【ネタバレあり】『ダンスウィズミー』感想・解説:これはミュージカル映画ではない?

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『ダンスウィズミー』についてお話していこうと思います。

ナガ
矢口史靖監督の新作とは・・・楽しみですね!!

『ハッピーフライト』『スウィングガールズ』といった作品を手掛け映画ファンからも高い支持を誇る映画監督です。

近年も『WOOD JOB!』『サバイバルファミリー』など一風変わった題材を扱う脚本を多く手掛けています。

そんな矢口監督の最新作がある種の原点回帰とも言えるミュージカル映画ということで、非常に期待値が高まりますよね。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となっております。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『ダンスウィズミー』

あらすじ

幼いころ歌うことが大好きで、バレエを習っており、ダンスも大好きだった静香は学校のミュージカルで主役を務めることになる。

しかし、ステージに上がり緊張が頂点に達してしまい、突然嘔吐してしまうという苦い思い出に終わってしまった。

それ以来、彼女はミュージカルを毛嫌いするようになり、そのまま大人になった。

ある日、姪っ子と訪れた遊園地で胡散臭い催眠術師のショーを見学を見学した際に、彼女は「音楽を聴くと歌って踊らずにいられない」催眠にかかってしまう。

音楽が流れると、職場でも構うことなく踊り始めてしまい、仕事にも支障をきたすようになる。

そんな折、静香は憧れの上司から自分の部署に来ないかという誘いを受けるが、何とかしてこの催眠を解かなくてはと思い立ち、その誘いを保留して1週間の休暇を申し出た。

探偵に捜索依頼を出したり、催眠術師のアシスタントを務めていた女性の千絵に声をかけるなどして、何とかして催眠術師を見つけ出そうとするが、一向に見つかる気配がない。

さらに、憧れの上司である涼介と訪れたレストランで大暴れしてしまい、賠償請求され家財道具の大半を売り払ったことで一文無しになってしまう。

そんな時、探偵の渡辺から催眠術師が新潟でショーをする予定であるという情報を手に入れる。

静香千絵に声をかけ、共に車で新潟を目指すこととなるのだった・・・。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:矢口史靖
  • 原作:矢口史靖
  • 脚本:矢口史靖
  • 撮影:谷口和寛
  • 照明:森紀博
  • 録音:郡弘道
  • 美術:磯田典宏
  • 装飾:前田亮
  • 編集:宮島竜治
  • 音楽:Gentle Forest Jazz Band / 野村卓史
ナガ
矢口監督作品のお馴染みのメンバーも集結しました!って感じだね!

監督・脚本を担当したのは、矢口史靖さんでこれまでもコメディ色と社会派色を絶妙に融合させたような魅力あふれる映画を多く世に送り出しています。

かなりべたべたな演出もやったりするので、このあたりで映画ファンからは人気がないのかなと思いきや、実は映画ファンからの支持も厚い監督で、これまでの作品も人気があります。

当ブログ管理人的には『スウィングガールズ』とあとは『WOOD JOB!』が好きですね。

非常に物語としては地味な作品ではあるんですが、矢口監督の傑出したコメディメイドな手法が彩りを添えていて、見ていて飽きない作りになっています。

そしてその他のスタッフを見ても、これまでの矢口監督作品に携わってきた面々が多く見られます。

スウィングジャズのジャンルで多彩なパフォーマンスを見せているGentle Forest Jazz Bandと矢口監督作品ではお馴染みの野村卓史さんがタッグを組み、本作の要とも言える劇伴音楽を手掛けています。

キャスト
  • 鈴木静香:三吉彩花
  • 斎藤千絵:やしろ優
  • 山本洋子:chay
  • 村上涼介:三浦貴大
  • 渡辺義雄:ムロツヨシ
  • マーチン:上田宝田明
ナガ
主演の三吉彩花さんが抜群に良かったですね!

本作において主人公の静香を演じるのは、三吉彩花さんです。

ミスセブンティーン2010に選ばれ、モデルとして活動する傍ら、アイドルとして、女優としても活動を続けてきた彼女。

モデル出身ということもあり、スタイルが良く、とりわけ手足が非常に長く見えるので、ダンスシーン映えする女優です。

今回の『ダンスウィズミー』の主人公としては、最適なキャスティングだったと思います。

そして静香と共に旅をする千絵を演じるのが芸人のやしろ優さんですね。

ここにアクセントをつけるべく、三吉彩花さんとはビジュアル的に対極に位置するとも言える彼女を連れてきたことによってダンスシーンに非常にコントラストが効いていて、見応えがありました。

とりわけヒップホップのダンスシーンでは、三吉彩花さんだけではパンチが足りない印象だったのですが、そこにやしろ優さんが加わることで、非常にパワフルになりました。

また、旅先で出会う弾き語りのミュージシャン役にシンガーソングライターのchayさんが起用されています。

ナガ
これがまた衝撃的な役なんだよね・・・(笑)

そして探偵役で作品の要所要所でコメデイエッセンスを加えてくれるムロツヨシさんが良い味を出しています。

より詳しい情報を知りたいという方は、映画公式サイトへどうぞ!!

