【M-1】映画「火花」を見て、ジャルジャル福徳の涙に思うこと

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね、映画「火花」の話・・・ではなく昨日行われたM-1グランプリについてお話していきたいと思います。

しかし、仮にも映画ブログですので「火花」についてのお話も絡めていければと思っております。

良かったら最後までお付き合いください。

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優勝したのは「とろサーモン」

今回のM-1を制したのは、ラストイヤーの「とろサーモン」でした。

彼らのM-1歴を見てみるとまさに苦節15年という言葉がぴったりです。

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彼らが実力のある漫才師であることは多くの人の知るところです。しかしながら、準決勝どまりで決勝にすら上がれない状態で長い年月が経ちました。そしてようやく決勝の舞台に上がり、そして見事に優勝を手にしました。

多くの人が「和牛」の優勝を確信する中で、もはや漫才を披露した「とろサーモン」自身も「和牛」の優勝だろうと半ば諦めていた状況の中で、優勝を勝ち取ってみせました。

優勝が決まった瞬間の「信じられない」というような2人のキョトンとした表情が忘れられません。「クズ」としても有名なとろサーモンの久保田ですが、そんな彼が人目をはばからず涙していたのも合わせて印象的でした。

2010年にM-1の歴史は一度幕を閉じました。その最後の大会で、優勝したのは「笑い飯」でした。彼らも幾度となくM-1グランプリの決勝の舞台に立ち、そしてそれまで一度も栄冠を手にすることができなかった漫才師でした。2010年のM-1決勝戦ファイナリストは笑い飯、スリムクラブ、パンクブーブーの3組でした。1本目のネタでは、笑い飯とパンクブーブーが圧倒的な面白さを見せつけました。しかし、「笑い飯」の2本目のネタは明らかに1本目よりも数段落ちるネタでした。それでもスリムクラブと1票差という僅差で優勝しました。

これを見た時に、M-1にはカンヌ国際映画祭と同じような気流があるのかな?とは思いました。カンヌ国際映画祭では、その作品だけでなくその監督のこれまでの経歴が作品の評価に影響を与えることが少なくないですし、自分たちが「育てた」という自負のある映画監督の作品に賞を与えたり、優遇したりすることも少なくありません。「そして父になる」や「海街diary」で知られる是枝監督も1つ分かりやすい例です。是枝監督は2004年に「誰も知らない」という作品でカンヌ国際映画祭に出品されました。そしてその後2009年には「空気人形」で出品されました。この2作品は受賞には至らずも、高い評価を獲得しました。

その後2013年の「そして父になる」で審査員賞と特別賞を受賞し、以後彼の作品は毎年カンヌ国際映画祭に招待されるようになります。この「そして父になる」という作品が彼のキャリアの中で一番素晴らしい作品かと聞かれると、難しいものがあります。個人的な見解を述べますと「歩いても歩いても」や「誰も知らない」を上回る評価を受けている点については疑問点が残ります。ただカンヌ国際映画祭は自分たちが「育てた」監督として、2013年に是枝監督に賞を与えたという側面も、作品そのものの評価に加えて一部あったとは思うんです。私の敬愛するヴィムヴェンダース監督が「パリ、テキサス」でグランプリを受賞した時のことを、分析しても、やはり自分たちが「育てた」映画監督であるという自負があるのだと感じました。

さらに受賞した監督の作品を優先的に招待するという方針を見ても、彼らが自分たちの映画祭から輩出したタレントを重要視する点は頷けます。

話が逸れましたが、2010年の「笑い飯」の優勝は、あの場でのネタの評価にそれまでのM-1での功績が少なからず影響を与えていたとは思います。そして今年、2017年のM-1についてもそれと同じような側面があることは無視できないとは思います。

ただ今回は和牛、とろサーモン、ミキの3組が非常に拮抗していて、正直どこに優勝が出てもおかしくない状況でした。そんな中で、審査員の人間的な部分がとろサーモンの得票に少なからず影響を与えたのではないかとは思いました。

こんなことを言っているからといって、私は彼らの優勝を疑問視しているわけではありません。彼らはもちろん優勝にふさわしいです。そして優勝を納得させるだけの漫才を見せました。

ただ審査員のパーソナルな感情も少なからずはあると思うんです。これは決して悪いことではありませんし、むしろ人間らしい「評価」だと考えています。

小説ないし映画「火花」を見ていると、売れない芸人と言うのは山ほどいることがひしひしと伝わってきます。少しテレビに出れるようになってもすぐにまた出れなくなったり、はたまた一生日の目を見ない芸人の方が確実に多いわけです。でも、そんな日の目を見ない彼らも日々、死に物狂いで、人生をかけてお笑いに取り組んでいます。「火花」という作品はある意味で、そういった日の目を見ることなく去っていったお笑い芸人たちへの、同志たちへの賛歌なんですよね。

