【ネタバレ】映画「ウィッチ」解説・考察:本作は観客に仕掛けられた巧妙なドッキリ?

アイキャッチ画像:©2015 Witch Movie LLC All Rights Reserved / from ”Witch” movie trailer 

はじめに

皆さまお久しぶりです。ここのところ忙しくしておりまして、なかなか映画館に行く機会も無くて、ブログの更新が滞っておりました。まだまだ映画館に行けない日々が続きそうではありますが、久しぶりに考察してみたいと思える作品に出会えたので、今回の記事を書こうと思います。

今回扱う作品は、「ウィッチ」という作品になります。

あらすじやらキャストやらといった情報は調べればどこにでも載っているので、あえてこの記事で書く必要はないかな?と思いますので、今回は割愛して、いきなり本論から入りたいと思います。そのため、ネタバレ前提のすでに映画を鑑賞した方向けの内容にはなってしまいます。その点はご了承ください。

「ドッキリ」ってご存知ですか?

皆さま「ドッキリ」ってご存知ですか?テレビのバラエティ番組なんかではよく見かけますよね。仕掛け人があらかじめ計画を立てておいて、ターゲットを騙して、最後にそのネタバラシをする。これが一般的な「ドッキリ」の手順ですよね。

基本的にテレビ番組における「ドッキリ」は視聴者もそれが「ドッキリ」であると把握した状態で見る、これが鉄則ですよね。「ドッキリ」と知った状態で見るからこそ、ターゲットが騙されている様が面白おかしく感じるわけです。

では、ここで一つ聞いてみましょう。あなたがもしこれが「ドッキリ」であると知らない状態でターゲットの言動を見ることになったらどういう風に感じるでしょうか?僕が今でも一番大好きな「ドッキリ」はロンドンハーツで放送された狩野英孝の歌手デビュードッキリを例に挙げてみましょうか。

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http://jonny.tokyo/uwasa/29267より引用

もちろん番組の最初に淳をはじめとするメンバーがこれはドッキリであるという前提を視聴者に明かします。ただこれをカットして、いきなり狩野英孝が歌手デビューを目指し、最終的にはライブを開催するという映像を流すとします。すると視聴者は、狩野英孝が歌手デビューの夢を叶える企画なんだと勘違いするわけです。

そして終盤も終盤に、実はこの一連の流れの裏には、こんなことがありましてという企画概要を視聴者に明かします。ようやく視聴者はここまですべて「ドッキリ」だったんだ!とハッとさせられるんですね。

仮に番組をこのような構成にしたとしましょう。するとこの「ドッキリ」はターゲットに対するもののみならず、視聴者に対する「ドッキリ」でもあったということになるわけです。

長々と「ドッキリ」について語ってきましたが、結局のところ何が言いたいのかといいますと、

映画「ウィッチ」は観客に向けた巧妙なドッキリだったんじゃないか??

ということです。まあこれだけ聞いても何のことか分からないと思いますので、ここから説明していこうと思います。

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トマシンは魔女いつからだったのか?

今回は自分が立てた仮説をもとに、考察していくのでその点を理解しておいてください。

そもそも魔女なんてものは実在するかどうかは怪しいです。魔女は人々の恐怖心が作り上げた偶像なんだという意見を否定するつもりもありませんし、その意見には私も賛同します。しかし、今回はあくまでフィクションの物語について語るわけです。それゆえに、映画「ウィッチ」の世界の中では、魔女は存在するものとして論を進めることは十分可能であると考えています。

では、本作の主人公トマシンはいつから魔女だったのか?という点について考えていきたいと思います。まず私のような捻くれた映画の見方をせず、普通に本作の内容を見た場合の時系列を整理してみましょう。

