みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね映画『銀魂 THE FINAL』についてお話していきます。
当ブログ管理人が『銀魂』を初めて読んだのは、実は「柳生編」でして、ジャンプ本誌ではなく単行本から読み始めました。
そこから遡って原作を読み、以降も読み続けるようになりましたね。
それでも、あの『銀魂』が完結するといううわさを聞きつけ、何とか最後まで読み進めることができました。
ジャンプマンガの中では少し邪道な作風ながらも、たった1人から始まった物語が、最高の仲間たちと共に大団円を迎えるという少年漫画の王道を貫いてくれた本作との別れは何とも名残惜しいものがありましたね。
特に終盤は『銀魂』らしいと言えば『銀魂』らしいのですが、「完結詐欺」「完結未遂」をやらかしていました。
将軍暗殺篇に端を発する約3年以上に及ぶシリアス長篇群の大トリにあたる銀ノ魂篇も、2年後のかぶき町に舞台を移し半年以上連載されるなどし、終わりが見えませんでした。
そんな中、2018年8月20日発売号のジャンプで「最終話まであと5話」アナウンスが発表され、私も含めてファンは衝撃と懐疑を抱きました。
「いや、あと5話で終わるわけねえじゃん…。」
そして、案の定「俺達の戦いはジャンプGIGAからだァァ‼」と銀時が叫んで終わるという、「終わる終わる詐欺」をやらかしてしまったのです。
(C)空知英秋 『銀魂 77』より引用
今回の『銀魂 THE FINAL』のラストに原作者の空知先生が、こういった終盤の「間延び」について「SEKIROやってました」と釈明しており、ひと笑いを提供してくれましたね。
また、「終わる終わる詐欺」はアニメ『銀魂』シリーズの十八番でもあるので、今回の劇場版について懐疑的な視線を向けているファンも多かったと思います。
『銀魂』における『アベンジャーズ エンドゲーム』とも言える仲間のアッセンブルからの最強の敵の打倒を描く、究極のクライマックスです。
それでいて、『銀魂』らしいパロディやギャグのパートもあり、本当に「らしいラスト」という他ない作品でした。
今回はそんな『銀魂 THE FINAL』について自分なりに感じたことや考えたことを綴っていけたらと思います。
本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事です。
作品を未鑑賞の方はお気をつけください。
良かったら最後までお付き合いください。
目次
『銀魂 THE FINAL』
あらすじ・原作との違いは?
今回の『銀魂 THE FINAL』は原作の77巻、つまり最終巻の「ジャンプGIGAに移ってからの物語」をほとんどそのまま再現しています。
というよりもセリフだけでなくアングルや構図に至るまで本当に忠実に再現したアニメ映画となっていたと思いますね。
ただ、冒頭に「ドラゴンボール」パロディの雑な「これまでのあらすじ」が用意されているとはいえ、『銀魂』シリーズの終盤を追いかけていなかった人には厳しい内容だと思います。
銀時、新八、そして神楽がそれぞれの目的のために旅に出てから2年の月日が経過し、江戸は「虚」の復活に際して再び危機を迎えていた。
セントラルターミナルから地球のエネルギーの源でもある「アルタナ」を吸い上げ、失われた心臓を疑似的に取り戻さんとしてる「虚」。
かつての師である吉田松陽の人格が宿る「虚」の復活を阻止するべく、銀時はかつての同志である高杉とそして桂と共にセントラルターミナルの頂上を目指していた。
しかし、「虚」の復活を願う者たちからの妨害に遭い、幾度となく窮地に陥る。
そんな彼らを後押ししたのは、新八、神楽、そしてこれまで万事屋に支えられてきた人たちだった。
江戸の人間たちは、総力戦で「虚」に立ち向かうが、刻一刻と復活の時は迫っていて…。
スタッフ
- 監督:宮脇千鶴
- 原作:空知英秋
- 脚本:宮脇千鶴
- 監修:藤田陽一
- キャラクターデザイン:竹内進二
- 総作画監督:竹内進二
- 主題歌:SPYAIR
- 挿入歌:DOES
- アニメーション制作:BN Pictures
アニメシリーズの中盤を支え、『銀魂』アニメを大ヒットへと導いた藤田陽一さんは、今回監修としてクレジットされていますね。
一方で、監督・脚本を務めたのは、テレビシリーズの266話以降の監督を担当していた宮脇千鶴さんです。
彼女は『美男高校地球防衛部LOVE!』シリーズなどにも携わったクリエイターで、女性ならではの力点の置き方は際立ちますよね。
今回の『銀魂 THE FINAL』については、銀時と高杉のドラマを熱く描いてくれたことに本当に感謝しています。
総作画監督には、お馴染みの竹内進二さんが起用されていて、アニメーション制作はBN Picturesが担当しました。
主題歌には、『銀魂』の映画版には欠かせないSPYAIRの「轍~Wadachi~」が選ばれました。
また挿入歌には『曇天』などで知られ、テレビシリーズではお馴染みのDOESが起用されています。
主題歌・挿入歌のこの2組も、アニメ『銀魂』シリーズを追いかけて来た人にはたまらないですよね。
『銀魂 THE FINAL』感想・解説(ネタバレあり)
一見さんお断り感は強い?
