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目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『アリー/スター誕生』の話題についてお話していこうと思います。
本記事は『アリー/スター誕生』とこれまでに作られた『スタア誕生』や『スター誕生』を比較しながら検証していく記事になります。
記事の内容の都合上、作品のネタバレになるような内容を含みますのでご注意ください。
良かったら最後までお付き合いください。
当ブログの『アリー/スター誕生』関連記事
当ブログでは本記事の他にも『アリースター誕生』について記事を作成しております。
他の2つの記事はネタバレなしで書いておりますので、作品を未鑑賞の方でも問題なく読んでいただけます。
・『アリースター誕生』スタッフ・キャスト、作品情報・感想
ぜひぜひ鑑賞前に作品についてもっと知りたい方は読みに来てください。
・『アリースター誕生』サントラ情報

サントラや主題歌の情報や内容についてみっちり解説しました。良かったら読みに来てください。
映画『アリー/スター誕生』をこれまでの『スタア誕生』と徹底比較(ネタバレ注意)
さて、ここからは2018年公開の『アリースター誕生』とこれまでに公開された3作の『スタア誕生』(『スター誕生』)を比較していきたいと思います。
・1937年版『スタア誕生』

全てはここから始まった、最初の1作です。
・1954年版『スタア誕生』

これが最初のリメイクです。
・1976年版『スター誕生』

作品の方向性を大胆に変更したリメイク第2作です。
・2018年版『アリー/スター誕生』

レディーガガを主演に迎え、これまでのオリジナル版とリメイクの良さを詰め込んだ最新作!!
ヒロインの名前
まずは本作の主人公の名前について比較していこうと思います。
- 1937年版:エスター・ヴィクトリア・ブロジェット
- 1954年版:エスター・ブロジェット
- 1976年版:エスター・ホフマン
- 2018年版:アリー
このようにリメイクのたびに主人公の女性の名前は変化しています。
まず印象的なのが1937年版の「エスター・ヴィクトリア・ブロジェット」という名前です。

そしてつけられるのが『ヴィッキー・レスター』という名前です。
「ヴィッキー」というのは、「ビクトリア」に由来する名前でして、これからスターダムを駆け上がっていく女性につける名前としては、最適とも言えるでしょう。
ただ物語を経て、彼女は映画の最後の最後で自分の名前「エスター」を取り戻します。
ちなみに「エスター」という名前は旧約聖書の「エステル記」に登場する誠実で勇ましい女性を想起させる名前です。
また、名前を取り戻すというプロセスがある種のアイデンティティ獲得物語的に機能していることも指摘しておく必要があるでしょうか。
思い出してほしいのが名作ジブリアニメの『千と千尋の神隠し』ですね。
名前というのは自分の象徴であり、誇りです。それを彼女はハリウッドのきらびやかな世界に飛び込んでいくに当たって奪われてしまいます。
そして女優として成長し、アカデミー賞を受賞し、夫のノーマンに先立たれながらも、女優として生きていく覚悟を決めます。
そんなプロセスを経て、本物のスタアになった彼女だからこそ「エスター」という名前で表舞台に立てるようになるわけです。

ちなみに1954年版もこの点を踏襲しているんですが、1976年版では無くなってしまいました。
そして2018年版では主人公の名前が大胆にも「アリー」に変更されています。
監督について
つづいて監督について比較していきましょう。
- 1937年版:ウィリアム・A・ウェルマン
- 1954年版:ジョージ・キューカー
- 1976年版:フランク・ピアソン
- 2018年版:ブラッドリー・クーパー
まずは、オリジナル版の監督を務めた「ウィリアム・A・ウェルマン」ですね。
ウィリアム・A・ウェルマン監督は、『つばさ』という作品で第1回アカデミー賞を受賞したことで知られる映画監督です。
また彼は戦争に出兵し、飛行兵として戦った人物であることも有名です。そんな経歴があったからか、彼は一切の妥協を許さない「完璧主義」の映画監督だったと言われています。
彼について蓮実重彦氏がこう評しています。
会社の方針で、ギャング映画を撮らなければいけない、航空映画も撮らなければいけない。それこそ、メロドラマから戦争映画や西部劇まで撮らされたりしたけれども、何を撮っても、どこか時流に流れない距離の意識があるんです。それこそ赤狩りの時代に反ソ映画なんかを撮っても、時流に迎合しないとこが何とも上品なんです。

