映画『ワンダー 君は太陽』感想・批評:「想像力」で世界を変える

アイキャッチ画像:(C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.

はじめに

みなさんこんにちは。ナガです。

今日は映画『ワンダー 君は太陽』についてお話ししていくんですが、今回の記事はネタバレ無しで書いていきます。公開されてから1人でも多くの人が劇場に足を運んでくれたら嬉しいですし、この記事がその後押しを出来たなら光栄です。

本記事のテーマは章題の通りで「映画『ワンダー 君は太陽』とJ・K・ローリングによるハーバード大学卒業式スピーチ」です。

良かったら最後までお付き合いください。

あらすじ・概要

全世界で800万部以上を売り上げたR・J・パラシオのベストセラー小説「ワンダー」を、「ウォールフラワー」のスティーブン・チョボウスキー監督・脚本で映画化したヒューマンドラマ。ごく普通の10歳の少年オギーは、生まれつきの障がいにより、人とは違う顔をもっていた。幼い頃からずっと母イザベルと自宅学習をしてきた彼は、小学5年生になって初めて学校へ通うことに。はじめのうちは同級生たちからじろじろ眺められたり避けられたりするオギーだったが、オギーの行動によって同級生たちは少しずつ変わっていく。「ルーム」で世界中から注目を集めた子役ジェイコブ・トレンブレイがオギー役を務め、「エリン・ブロコビッチ」のジュリア・ロバーツが母イザベル役、「ミッドナイト・イン・パリ」のオーウェン・ウィルソンが父ネート役をそれぞれ演じる。(映画comより引用)

予告編

感想:こんなに良く出来た群像劇は他にない

本作『ワンダー君は太陽』は基本的に群像劇という物語構成になっています。1つの作品の中で、多様な人物の物語が同時進行的に描かれ、それが時折クロスオーバーしながら展開していき、最後の最後で繋がっていくというわけです。

ここで本作の登場人物を簡単にではありますが、紹介しておこうと思います。

・オーガスト・プルマン(オギー)

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本作の主人公。生まれつきの障がいのために人とは違う顔を持っていた。そのため20回以上にわたる外科手術を受け、10歳になりましたが、母親のホームティーチングで勉強している。スターウォーズが大好きで、将来は宇宙飛行士になりたいと考えている。
10歳になり、母親のイザベルの強い要望もあり、初めて学校に行くことになる。そこで待ち受ける数々の困難。苦しみ、悩みながらもその現実と懸命に戦う彼の姿が徐々に世界を変えていく。

参考:【ネタバレ】オギーが大好きな「スターウォーズ」が『ワンダー君は太陽』を読み解く鍵?

・イザベル(オギーの母)

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オギーの母親。オギーを優しく見守り、彼のホームティーチングを担当している。彼のためを思い、10歳になったタイミングで学校に通わせることを決意する。自宅ではオギーのモチーフにしたイラストを描いている。

・ネイト(オギーの父)

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家族思いの父親。オギーのことをすごく大切に思っている。そのため学校に通わせようとする妻のイサベルと当初は意見が食い違う。しかし、オギーを信じて送り出す決断をする。

・ヴィア(オギーの姉)

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昔から「良く出来た姉」として家族の中でも手のかからない子として扱われている。両親がオギーにかかりっきりのため、自分は愛されていないんじゃないかと不安になり、家でも自分の居場所を見出せないでいる。学校でも唯一の親友だったミランダと上手くいかなくなり、徐々に異変が生じていく。

・ジャック・ウィル

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オギーのクラスメート。オリエンテーションで登校したオギーに学校を紹介して回った生徒の内の1人。純粋で無邪気なオギーの人柄に惹かれ彼と友達になりたいと思うようになる。

・ミランダ

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ヴィアの親友。幼稚園の頃からの同級生で、これまでずっと仲が良かったが、夏休みを過ぎた時に、急に髪をピンク色にして登校し、友人関係も様変わりさせてしまう。そんな変貌してしまった彼女からヴィアも少しずつ距離を置くようになり、ミランダも少しずつ離れてしまう。しかしヴィアのことが気がかりで、何とか友達に戻りたいと願っている。

・ジュリアン

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オギーのクラスメートで、オギーをいじめているグループのリーダー格。人一倍プライドが高く、自分が間違っていることを認めようとしない。しかし彼がそんな行動をとるのにはある理由があって・・・。

実は彼には映画では描き切れていない物語があります。それに関して気になる方は以下のリンクからどうぞ。

参考:映画版では描かれなかったジュリアンの真実とは?

