【ネタバレ】映画『オーバードライブ』感想:悪くはないがテレビでラリー特集見てる感が否めない作品

〇はじめに

 みなさんこんにちは。ナガと申します。

 今回はですね映画『オーバードライブ』についてお話してみようと思います。

 予告編の真剣佑の「怖いと思った瞬間、負けなんだよ!!」ってとこ劇場で数え切れないくらい見ましたね。もはや見すぎて洗脳されて、これは劇場に足を運ばないとと錯覚してしまう事態に陥っておりました。ただ運よく試写会で見る機会がありました。

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 本記事ではできるだけ後半の展開のネタバレになるような内容を避けつつ書いていきます。最後にすこしだけネタバレに触れるかもしれません。その際は改めて表記します。

〇目次

〇あらすじ・概要

東出昌大と新田真剣佑が公道自動車レース「ラリー」に生きる兄弟を演じるヒューマンエンタテインメント。真面目で確かな腕を持つメカニックの兄・檜山篤洋と、世界ラリー選手権へのステップアップを目指す天才ドライバーの弟・檜山直純。篤洋の助言を無視して、無謀で勝気なレースを展開する直純はラウンドごとに篤洋と衝突を繰り返し、いつしかチームにも険悪なムードが漂い始めていた。ある日、直純の新しいマネジメント担当として、ラリーの知識がまったくない場違いな遠藤ひかるがやってくる。そんな彼女を待ち受けていたのは、檜山兄弟の確執に秘められた過去、そしてチーム全員を巻き込む試練だった。東出が兄の篤洋、新田が弟の直純、森川葵がひかるをそれぞれ演じる。監督は「海猿」「暗殺教室」など数々のヒット作を手がけた羽住英一郎。(映画comより引用)

〇予告編

〇感想:悪くはないがテレビでラリー特集見てる感が否めない作品

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 個人的には予告編を見ていて、そんなに期待値を上げて見に行った作品ではなかったんですが、意外にも良く出来た映画で割と満足してます。

 邦画特有のオーバーアクトな演技合戦やら人間ドラマやらを全面に押し出してくるのかと思いきや、本編においてラリー競技でカーレースをしているシーンの割合も結構高くて迫力のカーチェイスを堪能できました。これだけレースの映像を見られるのであれば、音響面のことや大画面で見られることを鑑みて、十分映画館で見る価値がある作品だと思いました。

 予告編の段階から懸念されるキャスト陣のオーバーアクトな感じですが、正直全編にわたってそうなので、途中くらいから慣れましたね。中途半端に過剰な演技が挟まっているくらいであれば、いっそのことこの『オーバードライブ』くらい終始キャストが過剰な演技を見せている方がもはや清々しいかもしれません。

 他にもメインストーリーとなる東出昌大演じる篤洋と真剣佑演じる直純の兄弟の物語としてはかなり見応えがあって、きちんと細かいセリフの中に伏線を散りばめてあるので、後半にアッと言わされるような展開もあったりしました。ですので、かなり楽しめたというのが正直な感想です。

 ただやはり弱点も多く抱えている映画だとは思いました。特に思ったのが映画の構成自体の欠陥です。本作の構造って終始人間ドラマとラリーの大会が交互に展開するんですね。これが本当にテレビ番組っぽい安上がりな印象を与えるんです。「奇跡の優勝~その裏にあった兄弟の物語~」とかいう特集でテレビドキュメンタリーとかになってそうな感じです。少なくとも映画なんですから決まったリズムで展開するのではなくて、たまにはそこを崩して映画らしい構成にしてほしかったですね。

 あとはやっぱりセリフや演技面ですかね。鼻についたのは東出昌大と森川葵ですかね。

 東出昌大さんって個人的に凄く演技にむらがある俳優なんですよね。素晴らしい演技を見せる時もあれば、とことん酷い時もあります。彼の演技の中でも特に素晴らしかったのが『聖の青春』で彼が魅せた羽生先生です。これはもうとんでもない演技だと思いました。羽生善治の癖や目線、身のこなしなど全てを研究し、役と誠実に向き合ったことが映像から伝わってきました。

聖の青春
松山ケンイチ
2017-03-17



 
 森川葵さんも『先生!』の時は結構良い演技だなあと思ったんですよ。何というか意図的にステレオタイプ的な恋愛脳女子高生みたいなのを演出していて、それが主演の広瀬すずの演技を際立たせていたんです。非常に素晴らしい助演だったと思います。

 ただ2人とも今作『オーバードライブ』に関しては完全に「これはダメだ…。」状態だったので残念ですね。2人とも「セリフを言ってます!!」「演技してます!!」感が前面に出ていて役に入りこめていない印象を受けました。真剣佑がかなり良い演技を見せていただけに2人の物足りなさが一層際立った感じはあります。

