【ネタバレあり】映画『Us アス』伏線解説・考察:アメリカの人種差別・貧困に対する皮肉とその意味

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『Us アス』についてお話していこうと思います。

ナガ
アメリカ映画界のホープ、ジョーダン・ピール監督の新作をついに見ることができました!

前作『ゲットアウト』がアメリカで空前大ヒットを記録し、アカデミー賞脚本賞も受賞するという快挙を見せました。

徹底的に張り巡らされた伏線が織りなす緻密な脚本と、そしてホラーとコメディの絶妙なバランスが特徴で、当ブログ管理人も絶賛した作品です。

既に全米で公開されており、批評家からも高い支持率を獲得しています。

  • 批評家支持率:94%
  • オーディエンス支持率:61%
ナガ
オーディエンス支持率は意外と控えめだね・・・。

当ブログ管理人としてもプロットの緻密さや強度が『ゲットアウト』には及ばないような気がしましたし、脚本の穴もちらほらと見受けられたので、冷静な部分もあります。

ただアメリカで彼が「ヒッチコックの再来」とも評価されているように、圧倒的な演出力は見事だと思いますし、まさに今のアメリカに必要とされているテーマやメッセージ性は素晴らしいと思います。

そんな謎めいた新作『Us アス』について余すところなくお話していこうと思います。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となっております。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




映画『Us アス』

あらすじ

1986年、アデレード・ウィルソンは両親とともにサンタクルーズにある遊園地を訪れる。

父親がアトラクションに夢中になっている間に、アデレードはビーチにあるミラーハウスへと足を踏み入れてしまう。

突然、ミラーハウスの電源が落ち、暗闇の中で何とか脱出しようとする彼女。

そんな彼女の前に、突然自分とそっくりな女の子が現れる。

その後、救出されたアデレードだったが、恐怖とショックで大きなトラウマを抱えてしまい、しばらく話せなくなってしまった。

大人になった彼女はゲイブと結婚しており、娘のゾーラと息子のジェイソンという2人の子供にも恵まれていた。

幸せな毎日を送っていた4人だったが、ある日、ゲイブが家族でサンタクルーズのビーチを訪れるという提案をする。

奇しくもそのビーチは、かつてアデレードがトラウマを抱えるきっかけとなった場所だった。

海水浴を楽しんでいた家族たちだったが、長男ジェイソンがはぐれてしまう。

その頃、彼はビーチで、腕から血を流しながら立っている男を見つけた。

夜、自宅に戻ったアデレードゲイブに、かつてサンタクルーズのビーチで起きた不思議な出来事によってトラウマを負ったことを打ち明ける。

ゲイブは彼女をなだめるが、その時、突然停電が起こる。

気がつくと、玄関先に4人の不審者が立っていた・・・。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:ジョーダン・ピール
  • 脚本:ジョーダン・ピール
  • 撮影:マイケル・ジオラキス
  • 編集:ニコラス・モンスール
  • 音楽:マイケル・エイブルズ
ナガ
ジョーダン・ピールは本当に天才的だよね・・・。

今作の監督・脚本を務めたのが、冒頭でも紹介しましたがジョーダン・ピールですね。

元々はコメディアンや俳優として活躍していた人物で、バラエティ番組の製作を手掛けたりもしています。

彼の作品に通底する優れたコメディ要素の感覚というのは、こういう経歴の中で養われてきたものであるということが分かりますね。

撮影を担当したマイケル・ジオラキス『イット・フォローズ』にて高い評価を獲得した人物で、デビッド・ロバート・ミッチェル監督やM・ナイト・シャマラン監督などの名匠からの支持も熱いですね。

そこにコメディ畑出身のニコラス・モンスールの独特な編集や『ゲットアウト』でも観客の緊張感を煽る独特の音色で存在感を発揮したマイケル・エイブルズの音楽が加わり、完成度を高めています。

キャスト
  • ルピタ・ニョンゴ:アデレード・ウィルソン/レッド
  • ウィンストン・デューク:ゲイブ・ウィルソン/アブラハム
  • エヴァン・アレックス:ジェイソン・ウィルソン/プルート
  • シャハディ・ライト=ジョセフ:ゾーラ・ウィルソン/アンブラ

