【ネタバレ】「20センチュリーウーマン」解説・考察:一見は百聞に如かずの時代に問う「豊かさ」とは?

アイキャッチ画像:©2016 MODERN PEOPLE, LLC.  from “20th Century Women” official trailer

はじめに

みなさまこんにちは。当ブログ管理人のナガです。

個人的な事情で忙しい日々が5月ごろから続いており、ブログの更新が疎かになっておりました。いつも読んでくださっていた方本当にすみませんでした。ようやくひと段落して、映画館の方にも足を運べる余裕ができてきましたので、ブログの更新頻度も少しづつ戻していく予定です。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

今回考察していく映画は、「20センチュリーウーマン」という作品になります。公開からかなり時期が空きましたが、ようやく地元のミニシアターの方で鑑賞できましたので、今回は記事を書いております。

良かったら最後までお付き合いください。

私のブログは基本的に、作品を鑑賞した方向けですので、あらすじの紹介やスタッフ・キャストの紹介といったどこででも見られる情報は省略して、いきなり本論から入っていくスタイルでいくつもりです。その点はご了承ください。

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「21センチュリー」ってどんな時代?

今日の我々が生きる「21センチュリー」ってどんな時代だと皆さんはお考えでしょうか?わたくしの見解を端的に申し上げますと、「豊かな時代」だと思うんですね。

確かに世界を見回すとまだまだ貧しい国々や地域がありますし、貧富の差は拡大する一方で、一概に束ねることはできないのですが、自分が生きている日本という環境に限定するなれば、「21センチュリー」は「豊かな時代」だと考えています。ではどう豊かになったかということなのですが、私は2つの豊かさを挙げたいと思います。

まずは、物質的な豊かさですよね。大量生産大量廃棄という社会構造が我々の生活を過剰な量の物で溢れさせています。また技術革新が我々の生活をどんどんと便利なものに変えていっています。食料に関しても、飽食の時代と言われ、食べるに欠くことはほとんど無くなりました。このように現代の我々の生活は物質的な豊かさに満たされていると言えます。

そして2つ目が情報の豊かさです。インターネットが登場し、そしてスマートフォンが登場したことで、我々はいつでも、どこでも、だれでもインターネットにアクセスし、情報を手に入れられるようになりました。自分が実際に見なくとも、動画サイトで間接的に見ることができたり、世界中のニュースを簡単に見ることができたりと、個人が手に入れうる情報はどんどんと拡大しています。

このように、「21センチュリー」は物質と情報に溢れた非常に豊かな時代なのです。しかし、「豊かな時代」において、我々はある大きな「豊かさ」を失いました。

それは、「体験や経験の豊かさ」ではないでしょうか??

一見は百聞に如かず??

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©2016 MODERN PEOPLE, LLC.  from “20th Century Women” official trailer

「21センチュリー」は物質的・情報的な豊かさと引き換えに、体験や経験の「豊かさ」を失った時代であるということを述べましたが、その点を掘り下げていきたいと思います。

ことわざに「百聞は一見に如かず」というものがあります。これは皆さんご存知の通り、百回聞くよりも、たった一度でも自分の目で確かめた方が確かであるという意味です。しかし、このことわざは「21センチュリー」においてはもはや通用しなくなっているように思うのです。

現代は情報社会であり、情報が最も価値を持つ時代です。つまり、1回の経験よりも100の情報の方が間違いなく価値がある時代に突入しているのです。それに加えて、経験や体験というものが情報化しつつある時代でもあります。バーチャルリアリティの発達、テレビや動画メディアの台頭、ゲームの興隆が経験や体験を情報化し、それを人々に伝達することで、好奇心を疑似的に充足させています。我々は、そういったメディアを通して得た情報でもって、体験や経験をしたと錯覚しているにすぎません。そこには、もはや「豊かさ」など存在しません。

目に見える形での豊かさを追求し、「豊かな時代」を作り上げた我々ですが、その過程で心の「豊かさ」をどこかに置き忘れてきてしまったのです。そして私もそんな目先の豊かさに麻痺していた人間の一人なのだと思います。

だからこそ、この「20センチュリーウーマン」という作品を見た時に、ハッとさせられました。確かに今我々が獲得しているような目に見える豊かさも便利さもそこにはありません。しかし、そこには確かに我々が置き忘れてきた心の「豊かさ」が宿っていました。

経験の実感と手触り

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©2016 MODERN PEOPLE, LLC.  from “20th Century Women” official trailer

