2017年の個人的ベスト映画候補について語りたい。

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

前回の記事で、2017年の個人的ワースト映画候補を紹介させていただきました。

ワースト候補を紹介したら、ベスト候補も紹介しないと落ち着かないですよね。

ということで今回は、私が個人的に選出した2017年ベスト映画候補を洋画・邦画からそれぞれ2作品ずつ紹介したいと思います。

この記事を読む前に、良かったら個人的ワースト映画候補に触れたこちらの記事もご覧ください。私の映画評価観について詳しく書かせていただいてます。ベストを選ぶ基準としても、この評価観が大きく関わっておりますので、あらかじめ読んでおいていただけると、より今回の記事も楽しんでいただけるのではないかと考えています。

参考:2017年の個人的ワースト映画候補について語りたい。

また、今回の記事を書くにあたって、まだ作品を見ていない方のことを考慮してネタバレをしないことを原則としておきます。

1作品目:「彼らが本気で編むときは。」

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©2017「彼らが本気で編むときは。」製作委員会 映画「彼らが本気で編むときは。」予告編より引用

あらすじ・概要

 「かもめ食堂」の荻上直子監督が5年ぶりにメガホンをとり、トランスジェンダーのリンコと育児放棄された少女トモ、リンコの恋人でトモの叔父のマキオが織り成す奇妙な共同生活を描いた人間ドラマ。生田斗真がトランスジェンダーという難しい役どころに挑み、桐谷健太がその恋人役を演じる。11歳の女の子トモは、母親のヒロミと2人暮らし。ところがある日、ヒロミが育児放棄して家を出てしまう。ひとりぼっちになったトモが叔父マキオの家を訪ねると、マキオは美しい恋人リンコと暮らしていた。元男性であるリンコは、老人ホームで介護士として働いている。母親よりも自分に愛情を注いでくれるリンコに、戸惑いを隠しきれないトモだったが……。(映画com.より引用)

予告編

評価

私は、この作品は近年の邦画でもトップクラスの出来だと思うんですよね。「かもめ食堂」や「めがね」といったスローライフ系の映画を得意とする荻上監督が、初めてこんな社会派な映画に取り組んだのは、ある出会いがあったからだと明かしています。それは、新聞に載っていたゲイカップルとその女性側の両親に関する記事だったと言います。

この記事では、身体は男の子、心は女の子として生まれた彼女とそれに向き合う母のエピソードが綴られていたそうです。中学に入り、おっぱいが欲しいという息子に母が毛糸の「偽乳」を編んであげたというエピソードから、この映画は始まったと言います。

内容としましても、本当に素晴らしいものになっています。まずは、ワースト映画候補の記事でも散々触れた「映像と物語の独立」という観点ですが、完璧だったと思います。そもそもこの映画が荻上監督の撮りたい「絵」というところから始まっているのが、良かったのだと思います。一つ一つの画作り、映像が驚くほどに素晴らしいんですよね。それでいて見終わった後には、それがしっかり物語になっていたと気づかされます。また、過剰な演出もなくキャスト陣の演技や「映像」に多くを委ねている点は高評価に値します。

また、脚本が本当に洗練されています。無駄がない脚本というのは、まさにこの作品のことだと思います。前半から、どんどんと物語が展開していきますし、伏線のようなものもたくさん仕込まれています。しかし、映画が終わるころにはしっかりと全てが回収されて、綺麗に締めくくられています。

この作品の素晴らしさに関しては、当ブログでも個別記事で散々語りつくしているので、作品をご覧になった方は、読んでいってくださると嬉しいです。

参考:【ネタバレ・解説】「彼らが本気で編むときは。」愛はコンビニおにぎりにも宿るのか?