主演を務めたのは、2013年に『それでも夜は明ける』でアカデミー助演女優賞を受賞したことでも知られるルピタ・ニョンゴですね。

ディズニー版の『スターウォーズ』シリーズにもマズ・カナタ役として出演している彼女ですが、今作『Us アス』での演技も圧巻です。

2つの役の使い分けというのも恐ろしいぐらいに巧いのですが、彼女の役はプロットの性質上、観客を欺くことが求められているわけで、だからこそそれを見事にやり遂げてしまっていることにただただ驚きです。

夫のゲイブ役には、『ブラックパンサー』で長編映画デビューを果たしたウィンストン・デュークが起用されています。

また、経歴こそまだまだ浅いものの2人の子役エヴァン・アレックスシャハディ・ライト=ジョセフも1人2役の難しい役どころを見事に演じ切っており、これからに期待が持てます。

より詳しい情報を知りたいという方は、映画公式サイトへどうぞ!!

ナガ
ぜひぜひ劇場でご覧ください!!



映画『Us アス』伏線解説・考察(ネタバレあり)

本作が描いたものとその意味とは?

(C)2018 Universal Studios All Rights Reserved.

まずジョーダン・ピール監督の作品は、前作もそうなんですが、黒人の歴史や差別に裏打ちされて作られています。

『ゲットアウト』の中では、奴隷売買を思わせるような描写が登場したり、現在の白人リベラル層に残る潜在的な差別意識を浮き彫りにするなどしていました。

さて、そんな彼が今回『Us アス』において何を描こうとしたのでしょうか。

それを読み解く上で重要なヒントになっていたのが、Hands Across Americaです。

これは1986年5月26日に実際にアメリカで行われたイベントで、劇中にも紹介されていたように広大なアメリカ大陸の東の大西洋と西の太平洋を人間が手を繋いで、1つにしようという運動でした。

50年代・60年代に公民権運動が活発に行われ、アメリカでは、黒人が徐々に社会進出を果たすようになったと言われています。

Hands Across Americaというイベントはまさに、アメリカの多様な人々の融和を統合を世界に発信するかのようなものになっていました。

現在、映画を見ていてもポリティカルコレクトネスという考え方が浸透しており、黒人監督・俳優が積極的に起用され、作品の題材も黒人のパワーを強調するかのようなものが増えてきています。

表面的に見ると、アメリカでは黒人の社会進出が進み、白人と黒人が平等に共生する社会に変化していっているという風に見えると思います。

しかし、これがまやかしに過ぎないことはジョーダン・ピール監督が『ゲットアウト』の中で言及していた通りです。

公民権運動の真っ只中である1963年にアメリカ南部のアラバマ州で州知事に当選したジョージ・ウォレスは「人種隔離政策」の支持を表明し、保守派層から熱狂的な支持を獲得しました。

彼の当選に対する熱狂が表現していたのは、まさにアメリカ白人層に残る根強い差別意識と、彼らが黒人と融和した社会を望んでなどいないという意思表明だったのかもしれません。

そこから公民権法が改正され、当初「血の日曜日事件」を初めとした黒人と白人の衝突が各地で起こりながらも、融和に向けて少しずつ動き出すわけです。

ただ、それまで融和に強く反対し、分断・隔離を臨んできた白人たちが、突然リベラルな思想を持っているかのように振る舞い、ポリティカルコレクネスを意識して差別に反対して生きるようになったことには、いささかの違和感がありますよね。

そして面白いのが、ドナルド・トランプの登場です。

彼は、扇動的な発言を繰り返し、白人至上主義的な国づくりを訴えることで白人リベラル層の意識の奥に眠っていた差別意識や白人至上意識を蘇らせ、指示につなげたとも言われています。

Hands Across Americaというアメリカにおける人種融和の象徴が、極めて表面的なものでしかなく幻想でしかなかったことを、現在のアメリカの在り様はまさしく証明してしまっているわけですよ。