又吉 直樹
文藝春秋
2017-02-10



特に、売れて一定の地位を築いた芸歴の長い芸人にもなるとそういった実力はあるのに、売れない芸人、売れなかった芸人というものをたくさん見てきていると思うんです。だからこそそんな彼らを救い上げてあげたい、日の目を見させてあげたいという思いは審査員を務めているような芸人たちの中には間違いなくあると思います。

だからこそ、M-1のファイナリストたちへの投票で、とろサーモンに票が多く入ったのは、ある意味で芸人が芸人を評価したからなんですよね。芸人としての苦悩も悲哀も全て自分のものとして経験してきた彼らだからこそ、ああいう場で彼らの人間的な部分がどうしても垣間見えてしまうんだと思います。だからこそ今回のM-1の審査は松本人志も言っていたように「良かった」と思います。


「とろサーモン」が優勝した今回のM-1は美しかった。

「火花」のように散っていくかに思われた「とろサーモン」を、救い上げて大輪の「花火」として咲かせようと試みた審査員たちの「評価」はもろもろの背景を抜きにして純粋に美しいとしか言いようがありません。

 芸人が芸人を評価したからこそ生まれたドラマに、そして優勝した「とろサーモン」の涙に思わず感動してしまいました。今年のM-1はネタもハイレベルでしたが、それ以上に魅力ある大会だったと思います。

ジャルジャル福徳の涙に思うこと

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私が個人的に今年一番M-1で爪痕を残したと感じているのが「ジャルジャル」なんですね。彼らは残念ながら決勝戦で6位という結果に終わってしまいました。

彼らが見せたネタというのは、いわば漫才というお笑いの形式、システムがどこまで耐久性を持っているのか?というその限界に挑戦した漫才だったと思うんですね。

直前に登場し、上沼恵美子に酷評されたことで話題になっている「マヂカルラブリー」がやったのは漫才かどうか怪しいラインのネタでした。2人の会話のかけあいを基調とする漫才というシステムからはあまりにもかけ離れていました。だからこその低評価だったとは思います。

ただ「ジャルジャル」が決勝の舞台で見せたあのネタは一見漫才か?と疑問符が付きはするものの、間違いなく漫才であったし、松本人志も言っていましたが「ギリギリで漫才」だったと思います。

2人の会話のかけあいを基調とする漫才の中で、2人のかけあいを会話ではなくゲーム形式で展開していくのが今回の彼らの漫才でした。4分間の持ち時間をあのゲームだけで使い切るという独特の「しつこさ」と、途中から我々は何を見せられているんだ・・・?と感じずにはいられない「シュールさ」はまさに「ジャルジャル」らしさでした。

しかし、今回のネタはそれだけではありません。序盤から巧みに伏線を張っておいて、後半に観客も忘れたであろう頃にさらっとそれを回収する構成が非常に面白い。さらに時折挟まれる後藤のエッジの効いたツッコミが漫才としてギリギリの整合性を保たせていました。

 単純に「ジャルジャル」らしさも出ていたし、それに加えて誰も見たことが無いような「革新性」を持ち込んだという点で、このネタは彼らの1つの集大成であることは間違いないように思います。

さらに言うなれば、このチャレンジングなネタをM-1の決勝の舞台で、しかも大トリの出番で、きっちりとやりきってしまう度胸と勇気は高く評価したいところです。これだけの高速の掛け合いは相当な努力と練習を積まなければ、まず実現できないでしょう。それを目立ったミスもなく、ほとんど完璧にやり切って見せた彼らの芸人としての懐の深さに感激でした。

ただ結果としては、6位でファイナリストに残ることはできませんでした。

ただ審査員の評価が実に興味深いです。特にお笑い界に革新性を与えてきた松本人志が95点という全漫才師の中で最高得点を与えていることは特筆すべきでしょう。彼はやっぱり新しい笑いに常に寛大で貪欲なんですよね。そして自分が面白いと思ったものには正直なんだと思います。

ファイナルの投票で彼は「和牛」に投票しましたが、後に「とろサーモン」の優勝に涙を浮かべる一幕がありました。おそらく彼も「とろサーモン」に投票してあげたいというパーソナルな思いはあったと思うんです。それでもあくまで自分が面白いと思ったものに正直になって「和牛」に投票したのでしょう。そういう芸人でありながら、あくまで審査員に徹することのできる松本人志はやはりM-1に必要不可欠な人物だと改めて思いました。