 他にも脚本に関しては言いたいことがありますので、それに関しては次の章で詳しくお話していきます。




〇感想:脚本はもっと削ぎ落とすべきだった

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 本作『オーバードライブ』の脚本に関してですが、まず先ほども書きましたように檜山兄弟の物語が主軸にあります。過去と現在を繋ぐ物語なのですが、これに関しては非常にコンパクトにまとまっていて、かつ伏線の置き方や展開のさせ方も巧くて非常に面白かったです。

 ただ問題はそれ以外のパートです。特に森川葵演じる遠藤ひかるという直純のマネージャーの話が一部同時進行的に描かれるんですが、これ必要でしたかね?彼女の役の意義は分かるんですよ。彼女は当初ラリーのことに関して何の知識も無く、何の情熱も無いキャラクターです。しかし檜山兄弟と関わるうちにその情熱に絆されていきます。つまり彼女の役どころというのは、観客と同じ視点に立つ存在なんですよね。こういうキャラクターって実は映画において重要だったりします。

 しかしそれにしては中盤に入ると遠藤ひかるはほとんど映画に出て来ませんし、彼女の物語が凄く適当に描かれているので、正直全然意味を成していないんです。

 他にも同じ回想映像何回も流しすぎとかも指摘したいですが、とにかく104分しかない映画なのに無駄な要素を描きすぎなんですよね。

 正直に言わせていただきますと、森川葵演じる遠藤ひかるの役は必要なかったと思います。あの程度の描写しかしないなら最初から必要ないキャラクターだと思います。

 その代わりに主人公のライバルに当たる北村匠海演じる新海の描写をもっと手厚くするべきだったと思います。というのも本作『オーバードライブ』の最大の弱点ってライバルキャラクターの魅力が欠如していることなんですよ。映画において主人公と対峙するキャラクターを魅力的に描くというのはセオリーですよ。

 クリストファーノーラン監督の『ダークナイト』がアメコミヒーロー映画の中で屈指の高評価を獲得しているのはヒースレジャー演じるジョーカーというヴィランがあまりにも魅力的すぎることも理由の1つです。

ダークナイト (字幕版)
クリスチャン・ベール
2013-11-26


 つまり森川葵演じる遠藤ひかるの描写に104分しかない貴重な尺を割くくらいであれば、主人公のライバルである新海の描写をもっと増やしてほしかったです。でなければあの映画では、彼がどれほどの実力者なのかすら曖昧ですし、彼のパーソナルな部分がほとんど見えて来ません。これでは主人公が何と戦っているのかという構図すら輪郭がぼんやりとしてしまいます。

 せっかく兄弟の物語は良く出来ていたので、それに対峙するライバルの存在感がもっと出せていればより良い映画になったと思いました。この辺りの脚本が少し甘かったですね。

〇感想:何かを掴み取れるのは自分の手だけ

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 このパートに関しては若干の展開に関わるネタバレを含みます。

 本作の最重要モチーフは「手」だったと思います。羽住監督は東出昌大が拳を握りしめるシーンや真剣佑がハンドルを握りしめるシーンで敢えて効果音を足して強調していました。また東出昌大演じる篤洋が遠藤ひかるに言った「この手さえあれば何だってできる」という言葉は本作の主題でもあると思いました。

 自分の手って何かをつかみ取ることも出来れば壊すこともできるし、逆に何もしないという選択も出来てしまいます。

 本作で「壊す」者だったのはおそらく真剣佑演じる直純でした。

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 彼はひたすらに過去に愛した女性のことを思っています。しかしその女性が自分のものにならず、あろうことか兄である篤洋に思いを寄せていると分かると彼はその関係を壊そうとしてしまいます。海岸の割れたミラー。それは彼が彼自身の手で壊したものの表象です。だからこそ彼は過去の「壊し」た罪を背負い続けていました。

 敢えて言うなれば東出昌大演じる篤洋もまた自分の手で作り上げた試作段階のパーツを車体に搭載し、1人のドライバーの選手生命を絶ちました。彼もまた「壊し」た罪を背負っていたのです。

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 また篤洋はそれと同時にその手で何もできなかったという罪をも背負っています。それは過去に自分を愛してくれた幼馴染に対してです。彼は自分の弟が告白するという行動を起こしたにもかかわらず、何もせずにただ傍観し、その後悔を引きずる羽目になりました。

 過去にその手で何かを「壊し」、その手で何かを「掴め」なかった彼らだからこそ、ラリーで大切なものを再び手繰り寄せ、その手に「掴み取ろ」うとする姿に涙腺が刺激されます。

