〇はじめに


 みなさんこんにちは。ナガと申します。

 今回はですね映画『ワンダー君は太陽』についてお話していこうと思います。

 本記事ではこの映画の「スターウォーズ」要素に注目しながら解説していきたいと考えております。記事の都合上ネタバレになるような内容を含みますので、ご了承ください。

 良かったら最後までお付き合いください。


〇 目次


〇ネタバレ:映画『ワンダー君は太陽』に登場する「スターウォーズ」シーン


 まずは本作『ワンダー君は太陽』に登場する「スターウォーズ」に関連したいくつかのシーンをご紹介しておこうと思います。

 ちなみになぜ本作で制作会社やその他の様々な事情を乗り越えて、「スターウォーズ」のキャラクターやモチーフを扱うことが出来たのかということに関してですが、どうやら本作のプロデューサーであるデイビット・ホバーマンがディズニーやルーカスフィルムとの繋がりを持っていたかららしいんですね。

 ちなみにデイビット・ホバーマンが製作を務めたディズニー映画の『美女と野獣』では、本作のスティーブン・チョボウスキー監督は脚本を担当しました。こういった過去の映画での繋がりも本作で「スターウォーズ」のキャラクターを扱うことが出来た大きな要因なのかもしれません。

 こういった制作会社の垣根を超えた繋がりって素敵ですよね。


①オギーと父親のジェダイごっこ


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(C)2017 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.


 まずは本作の冒頭、オギーの自宅で彼と父親のネイトがライトセーバーで遊んでいるシーンですね。何気ないシーンですが、親子の関わりが微笑ましいですね。

 「スターウォーズ」シリーズにおいて父と子というとどうしてもアナキンとルークの関係性を思い浮かべてしまいます。ただよく見ると、このシーンでマスクをつけて赤いライトセーバーを振っているのはオギーなんですよね。


②パダワンの三つ編み


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 本作の冒頭でオギーは「スターウォーズ」の中でパダワン、つまりジェダイ見習いの証明でもある三つ編みをしているんですよね。

 ただ彼は学校に登校した際に、その髪型のことをジュリアンから揶揄われ、傷心して三つ編みを切ってしまいます。三つ編みを切るというのは、つまりパダワンから1人前のジェダイになったことを意味するんですけどね。


③オギーとジャックのジェダイごっこ


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 オギーに学校で初めてできた親友であるジャックが家に遊びに来た時に2人はライトセーバーを使って遊びます。これまで父親としかしていなかったであろうジェダイごっこを友人とするという行為そのものに泣けてきます。

 このシーンをよくよく見てみるとこのシーンではジャックが赤いライトセーバー、オギーが緑色のライトセーバーを持っていますね。


④ブラウン先生とチューイ


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 オギーの担任の先生でもあるブラウン先生とチューイが一緒にいる姿がオギーの想像の世界ではしばしば登場しています。

 チューイと一緒にいるということはブラウン先生はハンソロ的な立ち位置にいる人物ということになりますね。いったいどんな意味があるのでしょうか。


⑤ジュリアンとダースシディアス


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 「スターウォーズ」シリーズ最大の敵であるダースシディアスのマスクが本作のハロウィンの仮装パーティーのシーンで登場します。

 よりにもよってそのマスクを装着するのがジュリアンというのが実に示唆的です。これについても後ほど意味を考えていきましょう。


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〇解説:オギー視点から見た「スターウォーズ」



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 さてここからはまず、映画でも描かれたオギーの視点から見る本作の「スターウォーズ」要素の意味を考えていきたいと思います。

 そもそも「スターウォーズ」は物語のマザータイプであるホメロスの叙事詩「オデュッセイア」に強く依拠した作品です。主人公が故郷を旅立ち、冒険の旅に出ます。そして冒険の中で数々の困難に直面し、成長していきます。また冒険の中で重要な人物に出会い(たいていは「隠れた父」「真実の母」「親友」など)、それが物語に大きな影響を与えていきます。そうした「イニシエーション」を経て、最後は英雄として故郷へと帰還するのです。「スターウォーズ」オリジナルトリロジーはまさしく王道英雄譚を準えています。

 そして本作におけるオギーの物語も言わば「スターウォーズ」的な英雄譚となっています。

 オギーは10歳になるまで家から出ることなく、家族と共に暮らしてきました。勉強はというと母親のホームティーチングで補っていて、学校にも行っていません。このオギーの前提条件が、タトゥイーンの片田舎で「自分は何者にもなれないのだ。」と半ば諦め交じりに生きていた外の世界を知らないルークと共通しています。

