『エターナルサンシャイン』ネタバレ解説・考察:構成の巧さと髪の色の変化に感動する!

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『エターナルサンシャイン』についてお話していこうと思います。

ナガ
何回見ても、色あせない名作ってこういう映画なんだろうなぁ…。

ラブストーリーに分類される映画は数えきれないほどありますが、正直印象に残っていて、何度も見返すような作品って個人的には数えるほどしかありません。

その数少ないうちの1つが、この『エターナルサンシャイン』です。

今作の魅力は、映像の美しさ、斬新な構成、そして多くの人が共感できる魅力的なプロットでしょう。

とにかく、映画でラブストーリーとなった時に、今作よりも構成が巧い作品が他にないだろうと思ってしまうくらいに圧倒的な仕上がりです。

また、物語にも普遍性があり、2004年に製作された作品でありながら、今も新しいファンを獲得し続けています。

コロナウイルスの影響で、映画館に足を運びにくくなっているということで、当ブログ管理人一押しの旧作を紹介する記事を従事上げていきますが、そのうちの1つとして今回『エターナルサンシャイン』について書いていければと思います。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む解説・考察記事となっております。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『エターナルサンシャイン』

あらすじ

ジョエルは恋人のクレメンタインと些細なことで喧嘩をしてしまい、それっきり距離を置くこととなってしまう。

それでも何とか関係性を修復したいと思い、彼女の職場に足を運ぶと、クレメンタインはどこか他人行儀な振る舞いを見せる。

それどころか、既に新しい恋人を作っており、職場でキスをするほどの関係性である。

状況が飲み込めない彼の下に、ラクーナ医院から1通の封書が届く。

その内容は、彼のことを忘れて前に進みたいと願った

が、「特定の記憶=ジョエルとの思い出」だけを消去する処置を受けたというものだった。

この事実を知ったジョエルは、激しく憤り、自分も彼女との思い出を自分の記憶から消す処置を受けることを決意する。

いよいよ処置が始まると、彼の頭の中ではクレメンタインと過ごした日々が少しずつ蘇っては消えていく。

記憶をたどるうちに、彼は彼女への愛を思い出し、何とかして記憶を残したいと願うようになるのだが…。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:ミシェル・ゴンドリー
  • 脚本:チャーリー・カウフマン
  • 撮影:エレン・クラス
  • 編集:バルディス・オスカードゥティル
  • 衣装:メリッサ・トス
  • 音楽:ジョン・ブライオン
ナガ
チャーリー・カウフマンの脚本が本当にすさまじいよね!

監督を務めたのは、『グリーンホーネット』『グッバイ、サマー』などで知られるミシェル・ゴンドリーですね。

監督もそうですが、本作で評価されているのは、専ら脚本の方ですね。

脚本には、ミシェル・ゴンドリーも携わっていますが、主に手掛けたのはチャーリー・カウフマンです。

『マルコヴィッチの穴』『コンフェッション』などで知られる彼は、今作でアカデミー賞脚本賞を受賞しました。

ナガ
後ほど詳しく語っていきますが、これほど優れた脚本もなかなかないと思いますよ!

撮影には、『コーヒー&シガレッツ』などでも知られるエレン・クラス、編集にはバルディス・オスカードゥティルが起用されました。

また、劇伴音楽を『レディバード』『プーと大人になった僕』ジョン・ブライオンが担当しました。

キャスト
  • ジョエル・バリッシュ:ジム・キャリー
  • クレメンタイン・クルシェンスキー:ケイト・ウィンスレット
  • メアリー:キルステン・ダンスト
  • スタン:マーク・ラファロ
  • パトリック:イライジャ・ウッド
ナガ
やっぱりこの映画のケイト・ウィンスレットは最強ですよ!

主人公を演じたのは、『トゥルーマン・ショー』『マジェスティック』などでお馴染みのジム・キャリーですね。

コメディのイメージも強い俳優ですが、今作のようなナイーブな役もすごく似合いますね。

そして、ヒロインを演じたのは、名女優ケイト・ウィンスレットですね。

『愛を読むひと』『タイタニック』などに出演していることで知られ、アカデミー賞の女優賞の受賞経験もある女優です。

見た目とは裏腹に、ピュアでどこか狂気を孕んでいて、でもすごく誠実なクレメンタインという独特なキャラクターを見事に演じ切っています。

その他にも、今や売れっ子俳優・女優となったマーク・ラファロキルステン・ダンストらも出演しています。

ナガ
ぜひぜひご覧になってみてください!



『エターナルサンシャイン』解説・考察(ネタバレあり)

髪の色の変化に着目して

本作の映像が個人的に大好きな理由の1つは、ヒロインのクレメンタインの髪色の変化なんですよ。

まず、映画が始まると青色の髪の彼女が登場すると思いますが、これは映画を見ていただけるとお分かりいただけると思いますが、時系列的には1番後ろに来ます。

つまり髪の色の変化を時系列順に並べると次のようになりますね。

  1. 緑:2人がモントークの海辺で初めて出会った時
  2. 赤:2人が恋に落ち、その感情が最大の盛り上がりを見せていた時
  3. 茶(くすんだ橙):2人の関係が静かに終焉を迎えようとしていた時
  4. 青:2人が別れた後、そして再び恋に落ちる時

この色の変化と時系列、さらに映画の独特の構成が見事にマッチしているのがすごいんだよ!