・一般的と思われる「ウィッチ」時系列

①ウィリアム一家が街を追い出される

②赤子のサムが突然消息を絶つ

③父ウィリアムとケイレブが森に仕掛けた罠を見に行く

④川でトマシンとマーシーら双子がもめ事に

⑤トマシンとケイレブが森に罠を見に行くも、その帰り道に逸れてしまう。

⑥トマシンは無事帰宅。ケイレブは森の魔女に呪いをかけられて死亡。

⑦ウィリアムは子供たちを信じられなくなり、家畜小屋に監禁。

⑧翌朝、ウィリアムは黒山羊によって殺害される。母ケイトはトマシンに殺害される。マーシーら双子も消息を絶つ。

⑨トマシンは黒山羊と契約し、魔女となる。

⑩トマシンは森の中の魔女の世界へと足を踏み入れていく。

かなりざっくりと整理しましたが、要約するとこういうストーリー展開となっているわけです。さてでは、映画「ウィッチ」ドッキリ説を唱える私の捻くれた仮説時系列を紹介しましょう。

・私の考える時系列

①ウィリアム一家が街を追い出される

②トマシンは黒山羊と契約し、魔女となる。

③赤子のサムが突然消息を絶つ

④父ウィリアムとケイレブが森に仕掛けた罠を見に行く

⑤川でトマシンとマーシーら双子がもめ事に

⑥トマシンとケイレブが森に罠を見に行くも、その帰り道に逸れてしまう。

⑦トマシンは無事帰宅。ケイレブは森の魔女に呪いをかけられて死亡。

⑧ウィリアムは子供たちを信じられなくなり、家畜小屋に監禁。

⑨翌朝、ウィリアムは黒山羊によって殺害される。母ケイトはトマシンに殺害される。マーシーら双子も消息を絶つ。

⑩トマシンは森の中の魔女の世界へと足を踏み入れていく。

ほとんど同じといえば同じですが、注目してほしいのは「いつトマシンは魔女になったのか?」という点です。一般的な見方としては、トマシンは最後の最後で魔女になる契約をして、森のなかへと去っていったという見方が出来ると思うんですね。

ただ、私が今回提唱したいのは、トマシンは最初から魔女だったという仮説なんですね。つまりはトマシンは魔女として自分の家族を死に追いやったという捻くれた見方をしているわけです。

この構成こそがいわば我々映画を見るものに対しての「ドッキリ」だったんじゃないでしょうか?あえてトマシンが魔女と契約している前提は伏せておいて、その内容を見せて、最後の最後で実はこんな裏がありまして・・・という種明かしをしているのです。

トマシンの欲望

トマシンは黒山羊と契約する際に、いくつか願い事は何か?という尋問めいたことをされていましたよね。そして、トマシンが頷いたのが「裕福な暮らしをしてみたくはないか?」という問いかけでしたよね。さらに言うなれば「世界を見てみたくはないか?」という問いかけでもありました。トマシンはこの2つの問いかけに唆されるようにして、黒山羊と契約し魔女になったんですね。

とするとですよ。どうも時系列的にこの契約シーンは、一般的な見方で示した位置には来ないんじゃないかと思うわけです。父親のウィリアムが街を追われた時点で、トマシンの裕福な生活をしたという欲求が金輪際叶わないことは確定してしまいましたし、社会制度的にも女性の人生というものは非常に束縛されたものでした。

街を追われるシーンでトマシンは一人だけ、街を去ることをためらっていましたよね。あのシーンにはそんな彼女の欲望が現れていたと思うんです。街を去り、貧乏な生活を強いられ、やがては奉公に出され、結婚し、子供を産んで育てる。当時の女性にとっては当たり前の人生だったのかもしれません。しかし、トマシンはその人生を割り切れなかったのではないでしょうか?

「裕福な暮らしをしたい」「女性として敷かれたレールの上を歩む人生ではなく、広い世界を見てみたい」そんな思いが、彼女に黒山羊との契約を促したのではないかと思うわけです。

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トマシンの表情

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本作で私の仮説を裏付けてくれそうなのが、劇中でのトマシンの表情ですよね。劇中において、ウィリアム一家は恐怖・畏怖の感情を露わにしています。しかし、トマシンだけは明らかに違いますよね。トマシンの表情には恐怖・畏怖の感情は一切表れていませんでした。そして最後の最後、森の魔女の世界に足を踏み入れた時に、にやりと不敵な笑みを浮かべて映画が幕を閉じますよね。

私はラストシーンの不敵な笑みって要はこういうことだと思うんですね。

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夜神月くんのこの不敵な笑み・・・。まさしく映画「ウィッチ」でトマシンが見せたあの表情そのものだと思うんです。つまり、彼女は何も知らない少女を演じながら、巧妙に自らの家族を死に至らしめ、最終的に「自由」を獲得したのです。故にすべては彼女の「計画通り」だったということなのではないでしょうか?こう考えると、彼女が家族に異変が起きながらも恐怖や畏怖の感情を一切表情に出さなかった点も何となく腑に落ちませんか?