そんな彼が、「ジャルジャル」を高く評価しているというのは、やはり印象的でした。

対照的に、2015年大会でも「ジャルジャル」に比較的低評価をつけていた中川家礼二は今回も比較的低評価をつけていました。はっきりとは覚えていませんが、ネタの内容が薄いとか漫才っぽくないという論調だったようには思います。そして今回も「同じ繰り返し」「大きな展開が欲しい」という講評でした。中川家というとやはりコテコテの王道漫才ですから、「ジャルジャル」のやっているフリースタイルとはあまりにも毛色が違いすぎて高得点がどうしても出ないのかな?とは思いました。

そしてオール巨人師匠は、今回のファイナリストの中で唯一「新しい」漫才をやったことを評価しました。この辺りで私は感動して泣いてしまいました。

講評を聞く福徳は髪をかき上げて、うっすらと涙を浮かべていました。一方の後藤は相方がそんな状態だから自分が気を張らないとと必死に歯を食いしばってボケに徹していました。このコンビ愛にも涙が止まりませんでした。

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 福徳の「お前、よぉボケれんな・・・。」というセリフは今回のM-1で最もエモーショナルなシーンだったと思います。

それだけこのネタにかけてきたんだという強い思いが感じられました。「ジャルジャル」は今いわば窮地に立たされているコンビです。「ジャルやるっ!」という冠番組が秋に終了し、レギュラー番組だった「めちゃイケ」が終了することが決定しました。これまでは若手芸人としての勢いそのままに芸能界のスターダムを駆け上がってきた2人ですが、今は淘汰される側に回ろうとしています。

そんな状況で迎えたM-1だからこそ彼らが今回のネタにかけた思いというのは、並々ならないものだったと思います。「ここで負けたら、終わりだ。」くらいの強い信念で、まさに背水の陣で臨んだM-1だったのでしょう。そして、渾身のネタを完璧にやり切って、それでも結果を出す事ができませんでした。

 私は、福徳の涙と涙を堪える相方の後藤の表情に、人生をかける芸人の生き様を見たような気がしました。

もちろんファイナリスト全ての芸人が、ここで結果を出すんだという強い思いで臨んでいるでしょうし、その思いの強さに優劣をつけるなんてことは野暮なことです。

ただ「ジャルジャル」というコンビは、その2枚目の風貌のためにアイドル性で売れたと思っている人がいたり、独特でシュールな笑いが人を選ぶために面白くないのに売れている芸人の代表格のように語られている節がありました。2015年のM-1の時には、「ジャルジャル」以外なら誰が優勝でも良いという心無いコメントが話題になりました。

 そんな彼らが血反吐をはくような思いで努力し、芸人に人生を懸けているという信念が今回のM-1で多くの方に伝わったのではないかと思います。

 加えて常に新しい笑いに挑戦しようとし続けるハングリーな姿勢も多くの人に伝わったのではないかと思っております。

確かに「ジャルジャル」のネタは人を選びます。それは間違いありません。ただ彼らに印象だけで否定的な視点を持っている人は、今回のM-1での彼らの姿に何かを感じ取ってほしいと願うばかりです。

おわりに

小説の「火花」にこんな1節があります。

 やはり、よくわからない新興の流派は、その分野を守るために排斥するのも正当な防護だと思う。ただし、全てが上手くいった場合、どちらが面白いかを考えると圧倒的に神谷さんの考え方だ。博打ではあるけれど。(文春文庫「火花」又吉直樹:41ページより引用)

又吉 直樹
文藝春秋
2017-02-10

 

神谷という常に既存の枠組みにとらわれない笑いを追求する存在に、主人公の徳永が心の中で論評を加えている1節です。

確かに正当な漫才という形式が幹として存在して、そこから派生していく枝葉のような新興の流派は幹に栄養を行き渡らせるために剪定されてしまうのかもしれません。それはある意味で正しいことです。でもそれでは面白くないし、お笑い界は廃れていってしまうと思います。

M-1決勝という大舞台で、全く新しい漫才をやろうとした「ジャルジャル」の「博打」は、絶対に無駄にならないと思います。確かにあの舞台では6位という結果がつきましたから、彼らは「博打」に負けたのかもしれません。ただ、まだ真の勝ち負けはついていません。これからが勝負です。彼らが漫才師人生を懸けた「博打」に勝って、売れることを陰ながら祈っております。

 そして、漫才という木の幹を守る人もいて、一方で新しく出てきた枝葉の部分を評価する松本人志やオール巨人師匠のような芸人がいて、という日本のお笑い界はまだまだ安泰だと思いました。

久々に「面白い」M-1グランプリを見れたように思います。

 そして優勝した「とろサーモン」おめでとうございます!!