絶対的な正義や一面的な物語を描くことを嫌がったウェルマン監督が、こんな王道のスター誕生映画をノリノリで撮っていたとは、いささか考えにくいものです。
だからこそ本作の主人公である「ノーマン・メイン」という人物はウィリアム・A・ウェルマン監督に重なる部分があります。
自分の撮りたいものだけを撮りたい、撮りたいものには妥協したくない。
しかし、映画監督として「食べていく」には、時には撮りたくない商業向け映画も撮らなければならないし、妥協もやむを得ません。そこに彼の葛藤があったことは想像するに容易いです。
だからこそ彼は「ノーマン・メイン」という人物にそんな自分の葛藤を込めたのでしょう。
「ノーマン・メイン」はウィリアム・A・ウェルマン監督にとっては「選べない道」の表象だったんでしょうね。
こだわりを貫きすぎると、ハリウッド映画界には残れないという「アイロニー」が見え隠れしています。
1954年版の監督を務めたジョージ・キューカーはあの『マイフェアレディ』で知られる映画監督です。
ちなみに1954年版で主演を務めたジュディ・ガーランドとは、1939年の『オズの魔法使い』以来の付き合いだったと言われています。
1976年版の『スター誕生』の監督を務めたのは、フランク・ピアソンです。

西部劇やクライム映画を多く手がけた監督がメガホンを取ったこともあり、その色合いが濃く反映された作品に仕上がっていましたね。
最後に2018年版の『アリー/スター誕生』の監督を務めたのが、ブラッドリー・クーパーです。
彼は『世界にひとつのプレイブック』や『アメリカンスナイパー』などに出演し、俳優として高く評価されてきた人物です。

監督デビュー作ながら、その手腕が高く評価され、アカデミー賞レースでも受賞の有力候補と目されるほどなんですが、その評価に違わぬ素晴らしい作品でした。

ストーリーを敢えて繋がらないように作ってあるのは、映画を見れば一目瞭然なんですが、それは映像を見た我々の頭の中で補完してくださいという「ねらい」でもあります。
そして観客に様々な想像を掻き立てるだけの映像をきちんと撮り切ったという点でブラッドリー・クーパーの映画監督としての才能に疑いの余地はありません。
また彼が素晴らしいのは、オリジナル版のプロットの活かし方です。
先ほども指摘したようにウィリアム・A・ウェルマン監督のコンフリクトが『スタア誕生』が製作される1つのベースになっています。
ブラッドリー・クーパー監督はそのベースを崩すことなく自分の作品に踏襲しただけでなく、そこにレディーガガという「スター」の物語をも重ね合わせて1つのプロットとして編み上げているんです。

このように今作『アリー/スター誕生』で3度目のリメイクになるわけですが、オリジナル版も含めて、監督の味がそれぞれのバージョンに色濃く反映されているので、その違いを堪能するためにも全作チェックして見ると良いかもしれませんよ!
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主人公のキャストの違い
監督に続いて、次は主人公のキャストの違いについて説明していきましょう。
- 1937年版:ジャネット・ゲイナー
- 1954年版:ジュディ・ガーランド
- 1976年版:バーブラ・ストライサンド
- 2018年版:レディーガガ