まず、時系列的に見ていくと茶(くすんだ橙)と変化していきますよね。

この変化を見ていて、真っ先に思い浮かんだのは、植物の葉の色の変化の仕方です。

というと、やはり若葉と言いますか爽やかな夏の色という印象が強いですよね。

(映画『エターナルサンシャイン』より引用)

となると、秋に入り葉が色づいて成熟した印象を与えます。

(映画『エターナルサンシャイン』より引用)

しかし、その最盛期を迎えると、葉は冬に向けて少しずつ色がくすんでいきますよね。

その時に茶(くすんだ橙)の色へと変化していきます。

(映画『エターナルサンシャイン』より引用)

つまり、クレメンタインの髪色の変化を時系列順に追ってみると、葉が芽生えて、そこから成熟し、徐々に枯れていくプロセスを見ているようであり、それが彼女とジョエルの関係性を表現していることが分かりますね。

ただ、今作『エターナルサンシャイン』は、ジョエルの記憶をナラタージュしていく時に、現在に近い方の記憶から順番に辿っていくんですよ。

そのため、映画に登場する順番としては、茶(くすんだ橙)と実は逆になるように作られているんです。

つまり映画の時間の流れに沿って行くと、枯れ果てていた2人の恋心が再び、盛り上がり、そして出会った頃の新鮮な気持ちへと還っていくようなそんな推移を表現しているんですね。

このように、物語の時系列で見た時と映画の時間の流れに沿ってみた時に色の変化が違った意味合いで伝わって来るのが、まずすごいと思います。

そして、もう1つ、やはりという色が非常に効いてきます。

当ブログでは、時折映画に登場する色について言及していますし、特にについてはこれまでの記事でもたびたび取り上げてきました。

は「憂鬱=ブルー」を象徴する色であり、ゲーテによるとその内に闇を内包した色であり、そしてマラルメやノヴァーリスらによるとどんなに手を伸ばしても届かない理想の象徴です。

フランスの詩人ステファヌ・マラルメは『青空』という詩を書きました。

永遠の青空の穏やかな皮肉は

花のようにそのままで美しく、

苦痛の不毛な砂漠を越えて

自らの才能を呪う無力な詩人を打ちひしぐ

(『青空』:『詩集』ステファヌ・マラルメより)

この詩の中に登場する「青空」というモチーフを野口修氏は自身の論文の中で「アレゴリー化され、詩人にはどうしても手の届かない理想、しかも、そこに到達しようともがき苦しんでは挫折を繰り返す詩人を嘲り笑う残酷な理想」と表現しました。

つまり、「青」という色には、手を伸ばしても手に入れることができない理想という意味合いが強く込められているのです。

それを踏まえて、本作『エターナルサンシャイン』における青色の髪のクレメンタインについて考えてみてください。

(映画『エターナルサンシャイン』より引用)

確かに、彼女はジョエルからすると、もはや手の届かない存在になっていると言えますよね。

彼の記憶を失っており、しかも既にほかの恋人がいるという状態では、彼にはどうしようもありません。

そして、何とも興味深いのが、2人が復縁を決断する最後のシーンでもクレメンタインの髪色は青色なんですよ。

ナガ
ここが個人的にはすごく憎い演出だと思いましたね…。

『エターナルサンシャイン』のラストシーンで、2人は将来的にお互いがお互いに失望を抱き、再び別れを選ぶ可能性があると分かりながらも、復縁を選ぶという展開を描きます。

クレメンタイン青色の髪が仄めかすのは、2人が永遠に分かり合う状態には到達できないだろうというネガティブな未来かもしれません。

しかし、それでも身を寄せ合い、2人が共にいられる未来を模索し続けていくところに愛の美しさが宿るのではないかという強いメッセージを感じるのも事実です。

分かり合えた状態に至ることは理想でしょう。しかし、きっとどんな恋人同士だって、その状態には真の意味で辿り着くことはできません。

それでも、そこに辿り着こうとし続けることが、「青空」に手を伸ばし続けることが、「愛」なのではないかと本作は我々に訴えかけかけようとしているように感じられました。



構成とプロットの見事さ

本作『エターナルサンシャイン』は、もうアカデミー賞脚本賞も受賞した作品ですので、正直プロットの凄みについてはある程度語りつくされているように感じます。

ナガ
それでも語らせてほしい!と思うくらいに凄い構成とプロットなんですよ!