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

余談ですが、映画「火花」ただいま公開中です!!ぜひ劇場でご覧ください!!




19 件のコメント

  • タイムラインで流れてきたので読ませていただきました。
    私がM-1でジャルジャルの漫才を見て思ったことはまさに書いている通りでした。
    あのオオトリの場でノーミスであれをやる度胸、化物だと思います。
    私はまだ20歳なので何を上から言ってるんだと思われますが、そんな若い私にも伝わってくるほどジャルジャルは凄かったんです。
    少なくともジャルジャルの漫才ははここにいる1人のくすぶっている青年に前に進む勇気と度胸を与えてくれました。
    コメント以上です。失礼致しました。

  • そして
    貴方のような視聴者がいることが
    日本のお笑い界がまだまだ安泰な証でしょう
    お笑いの魅力を再認識できました。
    ありがとう。

  • 良い記事ですね。
    私は周囲の人に今回のM1のジャルジャルに感銘を受けた話しをするのですが、どうも上手く伝えきれずこの感情はなんだろうと自問自答をしていました。
    この記事を見てこれだ!と納得できました。
    ありがとうございます。
    点数じゃない、優劣じゃないこういう人間模様が松本人志さんの言う、M1は素晴らしい大会だ。たる所以だと思いました。

  • ナガさん、はじめまして。M-1グランプリ評、めっちゃくちゃ面白かったというか、ナガさんの真っ当な考え方に感動しました。真っ当な、というか、偏っていないといいますか。実はM-1見ていないのですが、是非とも見てみたいと思います。ありがとうございます。

  • はじめまして。
    こういうブログなどの記事でコメントに至るのははじめてなのですが、あまりに内容に共感と感銘を受けたため、書かずにはいられませんでした。
    私はそれほどお笑いに詳しいわけではないですし、あれほど話題になった火花の内容もCMで感じとれるほどのストーリーしかわかりません。しかし、ジャルジャルの福徳の言葉。あれは確かにお笑いを本気でやっている人の漏れたような思いが伝わり涙せずにはいられませんでした。ここ数年のM-1もほんやりとしか見ておらずむしろ「いうほどおもしろいか?」と感じることが多かったのですが、今年は内容も挑むもののポテンシャルや情熱も最高に熱い年だったように感じます。とろサーモンも本当におめでとう。そして、このような素敵な記事を書いていただきありがとうございました。

  • ジャルジャルの姿に感動して色々検索してここに来ました。
    この記事は、僕が感じた事をほぼそのまま書いてくれていたブログです。
    ジャルジャル、売れて欲しいです。
    余談ですが、売れない若手芸人の葛藤を描いた映画だと、僕は「花火」よりも「僕たちの交換日記」が好きです。

  • M1の熱さめやらず、とろサーモンの動画見たり、録画を見直している日々、このような文章をみたら、またまた泣いてしまいますよ。このように分析し、表現できる素晴らしさ、自分のなかのいろんな感情が、宙に浮いていたけれど、ここに無事にたどりつけてほっとしております。ありがとうございます☺

  • 通りすがりの大学生さんコメントありがとうございます。やっぱり全力で何かに人生をかけている人の姿を見ると、自分も熱くなりますよね!
    今年のM1は1つのドラマを見ているかのようでした(^ ^)

  • 風は西からさんコメントありがとうございます。M1が特別な大会である理由がギュッと詰まってましたよね。今年のM1は本当に素晴らしかったです(^ ^)

  • おみしろさんコメントありがとうございます。今年のM1にはM1が特別たる所以がギュッと詰まってましたね!!本当に素晴らしかったです!!ぜひ火花もチェックしてみてください(^ ^)

  • 沢木さんコメントありがとうございます。
    「僕たちの交換日記」チェックしてみますね!ありがとうございます(^ ^)

  • おばはんさんコメントありがとうございます。そう言っていただけると非常に嬉しいです。今年のM1は何度見ても、熱くなれますし、泣いてしまいますよねヽ(;▽;)ノ

  • お笑い愛に溢れた文章を書かれますね。
    読んでいてとても気持ちがよくなりました。
    ありがとうございます。

  • ヤマトさんコメントありがとうございます!
    お笑いにそこまで詳しいわけではないのですが、そう言っていただけると嬉しいです!ありがとうございます(^-^)/

  • 七海さんコメントありがとうございます!
    やはり自分たちのスタイルを貫く姿勢に痺れますよね!何とか来年のM1ラストイヤーでものにして欲しいですね(^ ^)

  • @ てるふぃーさん
    コメントありがとうございます!
    本来は芸人のパーソナルな部分を語るのは野暮なのかもしれませんが、M1の時はどうしても語りたくなってしまいます…

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