作品を未見の方は、ぜひぜひ一度ご覧になってみてください。

2作品目:「沈黙/サイレンス」

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©2016 FM Films, LLC. 映画「沈黙サイレンス」予告編より引用

あらすじ・概要

 遠藤周作の小説「沈黙」を、「ディパーテッド」「タクシードライバー」の巨匠マーティン・スコセッシが映画化したヒューマンドラマ。キリシタンの弾圧が行われていた江戸初期の日本に渡ってきたポルトガル人宣教師の目を通し、人間にとって大切なものか、人間の弱さとは何かを描き出した。17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、日本を目指す若き宣教師のロドリゴとガルペ。2人は旅の途上のマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、やがて長崎へとたどり着き、厳しい弾圧を受けながら自らの信仰心と向き合っていく。スコセッシが1988年に原作を読んで以来、28年をかけて映画化にこぎつけた念願の企画で、主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほか「シンドラーのリスト」のリーアム・ニーソン、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」のアダム・ドライバーらが共演。キチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシといった日本人キャストが出演する。(映画com.より引用)

予告編

評価

遠藤周作とマーティンスコセッシが出会ってから、数年越しにようやく実現に至ったこの「沈黙/サイレンス」という映画は我々の想像の遥か上をいく「沈黙」の映画版でした。

もちろん遠藤周作の「沈黙」の小説を何度も読んでおりますので、「物語」自体は完全に頭に入っている状態で見ることになるわけです。しかし、マーティンスコセッシ監督が送り出した本作の映像は開始数分で、我々に原作の存在を忘れさせてくれます。さらに映画を見終わった時に感じるのは、この映画はただの「沈黙」の映画版ではないということです。本作は遠藤周作の「沈黙」に大きな影響を受けたマーティンスコセッシが自身の手で生み出した全く新しい「沈黙」だったんですね。

3時間に迫ろうかという長尺にもかかわらず、我々をスクリーンにくぎ付けにするマーティンスコセッシの手腕を改めて確認させられる大傑作でした。

また、劇伴音楽や音響の面も非常に素晴らしいです。演出のために後付けされた音であるなんてことは微塵も感じさせない、その映像に馴染んだ音や劇伴音楽、そして音響は惚れ惚れするほどです。

これは日本人として鑑賞しておく価値のある一作だと思います。

この作品も当ブログでは1万字超の個別記事を書いておりますので、良かったらご覧ください。

参考:【ネタバレ・考察】映画「沈黙/サイレンス」:10の視点から語る12000字レビュー

作品を未見の方は、ぜひぜひ一度ご覧になってみてください。

3作品目:「PARKS パークス」

2017-09-13-23-01-09
©2017本田プロモーションBAUS 映画「PARKS パークス」予告編より引用

あらすじ・概要

 東京・吉祥寺の井の頭恩賜公園の開園100周年を記念して製作され、橋本愛、永野芽郁、染谷将太が共演した青春音楽ドラマ。同公園と吉祥寺の街を舞台に、50年前に作られた曲に込められた恋人たちの記憶が、現代に生きる3人の若者たちの夢につながっていく様子を描く。井の頭公園の脇にあるアパートでひとり暮らしを送る女子大生・純の部屋に、見知らぬ女子高生ハルが突然訪ねてくる。ハルは亡き父親について小説を書くため、父親の元恋人である佐和子という女性を探しているのだという。ハルを手伝うことにした純は、佐和子の孫トキオから彼女が既に亡くなったことを知らされる。数日後、トキオが祖母の遺品の中からオープンリールテープを発見し、再生してみるとハルの父親たちによるラブソングが収録されていた。感動した純たちは、テープが劣化して途中までしか聞くことができないその曲の続きを自分たちで作ろうとするが……。「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」の瀬田なつき監督がメガホンをとり、ミュージシャンのトクマルシューゴが音楽監修を手掛けた。
映画com.より引用)

予告編

評価

個人的に今年一番のダークホース映画だったと思っています。この作品は、私の考える「映像と物語の理想的な関係性」を体現した作品なんですよね。

井の頭公園を舞台として撮影された本作の映像は、徹底的に「撮りたい映像」を撮りました、という映像への愛に満ち溢れています。そして、そこで行われている登場人物のやり取りもすごくありふれたものなんですよね。

しかし、本作を見終えた時、我々は一体何を見ていたんだろうかとハッとさせられます。これは音楽映画だったのか、ラブストーリーだったのか、青春映画だったのかはたまたSFだったのか・・・。