本作『Us アス』を見ていて、面白いのがタイラー一家がクローン人間(テザード)たちに襲われるシーンです。

妻のキティが喉を割かれ、何とか助けを求めてオフェリア(スピーカー型のAI端末)に「警察を呼んで(Call the police.)」と吹き込むんですが、端末は「警察糞くらえ(Fuck the police)」と認識してしまいます。

すると室内にN.W.Aの楽曲「Fuck The Police」が響き渡るのです。

この楽曲は1980年代後半に、西海岸を席捲した楽曲で、当時はびこっていた白人警察官による黒人に対する不当な操作や逮捕に対する批判を込めたヒップホップとなっています。

そんな楽曲が、白人の比較的裕福な家の中に響き渡っていて、その中で一家が惨殺されているという状況に何だか皮肉めいたものを感じてしまいます。

『マルコムX』『ブラッククランズマン』などを手掛け、近年のハリウッドに蔓延している白人目線のポリティカルコレクトネスに辟易としているスパイク・リー監督。

ジョーダン・ピール監督と親交が深い彼も、近年の白人と黒人の分断という現実を、理想と幻想で覆い隠そうとする社会の在り様に警鐘を鳴らしています。

『Us アス』という作品において、地下に住んでいるクローン人間として描かれた人たちは「私たちはアメリカ人だ。」と自称していました。

彼らというのは、まさしく近年のアメリカ社会において、人々が理想と幻想にばかり目を向け、いつしか目を背けようとするようになった暗い現実の象徴なのです。

だからこそ彼らは「アメリカ人」なのであり「私たち」なんですよ。

そして今の社会には、トランプ大統領の登場で顕在化しつつある白人と黒人の分断という現実を、必死に理想と幻想で掻き消そうとする動きが見受けられます。

ナガ
映画だってまさにそのための道具として使われている側面があるではないですか!

まさしく1986年にHands Across Americaというまやかしの融和の幻想で、暗い現実から人々の目を逸らそうとしたことと同じことが今起こっているんです。

だからこそジョーダン・ピール監督は、今この『Us アス』という作品を描く必要がありました。

ナガ
でも今回の映画でクローン人(テザード)として描かれたのって黒人だけじゃないよね?

そこなんですよ!実はジョーダン・ピール監督はこの映画で人種的側面に加えて、もう1つの「分断」を描いています。

それは、アメリカにおける富裕層と貧困層の分断という経済的な側面です。

注目したいのは、またもやタイラー一家がクローン人間(テザード)たちに襲われるシーンです。

この時、家に押し入ったクローン人間(テザード)たち、とりわけキティのクローンは興味深い行動を取っています。

彼女は、アデレードを殺害するチャンスにも関わらず口紅を塗って化粧を楽しんでいるんですよね。

本作の設定の中で、クローン人間たちはオリジナルの人間たちの生活や行動に影響を受け、とりわけその負の側面を背負ったり、逆の影響を受けたりするとされていました。

そう考えると、裕福なタイラー一家のクローンは、貧困層であり、貧しい生活を地下で強いられていたと考えるのが自然ですよね。

アメリカだけではなく、日本でも近年同じような傾向が見られますが、経済的なランクによって人々が分断され、貧困層を見捨てる方向に社会が向かっているようにすら思えます。

本作『Us アス』の中で地下の世界に向かうエスカレーターは下に向かう方向にしか伸びていませんでした。

これって裕福な人が貧困層に転落することはあれど、一度転落したら最後ないし貧困層に生まれついた人間が富裕層に上がることはできないという近年の経済の停滞性を象徴しているようにも見えます。

このようにアメリカないし世界中で、近年人種的や経済的な分断が起こっており、私たちはそれを必死に見て見ぬふりをしています。

しかし、私たちが暗い現実から目背けてしまった時、必ずそれは地の底から現れて、私たちの社会を包み込んでしまうことでしょう。

大切なのは理想や幻想ばかり見るのではなく、現実から目を背けないようにすることです。

ジョーダン・ピール監督は『Us アス』という作品を通じて、「私たち」に警鐘を鳴らしています。



この映画に散りばめられた小ネタたちが持つ意味とは?

