【ネタバレ】『ソー:ラグナロク』解説・考察:長坂の戦いと脱神話が導く君主の資質の証明

アイキャッチ画像:(C)Marvel Studios 2017 All rights reserved.

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画「ソー:ラグナロク」についてお話していこうと思います。

短めの記事にはなりますが、作品の全編を踏まえた内容で書いていきますので、作品を未鑑賞の方はご注意ください。

良かったら最後までお付き合いください

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あらすじ・概要

 マーベルコミックのヒーローが集う「アベンジャーズ」シリーズにも参戦している、クリス・ヘムズワース扮する雷神ソーの活躍を描いた「マイティ・ソー」シリーズ第3作。人工知能ウルトロンとアベンジャーズとの戦いから2年、アスガルドを追放された父オーディンを捜しにニューヨークへやってきたソーだったが、突如として現れた強大な敵ヘラによって宇宙の果ての惑星に飛ばされてしまう。その星で行われていた格闘大会に出場させられたソーは、対戦相手として盟友ハルクと再会。危機を乗り切った2人はヘラを倒すためアスガルドへ向かい、わけありの女戦士ヴァルキリー、そして宿敵であるロキも仲間に加え、チームを組んでヘラに挑むが……。ソー役のヘムズワースのほか、義弟ロキ役のトム・ヒドルストン、父オーディン役のアンソニー・ホプキンスらが続投し、「ドクター・ストレンジ」のベネディクト・カンバーバッチも出演。ヘラ役は、オスカー女優のケイト・ブランシェットが演じている。ニュージーランド出身でコメディアン、俳優、映画監督と幅広く活躍し、「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」で注目されたタイカ・ワイティティがメガホンをとった。(映画com.より引用)

予告編

解説:ふと長坂の戦いの劉備玄徳を思い出す。

みなさんは三国志をご存知でしょうか?三国志演義というものがそもそも存在しているわけですが、日本で有名なのは横山光輝さんの漫画版「三国志」ですよね。

三国志全30巻漫画文庫 (潮漫画文庫)
横山 光輝
潮出版社
2002-11-01



横山版「三国志」は劉備玄徳ないし蜀の国視点で描かれる三国志演義です。原典とはかなり異なる部分もありますが、劉備玄徳ないし諸葛孔明の物語としても非常に洗練されていて、単純に1つの漫画作品として見応えがあります。

この三国志演義ないし横山版「三国志」の中に長坂の戦いという有名なエピソードがあります。劉備玄徳は諸葛孔明ら部下と自分を慕ってくれる大勢の民と共に曹操の大軍からひたすらに逃亡を続けるんです。

この時に劉備は軍師の諸葛孔明から「民を見捨てなければ、全滅する可能性も・・・。」と告げられます。それに対して劉備は「たとえ民が私を見捨てても、私は民を見捨てぬ。」と告げ、曹操の大軍に立ち向かうことを決意します。

また劉備たちは逃亡の際に新野という城を焼き払っているんです。もちろん計略の1つですし、城を焼き払って敵が占拠したとしても使えないようにするというのは1つのセオリーではあるわけですが、それでも城という拠点を捨て、民を選び、共に逃げるという選択は大軍が迫ってきている状況でなかなか考えられるものではありません。

それでも劉備は城や自分の軍隊の利害ではなく、民と運命を共にするという決断をします。ここに劉備玄徳という後に蜀の国の皇帝となる男の君主の証がありました。

映画「ソー:ラグナロク」を見ていると、この長坂の戦いがどうしても思い出されます。アスガルドから民を撤退させるために戦うソーたちの姿やアスガルドという故郷を焼き払ってでも敵を淘汰し、民と共に逃げるという行為が、長坂の戦いで劉備が取った行動に非常に似ています。

また敵の大軍を長坂橋で待ち構えるという「三国志」シリーズきっての名シーンがあるのですが、虹の橋でヘラたちを待ち構えるソーたちの姿がこれに重なりました。

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長坂の戦いとは「三国志」において民のために戦う劉備の君主としての素質を最大限に表現したエピソードであり、それを想起させるこの「ソー:ラグナロク」という作品が主人公ソーの君主としての資質を証明する物語であることは間違いないでしょう。

 