 絶対に諦めない、今度こそは絶対に掴み取るんだという強い意志を持った男たちが命を削り、紡ぎ出す最高の走り。それを掴み取ったのもまた「手」でした。

 時に壊し、時にすり抜け、そして最後には掴み取る。『オーバードライブ』が描いたのはまさしく強い信念の物語です。絶対に諦めないこと、前を向き続けること、そんな普遍的なメッセージ性をドストレートに伝えてくる本作は、あまりにも純粋が故に見る者の心に突き刺さります。

 劇場を出るときにぜひぜひご自分の手を握りしめてみてください。何かできそうじゃないですか?(笑)




〇解説:そもそもラリーのルールが分かりにくい

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(C)2018「OVER DRIVE」製作委員会 映画『オーバードライブ』予告編より引用

 本作最大の弱点の1つは言うまでもなくラリーという競技そのものの分かりにくさです。ラリーってタイムトライアル制の競技なので、いわば自分との戦いみたいなところがあるんですね。そのためカーレースのような相手と抜きつ抜かれつの一進一退の攻防を繰り広げるような視覚的に映える映像がどうしても撮れないんです。

 それでいて本作は観客にラリーの何たるかを教えようとすることすら放棄しています。その結果があの実況中継方式ですよ。あんな演出映画ではやったら駄目ですよ。あれをやっている時点で、自分は映画を撮るのが下手くそです、説明できないので、実況でのナレーションに頼らせてくださいと自供しているようなものです。多少実況を混ぜて、演出に使うのは効果的だとは思いますが、それに頼りすぎると駄目だと思います。

 まあカーレースの映画と言うことで単純に比較はできないのですがその辺りの実況の使い方も含めて上手いのがロン・ハワード監督の『ラッシュ/プライドと友情』ですね。

ラッシュ/プライドと友情(字幕版)
ダニエル・ブリュール
2014-08-04


 この映画もレースのシーンで実況を用いてはいるんですが、使い方が本作『オーバードライブ』と比べてみても雲泥の差です。

 というか観客に森川葵演じる遠藤ひかる視点でラリーのルールや仕組みをさりげなく伝えることはできなかったんですかね。本当に実況に頼りきりで、視覚的なカタルシスが極限まで乏しかったです。ラストも全然盛り上がらないですし。

 あまりにも不可解なのでラリーのルールについて簡単に調べました。『オーバードライブ』を見に行かれる方良かったら参考にしてみてください。

 まずラリー協会のページにラリーの競技の概要が書いてありましたので引用します。

 ラリー競技はサーキットレースと違い、一般の公道を使って行なわれるモータースポーツだ。ちょうどマラソン競技が一般道路を封鎖して開催されるのと同じように、ラリーはあらかじめ使用許可をとった山の中の林道などを舞台に行なわれる。競技といってもラリーは一斉に走って競争するわけではなく、いくつかの競技区間(スペシャルステージ=SS)で1台ずつタイムアタックし、その積算タイムで勝敗を争う。SSの総走行距離はラリーごとに異なり、全日本ラリー選手権では60㎞~250㎞だが、WRC世界ラリー選手権では300km以上にもおよぶ。

https://toyotagazooracing.com/archive/gr/motorsports/jrca2012/rally.htmlより引用

 この辺りに関しては劇中でもある程度補足説明がありました。あくまでもカーレーススタイルではなくタイムアタック制であるということは念頭に置いてみないと全然意味が分からないことになります。

 そして他にもラリーのコースは主にスペシャルステージとリエゾンという2つに分けられるそうです。前者は『オーバードライブ』で真剣佑が何度も疾走していたような限界までスピードが出せるレーンです。一方で後者は普通の公道でここでは一般的な道路法に従って運転します。

 簡単な概要だけ書いてみましたが、詳しく知りたいという方は調べてみてください。やはりルールをある程度は把握して見た方が面白いと思います。

〇おわりに

 あまり期待値を上げずに見に行ったのも良かったのかも知れませんが、個人的にはかなり楽しめた映画でした。やはり迫力のラリーシーンを良い音響と大画面で見られるのは非常に心地いいです。

 ただやっぱり大作邦画特有の欠点も多いですし、単純に脚本に余計な部分も多いです。ラリー描写や劇中でのラリーの概要説明に関しても不満はあります。

 ただ過去の後悔を払拭して何とか前に進もうともがく兄弟の物語が非常に心に刺さりましたし、「諦めるな!」「己の手でつかみ取れ!」というシンプルなメッセージに震えました。

 私は劇場で見る価値が十分にある映画だと思いますよ。

 今回も読んでくださった方ありがとうございました。 




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