他にもスペイン映画の『マジカルガール』の女の子の表情なんかも思い出しましたね。こういう表情の解釈はいろいろと可能性が含まれていて面白いポイントです。

参考:映画マジカルガール』:魔法少女の願いとその罪、罰について

トマシンめちゃくちゃ性悪?

ここまでの仮説を踏まえて物語の出来事を少しばかり解説していこうと思います。

まず、赤子のサムが突然消失した最初の事件ですね。トマシンがサムにいないいないばぁをしていると突然サムの姿が消えてしまいます。このシーンで注目してほしいのは、サムの表情です。最初は楽しそうにしていましたが、3回目のいないいないばぁの時には、何かに気がついたかのような驚きと畏怖の感情を帯びた表情に変わっているのです。

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そして4回目には姿を消しています。私は、サムはこの時点でトマシンの異変に気づいてしまったのではないかと読んでいます。彼女が魔女になってしまっていることにです。

次に、ケイレブの死ですよね。ケイレブはトマシンに性的な魅力を感じつつあったことが、作中でも明確に表現されています。つまり性的な自我の芽生えが、トマシンによって引き起こされていたわけですね。

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そして森に迷い込んだケイレブは、森の魔女の美しい肢体の魅力に引き寄せられてしまい、最終的には呪いをかけられて、死に至ります。つまりケイレブの死に関してもトマシンが一役買っていたということが言えると思います。

次にマーシーら双子の死ですね。これは明確に表現されていません。

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トマシンは魔女に連れ去られたと表現していましたが、黒山羊に殺された可能性もありますし、トマシンが直接手を下した可能性があります。マーシーら双子は、トマシンが魔女であることに気がついていたのではないかと思います。故にあの順番で殺害されてしまいました。

そして、父ウィリアムの死ですよね。ウィリアムは黒山羊の角でめった刺しにされて死んでしまいました。ウィリアムはおそらくトマシンを殺すつもりで向かってきていました。しかし、トマシンは自分が信用してもらえないことを予見しており、黒山羊にウィリアムを殺害してくれるよう要請していたと考えられます。

最後に、飛びかかってきた母ケイトを自ら鎌でめった刺しにして、トマシンは家族全員を葬り去ることに成功したわけです。

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仮説を前提に考えているので、かなりこじつけめいた解説にはなっているかと思います。こういう見方をしたら面白いんじゃないか?ということで書かせていただいておりますので、その点はご了承ください。

トマシンの月経は契約の証明?

古来、女性の月経というものは邪悪であるという見方がなされていたことは事実です。月経血は有害であり、月経中の女性は隔離しなければならないと信じられていたという伝承もあります。またキリスト教の世界観においては、月経中の女性には不思議な力が宿るとされていたんですね。ゆえに月経中の女性は教会への入場が禁止されるなどの規約もあったようです。

つまり、キリスト教世界において月経というものが邪悪で魔術的なニュアンスを秘めていたということが分かります。

映画「ウィッチ」に話を戻しましょう。劇中の序盤頃に、トマシンの月経が始まったことが母親の口から言及されていますよね。月経が始まるということは、女性が性的に成熟したことを意味しています。しかし、この宗教的な世界観に当てはめて考えてみますと、トマシンが冒頭に黒山羊と契約を交わし、魔女になったことで魔力が宿り、月経が始まったのではないか?という見方も可能だと思うんですよ。