1937年版のジャネット・ゲイナーは田舎娘感もありながら、磨けば光るポテンシャルを秘めた出で立ちで、ハリウッドに出て女優として活動する中で、徐々に垢抜けていく様が印象的です。
一方で、オリジナル版に比べて随分と年齢を感じるのが、1954年版のジュディ・ガーランドですね。
年齢自体は撮影当時30歳付近であまりジャネット・ゲイナーとは変わらないはずなんですけどね・・・。
ジュディ・ガーランドは神経症と薬物中毒の影響で、その輝かしいキャリアを棒に振ってしまった女優としても知られていて、そう考えるとエスターよりもノーマン・メインに近い人物でもあります。
1976年版のバーブラ・ストライサンドはアカデミー賞主演女優賞を受賞していながら、歌手としても成功を収めた人物です。
彼女の歌唱力があったからこそ1976年版の『スター誕生』は大胆に音楽業界の物語へと舵を切ることができたんでしょうね。
最後に2018年版のレディーガガです。

誰もが知るアメリカ音楽界のスターですよね。
本作『アリー/スター誕生』とレディーガガの物語のリンクについてはサントラの記事で一部触れておりますので、良かったら読みに来てください。
主人公の境遇の違い

- 1937年版:何者でもない田舎娘
- 1954年版:ジャズシンガーでバンドを組んで活動中
- 1976年版:歌手として活動中、CMソングなども歌っている
- 2018年版:ウエイトレスとして働きつつ、バーで歌手活動
スターへの近さを順位づけしてみますと、こんな感じでしょうか。
- 1976年版
- 1954年版
- 2018年版
- 1937年版
ダントツでスターに近いのは、1976年版のエスターですね。
歌手活動をしている上に、CMソングまで歌ったりしていて、ここまで音楽業界に踏み込んでいて、あの才能が見出されない理由がよく分かりません。
最高にぶっ飛んでいる1976年版のエスター(笑) 『スター誕生』より引用
そして次に1954年版のエスターですね。
ハリウッドスターも集まるようなショーに出演したりするなど、まだまだ知名度こそありませんが音楽的な才能はある程度認められている状態でした。
ノーマン・メインの誘いもあり、女優として活動を始めようとしますが、すぐにスターになれるわけではなく、しばらく下積み的な活動をしているのも1954年版の特徴です。(他の3作品では割とすぐにスターになるので)
そして次に2018年版のアリーですね。
アリーはウエイトレスとして働いている傍らで、夜になるとバーでシンガーとして活躍しています。バーでは注目されているシンガーでありますが、実質的には無名の存在です。

1937年版ではウエイトレスとして働いたことがきっかけでノーマン・メインと知り合いになりますし、1954年版は映画女優になるために一歩踏み出し、お金を得るためにファーストフード店で働き始めます。
最後にオリジナル版である1937年版のエスターですね。

田舎に住んでいる、映画好き女子がおばあちゃんにお小遣い貰ってハリウッドに来ました!な「まさに夢のようなスター誕生物語」になっているのが、オリジナル版です。
このように主人公のエスターやアリーの置かれている状況も作品によって異なるんですね。
主人公を見出す男性について
さて、次に主人公(エスター/アリー)を見出す男性を比較していきますね。
- 1937年版:ノーマン・メイン(フレドリック・マーチ)
- 1954年版:ノーマン・メイン(ジェームズ・メイスン)
- 1976年版:ジョン・ノーマン・ハワード(クリス・クリストファースン)
- 2018年版:ジャクソン・メイン(ブラッドリー・クーパー)
1937年版の「ノーマン・メイン」をベースとして「ノーマン」や「メイン」を残しつつ変遷してきたのが、主人公を見出す男性の名前です。
1937年版のノーマン・メインは人気俳優です。
さらに言うと1954年版のノーマン・メインは国民的俳優です。

