【ネタバレあり】『さよなら僕のマンハッタン』感想・解説:絶対にもう1度見たくなる映画。

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね本日から公開の映画「さよなら僕のマンハッタン」についてお話していこうと思います。

いつもならここで作品のネタバレに関する注意書きをするのですが、今回はネタバレしません。

というのもこの作品を見終わって、ブログを書こうと思い立った時に、絶対にこの映画のネタバレをしたくないと思ってしまいました。

ですので、今回はこの映画を見るか見まいか迷っているそこのあなたの背中をそっと押せるようなネタバレ無の感想や解説をお届けできればと思います。

公開からしばらく経ちましたので、ネタバレありの内容を追記しています。

良かったら最後までお付き合いください。




『さよなら僕のマンハッタン』

あらすじ・概要

「(500)日のサマー」「gifted ギフテッド」マーク・ウェブ監督が、サイモン&ガーファンクルの名曲「ニューヨークの少年(The Only Living Boy in New York)」に乗せ、ニューヨークで暮らす青年の恋愛や成長を描いたヒューマンドラマ。

大学を卒業して親元を離れたトーマスは、アパートの隣室に越してきた、W・F・ジェラルドと名乗る不思議な中年男性と親しくなり、人生のアドバイスを受けるようになる。

そんなある日、父のイーサンが愛人と密会している場面を目撃してしまったトーマスは、W・Fの言葉に後押しされ、父の愛人ジョハンナに近づく。

謎めいた隣人W・Fと父の愛人ジョハンナとの出会いを通して、それまで退屈で平凡だったトーマスの人生に変化が訪れる。

未発表の優れた脚本を連ねたハリウッドの「ブラ

ックリスト」に入っていたアラン・ローブによる脚本に、「(500)日のサマー」製作以前のウェブ監督がほれ込み、10年以上をかけて映画化を実現。

主演は「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」で主人公の兄テセウス役に抜擢された注目株カラム・ターナー

映画comより引用)

予告編

ナガ
これはぜひぜひ見て欲しい素晴らしい親子の物語です!




『さよなら僕のマンハッタン』感想・解説

今回は映画『さよなら僕のマンハッタン』の魅力について5つのポイントから迫っていこうと思います。

この章については、ネタバレは無しで書いていきますので、作品を未鑑賞の方でも読んでいただけるかと思います。

退屈で閉塞した日々を打ち破る物語

本作の舞台は70年代後半~80年代のニューヨークです。

この頃のニューヨークはと言うと、不景気のどん底にあり、どんどんとその都市としての文化的・社会的価値が衰退しつつある時代でした。

金融危機や不況がニューヨークにダイレクトに影響を及ぼし、治安も社会状況も最悪という有り様です。1977年には有名な大停電が起こって、大量の逮捕者を出したことも有名です。

つまり70年代終盤~80年代にかけてのニューヨークというのは、まさに歴史上稀に見る暗黒期で、もはやこの都市が立ち直ることは無いだろうと富裕層や文化人が次々に外へと飛び出してしまった時代なんです。人口もこの時期にかなり減少したと言います。

本作『さよなら僕のマンハッタン』はそんな暗黒期の都市記録映画としても非常に優秀です。

街の片隅に押し寄せてくるニューヨーク独特の文化や施設の消失と押し寄せる画一化の波。活気無くかつてのニューヨークの栄光に浸る俗物たち。マークウェブが切り取った映像の隅々にニューヨークという都市の70年代~80年代の臭いが染みついています。

そのためこの映画を見ていると、我々はまるで当時のニューヨークへとトリップしたかのような感覚を味わうことができます。

都市の記録映画として私が最高傑作だと推しているのはヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン、天使の詩』なんですが、本作『さよなら僕のマンハッタン』もそれに匹敵するくらい都市の映像の切り取り方が上手くて、映像を見ているだけでも2時間退屈しない作品となっています。

そして本作の物語の主軸にはトーマス・ウェブという主人公の閉塞感と停滞の打破物語が据えられています。

大学を卒業し、作家になりたいと考えるも自分の才能の無さを露呈するのが怖く、一歩踏み出せない青年が、1人の女性と1人の中年男性との出会いを機に、1歩踏み出そうとするまでのプロセスが精緻に綴られているのです。

この映画と非常に似ている作品はというとジムジャームッシュ監督の『パーマネントバケーション』が真っ先に挙げられると思います。

退屈な毎日に、平凡な都市に、その日常に埋没し俗物たちになりたくなくて、必死のその都市から脱出しようとする若者の姿を切り取ったジムジャームッシュ監督のこの作品は、マークウェブ監督の『さよなら僕のマンハッタン』に少なからず影響を与えているように思います。

毎日が同じことの繰り返し・・・。映画やドラマのようなことは自分の人生には起きない・・・。自分はここから抜け出せないんだ・・・。自分は変われない・・・。

そんなネガティブな気持ちを持って毎日を過ごしている方に見て欲しい作品だと思います。

 