前作『ゲットアウト』もそうですが、ジョーダン・ピール監督は作品の中に様々な小ネタを仕込んでいて、1つ1つにきちんと意味があります。

今回はその中のいくつかを取り上げて、徹底的に解説していこうと思います。

 

「11:11」という数字が持つ意味

今作『Us アス』の中で「11:11」という数字が意味深に登場しましたよね。

  • 冒頭のアデレードが遊園地で迷子になる際に立っていた男性が持っていた札
  • サンタクルーズで救急車で運び込まれる男性が持っていた札
  • ジェイソンが夜に指さした時計が表示していた時刻

では、この「11:11」にどんな意味があるのかということについてですが、これは作中でも触れられていた通りで旧約聖書に含まれるエレミヤ書への言及です。

エレミヤ書の11章の11節にどんな内容が書いてあるのかを引用しておきます。

それゆえ主はこう言われる、見よ、わたしは災を彼らの上に下す。彼らはそれを免れることはできない。彼らがわたしを呼んでも、わたしは聞かない。

エレミヤ書11章の11節より引用

まさに破壊の到来の福音とも言える内容ですよね。

もっと踏み込んでいきますと、エレミヤ書というのは、エレミヤという人物の預言書になっていて、神ヤハウェに従わないイスラエル国民がバビロンによって滅ぼされるという内容が綴られています。

しかし、イスラエル国民は楽観視して、これを受け入れなかったために、後に「バビロン捕囚」と言われる憂き目にあったとされています。

そしてエレミヤ書の29章の10節にはこんな記述が書かれています。

まことに、【主】はこう仰せられる。「バビロンに七十年の満ちるころ、わたしはあなたがたを顧み、あなたがたにわたしの幸いな約束を果たして、あなたがたをこの所に帰らせる。

エレミヤ書29章の10節より引用

つまりエレミヤという人物は、バビロン捕囚という憂き目にあった人々を何とか希望と平安へと導こうとした人物でもあるのです。

これを踏まえて『Us アス』という映画を振り返ってみると、バビロン捕囚された人々というのは、人類に作られ、地下の世界へと幽閉されてしまったクローンたちの存在のように思えます。

また、そんな存在を希望と平安へと導こうとする旗手として君臨したエレミヤとレッドの姿が重なるという点を指摘することもできますね。

 

マイケルジャクソンの「スリラー」に込められた意味

本作の冒頭で、幼少期のアデレードが父親に景品でマイケルジャクソンの「スリラー」のTシャツを取ってもらいますよね。

ここにどんな意味が隠されているのかを考えてみるのですが、これについては「スリラー」のMVを見たことがある人であれば、すぐに気がつくと思います。

「スリラー」のMVってマイケルジャクソンが満月の夜に狼になってしまい、彼女に襲い掛かるというプロットなんですね。

ただ、それは彼女が見ていた夢でした=という夢オチに見せかけて、最後に実はマイケルジャクソンは本当に狼男だったんだよということを仄めかすオチを用意してあります。

思えば本作『Us アス』のプロットって、この「スリラー」のMVの展開と全く同じなんですよ。

この小ネタに気がついた人は、かなり早い段階で本作の結末が読めたんじゃないでしょうか。

また、クローン人間たちが身に纏っている赤いジャンプスーツは80年代のスラッシャー映画の要素でもあるのですが、それ以上にこのMVのマイケルジャクソンを想起させますね。

 

ファーストカットに登場したVHSたち

本作のファーストカットでは、1986年の時系列で幼少のアデレードが見ているテレビの映像が映し出されます。

この時、テレビの横の棚には、意味深に映画のVHSが並べられているんですよ。

その作品を見ていくと、以下のようになっていました。

  • 『チャド』
  • 『2つの頭脳を持つ男』
  • 『グーニーズ』
  • 『ライトスタッフ』
  • 『ナイトメア』
ナガ
どれも80年代の映画だね!