そして1973年版のジョン・ノーマン・ハワードは人気ロックミュージシャンです。

ライブ会場でバイク乗り回して大怪我したり、急に田舎に家を建築し始めたりめちゃくちゃなんですよね・・・。

本当にむちゃくちゃですね・・・。
最後に2018年版のジャクソン・メインですね。
人気カントリーミュージシャン(カントリーロック)ですが、1954年版のような国民的スターというよりは人気ミュージシャンの1人という印象ですね。
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ノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)が飲んでいるお酒
- 1937年版:スコッチのソーダ割り
- 1954年版:スコッチ
- 1976年版:ブランデー
- 2018年版:ジン
もちろん作中で1つのお酒ばかり飲んでいるわけではないんですが、それぞれの作品で印象的に登場したお酒をピックアップして見ました。
2018年版のジャクソン・メインが愛飲しているのがジンというのが個人的には興味深いですね。
皆さんは「ジン横丁」という絵画をご存じでしょうか?
18世紀のロンドンの貧困を描いた作品なんですが、当時ジンはアルコール度数が高く、それでいて安いということで貧困層に親しまれていたのですが、同じにそれが社会を堕落へと導きました。
2018年版のジャクソン・メインがそんなジンを愛飲しているというのは、彼がアルコールのために落ちぶれていくという展開を仄めかす要素になっているわけです。
結婚について
『スター誕生』シリーズの醍醐味と言えば結婚式ですね。
- 1937年版:プロレスの試合中に
- 1954年版:エスターの撮影中に突然
- 1976年版:全国巡演を控えて
- 2018年版:車での移動中に

まず1937年版のプロポーズシチュエーションはなかなかにシュールです。
プロレスの試合を見ながら、ノーマン・メインがエスターにプロポーズするんですが、最初は断られるんですよね(笑)
ただプロレスの試合で彼らが応援していた選手が勝利して、その勢いで結婚してまえ!!って感じで結婚しちゃうんです。
そして1976年版もかなり面白いです。
そもそもこのバ―ションでは結婚を口に出したのがエスターの方なんですよね。
結婚した2人は俗世間を離れて、荒野に2人で家を建築し始めるんですよ。

2018年版の『アリー/スター誕生』のプロポーズも個人的には好みでしたね。
これまでの3作品と比べてもかなり地味なんですが、2人が愛し合っている様子がしっかりと伝わってきました。
スター誕生の瞬間
本作の最も重要な瞬間と言えば、やはりエスター(アリー)が世間に認められる瞬間ですよね。
- 1937年版:ノーマン・メインとの映画での共演
- 1954年版:ミュージカル映画への出演
- 1976年版:インディアン救済ライブでの歌唱
- 2018年版:ジャクソンのライブでのShallow
この点に関してもそれぞれの作品で異なるんですが、2018年版『アリースター誕生』はオリジナル版へのリスペクトが込められているように感じられました。
というのもノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)との共演がスター誕生への契機になるという点で、1937年版と2018年版は一致しています。
一方で、1954年版と1976年版はノーマンに見出されはするんですが、ソロでの映画出演や歌唱でもって世間に認知されます。

『アリー/スター誕生』はレディーガガの歌唱力が素晴らしいこともそうなんですが、ブラッドリークーパーの演出も最高で、本当に鳥肌が立ちます。
このシーンは映画館で見てこそですね。
セックスシーンについて
- 1976年版:再会した日の夜にノーマンの家で
- 2018年版:初ライブ共演の翌朝のホテルで

1976年版のバーブラ・ストライサンドの濡れ場は本当に「田舎臭い」印象が強いです(笑)
一方で2018年版の『アリー/スター誕生』のレディーガガの濡れ場は見事ですよ・・・。

また、『スター誕生』名物なのが「泡風呂セックス」なんですが、2018年版に登場するそれは、1976年版へのオマージュとして登場します。
1976版の「泡風呂」は正直あんまりエロくないんですが、2018年版はこれまたちゃんとエロいので最高でした。
エスター(アリー)の賞受賞
主人公が賞を受賞するのもまた『スター誕生』シリーズの定番です。
- 1937年版:アカデミー賞受賞
- 1954年版:アカデミー賞受賞
- 1976年版:グラミー賞最優秀アーティスト賞
- 2018年版:グラミー賞新人賞
女優としての成功がアカデミー賞、歌手としての成功がグラミー賞というのはいつの時代も変わらないんだということを痛感させられる設定でもあります。
ちなみに授賞式にノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)が荒らしに来るところまででワンセットです(笑)
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ノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)の死因について
- 1937年版:入水自殺
- 1954年版:入水自殺
- 1976年版:車で暴走して死亡
- 2018年版:ガレージで首を吊って死亡