まず、時系列ががらりと入れ替えられている点については、鑑賞した方はお気づきだと思います。

冒頭にジョエルが自宅の駐車場に行き、車がへこんでいるのを不思議そうに見つめながら、隣の車がぶつかってきたのだと勘違いするシーンがあります。

多くの人は、このシーンから始まり、彼がクレメンタインと出会うに至るまでの描写が2人の最初の出会いだと読み取るはずですが、どうも映画を見進めていくうちにおかしいと気がつき始めます。

なぜなら、記憶を辿るシーンの最初の方で、クレメンタインが酔っぱらって車をへこませてしまったと語る描写があり、その時間軸が2人が決別するターニングポイントとなっているからです。

「どうなってるんだ?」と疑問を隠せないままに、物語を見進めていくと、記憶と同時進行の現実パートに登場するクレメンタインが青色の髪になっているという点で、時系列が入れ替えられていることに徐々に気がついていくのです。

鑑賞する側が気がつかないように「2度目の出会い」から映画を始めるという構成に、もう度肝を抜かれますよね。

また、ジョエルが記憶を辿っていくシークエンスも実に見事です。

最初のパートで、彼はすごく奥手で、ナイーブで、どこか思い切りが足りない人物であることは描かれていました。

氷の上を歩いてみようというクレメンタインからの提案にも、どこか不安げで、彼女の支えと後押しがなければ一歩を踏み出すこともできません。

(映画『エターナルサンシャイン』より引用)

そして、子どもを作る作らないの決断に際して彼が決断しきれなかったことが、2人の関係性を破綻させる引き金になったのも事実です。

そんな彼が、時間を遡れば遡るほどに少しずつ成長していくというプロセスが実にウィットに富んでいると思います。

最終的に、2人が出会った日のビーチに辿り着くわけですが、この日のジョエルに見られた成長に思わず涙が出ましたね。

「もうすぐこの記憶も消えるわ。」

「ああ。」

「どうする?」

「楽しもう。」

(『エターナルサンシャイン』より引用)

恐れるのでもなく、逃げるのでもなく、「楽しもう!」と前向きにクレメンタインとの最後の記憶を目いっぱい楽しもうと決断した彼は、言うまでもなく大きく成長しています。

恋人になってから別れるまでの時間を、逆の時系列で追体験することにより、少しずつ自分に足りなかったものを悟っていき、出会いのシーンでようやくそれを形にすることができたという演出が、微笑ましくもあり、切なくもあります。

そして、この『エターナルサンシャイン』の構成の凄さは、現実世界と記憶世界の見事なまでの交錯にあります。

普通に考えたら、2人の恋愛が主軸ですから、現実パートに余計な物語を用意しようとは思わないでしょう。

しかし、今作は果敢にも現実パートにミステリチックな要素やもう1つのラブストーリーを散りばめ、その内容が2人の恋愛譚に還元されるという構造を生み出しました。

「忘却」の施術に関わっていた会社の人間が、ニーチェの忘却はよりよき前進を生む。』という言葉を噛み締めることとなり、それがクレメンタインジョエルの記憶の復旧に一役買うわけです。

忘れてしまうことはネガティブかもしれません。しかし、忘れたとしても、同じ人を好きになってしまう、同じ惹かれてしまうというのは、不思議なものですね。

忘れて、また思い出して、だからこそもう寄り添えないだろう、また関係を破綻させてしまうだろうと危惧して…。

それでも「忘れたくない!」と心から思えたその純粋な感情を信じて、もう1度手を取ろうと思えたならば。

どんな恋人同士で会っても、出会ってしばらくして迎える恋の最盛期を経ると、その感情は徐々に落ち着いていき、相手がいることが当たり前になったり、逆に相手の嫌な部分が見えてきて冷めてしまたりということがあると思います。

そんな時に、ふともしその人と出会っていなかったら…と考えてみて欲しいのです。

少なくとも当ブログ管理人は、その人と過ごした時間に、その人がいなかったらという想像はとてもできないです。

忘れようとしても忘れられない。消し去ろうとしても消えない。それくらいに大切な人なんだと、そういう「IF」を思い浮かべると、深く実感することがあります。

そんな誰しもが思い描いたことのある「IF」をSFテイストで視覚化し、見事な構成で描き切ったからこそ、本作『エターナルサンシャイン』は今なお語り継がれるラブストーリーの名作であり続けるのでしょう。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は映画『エターナルサンシャイン』についてお話してきました。

ラブストーリーのおすすめを挙げてくださいと言われたら、当ブログ管理人は、真っ先に今作を挙げると思います。

何度見ても、新しい発見があり、感情や言葉が沸き上がり、そして何度も涙してしまう作品です。

今回は、どちらかと言うと、映像的な素晴らしさや構成の素晴らしさといった映画的な部分の魅力について書いてきました。

しかし、今作の最大の魅力は「エモーション」の部分でして、そこを言語化することは私にはできません。

ここについては、見た人が自分の恋愛経験や大切な人を重ねながら見ることで、湧き上がってくるものだと思いますし、ぜひともそこの部分を多くの人に体感して欲しい思いです。

あなたの大切な人が今より少し愛おしく思える、そんな映画だと思っています。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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