まず、『チャド』という映画は正体は政府が不当に処理した放射能廃棄物によって変異したチャドと呼ばれる地下に住む怪物と人々の戦いを描いた作品です。

また『グーニーズ』は有名な作品ですが、これは地下室の向こうに広がる洞窟で少年たちが宝物を探して冒険をする話でしたよね。

この2つの作品には、「地下」という共通点があります。

そして『ナイトメア』という作品は、当ブログ管理人は見たことがないのですが、どうやら主人公の少年が幼少期に抱えたトラウマに苦悩し、両親を殺害してしまうという作品だそうです。

これは「幼少期に抱えたトラウマ」というキーワードで『Us アス』とリンクしています。

『2つの頭脳を持つ男』という作品は、そのタイトルがすでに示唆的ですよね。

本作のクローン人間たちの、オリジナルの人間と身体を別にしながら、その思考や行動を1つに共有するという設定を暗に仄めかしている様でもあります。

『ライトスタッフ』については、先ほどご紹介したHands Across Americaに通じる皮肉を交えて登場させているように思えます。

というのも当時の宇宙開発ってとにかく問題がありながらも個人や莫大な予算を犠牲にして、栄光と理想のために突き進んで行ったという側面があります。

そういう現実問題から目を逸らすために宇宙という理想を掲げていったことに対する皮肉が、『ライトスタッフ』という作品のVHSを置いておくことで感じられるようになっているのです。

他にも、映画で言うと、作中でジェイソン『ジョーズ』のTシャツを着ていましたが、これはビーチに遊びに来ていた家族がサメの登場で恐怖のどん底に追いやられるという映画でした。

これも『Us アス』という作品の展開に強くリンクしていますね。

 

本作にウサギが多く登場する意味

(C)2018 Universal Studios All Rights Reserved.

さて、映画『Us アス』を見ていると、実に印象的にウサギが登場しますよね。

真っ先に頭に浮かぶのはルイス・キャロル『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』かもしれません。

アメリカの地下に広がる世界とそこに暮らしているウサギという設定はまさしく近似しています。

また物語的に見ても、冒頭に少女アデレードが地下世界に迷い込む展開が近似していることやレッドという地下世界のボス的存在が同作の赤の女王を思わせることも指摘できるでしょうか。

一方で、宗教的な視点から見ても、今作におけるウサギは非常に示唆的と言えます。

ウサギは、イエスキリストの復活祭でもあるイースターのシンボルとされており、生命の復活と繁栄を表すとされています。

しかし、旧約聖書のレビ記を紐解くと、ウサギは不浄の生き物であるとされているんですね。

つまり、不浄なものとしての旧約聖書的な解釈に基づく、ウサギ像は葬り去られてしまい、後にイースターのシンボルとしてのイメージを付与されたというわけです。

この経緯を見ていると、本作のオリジナルの人間とクローンの人間の関連性に通じるところがあるようにも感じられます。



本作に隠された伏線と謎を徹底解説

ジョーダン・ピール監督の作品は、何と言っても最初に見た時と2回目に見た時では、全くその映画の見え方が変わるのが1つの特徴とも言えます。

そこで、今回は映画『Us アス』に隠されていた伏線や謎についてできるだけ多く解説していきたいと思います。

 

アデレードの行動の裏に隠されていたもの

(C)2018 Universal Studios All Rights Reserved.

やはり映画『Us アス』において1度目の鑑賞と2度目の鑑賞で一番見え方が変わってくるのは、アデレード(レッド)の行動でしょう。

まず、最初の不協和音はサンタクルーズの海辺へと向かう車の中での彼女の指を鳴らす音のリズムに違和感があることに気がつきましたでしょうか。

この時に車内に流れているのが、「I Got 5 on It」という有名な曲なのですが、彼女の刻むビートが明らかに楽曲とズレてるんですよね。

ナガ
確かにここで彼女に対して小さな違和感を抱いたよね・・・。

その後、ビーチを訪れた夜に、アデレードジェイソンと会話をしているシーンがありましたよね。

この時、ジェイソンが彼女に「僕が死んだと思った?」と尋ねていて、それに対して彼女は「迷子になったか、連れ去られたと思った。」と回答しています。

一見普通の母親としての発言ですが、よくよく事情を把握したうえで見てみると、彼女が心配していたのはクローン人間たちに自分の息子が連れ去られてしまうことだったということが分かります。