ナガ
ぜひぜひ劇場でご覧ください!!



『ダンスウィズミー』感想・解説(ネタバレあり)

これはミュージカルではない!?

(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

本作『ダンスウィズミー』について矢口監督はミュージカルが苦手な方にこそおすすめしたい映画になっているとお話されていました。

まず、そもそもこの作品はミュージカル映画ではないんです。

ナガ
えっ?でも歌って踊ってたじゃん!

実は音楽を扱う作品のジャンルとしてはオペラ、音楽劇、ミュージカルなどが挙げられるでしょう。

オペラは分かりやすいと思いますが、歌唱を主体にした劇で、基本的に踊りや舞踊が取り入れられるということはありません。

そして次に作品の中で音楽が扱われるものの、あくまでもセリフ・演技と音楽は別物として区分けされているのが音楽劇です。

映画ファンの間で有名なジョン・カーニー監督の『はじまりのうた』『シングストリート』といった作品は、劇中で登場人物が楽曲を歌ってはいますが、それがセリフになっているというわけではないので、あくまでも音楽劇のカテゴリです。

一方で、セリフや感情の表現を音楽を通じて行うのがミュージカルです。

例えば、有名な『シェルブールの雨傘』という作品は劇中のセリフというセリフが音楽によって表現されている究極のミュージカルの形と言えるでしょう。

ここまでの3つの分類の大まかな定義を聞いていただければお分かりかとは思うんですが、今回の『ダンスウィズミー』という作品は専ら「音楽劇」に分類される作品です。

なぜなら、本作において主人公の静香はあくまでもその場で流れている音楽に合わせて歌って、踊っているだけで、そのシーンで物語が進行したり、歌詞がセリフになっていたりということはありません。

そのため、最初にも書いたようにいわゆる「ミュージカル映画」が苦手な人ににとっても見やすい映画になっているというわけですね。

 

音楽劇からミュージカルへ

しかし、面白いのが、この『ダンスウィズミー』という作品の音楽シーンの扱い方です。

一般的に映画のミュージカルシーンを見ている時って、その「虚構」が映画内現実とイコールになるわけですから、見たままに素直に盛り上がったり、感動したりしますよね。

ただ、ここで矢口監督が非常に巧妙な仕掛けをしています。

この映画はミュージカルシーンが映画内現実とイコールになっていない、つまりは映画内でも虚構という状態で描かれているのです。

それ故に、静香がオフィスでノリノリで社員を巻き込んで踊っているシーンでも、私たちはそれが虚構であることを悟っているがために、盛り上がるというよりは、気恥ずかしさや照れのような感情を味わうことになります。

ナガ
これは本当に巧いなぁ~と唸りましたね・・・。

ただ、物語の中盤でスイッチが切り替わって、少しずつ音楽シーンの色合いが変化していきます。

催眠にかかった静香が当初は無意識的に踊らされていて、基本的に踊ったり、歌ったりすることが裏目に出ていました。

しかし、中盤のギャングたちの中でヒップホップダンスを踊るシーンから明らかに音楽シーンの意味合いがネガティブからポジティブへとシフトしていっています。

歌って、踊ることで損をするのではなく、むしろ人を喜ばせたり、絆を結んだり、お金を手に入れたりとメリットの方が大きくなっていくんですね。

本作の序盤では、静香は自分の意識を現実世界に置いたままにして、催眠の効果によって虚構の世界で歌って、踊っているというある種の分離状態にありました。

一方、中盤以降になると、徐々に静香の意識の部分が歌って、踊ることに対して抵抗がなくなっていき、分離していた自己が1つになっていくような感触があります。

これはつまり静香にとっての現実と虚構が融合しようとしているということでもあります。

そして、いよいよ物語が終盤に突入していきます。

ここで1つ興味深かったのが、chay演じる洋子というキャラクターの存在です。

(C)2019「ダンスウィズミー」製作委員会

ナガ
このキャラクターに一体どんな意味があったんだろ?