タイトル「さよなら僕のマンハッタン」の原題の意味について

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(C)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC 映画「さよなら僕のマンハッタン」予告編より引用

本作の原題はそもそも「The only living boy in New York」でまあ簡単に訳すと「ニューヨークの少年」になります。

これはサイモン&ガーファンクルの同名の名曲に監督のマークウェブがインスピレーションを受けて製作した作品と言うことを如実に表しています。

この楽曲がどんな意味を持っているのかということを簡単にではありますが、解説しておきましょう。

この曲は1970年に発売された「明日に架ける橋」というアルバムに収録されている曲なんですね。

1970年というのはサイモン&ガーファンクルにとって非常に重要な年で、この年を境に2人は活動を休止し、ソロ活動を重視するようになります。

つまりこの楽曲は解散する直前にサイモンがガーファンクルに宛てて書いた曲という側面があるんです。

ナガ
歌詞を見てみましょう。

Tom, get your plane right on time

I know your part’ll go fine

Fly down to Mexico

Do-n-do-d-do-n-do and here I am,

The only living boy in New York

(中略)

But we don’t know where,

And we don’t know where

Tom, get your plane right on time

I know you’ve been eager to fly now

Hey let your honesty shine, shine, shine now

Do-n-do-d-do-n-do

Like it shines on me

The only living boy in New York,

The only living boy in New York

(「The only living boy in New York」サイモン&ガーファンクルより)

特に注目してほしいのが で示した部分と で示した部分なんです。

まず で示した部分ですが、これは当時ガーファンクルが俳優業に力を入れていて、「キャッチ22」という作品の撮影のためにメキシコに向かっていたことが反映されたのだと言われています。

メキシコに行っても君は上手くいくだろうとサイモンがガーファンクルにエールを送っていることがこの歌詞から分かりますよね。

そしてもう1つの で示した部分ですが、君は今こそ飛び立って輝け!!というサイモンの相方に対する熱い思いと一人ニューヨークに残される彼の哀愁が同時に感じられる切なくも温かい歌詞なんです。

こういう楽曲の背景を知っておくと、映画がより楽しめるのではないかと思います。

またそれでいて邦題の『さよなら僕のマンハッタン』も決して悪くないです。

映画を最後まできちんと見ていただけるとその意味がきちんと伝わってきますし、作品をリスペクトしてつけられたタイトルだと思いました。

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映画「さよなら僕のマンハッタン」楽曲徹底解説

この映画を見ていく上でやはり避けては通れないのが音楽についてですよね。

ナガ
今回は本作に登場した楽曲の解説を加えていこうと思います。

 

ビル・エバンス「Peace Piece」

私は「グリーン・ドルフィン・ストリート」が一番お気に入りなのですが、やはりビル・エバンスを代表する曲を挙げていくとすれば、この「Peace Pieces」を欠かすことはできないでしょう。

ビルエバンスのピアノが奏でる静かで穏やかでまるで子守唄のようなメロディが我々の波立った心に凪をもたらすような心地よさがある一曲です。50年代末に発表されたこの曲はピアノジャズ界に大きな影響を与えたと言います。

彼自身が影響を受けたというクラシック音楽らしさも感じさせつつ、その音楽的要素をジャズというジャンルの中でより深化させたビルエバンスの代名詞と言っても過言ではないでしょう。

 

チャールズ・ミンガス「Tonight at noon」

チャールズ・ミンガスと言うとジャズベーシストの巨匠であるわけですが、この映画で採用された楽曲は彼の「Tonight at noon」という同名のアルバムに収録されている一曲です。

熱烈なジャズサックスとそれを支える重厚なベースが印象的な一曲です。

彼は自身が混血であるために差別に苦しみ、その差別に抗議の意を示し続けた人としても知られていますし、怒れる巨人というイメージもついて回っていました。非常に短気で喧嘩っ早い性格だったと言われていますね。

それでもモダンジャズ界に革命を起こすような新しいサウンド、構成、編成を次々に持ち込み、名声を獲得しました。

 

ルー・リード「Perfect Day」

このルー・リードの「Perfect Day」という楽曲は先日鑑賞したヴィムヴェンダース監督の「アランフエスの麗しき日々」のOP曲にも採用されていました。他にも「トレインスポッティング」のような名作でも採用された楽曲です。

サビの部分の歌詞を引用してみましょう。

Oh it’s such a perfect day

I’m glad I spent it with you

Oh such a perfect day

You just keep me hanging on

You just keep me hanging on

(「Perfect Day」ルー・リードより)

この歌詞を見てみると、「君と過ごせて嬉しいよ。」や「君のおかげで僕はやっていけてるんだ。」という歌詞が印象的です。

この楽曲自体は1人称に当たる人物が過去の恋人の感傷に浸ってあれこれともの言いをしているように取れます。

ただこの楽曲が映画『さよなら僕のマンハッタン』に登場すると、この楽曲に全く別の解釈をもたらしてくれます。

ぜひこの楽曲がどのタイミングで使われているのかまで注目して見てください。

 

