの映画は確信犯的に隙だらけの映画になっているのではないだろうかとすら思っている。本当に見れば見るほど隙だらけだ。それは展開であってもそうだし、演出やアクションであっても然りである。

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©貴家悠・橘賢一/集英社/映画テラフォーマーズ製作委員会 映画「テラフォーマーズ」より引用

だがその隙の多さ、つまり完成度の低さがむしろ観客を映画に惹きつけてくれると思う。完成された映画を見る際観客は完全に蚊帳の外である。しかし、テラフォーマーズのような観客の付け入るスキがある映画を見る際、観客は思わず夢中になってしまう。その部分に自分なりの考えをくわえたり、描かれないシーンを想像したりする。この作品においては思わず、おいおいとツッコミを入れてしまう。つまりこの映画はある意味では観客を惹きつける作品の条件を満たしているのである。

今年大ヒットした「君の名は」というアニメ映画もまさしくそうである。設定や世界観、展開に無数の欠陥や隙があるし、描写し過ぎないゆえに観客に委ねられた部分も多い。だからこそそういった部分に考察、賛成意見、否定意見が飛び交うのである。

また完成されてないゆえに見る側に少し安心感が生まれる。映画の世界の中に自分が入っていける入り口が開かれていると感じる。そういった観客に付け入るスキを作ることこそ 一流監督のなせる業なのではないだろうか?そして映画「君の名は」が多くの人から絶賛され注目を集める一つの要因はこれなのではないかと思っている。

つまり多くのスキを内包し、観客に思わずツッコませてしまうのはまさにこの映画が映画作品としてエンターテイメントとして一流だからではないだろうか?観客は安心感を持って身構えることなく純粋に映画を楽しむことができる。まさに映画を娯楽として追及した形が映画「テラフォーマーズ」なのではなかろうか??

少し褒めすぎたでしょうか??(笑)

おわりに

しかしこの作品は駄作とひとくくりにするにはもったいない作品である。ぜひその目でこの映画を確かめてほしい。幸いにもすでにレンタルもスタートしている。

私は発生可能上映ならぬ、「テラフォーマーズ」ツッコミ可能上映を待ち続けている。この作品は紛れもなく一流のエンターテイメントだ。

これを作り出せる三池崇史監督にはただただ脱帽である。そんな監督がメガホンをとる新作ジョジョ第四部の』実写版にも期待が高まるばかりである。

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4 件のコメント

  • こちらでははじめまして。ある時はじぇれ~み、ある時はじぇれみーと名乗る者です。
    ナガさんの熱い想いが伝わってくる素晴らしい記事でした。それでいて独り善がりではなく、冷静に作品やとりまく空気を分析なさっていて、感心させられました。
    現時点で私は未見です。(プレイヤーが調子悪く、レンタルしたものの読み込んでくれませんでした(^。^;))
    ですので、作品に対する感想・評価は書けませんが、三池崇史ファンとして納得がいきました。
    ではでは、今後ともよろしくお願いします。
    ※星は記事への評価でいいんですよね? 作品の評価でしたら、後ほど改めます。

  • コメントありがとうございます!記事への評価で大丈夫ですよ!
    どうしても作品への愛が先行して自分本意の文章になってしまったなぁと思ってたんですが、じぇれみさんにそう言っていただけると嬉しいです!!
    世間でどれだけ低評価だろうとやっぱり好きな作品は好きですね!!これからも大好きな作品の一つだと思います!

  • 「実写にもかかわらず二次元の世界に近づけようとするアプローチで映画をを製作した」
    成程パトレイバーと同じような手法ですね。興味が湧きました。

  • 通りスガイさんコメントありがとうございます。確かにパトレイバーもアプローチの方向性は似ていたように思いました!

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