実は洋子という人物は、今作『ダンスウィズミー』において最初にミュージカルを披露してくれたキャラクターなんですよ。

彼女は元カレの結婚式会場に突入していき、突然自分の未練の思いを歌詞に込めた歌を歌いながら会場で暴れまわりますよね。

皮肉にも彼女のミュージカル的行動が指し示す「虚構」は作品内現実とイコールなのです。

ここから作品がどんどんと音楽劇からミュージカルへと移行していっているのが見て取れますよね。

そして最後のダンスシーンですが、ここでその移行が完了するわけですよ。

静香は確かに催眠の効果によってステージに上がり、千絵たちと歌って、踊るわけですが、この時、作品内現実とミュージカルシーンが指し示す「虚構」がニアリーイコールになっているのです。

「虚構」の世界で歌って踊った彼らには、当然拍手喝采なわけですが、現実世界でも彼女たちには確かに拍手喝采が巻き起こっているのです。

ここで『ダンスウィズミー』という作品は音楽劇からミュージカルへと昇華したんですね。

このようにミュージカルにトラウマを抱えているキャラクターをメインに据えることで、彼女を音楽劇に巻き込み、徐々にそれをミュージカルへと転換していくという手法は非常に優れていたと思います。

ラストにミュージカル映画の締めくくりの定番とも言われるプロダクション・ナンバー的な演出があったことからも、本作がミュージカル映画として「終わった」ことは明白です。



エンタメを愛する人のための映画

本作は先ほどまでも述べてきたように、「ミュージカル」というジャンルをメタ的に扱うことで、現実と虚構の相反と合一を描いた作品です。

音楽を除いても、本作には催眠術やマジックという「虚構=エンタメ」が登場します。

確かに私たちは映画を見たからといって、映画の中の現実がそのまま自分の現実になるなんてことはありません。

催眠術にかかるなんてエンタメはほとんどが「虚構」の範疇ですし、マジックには必ずタネと仕掛けがあります。

それでも、私たちはそんな「虚構=エンタメ」をどうしたって愛してしまうんです。

『レディプレイヤー1』においてスティーブン・スピルバーグ監督は、「虚構の世界に入り浸るのは良くないが、現実に行き詰まったらいつでも虚構の世界に戻っておいで!」というメッセージを込め、エンタメ讃歌を描きました。

きっと「映画内の現実=虚構」が私たちの現実になることなんてありません。

私たちは映画を見終わると、エンドロールの後にひと時の暗闇に包まれて、自分が映画館にいたという現実へと引き戻されてしまいます。

しかし、エンタメというものは私たちにひと時の夢を見せてくれるわけで、その現実を超越した世界に浸る快感を味わうことができます。

映画や催眠術、マジックなんてものは所詮「虚構」でしかないのかもしれませんが、それをたとえ一瞬であっても私たちの現実にしてくれるところに意義があるのだと思います。

そして『ダンスウィズミー』という作品が個人的に素晴らしいと感じたのは、そんなエンタメ讃歌だけでは終わっていないところです。

この作品はエンタメ讃歌であると共に、現実讃歌でもあると思うんです。

『ダンスウィズミー』は、序盤から頑なに

  • 現実=歌って、踊ることに対して冷笑的
  • 虚構(音楽シーン)=歌って、踊ることに対して全員がノリノリ

という区分けをしてあります。

だからこそ、やっぱり現実ってつまらないよね・・・と思わせてくるんですが、これを敢えて前半にやることでミスリード的に機能させている点が流石です。

後半になるにつれて、先ほども書いたように「虚構=ミュージカル」と現実が徐々にその距離を縮めていきますよね。

すると、どうなっていくのかというと、静香たちにとっての現実がミュージカルのように多幸感に満ちた世界へと変化しているのです。

つまりこの作品は、先ほども書いたようにメタミュージカル的な側面から、現実を虚構へと近づけるアプローチをとっているんですが、同時に虚構を現実に近づける視点も持ち合わせています。

確かにミュージカル映画の中で起きているような出来事は、私たちが普段生きている世界では起こらないと思います。

しかし、私たちの世界にだって「虚構=エンタメ」の世界に匹敵するような瞬間が確かにあるはずです。

本作『ダンスウィズミー』のラストは、まさしく虚構が現実を超越した瞬間であり、同時に現実が虚構を超越した瞬間でもあります。

この映画を見て、劇場を出る時、少しだけ明日を生きる元気をもらえたような、そんな心地よさがありました。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は映画『ダンスウィズミー』についてお話してきました。

ダンスシーンは、三吉彩花さんの長い手足が魅せる優雅で華麗なダンスと、やしろ優さんのダイナミックで迫力のあるダンスが融合し、見事なハーモニーを奏でていました。

ナガ
邦画ってあまりミュージカル映画を作らない印象ですが、これほどのクオリティのものとなると本当にごくわずかだと思います!

また、劇中の楽曲の選曲も少し懐かしいテイストになっているので、幅広い年齢の方に楽しんでいただける内容になっていると思います。

  • Act Show:少年隊
  • 夢の中へ:井上陽水
  • 年下の男の子:キャンディーズ
  • ウェディングベル:Sugar 
  • タイムマシンにお願い:サディスティック・ミカ・バンド
ナガ
今作のために書き下ろされたHappy Valleyも良い感じでしたね!

邦ミュージカルは非常に珍しいので、この機会にぜひ劇場でご覧になってみてください!

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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