映画「PARKS パークス」に散りばめられた映像群は我々に無限の可能性を与えてくれます。つまり我々がこの映像にあらゆる物語性を付与できる可能性が開かれているのです。それでいて、そこには監督自身の「物語」もきちんと見えています。

私は、この作品こそ、今年最も映画らしい映画だったのではないかと考えています。

こんな素晴らしい作品が生まれたのですから、今年の邦画は大豊作といっていいと思いますよ。

本作に関しても、かなり奇抜な考察をした個別記事が存在していますので、良かったらご覧ください。

参考:【ネタバレ】映画「PARKS(パークス)」感想・解説:SFとスピリチュアル

まだご覧になっていない方、ぜひぜひ一度ご覧になってみてください。

4作品目:「パターソン」

2017-09-13-23-02-35
©2016 Inkjet Inc.  映画「パターソン」予告編より引用

あらすじ・概要

 ジム・ジャームッシュが「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」以来4年ぶりに手がけた長編劇映画で、「スター・ウォーズ」シリーズのアダム・ドライバー扮するバス運転手パターソンの何気ない日常を切り取った人間ドラマ。ニュージャージー州パターソン市で暮らすバス運転手のパターソン。朝起きると妻ローラにキスをしてからバスを走らせ、帰宅後には愛犬マービンと散歩へ行ってバーで1杯だけビールを飲む。単調な毎日に見えるが、詩人でもある彼の目にはありふれた日常のすべてが美しく見え、周囲の人々との交流はかけがえのない時間だ。そんな彼が過ごす7日間を、ジャームッシュ監督ならではの絶妙な間と飄々とした語り口で描く。「ミステリー・トレイン」でもジャームッシュ監督と組んだ永瀬正敏が、作品のラストでパターソンと出会う日本人詩人役を演じた。
映画com.より引用)

予告編

評価

今記事で2回目ですが、言わせてください。私の理想の映画です。こういう映画を見たいんです。本作はひたすらパターソンという男の日常を切り取ります。ただ何気ない日常が過ぎていくだけなのですが、毎日がどこか新しいのです。

作為的な演出なんてものは一切感じられません。ただ、我々はパターソンという男の7日間を垣間見ているだけなのです。しかし、ベット、部屋、街、バス、バー、一見同じようで少しづつ違う風景がまるで詩を紡ぐかのようにハーモニーを奏でています。

さらに、我々は本作を見終えた時気づかされるのです。この「パターソン」という作品が紛れもなく映画であったということにです。1人の男の日常を切り取った映像でさえ、物語になりうるのだということ。これはまさに映画というものの原初的魅力を体現しています。加えて、この作品は映像のどこに着目するかによって、あらゆる物語を生み出す可能性を孕んでいます。見るたびにいつも同じ解釈だなんてことはあり得ないのです。

本作は、究極に「開かれた映画」なんですよね。つまりあらゆる可能性を「映像」が我々に見せてくれるのです。

私は、こういう映画を見るともう弱いんですよ。最高評価をつけざるを得なくなってしまうのです。

映画「パターソン」についても当ブログで個別記事を書いておりますので、良かったらご覧ください。

参考:【感想・解説】映画「パターソン」:進化を続けるジム・ジャームッシュ作品の1つの到達点

まだご覧になっていない方は、ぜひ一度ご覧になってみてください。

おわりに

夏休みの怒涛の新作公開ラッシュも終わり、季節は秋に移ろうとしています。皆さんは今年、どんな映画に出会いましたか?

また、年末には皆さまの2017年個人的映画ベストがTwitterやブログで見られると思うと、今からワクワクするばかりです。

私も、年末には改めて書かせていただく予定ですが、今回はワースト映画候補記事とセットで、ベスト映画候補記事も書かせていただいた次第です。

今回、私が挙げた4作品に興味を持っていただけましたら、ぜひ作品をご覧ください。

また、コメント欄で、皆さんの今年のベスト映画候補や今年の新作でお勧めの作品等を教えていただけると嬉しく思います。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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