「21センチュリー」を生きる我々は、経験や体験をする機会が減少し、代わりにテレビやスマートフォンなどのメディアを通して情報としてそれを疑似的に享受しています。故に心の「豊かさ」が失われているのです。こう述べてきましたが、例を挙げてみましょう。音楽バンドのライブがあるとします。そこのライブ会場に足を運び実際にその熱狂に身を委ねる。これはまさしく生きた経験であり、体験です。しかし、それをライブDVDという媒体に変換してしまえば、その中にあるのは、ただの情報にすぎません。そこに経験の実感や手触りは内包されないのです。

しかし、本作「20センチュリーウーマン」で描かれた時代は、自分で直接体験する以外に、経験を獲得する方法が無かった時代です。何事も自分で経験し、他人との関わりの中で学んでいく、そこには経験の実感や手触りが確かに息づいています。その実感や手触りの積み重ねが人を成長させていく、その過程を生き生きと描き出したのが本作「20センチュリーウーマン」なのではないでしょうか?

だからこそ、疑似的にその実感や手触りを享受してきた我々は、この映画を見た時にハッとさせられるのではないでしょうか??

本作に出演している女優のグレタ・カーヴィグが監督を務めている映画『レディバード』もまたティーンエイジャーの経験のイニエーションを描いた作品です。併せてチェックしてみてください。

参考:【ネタバレ】『レディバード』は誰もが共感できる最高の青春映画!

新しきを知るだけでは、展望は開けぬ

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©2016 MODERN PEOPLE, LLC.  from “20th Century Women” official trailer

「21センチュリー」では、常に新しい技術が、新しい情報が求められています。常に新しいもの志向な我々が後ろを振り返ることはありません。そして、時代はついにバーチャルリアリティーへと突入しようとしています。もはや、自宅にいながらあらゆる物事が疑似体験できる時代が到来するのかもしれません。

しかし、少し立ち止まって、振り返ってみませんか?我々は何か大切なものを置き去りにしてきてはいませんか?我々は再び、「20センチュリー」の頃の心の「豊かさ」を取り戻していかなければならないのです。

古きを温めねば、いくら新しきを知ったところで、これから展望は開けてこないのだと思います。

本作「20センチュリーウーマン」はそんな、「21センチュリー」を生きる我々への 警鐘をも内包した作品なのかもしれません。

マイクミルズ監督の優しさ

マイクミルズ監督の映画と言えば、私は『人生はビギナーズ』という作品が大好きなんですよ。こちらに関しては当ブログで個別記事を書いておりますので、良かったらご覧ください。

参考:『人生はビギナーズ』に満ちた孤独を肯定してくれる優しさ

なぜ私がこの作品が大好きなのかと言いますと、それは孤独であるということを否定しないある種の優しさの様なものが感じられたからなんですよ。孤独を感じているうちは人は誰かとのつながりを求めていて、本当に怖いのはそれに対して無感覚になってしまうことなんじゃないかとマイクミルズ監督は『人生はビギナーズ』という作品を通して我々に訴えかけているような気がしました。

『20センチュリーウーマン』という作品もまたそんな「優しさ」に満ちた映画で、人生には様々な問題があり、上手くいかないことだらけですが、それが当然で、それでも生きていればいつか人は変わっていくし、成長していくんだよという少し距離を置いた視点から人物を切り取っているようでありながら温かみのある映画になっていました。

特に人間関係というものは非常に難しく、上手くいかないことがしばしばです。大切なのは、相手の気持ちに寄り添うことです。自分の思う相手の望みを叶えるのではなく、相手が純粋に望んでいることを知ろうとすること。

『20センチュリーウーマン』にて描かれた複雑な人間関係と、その縺れ、そして雪解けに託されたマイクミルズ監督の優しいメッセージに思わず感極まってしまいました。

おわりに

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©2016 MODERN PEOPLE, LLC.  from “20th Century Women” official trailer

次々に新しいフレーバーで発売されるメンソールたばこ。その陰でひっそりと販売され続けているクラシカルなメンソールたばこ、セーラム。新しいもの志向の現代人には、顧みられることはないのかもしれません。しかし、その懐かしくさりげない風味に一度立ち返ってみるのも良いかもしれません。

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「昔は良かった」だなんて懐古厨的な発言をするつもりはありません。昔だって、100%肯定できるほど良い時代だったはずがありません。しかし、常に新しいものを追求する我々は、時に後ろを振り返ってみる必要があります。

我々は、「20センチュリー」に置き忘れてきた、経験と体験の実感と手触りを獲得し、再び心の「豊かさ」を取り戻さねばなりません。

温故知新。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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