ハービー・ハンコック「Maiden Voyage(処女航海)」

ハービーハンコックと言えば、この曲というくらいに有名で私のようなジャズにわかでもCDを持っているくらいです。

モダンジャズを代表する1曲と言って間違いないでしょう。

この曲を聞いていて特に印象的なのがハービーのピアノの静かさなんです。聞いていてもどう考えてもサックスのジョージコールマンやフレディハバードのトランペットの方がインパクトが強いのです。

しかしそんな曲でも何度も聞いているとその姿が変化してきます。インパクトのある音たちの背後に隠れたハービーのピアノの静けさが際立って聞こえてくるのです。

そんな不思議な魅力からこの楽曲はしばしば「ハービーの静かなる野心」を体現した曲だと評されています。

 

サイモン&ガーファンクル「Blues run the game」

先ほども紹介したサイモン&ガーファンクルの「Blues run the game」という楽曲です。

その歌詞の内容から考えても本作「さよなら僕のマンハッタン」にぴったりな楽曲です。

どこに行ったとしても、どこに逃げたとしてもその先には必ず憂鬱が待っている。憂鬱から逃れることなんてできない。それでも人生を生きるしかないんだ。

そんな強いメッセージが込められたこの楽曲にぜひ注目して見てください。

 

ボブ・ディラン:「Visions of Johanna」

ボブディランの数ある名曲の中でも評価が高く著名な一曲ですね。

ジョアンナのヴィジョンと訳すことのできるその楽曲はディランが過去に出会った女性の1人をモチーフにしていると言われています。

ジョアンナという女性の幻影に取りつかれてしまった男の回想のように綴られたその歌詞が本作「さよなら僕のマンハッタン」にマッチしているようにも感じられますね。

今回紹介したのはあくまでも自分が聞いたことがあってある程度解説ができるかな?という楽曲だけです。他にもいくつか音楽シーンを彩った名曲が挿入されておりますので、ぜひ注目して見てください。

 

キーワードは「逃げない」こと


(C)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC 映画「さよなら僕のマンハッタン」予告編より引用

本作の物語の主軸が主人公トーマス・ウェブの閉塞感や停滞感の打破の物語であることは先ほどから説明してきました。そして本作のタイトルは「さよなら僕のマンハッタン」です。

では、本作が停滞感や閉塞感からの逃避を描いた作品なのかと言うとそうではありません。むしろそれらに立ち向かうこと、変えていくことの重要性を謳っているように感じました。

これはマークウェブ監督の過去の作品を見ても明らかです。彼がこれまで描いていた物語というのはいつも「崩壊と再生」の神話でした。何かが崩壊した時こそ前進の好機であると捉える彼の考え方が作品にも強く反映されています。

それが例えば『(500)日のサマー』であり、『ギフテッド』であり『アメイジングスパイダーマン』でもあります。

失恋とそこからの再生のロジックを1つの円環として切り取った『(500)日のサマー』

最愛の女性の喪失とそこからのヒーローライジングを組み合わせた『アメイジングスパイダーマン2』

本当に大切なものに失ってから気づき、それを取り戻すために奮闘する男の姿を描いた『ギフテッド』

マークウェブ監督が描くのは決まって崩壊とそこから逃げない者だけに訪れる再生の物語なんですよね。

だからこそ今作もそんなマークウェブ監督らしいロジックから構築されたプロットになっていて、特にその「逃げない」ということにフォーカスが当たっています。

マークウェブ監督が長年温めてきたのが本作だということですが主人公の一家の姓が監督と同じ「ウェブ」になっているのももしかしたら偶然ではないのかもしれません。

ぜひ劇場でマークウェブ監督が描く新たな崩壊と再生のロジックをご覧ください。

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絶対に2回みたくなる映画

これに関してはあまり詳しく語れませんが(ネタバレになるので)、本作を見た方は絶対に2回目が見たくなると思います。間違いないです。

先のアカデミー賞で脚本賞を受賞した『ゲットアウト』という作品は1回目と2回目で作品の姿が全く違って見えるという稀有な構造の映画だったのですが、『さよなら僕のマンハッタン』もそれに通ずるところが多分にあります。

ナガ
私がこんなことを言っている理由は見ていただければわかると思いますので、とりあえず劇場にGOです!!(笑)

 

おわりに

今回はネタバレ無しで作品の魅力を語るということで、いろいろとお話してきました。

この記事を読んで作品を見に行く決心がついたという方がいらっしゃれば、嬉しいですね。

今からでも2回目を見に行きたいくらいですし、2回目の方がより楽しめるんじゃないかと思っている次第です。

ナガ
とりあえず見に行ってくださいということだけを伝えたいですね!

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

 

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