 そしてオギーは10歳になり、初めて学校に行くこととなります。つまりこれまで慣れ親しんだ「家」という故郷からの旅立ちのシーンでもあります。しかし、彼はここで数々の困難に直面することとなります。

 その困難の最たるものがジュリアンでした。彼は徹底的にオギーに対して「いじめ」を行います。そんなジュリアンの姿はオギーから見るとまさにダースシディアスのようなものです。この点でもルークとオギーには近似点が見出せます。

 また「スターウォーズ」シリーズにおいてルークの最大の理解者であり、パートナーとも言える存在としてハンソロが登場します。そしてハンソロが連れているのがチューイですね。映画『ワンダー君は太陽』においてブラウン先生はオギーに注意を払い、彼をサポートしようと努めています。またジュリアンから嫌がらせの手紙をロッカーに入れられていた際もブラウン先生は真っ先にそれに気がつき、行動しました。だからこそブラウン先生はオギーにとってのハンソロの様な存在だったんでしょうね。

 加えてオギーとジャックが家でジェダイごっこをしているシーンでジャックが赤いライトセーバーを持っているという事実は意外と示唆的だったわけですよ。このシーンが後にジャックが一時的とはいえジュリアンサイドに寄ってしまう展開を仄めかしていたわけです。

 ハロウィンのシーンでジュリアンのグループでオギーの陰口を言ってしまうジャックってダークサイドに堕ちてしまった「スターウォーズ」シリーズのダースベイダー(アナキンスカイウォーカー)と共通点がありませんか?ジュリアンがダースシディアスのマスクをつけているのも相まって、彼のダークサイド堕ちのシーンとも捉えられるのです。


参考:映画『スターウォーズ:帝国の逆襲』はなぜ素晴らしいのか?


 さらにジャックはその後、心を入れ替えてジュリアンに食ってかかるんですよね。これってまさしく「スターウォーズ:ジェダイの帰還」でベイダ―がシディアスに歯向かい、倒してしまう終盤の展開にそっくりではないですか。

 オギーは親友との出会い、様々な困難への直面を通じて人間的に成長し、そしてラストシーンではたくさんの人たちの前で讃えられます。これはまさしく「英雄としての帰還」を象徴するシーンとも言えます。

 映画『ワンダー君は太陽』で描かれたオギーの物語というのは、まさに「スターウォーズ」オリジナルトリロジーで描かれたルークの物語なんですよね。そう考えると、本作で「スターウォーズ」の要素が多く登場した理由も腑に落ちるのではないでしょうか?


〇解説:ジュリアン視点から見た「スターウォーズ」


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 ここからは映画では述べられていない原作『ワンダー』の続編的立ち位置に当たる『もうひとつのワンダー』の内容に言及していきます。こちらもネタバレになるような内容を一部含みますのでご注意ください。

もうひとつのワンダー
R・J・パラシオ
ほるぷ出版
2017-07-20



 映画版ではオギーにとってのダースシディアスのような存在だったジュリアンですが、それってあくまでもオギーの視点から見た物語でしかないんですよね。だからこそ映画だけを見てジュリアンは「悪い奴だ」と決めつけるのは非常に危険な考え方なんです。

 このジュリアンの物語に関しては当ブログの別記事にて詳しく解説しておりますので、そちらをご参照いただければと思います。


参考:【ネタバレ】ジュリアンの物語の裏に隠された秘密とは?


 では『もうひとつのワンダー』で一体ジュリアンのどんな物語が描かれたのかを「スターウォーズ」に関連する部分だけを掻い摘んで紹介しておきます。

 まずジュリアンがなぜオギーに対して「いじめ」をすることになったのかということに関してですが、その最大の理由の1つが彼の抱える恐怖からくる不眠症なんです。彼は幼少期に見たゾンビが登場するテレビCMの影響で、恐ろしいものを見ると夜眠れなくなる心理的な病にかかってしまったんです。彼は「スターウォーズ」のダースシディアスを見た時にも同じような恐怖を感じたと話しています。

 彼がオギーを初めて見た時に感じたのは嘲笑や驚き、軽蔑といった感情ではないんですよ。ただひたすらに恐怖だったんです。そう考えるとジュリアンの視点から見ると、オギーはダースシディアスでもあるんですよ。彼にとっての最大の敵はオギーだったわけですから。

 そしてジュリアンの物語の1つの大きなテーマに「親殺し」があります。これは実際に親を殺してしまうという意味ではなくて、親の言いなりになっている自分から卒業するという形で描かれます。

 映画『ワンダー君は太陽』の中で少しだけ登場したジュリアンの両親ですが、彼らは頑なに自分の息子の非を認めようとせず、正当化しました。そしてこんな学校にはいられないと言い始め、彼を転校させる決断をしてしまいます。しかし、ジュリアンはこの両親の決断に対してどうすることもできません。

