【ネタバレあり】「さよならも出来ない」感想・解説:もしもSNSが無かったなら?

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね、映画「さよならも出来ない」について語っていきたいと思います。

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映画「さよならも出来ない」予告編より引用

良かったら最後までお付き合いください。

SNSについて

突然ですが、皆さんはSNS利用してますか?いまどきスマホを持っていない人の方が珍しくなってきましたよね。2016年の時点でスマートフォンの普及率は8割近いとされています。スマートフォンを持っている人はLINE、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSを最低でも1つぐらいは利用していると思います。

かくいう私も、LINE、Twitter、Facebookの3つのSNSを利用しています。あ、当ブログはFacebookアカウント有るので、良かったらフォローよろしくお願いしますね。

ちょっと話が逸れてしまいましたが、現代は多くの人がSNSを利用して、他人とコミュニケーションを取る時代になりました。自分の恋人、友人、知り合い、家族は当然なのですが、SNSは顔も知らない他人とコミュニケーションを取ることを可能にしたんですね。TwitterやLINEを使えば、顔も知らない赤の他人と容易にコミュニケーションを取れるんですね。

では、SNSは人間のコミュニケーションをより高いレベルに引き上げたんじゃないか?と言う風に見えるのですが、実はそうではありません。

例えば、今までなら直接面と向かってしていたやり取りがLINEのようなメッセージサービスに取って代わられ、友人同士で会っても顔を合わすことなく、メッセージでやり取りがなされるようになりました。今の学生の間では、LINEでの告白はアリらしいんですよね。自分は正直考えられませんが、それだけLINEというものが今の若い世代のコミュニケーションの根幹になっていることが伺える興味深い話ですよね。

また、TwitterのようなSNSでは、顔も知らない赤の他人と容易に繋がることができます。ただこれってメリットもあるんですが、デメリットもあります。例えば、Twitterの気軽感が祟ってか初対面の人間に平気でため口で絡んでみたり、手当たり次第に異性のアカウントにちょっかいをかけてみたり、顔が見えないからいいやと平気で誹謗中傷まがいのリプライを飛ばしてみたりということが日常的に見られます。

Twitter上だからいいやとこんなことを繰り返していると、どんどんと他人との距離感の掴み方が狂っていくんですよね。

SNSは確かに我々のコミュニケーションを助けてくれますが、同時に我々のコミュニケーション能力を衰退させているという側面もあるのです。

この結果として、我々はSNSを通して希薄な人間関係を今まで以上に作ることが可能になった一方で、他人と深い関わりを持つ機会が減っていってしまっているのではないかということが指摘できます。

今回扱う「さよならも出来ない」はそんな現代人のコミュニケーション事情について深く考えさせてくれる意欲作となっております。

あらすじ・概要

 別れてから3年も同棲生活を続けている香里と環。友人や周りの人間たちからは関係をはっきりさせたほうが良いと言われているが、家の中では2人でルールを設け、恋人でも友人でもない生活が成り立っている。そんなある日、環は会社の同僚から食事に誘われ、香里も同僚から思わせぶりな態度を示され……。(映画com.より引用)

本作は、京都から新たな映画を発信するため行われている人材育成事業「シネマカレッジ京都」のワークショップで生み出された作品で、同ワークショップの講師で、数々の映画で録音技師としても活躍する松野泉が監督を務めました。

また第17回TAMA NEW WAVEでグランプリ・主演女優賞を獲得するなど注目を集めた作品でもあります。

本作が切り取る「現代人」像

まず、本作「さよならも出来ない」が描き出すのはリアルな「現代人」像です。

で、この作品において一番注目してほしいのは、SNSが一切登場しないという点です。これが本作の最重要ポイントなのではないかと考えています。

つまるところ本作は「現代人」-「SNS」をしたらどうなるか?というある種の実験的な映画でもあるんですね。

SNSを使ってコミュニケーションをする場合、通常相手の顔は見えませんし、距離的に離れている状態ですよね。つまり、この場合意識せずとも相手と自分の間には一定の距離感があります。しかし、直接、顔を合わせてコミュニケーションをするとなると、自分で近すぎず遠すぎずの距離感の最適解を導き出さねばならないんですね。

ただ「現代人」はコミュニケーションの大部分をSNSに委ね、距離感の設定を外部化したがために、自分で最適解を見つけ出す能力が衰えてしまっているわけです。

そんな「現代人」がSNSというツールを奪われた場合、どうやって相手との距離感を導き出すのか?その最も極端な例が今作に登場するビニールテープによって境界線を生み出し、常に一定の距離感を維持するという方法なんですよね。