他にも魅力的なキャラクターたちがたくさん登場します。そしてそれぞれのキャラクターにそれぞれの物語があるんです。本作『ワンダー君は太陽』は基本的にはオギーの物語が主軸になるんですが、作品の中で視点を司るキャラクターが柔軟に変化していきます。

作中で何度か視点となるキャラクターが変化し、それぞれのモノローグで物語が綴られます。そういう様々なキャラクターの心情や考えがどんどんとクロスオーバーしていって、最後には1つの結末へと繋がっていきます。

本作の中でヴィアがオギーを「太陽」だと捉えるシーンがあります。確かに銀河系は太陽を中心に回っています。これは絶対命題です。しかし、我々の世界観では基本的に「地球」が世界の中心に在りますよね。もっとフォーカスしていきましょう。地球の中で中心はどこになりますか?この質問に答えはありません。ただ、どの国に暮らしている人も自分の国を世界地図の中心に据えます。

つまり世界の中心と言うのは、惑星の数だけ、国の数だけ、都市の数だけ、もうそれこそ数え切れないくらいに存在しています。もっと言うなれば、人間は誰しもが世界の中心に立っているんですよ。自分の人生があり、自分の物語があります。

そういう数限りない1人称の物語が交錯することで、この世界は構築されているんですね。だからこそ誰しもが自分の世界の「太陽」なんです。それをこの『ワンダー君は太陽』という作品は教えてくれます。

自分の人生を動かせるのは、自分だけなんです。

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批評:映画『ワンダー 君は太陽』とJ・K・ローリングによるハーバード大学卒業式スピーチ

みなさんはJ・K・ローリングという人物をご存知でしょうか。と言っても知らない人の方が珍しいでしょうか。ご存知、大ベストセラー『ハリーポッター』シリーズの原作者です。現在は映画『ファンタスティックビースト』シリーズの脚本を担当されていますね。

さて、では皆さんは『ハリーポッター』が一体どんな経緯で生まれたのかを知っていますか。同作品を知っているという人でもその誕生秘話まで知っているという人は意外と少ないのではないでしょうか?

彼女は1965年にイギリスのグロスタシャー州のイェイトという街で生まれました。その後、彼女には2歳年下の妹が生まれました。幼少の頃から物語を書くことが好きで、空想好きだった少女はやがて物語を書くようになりました。6歳の頃に彼女が初めて書き上げたのは、うさぎについての物語だったと言います。

この時既に彼女は将来作家になるという夢を持っていました。しかしその後母が病床に伏し、自身も進学する中で人生の選択を迫られます。作家という不安定な職業を選ぶことを両親に反対されたことから彼女は大学を卒業後、秘書の仕事に就きました。ただ、秘書の仕事にはやりがいを見出せませんでした。

そんなある日彼女はマンチェスターからロンドンへと戻る長距離列車に乗り込んでいました。ひたすらに続くカントリーサイドの田園風景。そんな退屈な風景を眺めていると、彼女は1つのアイデアに憑りつかれました。それが後の『ハリーポッター』となるわけです。

早速彼女は『ハリーポッター』の執筆を始めます。しかしそれは彼女の人生愛悪の時間の始まりでもありました。最愛の母アンの死、ポルトガルへの移住、流産、離婚、貧困、うつ病。ローリングはまさに人勢のどん底に立たされていました。

ただそれでも彼女はこの本を出せば何かが変わる、この本でたくさんの人を笑顔にしたいというヴィジョンを捨てずに執筆に取り組み続けました。1995年に12の出版社に贈られた原稿。11社から断られながらも、ようやく『ハリーポッター』が世に出ることが決定したのです。

その後はみなさんがご存知の通りです。第1作の『ハリーポッター:賢者の石』は発売されるやいなや新人作家の作品としては異例のスマッシュヒットを記録しました。彼女は常に成功するヴィジョンを捨てずに前に進み続け、それを現実のものとしたのです。

そんなJ・K・ローリングは2008年にハーバード大学の卒業式でスピーチを行いました。ここからはその内容を紐解きつつ、映画『ワンダー君は太陽』と関連させていけたらと思います。

良かったら、まずはこちらのスピーチを聞いてみてください。(英語ですが・・・)

このスピーチの中で彼女は失敗によって得られるものと想像力の重要性について語っていました。その中でも今回はとりわけ2つ目のテーマである「想像力の重要性」のパートに注目していきます。彼女は「想像力」が自分の壊れてしまった人生を再構築してくれたものだと語っています。

彼女は20代前半の頃、アムネスティ・インターナショナル本部のアフリカ調査部に勤務していました。その時どんな経験をしたのかも想像を絶するような悲惨な境遇のアフリカ人たちにたくさん出会ってきたと言います。そしてアムネスティという組織は拷問や投獄といった壮絶な苦しみを味わってきた人たちを、それを経験したことの無いたくさんの人々が救い出すという活動を先導していました。

そんな経験から彼女は以下のような学びがあったと話しています。

Unlike any other creature on this planet, humans can learn and understand, without having experienced. They can think themselves into other people’s places.
(この地球上の他のどの生物とも異なり、人類は経験することなく、学び、理解することができます。他の人の立場で考えることができます。これはある種の能力で、私の一連の小説にでてくる魔法のように、道徳的に良くも悪くも使えます。)

つまり人間という生き物は自分が経験したことがない他人の経験を「推し量る」という行為を通じて、共感し合うことが出来る生き物なのです。それこそが人間の持つ最大の力だと彼女は語っています。確かに想像力を使わずに、自分の世界に閉じこもって生きることが出来たなら、それほど楽なことはありません。しかし社会に出て他人と関わる上でそういった「想像力」の欠如は命取りです。常に他人の「経験」を想像し、そして共感的に接することで人間はここまで発展してきたではないですか。