そうなんです。1976年版はあらゆる側面において癖が強いんですよ(笑)
車での疾走シーン 『スター誕生』より引用
荒野を車で爆速で疾走して、そして吹っ飛んで死んじゃうんですよね・・・。
もう映画の中で一番エモーショナルで切ない瞬間なのに、1976年版だけ笑いが止まらないのが正直なところです。
そして1937年版と1954年版は共に入水自殺なんですが、その描かれ方の違いに注目です。
1937年版では、自殺のシーンは明確には描かれません。
一方で1954年版ではノーマンがバスローブを脱いで、胸毛丸出しで海に歩いていくシーンが映し出されます。

1954年版や1976年版がチョケている中で2018年版はかなりタイトに仕上げてきました。
死因こそ異なるんですが、きちんとオリジナル版を意識したシーンになっています。

実はオリジナル版の『スタア誕生』に「ガレージに戻して」という有名なセリフがあるんですよ。
これはノーマン・メインが亡くなった日にチャイニーズシアターで挨拶をする予定だったエスターが一時は嫌気がさして帰りの車を準備させるんですが、祖母に励まされて、その車を帰すために発したセリフです。
おそらく2018年版の『アリー/スター誕生』の中でジャクソン・メインが死に場所を「ガレージ」に求めたのは、オリジナル版へのリスペクトの表象の1つなんでしょう。
ガレージがノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)を表すならば、そこから飛び出していく車はエスター(アリー)のことなんですね。
1976年版と『アリー/スター誕生』冒頭5つの違いを解説
『アリー/スター誕生』とプロット的に一番近いのは、やはり音楽業界を題材にしているという点でも1976年版になるのかなと思いました。
そこでここからは76年版『スター誕生』と『アリースター誕生』の冒頭部分に絞って5つの違いをお話していこうと思います。
映画の始まり
まず、映画の始まり方は実は共通しています。
76年版の『スター誕生』も『アリー/スター誕生』もファーストカットはノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)のライブシーンなんですね。
ただ、後者のライブシーンはそんなに長いものではないんですが、前者のライブシーンは異常に長くて、映画が開始してから約9分間続くんです(笑)
ちなみにお酒を飲みながらライブをしているのも同じですね。
ライブ後の車での移動
2作品ともノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)がライブ後に車で移動していくんですが、その後のエスター(アリー)との出会いへの持って行き方が微妙に異なります。
76年版ではマネージャーに翌日のライブで5万人の前でシラフで歌うことを約束させられていたんですが、車から飛び出して、酒場へと向かってしまい、そこでエスターと出会います。

一方で『アリー/スター誕生』では、兄がマネージャーをしていて、移動する前に酒を飲んでおきたいと言い出し、それを着きれてジャクソンを酒場で降ろします。
バーでの出会いのシーン

まず、76年版の『スター誕生』では、ノーマン・メインがエスターがステージで歌っている前で「酒をよこせ」と騒いでいて、それに対してエスターがブチ切れるんですよね(笑)

一方で、『アリー/スター誕生』では、アリーが「ラ・ヴィ・アン・ローズ』を歌いながら店内を踊って回り、その時にジャクソンと視線が交錯するという印象的な出会い方をしています。
この時に『アリー/スター誕生』では、ジャクソンがアリーの歌声に聞きほれた感覚が映像越しに伝わってくるんですが、76年版の方ではノーマン・メインは酔って暴れているので、「おまえ本当にエスターの歌聞いてたのかよ?」と思わずツッコミを入れてしまいそうになります(笑)
出会いの後の時間の過ごし方