魔女狩りと月経とを関連付けた文献は多く存在しているということですので、この見方は十分有効だと思いますし、この見方が成立するなれば、トマシンが冒頭で既に魔女になっていたという仮説も現実味を帯びてきますよね。

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黒山羊とうさぎ

黒山羊がキリスト教的世界観において悪魔であることは劇中でも触れられていましたよね。ですので、本記事では、補足程度にはなりますが、黒山羊についての解説を加えておきたいと思います。

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©2015 Witch Movie LLC All Rights Reserved / from ”Witch” movie trailer 

黒山羊はキリスト教世界において、バフォメットと呼ばれる悪魔の化身であるとされていました。そして、魔女の崇拝の対象であったとされています。つまり、黒山羊と契約し、バフォメットを崇拝することを誓約することが魔女になることを意味しているのです。

本作における黒山羊は、某魔法少女アニメで「僕と契約して魔法少女になってよ!」とか言っちゃう例の白い地球外生命体と同じような立ち位置なんですかね(笑)

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©Magica Quartet / Aniplex 「魔法少女まどか☆マギカ」より引用

そして本作でもう1つ印象的だった動物がうさぎですよね。ウィリアムが森で出会ったうさぎ。ケイレブが追いかけさせ、森の魔女の下へと誘導したうさぎ。夜の羊小屋に現れたうさぎ。

キリスト教世界において、うさぎという動物は穢れたものであり、食べてはいけない動物とされていたんですね。しかし、イースター、つまりイエスの復活祭が行われるようになると、うさぎはイースターの象徴的存在になったんです。うさぎはイエス復活の象徴なのです。

この点を念頭に置いて考えると、うさぎはイエスの、神の使いだったのではないでしょうか?つまりウィリアム一家を魔女の手から救おうとした存在ではないか?ということです。うさぎは「魔女の森」に足を踏み入れるなという警告として、ウィリアムとケイレブの前に現れました。しかし、ウィリアムはあろうことか、うさぎを撃って食料にしようと画策します。

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©2015 Witch Movie LLC All Rights Reserved / from ”Witch” movie trailer 

次に夜羊小屋を訪れたトマシンの前に現れます。これは今ならまだ魔女の道から引き返せるという救いの手を差し伸べようとやって来た可能性が考えられます。最後にトマシンとケイレブの前に現れます。

これもケイレブに対するこれ以上森の奥に入ってはならないという警告だったのかもしれません。しかしあろうことかケイレブはうさぎを追ってしまい、魔女の住処に迷い込んでしまいます。

本作において黒山羊が悪魔バフォメットの象徴であったならば、うさぎはイエスの使いだったのかもしれません。しかし、その神の救いを無下にし、その警告を無視したウィリアムやケイレブの行動が彼らの運命を決定づけてしまったのかもしれません。

また、銀の杯をウィリアムが売り払ってしまったという描写がありましたが、キリスト教世界において銀は「聖なる金属」とされていました。これを売り払ってしまったことも、ウィリアム一家が神に見放されることとなった一因なのかもしれません。

おわりに

ここまで長々と読んでくださりありがとうございました。

この「ウィッチ」という作品は多様な解釈をする事ができます。私が今回の記事で示したのは、ほんの一例にすぎません。しかし、こういう見方をしてみるというのも一つ面白いのではないか?と思い、書かせていただきました。

皆さまもいろいろと考察してみてください。良かったら、皆様の考察をコメント欄にてお聞かせください。コメントを頂けると、私としても非常に嬉しいです。

最後になりますが、契約のシーンでトマシンの身体に母親のものと思われる血がついていたじゃないか?と言われてしまうといろいろこの説は詰んでます(笑)

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©2015 Witch Movie LLC All Rights Reserved / from ”Witch” movie trailer 

ただ月経血が不浄であり、呪術的なニュアンスを帯びていたということで、魔女になる儀式において「月経血」を身体に付着させて・・・なんてことも想像できますよね。

無理矢理感が半端じゃないですが・・・(笑)。

とりあえず言っておきたいのは、本記事の内容は私が自分の仮説に基づいて、こういう見方をしてみるのもありなんじゃないかな?という意見提起をしたに過ぎないということです。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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