部屋中にビニールテープで境界線を作り、お互いの行動範囲を可視化し、互いに干渉できないよう決めます。

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映画「さよならも出来ない」予告編より引用

これって滑稽に見えるんですが、実はあり得ない話ではないんです。だからこそ空恐ろしいのです。近づくのも怖い、でも離れるのも怖い。この境界線は主人公たち2人を隔てるものでありながら、一定の距離感で2人を結びつけるものでもあります。

もっと言いましょう。この2人の部屋というのはいわばLINEを可視化したようなものなんですよね。2人で向き合ってコミュニケーションを取ることなく、交換ノートや境界線に置かれた表情が変わる置物や本でもってコミュニケーションを取ります。交換ノートはLINEのメッセージですし、表情が変わる置物や本というのは絵文字やスタンプのことですよね。

我々が普段LINEというツールを使って行っているコミュニケーションっていわばこういうものなんです。だからこそ深い人間関係を結ぶには、やはり直接面と向かって話す必要があるのです。

つまり、本作はそんな「現代人」へのエッジの効いた皮肉を孕んでいるわけです。

香里と環の恋愛描写が絶妙すぎる

本作の中心は主人公である香里と環の恋愛物語です。

ただ、この作品はこの2人が恋愛関係を解消して3年が経過しているにもかかわらず同棲状態を継続していてかつ部屋にはビニールテープで境界線が引かれ、2人の行動範囲が決められているという何とも奇妙な状態で物語が始まります。

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映画「さよならも出来ない」予告編より引用

そして物語が進行していくのですが、二人がどういう経緯で付き合い始めたのか?どういう恋愛関係だったのか?なぜ別れたのか?なぜ今のような状態に至ったのか?これらすべてが一切明確に描かれません。

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映画「さよならも出来ない」予告編より引用

しかし、物語が進行するにつれて漠然とそれが浮かび上がってくるんですよ。作中で環が言いますよね。「これは2人の問題だから、他人に説明することは難しい。他人に説明するとなれば、2人でこれまで過ごした時間のすべてを説明しなければならない。」と。でも今の部屋に引かれた境界線や2人の関係性にこれまで何が起こってきたのかがうっすらとではありますが滲み出てくるんですね。

この「語らなさ」具合が絶妙に機能しているんですよね。確かに明確に説明してしまえば、映画として物語としてわかりやすさは増します。ただ、この作品の最大の肝である「ビニールテープの境界線が引かれた部屋の奇妙さ」は失われてしまいます。ビニールテープの境界線が引かれていることを鑑賞する側に納得させてしまったならば、この映画は台無しになります。なぜならあの境界線の本当の意味は香里と環の2人にしか分からないものでなければならないからです。

故に、鑑賞する側にあえて2人の関係性に関する説明をせずに、そのあたりをグレーに留めた点が本作の素晴らしい点であると私は考えています。

また、終盤のケーキを囲んでの2人のやり取りがもう絶妙すぎてぐうの音も出ないんですよ。これはぜひ作品を見て、楽しんでほしいのであえて語らずにグレーのままにとどめておきたいと思います。

結局のところ何が言いたいのかというと、本作が素晴らしいのは観客に物語を理解することよりも、香里と環の2人の世界を描くことに徹したということが挙げられます。それでいて観客にもうっすらと2人の関係性を想像させるのですからこれはもう絶妙としか言いようがありません。

余談:個人的に気になったとあるセリフ・・・。

本作の中盤ですかね・・・。香里の友人で妊婦の女性が登場するんですが、香里がその友人のお腹を見てとあるセリフを言うんですよね。

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映画「さよならも出来ない」予告編より引用

これってもしかして・・・あの伝説のアニメ「スクールデイズ」のオマージュ・・・??そんなわけはないですよね・・・(笑)

その詳細はご自分の目で作品を見て、確かめてみてください。

本作に登場する書籍

本作では2人のコミュニケーションにおいて本が大きな役割を果たしています。ぜひチェックしてみてください。私も「ハッピーバースデー」は読んでみたくなりましたね。

ノラや

城の崎にて

崩れ

ハッピーバースデー

おわりに

若い才能が集まってこんなに素晴らしい作品を撮れるわけですから、本当に邦画の未来は明るいなあと思います。あとはこういう作品に正当な出資と正当な評価が与えられるようになれば良いのですが、まだまだ厳しいんですかね?

超小規模上映で現在も上映しているのは、大阪の第七藝術劇場さんだけで、それも1週間限定の上映となっています。

見れるチャンスがある方は他のどんな作品よりも優先して見て欲しいと思います。一見の価値はあります。間違いなくあります。私も全力でおすすめします。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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