解説・考察:脱神話が導き出す君主の証明

先ほど本作が「三国志」の長坂の戦いの戦いに似ているという視点から本作が主人公ソーの国王としての素質を示し、彼が真の国王となるまでの物語を描いた作品ではないかということを指摘しました。

そしてそれを導き出すために一役買ったのが、「ソー」シリーズに通底する神話のモチーフだと考えています。

前作の「ソー:ダークワールド」で後にロキが化けていたものであることが分かりますが、仮にもソーは父親のオーディンからの王位継承の申し出を「自由が欲しい」という理由で固辞しています。つまりこの時はまだ彼には王位を継げるだけの資質が備わっていなかったわけです。



そして本作「ソー:ラグナロク」の冒頭でロキが化けた国王のオーディンが世界の危機が迫っているというのに、呑気に観劇しているシーンが映し出されます。偉大な国王オーディンがそんなことをするはずがないとソーはロキが化けていることを瞬時に見破ります。

しかし本作の後半に近づくと、そんなソーが信じていた善良で、平和主義者で、偉大な国王であり父であったオーディンが暴力でもって対抗する民族を淘汰し、その土地にアスガルドという国を建国したことを知ります。これまで父であり国王であるオーディンのことを尊敬してきた彼としてはこの上なくショックな出来事だったでしょう。

ただ北欧神話に登場するオーディンを鑑みると、この「ソー:ラグナロク」のオーディンは極めて神話に忠実です。戦いを好み、女癖も悪かったというオーディンに関する逸話は数多く残されています。

そんな神話に忠実な父親オーディンの描写が印象的だった一方で、主人公であるソーには極めて脱神話的な出来事が降りかかります。

例えばソーは北欧神話のミョルニルに着想を得たとされるハンマーのムジョルニアをヘラによって粉々に粉砕されます。これは北欧神話のトールの象徴であり、アイデンティティとも言えるハンマーが喪失したことを意味しており、ソーの物語が神話から逸れ始めたことを意味しています。

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また、ソーが髪を切られるシーンもそうです。北欧神話のトールの外見的な特徴である長髪をソーはバッサリと切り落とされてしまいます。加えてソーは片目を潰されてすらいます。

ソーというキャラクターは北欧神話のトールに着想を得ているわけですが、この「ソー:ラグナロク」という作品の中で彼はどんどん神話から遠ざかっていき、自分のアイデンティティを喪失していくんですね。

物語の終盤ではハンマーを喪失し、弱体化したことを嘆くソーですが、その逆境を力に変えて、雷神としての能力を開花させます。ムジョルニアがなくとも立派にヘラと渡り合う彼の姿はトールの面影を感じさせる神の男ではなく、1人のソーという男のものでした。

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(C)Marvel Studios 2017 All rights reserved.

前作で王位継承を固辞したソーですが、本作の結末では宇宙難民となったアスガルドの民たちの王として彼らを導く決意をします。

北欧神話をモチーフにしたヒーローないし神としてこれまで戦ってきたソーが初めて神話の檻から脱出し、自分だけのアイデンティティを手にするというところに3部作を通じて語られたソーの王位継承物語のゴールを設定し、それをきちんと完結させた点で「ソー:ラグナロク」は3部作の3作目として非常に評価できるものだと思いました。

彼は父オーディンを超えただけではありません。彼は神話を超えた存在となったのです。

おわりに

個人的にMCUで最も面白くなかったのが前作「ソー:ダークワールド」でしたから正直に言うと、本作「ソー:ラグナロク」に非常に懐疑的な思いを持っておりました。

しかし、そんな不安を杞憂に変えてくれるエンタメ性の高さと3部作の3作目としての素晴らしさ、アメリカの歴史への言及など非常に見所の多い作品に仕上がっていました。

本当はアメリカの歴史との関連についても語りたかったんですが、公開からかなり時間が経過していますし、今更感があるかな?と思いまして、今回は別の切り口で書いてみました。

それにしてもエンドクレジットでの映像であんなのを見せられてしまうと、いやでも「アベンジャーズインフィニティウォー」が楽しみになってしまいますよね。

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予告編に登場するロキの意味深なシーンの真相が気になるところです。

参考:『アベンジャーズインフィニティウォー』は『ソーラグナロク』を台無しにした映画!

今回も読んでくださった方ありがとうございました。




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