【ネタバレ感想・解説】実写映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」:わがままに生きるって難しい。

アイキャッチ画像:(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね、映画「先生!、、、好きになってもいいですか?」(以下「先生!」)について語っていきたいと思います。

良かったら最後までお付き合いください。

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あらすじ・概要

「俺物語!!」などで知られる人気漫画家・河原和音の大ヒット少女コミックを、生田斗真&広瀬すず共演で実写映画化。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」などのヒットアニメを手がけてきた岡田麿里が脚本を担当し、「僕等がいた」でも生田とタッグを組んだ三木孝浩監督がメガホンをとった。弓道部に所属する女子高生・島田響は、クールで生真面目だが実は生徒への愛に溢れる世界史教師・伊藤貢作に恋をする。生まれて初めて誰かを好きになった響は、伊藤に対し自分の気持ちを率直にぶつける。伊藤はそんな彼女に惹かれながらも、教師という立場から一歩を踏み出せずにいたが……。(
映画com.より引用)

予告編

広瀬すずどこまで行くんだ・・・?

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

本作のヒロインである響きを演じたのが今や若手女優の中でも群を抜いた実力を持つ広瀬すずです。彼女の演技を初めて見たのが「海街diary」なんですが、その当時の演技ってまだ初々しさが残っているというか、高校生という年齢に見合った演技という域は出ていなかったように思います。

綾瀬はるか
ポニーキャニオン
2015-12-16

 



さらには、声優に挑戦した「バケモノの子」のボイスアクトは目も当てられないほど酷かったです。個人的にもこの時点では、広瀬すずは伸び悩んでいるのかなあという印象を受けました。

その印象を根底から覆されたのが、2016年の映画「ちはやふる」ですよね。突如として開花したコメディエンヌ的才能と、表情と仕草でコミカルとシリアスを使い分ける技術、どこで身につけたのだろうか?というほどに成長を遂げました。



加えて、同年公開の「怒り」という作品で、スパルタ監督であると言われている李相日監督に出会えたのが彼女の役者人生においては大きな意義を持っていたのではないでしょうか?広瀬すずはこの作品で「静」と「動」の演技を完璧に身に着けたようにも感じられました。

渡辺謙
東宝
2017-04-12

 



そして今年に入ってから公開された作品では、彼女が他の若手女優たちとは一線を画する存在であることを誇示するかのような演技を見せつけてくれました。映画「チアダン」で見せた洗練されたコメディエンヌとしての資質、映画「三度目の殺人」であの役所広司と肩を並べる好演を見せた才覚。彼女が一つ次のレベルへと進んでいることを明確に感じました。



今作「先生!」は、いわゆる少女マンガ原作です。邦画には少女漫画の映画化・実写化は数多く存在していますが、正直役者の演技に目を留めることってあんまりないんですよね。若手の美人女優と若手のイケメン俳優がとりあえずキャスティングされてるだけ・・・という印象がどうしても強いんです。ただ今回の「先生!」でヒロインを演じた広瀬すずは他の若手女優との間に歴然たる演技力の差があることを示してくれました。

抑えた演技ではあるんですが、表情だけで全てを語り尽せてしまう。これこそが彼女の才能です。

 伊藤先生を見ると、思わずこぼれてしまう笑み。

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

 「恋」の何たるかの実感が掴めずに、戸惑う表情。

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

 苦しい時にも誰かの幸せを願って、何かを噛みしめるような表情。

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

喜び、驚き、戸惑い、痛み、やるせなさ、苦しさ。そんな感情の全てを抑えた演技の中でちょっとした表情の変化や仕草、声のトーンの変化などで我々に訴えかけてくるのです。

こんな芸当ができる若手女優は、日本で彼女だけなんじゃないでしょうか?今後彼女がさらなるキャリアを積み重ねて、どんな女優になっていくのかを考えると末恐ろしいです。

生田斗真も素晴らしかった

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

生田斗真で恋愛映画といえばやはり「僕等がいた」でしょうか。ただあの時の生田斗真の演技は正直言ってあまり印象に残っていません。

彼の印象として強いのはやはり「土竜の唄」シリーズですね。あの役はばっちりハマっていました。ですので、個人的な生田斗真という俳優のイメージはイケメンコメディ俳優でした。



ただそんな中で、彼の演技に衝撃を受けたのは今年公開された「彼らが本気で編むときは、」という作品です。生田斗真はトランスジェンダーの役を演じていたのですが、そのあまりの演技に思わず息を飲みました。「土竜の唄」のイメージですごく男臭い役どころが似合う俳優だと思っていたので、真逆のイメージの役どころでここまで実力を発揮できてしまう役者としての懐の深さに感動しました。今年の邦画で、ベスト主演俳優を選んでくださいと言われれば、この作品の生田斗真を選ぶと思います。

生田斗真
ジェイ・ストーム
2017-09-06

 



そしてそんな彼のベストアクトを経ての出演作「先生!」ですが、もうさすがと言わざるを得ない演技でしたね。表面的にはぶっきらぼうで、不器用な男を演じながら、その背景にはすごく強い意志や感情があるんだと静かに感じさせてくれました。

 さらに言うなれば、彼はもはやイケメン俳優という肩書きを無くしても、演技力だけでやっていけるレベルの俳優なんですよね。イケメン俳優と呼ばれる人たちの中には、イケメンであることを除いたら何も残らないような俳優がまだまだ多いです。ただ彼はもうその領域にはいません。彼は間違いなく本物の役者です。今後がすごく楽しみな俳優の1人ですね。