まず『アリー/スター誕生』では、2人が別の店に飲みに行って、そしてスーパーマーケットの駐車場で『Shallow』を口ずさむんですよね。

一方で76年版の『スター誕生』はノーマン・メインがエスターの家までついていくんですが、彼女は「朝食時にまた来なさい。」といって追い返してしまうんです。
するとノーマンは朝食時にデリバリーピザを持ってエスターの家を再度訪れるんです(笑)

エスター(アリー)のライブへの参加

76年版のエスターはその日の朝にノーマンのライブへの参加を即決して、彼と共にヘリコプターでライブ会場へと向かいます。
一方で『アリー/スター誕生』では、アリーは当初はライブへの賛歌を断るんですよね。
そしてしばらく熟慮した後に、ノーマンが手配していた車でライブ会場へと向かいます。
その後ステージの袖でノーマン・メイン(ジャクソン・メイン)のライブをエスター(アリー)が見守るという構図になるんですが、ここで大きな違いがあります。
アリーはライブで歌唱を披露しますが、エスターは披露しません。
というのも76年版だと最初にエスターが駆けつけたライブは、ステージ上でノーマンがバイクで暴れて、中止になってしまうんですよ(笑)

とにかく全体的に76年版はぶっ飛んだ内容になっていて、逆に『アリー/スター誕生』はすごくタイトな作りになっているということが言えると思いますね。
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考察:四角いモチーフが導くラストシーンの「スター誕生」
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1937年版の『スタア誕生』から『アリー/スター誕生』に至るまで一貫して登場するのが、看板というモチーフです。
看板という四角いモチーフが印象的に登場するわけですが、1954年版などでは特に象徴的な使われ方をしていて、ノーマン・メインのポスターがエスターのビルボードへと張り替えられるんですよ。
つまり看板というモチーフは、端的にエスター(アリー)がスターになりつつあることを仄めかすアイテムです。

まず冒頭にトイレの鏡を見て、叫び声をあげるアリーの姿が映し出されます。
この時に、アリーは「まだ何者でもない自分の姿」を見つめているということになります。
その冒頭のシーンが、アリーとジャクソンの2人が屋上からビルボードを見つめているシーンと対比的に使われているんですよ。
何者でもない自分に嫌気がさし、叫び声をあげていた彼女が、後に看板に映し出された「スターになりつつある自分の姿」を見つめることとなるわけです。
ただ面白いのが、鏡というアイテムは自分をそのまま映し出す「四角い」モチーフなんですが、その他のテレビやスマホ、そしてビルボード(看板)という同じく「四角い」モチーフはそのままの自分を映し出すものではありません。
アリーはスターダムを駆け上がるにつれ、自分を見失っていきますが、それは「四角い」世界に映し出されるもう1人の自分と本当の自分の間にどんどんとギャップが生じていくからなんですね。
ジャクソンの死後、アリーは自宅にあるポスター(アリーのライブのもの?)の入った額縁を破壊します。
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これは「四角い」メディアに映し出される「アリー」というアイコンを自ら破壊しているようにも見えるシーンですし、間違いなく冒頭のトイレのシーンと看板を見つめるシーンと結びついています。
そして本作の最後の最後に、哀しみを経て、再び舞台に立ちます。
そして『アリー/スター誕生』のラストカットはアリーがスクリーンという「四角い」枠越しに我々を見つめているというものになっています。
これはまさにアリーがこれまでに作り上げられてきた「アリー」というメディアアイコンを自身の中に内包し、ありのままの自分として「誕生」した瞬間を表現しています。
この映画のラストシーンはまさに『スター誕生』の瞬間を描いているのです。
おわりに
基本的に映画『アリー/スター誕生』はこれまでの3作品のオマージュ要素を多く含みながらも、リメイクとして新しい側面をもきっちりと魅せています。
設定や物語の展開的な部分で言うと、1976年版は比較的近いと言えるでしょうか。
ただ、それに留まらずオリジナルである1937年版のオマージュ要素も多分に含まれています。

ぜひぜひご覧になって見てください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。