【感想・考察】映画「淵に立つ」これこそが世界に通用する邦画だ!

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

↓深田監督にサインいただきました。

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アイキャッチ画像:©2016映画「淵に立つ」製作委員会 映画「淵に立つ」より

イントロ

本日、深田晃司監督の舞台挨拶付き上映で「淵に立つ」見てきました。カンヌ国際映画祭で「ある視点」部門で審査員賞を受賞したこの作品。本当に素晴らしい作品でした。これこそが世界に通用する邦画なのだと痛感させられる映画作品でした。

今回は公開されて間もないこと、おそらくノーマークの人のほうが多いであろうということで、ネタバレなしでこの映画の注目ポイント、魅力について語っていきたいと思います。

下町で小さな金属加工工場を営みながら平穏な暮らしを送っていた夫婦とその娘の前に、夫の昔の知人である前科者の男が現われる。奇妙な共同生活を送りはじめる彼らだったが、やがて男は残酷な爪痕を残して姿を消す。8年後、夫婦は皮肉な巡り合わせから男の消息をつかむ。しかし、そのことによって夫婦が互いに心の奥底に抱えてきた秘密があぶり出されていく。(https://eiga.com/movie/84756/)より引用

解説

まず、脚本が素晴らしいですね。邦画であっても洋画であっても説明しすぎる、描写しすぎる映画というのは厚みがありません。

以前、テラフォーマーズの記事でも少し書かせていただきましたが、トム・フーパー監督のように完成された映画を作る監督は個人的には好みではありません。深田監督が登壇した際に仰っていたことによると、彼は見る人が100人いるなら100通りの見方が生まれる映画を作りたいそうです。

つまり彼は見る人の中にある哲学、思想や信条を映し出す鏡になるような映画を目指しているのです。この作品はまさにそんな監督の狙いを体現した作品であるように思います。

小説部分や原案段階ではあったという登場人物の過去の描写や説明描写、解説口調のセリフ、状況の過剰な説明などの一切を排除し、大胆にシェイプアップしたことで洗練されていてかつ厚みのある仕上がりとなっていました。

解説、説明、セリフや状況描写に語らせるのではなく、演出や俳優陣の演技と言った部分で含みを持たせながら観客に考えること、想像することを求めているのです。

ぼんやりと見ていると完全においていかれるような作りではあるが、伏線もしっかりしておりかつ最低限の描写とセリフで観客の思考に働きかける作りになっています。まずこの点が優れていると感じました。


秀逸な色彩演出

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©2016映画「淵に立つ」製作委員会 映画「淵に立つ」より

次に色彩です。予告を見ていただいても分かる通りこの映画では、白と赤という2つの色が印象的です。この白いワイシャツに赤いTシャツという浅野忠信演じる八坂の衣装は浅野忠信さん自身が提案したものだそうで、監督もこのアイデアが非常に面白く、映画の意図するところにマッチしていたため採用したとのことです。

この演出は一種の心理的な技法で、監督が確信犯的に取り入れた演出だそうです。この色彩演出がどのような効果を持つのか、またどのような意図で取り入れられたのかという点についてはネタバレになるので言及はしません。

しかし、観客は無意識のうちに彼の仕掛けた心理トラップにはまっていくこととなる。果たしてそれに気づくことができるだろうか?また深田監督が、浅野忠信さんがこの演出を取り入れた意味に気づけるだろうか?

この映画には白と赤のモチーフがたくさん出てくる。ぼんやりと眺めるのではなく、ぜひその意味を考えながら見てもらいたいと思います。非常に興味深いポイントです。

音が生んだ変化

最後に音です。この件に関しては私が舞台挨拶の質疑応答で伺ったことも交えながら解説したい。まず深田監督の作品、今回の「淵に立つ」にしても前作の「さようなら」にしてもそうだが、基本的にあまり音楽、つまり劇伴音楽を用いないのです。

これはなぜかというと、先ほど述べた監督の映画を作るうえでの狙いが関係しているように考えられます。音楽というものは非常に「強く」、印象に残りやすいため、映画のイメージや解釈、考察を限定化してしまいがちなのです。

それを避けるために監督は音楽を多用しないのです。また今回、サウンドディレクターにフランスのチームがかかわったこともあり、邦画にはない独特の音声演出に仕上がったそうですね。

個人的にこの音の演出に関して秀逸だったと感じたのは、音だけで平和な家庭に、八坂という異物が入ってきたことを表現しきっていたことです。

食卓の音、何気ない日常生活の音、オルガンの音色。そういった何気ない音が徐々に変化していく過程が、そのまま家族に変化に直結しているという非常に効果的で素晴らしい演出でした。ネタバレになるので後半の展開については述べられないが、後半も含めてやはり全編を通して、非常に音というものに気を使って作った作品であるということが感じ取れます。ぜひそんな音たちに耳を傾けて注意深く聞いてほしいと思います。

まとめ

やはりカンヌで認められた作品、世界で認められた日本の映画というだけあって、レベルが高いと言われる今年の邦画の中でも頭一つ二つ抜けた傑作でした。

「あの男が現れるまで、私たちは家族だった。」のか「あの日、俺たちは本当の家族になれた。」のか?

深田監督が描く、とある家族の崩壊と再生の物語。ぜひその脚本のシャープさ、色彩演出、音声効果に注目して見てみてほしいと思います。必見の映画です。

追記になりますが、この作品に関してパンフレットを購入されることを強くおすすめする。監督が2006年に執筆したこの作品の原案、概要的なものに加えて、決定稿前のシナリオが全文掲載されている非常に豪華な内容になっています。800円で買えるパンフレットでここまで読み応えがあるのは本当に素晴らしいと思います。ぜひ購入してみてください。




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