そしてスピーチの終盤に私の大好きな一節が登場します。

We do not need magic to change the world, we carry all the power we need inside ourselves already: we have the power to imagine better.
(世界を変えるための魔法は必要なく、そのために必要な能力は全て私たちの中に備わっています。私たちはより良い世界になるよう”想像する”能力を持っているのです。 )

彼女が描く『ハリーポッター』の中の世界には魔法という概念があります。そんなものが我々の世界にあるならば、確かに自分の思うままに世界を変えていけるのかもしれません。しかし、我々の世界にはもちろん魔法はありません。

しかし我々には「想像力」という魔法よりもずっと優れた武器が予め備わっているのです。その力をどう使うかが重要なのです。J・K・ローリングはその想像力で、自分の著書で世界中の人を笑顔にするヴィジョンを想像し、それを現実にしました。彼女がそうしたように我々もまた「想像力」を働かせて生きていかなければなりません。

人と人を結びつけるのも、世界を変えるのも「想像力」なのだとJ・K・ローリングは語りました。

さてここから映画『ワンダー君は太陽』に話を戻していきましょう。

この映画の主人公オギーは先天性で顔に障がいがあり、他の人とは違う顔を持っています。20回以上に及ぶ外科手術により何とか身体的な機能は正常になりましたが、やはり顔は他の人たちと同じとまではいきません。本作のプロットはそんな彼が10歳になり初めて学校に行くところからスタートします。

それまで宇宙服用のヘルメットを被り、家族以外とは関わりを持ってこなかった彼が初めて「誰か」と関わらざるを得ない環境に身を置くこととなります。しかし、そんなオギーを待ち受けていたのは壮絶な仕打ちでした。彼は他人とのかかわりに苦しみながらも少しずつ前に進んでいきます。

彼の人との関わりを変えていくのは、まさしくJ・K・ローリングも主張していた「想像力」です。彼はそして彼の周りの人たちも「想像力」により、見えない他人の考えや心情、経験を推しはかり手探りながらも結びつきを強めていきます。

さらにオギーの得意なことと言えば、自分が主人公になった世界を「想像」することでした。辛い時、苦しい時、彼は必ずそんな幸福な世界を「想像」し、自分自身を奮い立たせていました。「想像」の世界にいる宇宙飛行士の彼はいつも幸せそうに飛び跳ねています。

ただ「想像」するだけでは何も変えることはできません。物体を動かすためには物体に力を加えなければなりません。それと同じように、自ら行動を起こし、それを実現しようと試みなければなりません。

無謀にも思えたオギーの理想の世界。しかし、オギーは懸命に生きようともがき続けます。そんな姿が彼の世界を少しずつ変化させていきます。そして彼は「奇跡」を起こすのです。

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人間はどんなに辛い状況に置かれた時にでも、「想像力」の力で這い上がることが出来ます。夢見た「理想」を実現したいという感情はどんな思いよりも強い人間の原動力です。J・K・ローリングが『ハリーポッター』を世に送り出したように。オギーが起こした奇跡のように。

『ワンダー君は太陽』という映画はそんな人間の「想像」の力の無限性を教えてくれる映画です。思い描き、行動すれば、世界を変えられる。

10歳の少年の勇気にどうしようもなく涙が溢れます。

映画『ワンダー君は太陽』は6月15日より全国ロードショーです。

絶対に劇場に足を運んでください。

おわりに

今年の洋画は傑作揃いですね。驚くほどに見る洋画が悉くハイレベルなので、恐ろしくなっています。去年、一昨年の不調が嘘のようです。

最近劇場で予告編を見る機会も多く、私自身予告編だけで泣いてしまいそうになる映画ですが、本編はその比ではありません。正直私は開始5分くらいで号泣でした。

ただ感動させようという意図が見え見えの映画ではなくて、割と映画自体は淡々と作って在りまして、それでも10分に1回号泣してしまうのですからよっぽどです。

1人でも多くの人がこの映画と出会えますように。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。




関連リンク

・『ワンダー君は太陽』は絶対に親子で見て欲しい映画

本作の教育的視点から見た素晴らしさを徹底的に解説しました。親子で学べる素晴らしい映画だと思います。ぜひぜひ劇場へ!!

参考:【ネタバレ】『ワンダー君は太陽』は教育的に見ても素晴らしすぎる映画だ!

・『パパはわるものチャンピオン』

また併せて親子で見て欲しい映画として『パパはわるものチャンピオン』というプロレスを題材にした絵本原作の映画をご紹介しておきます。

参考:【ネタバレあり】『パパはわるものチャンピオン』感想:父と子がそれぞれの在り方で「わるもの」を受け入れる感動の物語

・『ワンダー君は太陽』原作小説

ワンダー Wonder
R・J・パラシオ
ほるぷ出版
2015-07-18

 

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