そして、彼らの家の前に4人の家族が現れた時に、家族の中で1人だけ異常な警戒心を示していて、すぐに警察に連絡していたのも彼女でした。

夫のゲイブが理性的な対応をしようとしていただけに、彼女の感情的な行動が余計に目立ちました。

もちろん1回目に見た時は、彼女が幼少期にトラウマを抱えていたからこその行動だと納得はできるんですが、2回目に見ると、これほどまでに彼女が警戒心を示したのは、自分がアデレードの人生を乗っ取ったクローンだと知っているからだったと解釈できます。

そしてもう1つ面白かったのが、アデレードはなぜか4人の不審者が家にやって来た時に、娘のゾーラに靴を履いてきなさいと指示しているんですよ。

これって、後々考えるとアデレードレッドは思考が繋がっているので、レッドゾーラに走らせるように仕向けることが読めていたということなのかもしれません。

ナガ
だとしたら恐ろしすぎる・・・。

あとは、レッドアデレードたちの家のスペアキーの位置を知ることができたのも、思考が繋がっているからと解釈できるでしょう。

その後のシーンで興味深いのは、やたらとアデレードが自分の子供のクローンの死に心を揺さぶられているところでしょうか。

アンブラの死に際しても、真っ先に車を降りて確認に行きましたし、プルートの死に際しては「ダメ!やめて!」と否定的な発言すらしていましたよね。

ここで分かるのが、アデレードレッドの感情のリンクなんですが、他の家族の面々はクローンの感情が流れ込んできている様子がありませんよね。

しかし、アデレードには確かに、レッド側の感情が流れ込んできていて、だからこそレッドが自分の子供たちの死を悲しむ感情が流れ込んできているのです。

つまりどちらが主導権を握っているオリジナル版なのかということがここからもうっすらと見えてきますよね・・・。

そして視覚的に面白いのが、物語が後半に進むにつれて、アデレードの白い衣服が血に染まって、だんだんと赤色に近づいていっているところですよね。

これは視覚的に、徐々に彼女の正体が明らかになっていっていることを示すものでもあります。(クローン側の赤いジャンプスーツに近づいていっているため)

彼女の行動は、1回目と2回目では違った意図や感情を見て取ることができると思います。

ぜひぜひ見返してみて、じっくりと確かめてみてください。

 

ジェイソンがプルートを火の中に誘導したギミック

(C)2018 Universal Studios All Rights Reserved.

物語の中盤過ぎで1つ大きな謎となったのが、ジェイソンが自分のクローンであるプルートを火の中へと誘導したシーンですよね。

なぜ、彼は自分のクローンが自分と同じ行動を取ることを見抜くことができたのでしょうか。

実は、序盤のクローンたちがアデレードたちの暮らす家に侵入してきたパートにヒントが隠されています。

ジェイソンプルートが小さな物置で対峙した際に、彼はマスクをかぶると自分のクローンが同じ行動を取るということに気がついているんですよ。

例えば、自分の手に手を重ねてきたり、自分と同じ手の動きをしたりしていました。

ここでプルートの性質に気がついていたらからこそ、家族の危機に際して咄嗟に自分の動きを真似するプルートを葬り去る方法を思いついたんでしょうね。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回はジョーダン・ピール監督最新作の『Us アス』についてお話してきました。

ホラー映画としても一級品なのですが、時折挿入されるコメディ要素のセンスや現代アメリカへの痛烈な皮肉交じりのメッセージも巧妙で、非常に完成度の高い仕上がりになっていたように思います。

ただ、脚本やプロットの完成度は、やはり前作『ゲットアウト』には及ばない印象は受けました。

ナガ
演出力は前作よりも圧倒的に上がっていますけどね・・・。

ともかく、ジョーダン・ピール監督は今後も非常に楽しみな監督であることに疑いの余地はありません。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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