森川葵がキーパーソンである

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

森川葵が演じた千草というキャラクターは極めて少女漫画的キャラクターなんですよね。恋多き少女であり、積極的かつ活発な少女です。

彼女の演技を見て、広瀬すずと比べてまだまだ実力不足だなあと感じる方も多いと思います。

ただ私は、敢えてオーバーな演技をやっているぞと思いました。

典型的スイーツラブコメヒロインのようなキャラクターをオーバーに演じているのは、間違いなく広瀬すず演じる響きの抑えたキャラクター性を引き立てるためでしょう。

 そう考えると自分を滅して、他のキャラクター際立たせるという森川葵の演技はすごく評価されるべきだと思うんですね。まさに名脇役だったと思いました。




わがままに生きるって難しい。

本作のレビューを見ていると、どうも先生と生徒の恋愛劇ということでそこに生理的・倫理的な嫌悪感を感じている人が多い印象を受けました。確かに、現実の世界において教師と生徒の恋愛というものは倫理的にも、服務的にも許容されうるものでは無いでしょう。

でも先生と生徒の恋愛というのは、あくまで舞台装置なんですよ。これは映画「何者」のレビューを見ているときにも感じました。

映画「何者」において、就活というのは単なる舞台装置なんですよ。ですので、あの作品を見て就活のことばかりに焦点を当てていては、本質は見抜けません。就活という舞台装置の上で行われた、SNSを媒介として表出する心理や諸々のコミュニケーション問題についてこそ論じられるべきだと思います。

佐藤 健
東宝
2017-05-17



本作「先生!」も先生と生徒の恋愛という舞台設定がすごく目につきやすいです。ただそこばかりに注目して、「教師と生徒の恋愛」というポイントで議論するのは今作の命題ではないと思います。

 本作の命題というのはこの章のタイトルにもしたように「わがままに生きること」、その重要性だと思うんです。

「子供=利己的」「大人=利他的」というのは、まあ個人差はありますが、一般論として存在しますよね。大人になるというのは、利他的になることであるということです。

本作「先生!」では、非常に利他的な存在として伊藤先生が、利己的な存在として響が登場します。伊藤先生は常に生徒、そして響のことを思って、行動したり、自分の感情を抑え込んだりしています。一方で、響は自分の思いをストレートかつ正直に伊藤先生にぶつけていきます。

しかし、伊藤先生に迷惑だと突き放されてしまって、自分の恋愛感情がいかに自分本位なものだったのかを悟ります。そして利他的な存在に、つまり大人になろうとしていくわけです。文化祭の日の屋上で2人は利他的な他者としてまた元の関係性に戻るはずでした。

それでも2人の間に在った強い愛情は抑えきれなかったんですよね。そんな利己的な思いが伊藤先生から漏れ出して、響へのキスとして現れました。

そしてそれが学校で大きな問題となってしまいます。伊藤先生は自分が大きな過ちを犯してしまったことを悔やんで、また利他的な人間に戻って、響の前から去ろうとします。しかし、やっぱり後悔できないという思いと、響への強い愛情から彼女を探しに行きます。

橋の上で行われた2人の会話における伊藤先生のセリフは印象的ですよね。

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(C)河原和音/集英社 (C)2017 映画「先生!」製作委員会 映画「先生!」予告編より引用

 「卒業しても自分のことを好きでいてくれたら、その時は付き合ってほしい。でも、卒業するまでに他に好きな男ができたら・・・いや・・・俺のことを待っていてほしい。」


あのセリフはようやく伊藤先生が自分の明確な意志でもって利己的に響を求めたことを示すものだったんですよね。

本作の結末が教師と生徒の恋愛に肯定的であるという点から、倫理的・生理的な嫌悪感を感じられる方はもちろんいらっしゃると思います。ただ、本作を語る際はもっと一般論に置き換えて考えて見て欲しいのです。

人は大人になるとどんどんと利他的な存在になろうとします。そして、子供に利己的であってはいけないよと教えるわけです。そうして社会が成立しているわけですよ。利己的な人間が多ければ、社会は成立しません。

ただ、人はそんな利他的な思考に慣れてしまって、いつしか本当に欲しいものを目の前にしても利己的になれずにいることは無いでしょうか?利他的な思考から諦めようとはしていないでしょうか?

 どんな障害があっても、どんなに周囲から注目を浴びても、本当に欲しいものは「わがままに」手に入れる、それこそが重要なことだと思うんです。


大人も子供も関係ありません。人は利他的であるべきですが、時には「わがままに」生きればいいのです。

おわりに

 個人的には今年の大作邦画の中ではトップクラスの出来だと思いました。演出も抑えめで素晴らしかったですし、俳優陣の表情を切り取る撮影も秀逸だったと思います。

さらに言うなれば、全20巻もあるという原作から、この2時間弱の脚本を作るという作業はとても難しかったと思います。ただ、本作の脚本はしっかりとまとまっていて、整合性も取れていました。そのあたりは、さすが岡田磨里ですよね。彼女の脚本独特の生理的な描写やセリフは今回は鳴りを潜めていましたが、それでも脚本の完成度はかなり高かったと思います。

少女漫画の実写化は毎年多く製作されますが、どうせ作るのであれば、すべてこれくらいのクオリティを目指して作ってほしいものです。

劇場で見て良かった映画でした。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。




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