 『もうひとつのワンダー』の中では、ジュリアンのその後のエピソードが語られます。その中で描かれるのは、ジュリアンがフランスにいる祖母の元を訪れ、彼女の過去の話を聞かせてもらう中で自分がオギーにしてきたことに対する心からの反省を獲得する物語です。

 しかし、彼の両親は「あなたは悪くない。オギーも悪いのだから、謝る必要はない。」と意地を張っています。それでもジュリアンは自分の意志でオギーに対する謝意を伝えるんですよね。それこそがまさに彼の「親殺し」の物語です。

 ちなみにジュリアンの物語においてもブラウン先生は「ルークにとってのハンソロ」的な立ち位置にいます。ブラウン先生だけはジュリアンが「本当は優しい子」であるということをきちんと理解していて、彼を評価してくれているんですよね。ジュリアンがオギーに謝罪する助けをしたのもまたブラウン先生です。

 映画では描かれませんでしたが、ジュリアンの物語にもまた「スターウォーズ」的な英雄譚の要素が反映されているのです。


〇善と悪の多面性について


 さて、ここまでオギーの視点とジュリアンの視点から『ワンダー君は太陽』と『もうひとつのワンダー』で扱われる「スターウォーズ」的な要素を紐解いてきました。

 その中で印象的だったのがオギーとジュリアンはそれぞれがそれぞれに物語の主人公であり、英雄でありヴィランでもあるんですよね。つまりこの作品が教えてくれるのは、善と悪とは非常に流動的なものであり、主観的であるということなんですよね。絶対的な善も悪も存在しないということです。

 そもそも我々の人間の社会に善と悪という概念を生み出したのはゾロアスター教ではないかと言われています。本来善も悪も無かったカオス状態の世界に、ゾロアスター教は善と悪、天国と地獄といった徹底的な二元論をもたらしました。ゾロアスター教の世界観では光の神は「アフラ・マズダ』、闇の神は「アンラ・マンユ」です。この二元論的な考えが、ギリシャ哲学なんかの世界観にも大きな影響を与え、今日の我々まで脈々と受け継がれてきました。

 ただ善悪というのは、やはりそんな簡単に分けられるものでは無いんですよね。「スターウォーズ」の中でもルークやベイダーの中で起こった善と悪のカオス状態は印象的でした。それでも善と悪の二元論的な世界観に裏打ちされた印象が強かったのが「スターウォーズ」シリーズですが、昨年公開の『スターウォーズ:最後のジェダイ』では完全に善と悪の境界を破壊し、カオスな世界観へと物語を引き戻しました。





 映画『ワンダー君は太陽』において主人公のオギーは確かにルーク・スカイウォーカーに重ねることが出来る人物ですし、英雄だと言えるかもしれません。しかし、少し見方を変えて、ジュリアンの視点から見てみると、彼はダースシディアスなんです。


参考:「スターウォーズ 最後のジェダイ善と悪のカオスへのシフト」

 この世界は善と悪の2つの概念だけで分類できてしまうほど簡単なことばかりではないんですよ。それを「スターウォーズ」という善と悪の二元論が根強く残る作品を取り入れながら、子供にも伝わるような形で描いた『ワンダー君は太陽』という作品はとても素晴らしいと思います。

 映画版だけではジュリアンの物語は描かれないのが、すこし残念なところではありますが、ぜひぜひ映画を見た後に『もうひとつのワンダー』もお手に取ってみてください。

 泣ける映画ではありますが、それ以上に大人も子供も深く考えさせられる映画であることは間違いありません。


参考:【ネタバレ】映画『ワンダー君は太陽』の教育的側面から見た素晴らしさ

〇おわりに


 ここまで読んでくださった皆さんありがとうございました。

 当ブログでは映画『ワンダー君は太陽』に関連する記事がこれで4つ目になります。

 そして1つ1つの記事が結構なボリュームがありますので、合計するともう25000字くらいは書いているんじゃないかと思われます。それくらい書けてしまうほどに深い作品なんですよ。

 確かにこの作品は「泣ける映画」ではあります。私自身も最初から最後まで泣きっぱなしだったと言っても過言ではないほどです。ただ「感動した」だけで終わってしまうのは、いささかもったいない作品です。この映画が伝えようとしたメッセージからみなさんが何かを学び取り、大切な経験になる手助けを出来たらと思い、たくさん記事を書いております。

 ぜひぜひいろいろと考えてみてください。

 映画は心で100%、脳で120%楽しむものだと思っております。

 今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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