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
先ほども書きましたが、今回の『銀魂 THE FINAL』は原作やアニメを追って来た人でないと、突然の展開に面食らう可能性は大ですね。
映画ファンの方にご説明するのであれば、シリーズを知らずに今作を鑑賞するのは、「MCUを1作も見ていない状態で、『アベンジャーズ エンドゲーム』を鑑賞する」ことに似ていると想像していただければわかりやすいですね。
昔は『銀魂』を見ていたけれど、最近は見てなかったな…なんて人は「『アベンジャーズ』1作目は見たことがあるなぁ…アイアンマンは知ってるかなぁ…くらいのノリで『アベンジャーズ エンドゲーム』を鑑賞する」に近いと心得てください。
ただ、意外とこの例えは分かりやすいと思っていて、『銀魂 THE FINAL』は本当に物語の途中も途中、戦いの最中から始まります。
既に銀時たちの戦闘は始まっていて、いよいよセントラルターミナルへ踏み込むというクライマックスだけにスポットを当てているわけです。
『アベンジャーズ インフィニティウォー』と『アベンジャーズ エンドゲーム』はセットで1本の映画とも見れるわけですが、『銀魂』の場合は前者が原作やテレビアニメシリーズで消化され、後者が今回の映画版になっています。
という具合に、本当に完結篇でかつ、クライマックスもクライマックスのみにスポットを当てているため、一見さんお断り感が強い作品にはなっております。
ただ、やっぱり『銀魂』シリーズないし、銀時と高杉の物語を追ってきたものとしては胸が熱くなるようなラストですよね。
銀時と高杉の物語の結末に涙
(C)空知英秋 『銀魂 77』より引用
今回の『銀魂 THE FINAL』の中心にあるのは、やはり銀時と高杉の物語の帰結ですよね。
銀時と高杉の関係と言えば、やはり多くの人の印象に残っているのは、「紅桜篇」に代表されるような敵対関係なのでしょう。
そもそも、銀時たちはかつて師である松陽を助けようと奮闘したのですが、桂と高杉が幕府側に捕えられ、銀時は「仲間を斬るか師を斬るか」の選択を迫られました。
その際に、銀時は松陽と交わした「皆を守る」という約束を守るため、仲間の命を選び、松陽の首を斬ったのです。
この一件がありながらも、万事屋として吞気に生きているようにすら見える銀時。その一方で師を殺した世界を赦せない高杉はすれ違うことになったんですね。
銀時は神楽や新八たちと出会い、この世界にたくさん「守るべきもの」ができていきました。だからこそ、この世界を「守りたい」と考えています。
一方で、高杉は師である吉田松陽を殺した世界をひたすらに憎悪しており、破壊することを目論んでいます。
きっと腹の底では、2人とも同じような思いを抱いているのだとは思いますが、その後の生き方や考え方によって、2人はある種の「対立」関係へと転じていきました。
ただ、本当にお互いを恨み合っているわけではなくて、お互いがお互いに後ろめたさや罪悪感のようなものを抱えているというのが、その実だと解釈しています。
銀時は高杉と交わした「師を守る」という約束を果たせず、しかも自らの手で師を殺した罪悪感と後悔に打ちのめされながら生きてきました。
一方の高杉は自分が捕まったが故に松陽先生が死ななければならなかったこと、そして銀時に師の処刑という辛い役割を担わせてしまったことに強い罪悪感と後悔を抱いています。
そして、今回の『銀魂 THE FINAL』では、そんな2人の共闘を見ることができます。
特に空知先生の描き方が巧いなと思ったのは、最終的には「銀時VS虚」に重ねて「銀時と高杉の共闘」と「銀時VS高杉」を同時に演出したことだと思うんです。
今作における高杉は常に「自らを犠牲にしようとして」しますし、一方の銀時はそんな高杉を「生かそう」としています。
それが表れていたのが、アルタナの暴走に巻き込んで、高杉が自らもろとも虚の血を有した敵を倒そうとしたシーンですね。
この時、高杉は自らの命を捧げる覚悟でしたが、銀時は間一髪で彼を救うことに成功しました。
銀時がここまでしてまで仲間を助けようとするのは、かつて松陽先生と約束した「仲間を護ってあげてくださいね」を守るためです。
一方で、高杉は攘夷戦争の一件以来、世界を憎んできたわけですが、それは同時に彼が自分自身を憎んできたことにも重なります。
つまり、彼は自分自身を憎んでいるわけで、自分の命を犠牲にしてでも先生を守りたいと考えていて、さらに言うなれば、それが自分にできる唯一の贖罪だとも考えているのではないでしょうか。
ただ、高杉は自らが体内に取り込んだ虚の血液に浸食されており、その意志によって松陽先生を再び殺そうとしてしまいます。
それでも、彼は何とか意志を繋ぎ止め、最後の最後で自らの胸に刃を突き立てることを選択したのです。
かくして虚(高杉の肉体)と銀時のラストバトルが始まるわけですね。
この戦いは、表面的に見ると「銀時VS虚」でしかないのですが、そこには「銀時&高杉VS虚」や「銀時VS高杉」のコンテクストも内在しています。
江戸の未来を占う最終決戦でありながらも、因縁のライバル同士の最後の戦いという熱い展開に、流石に涙が止まらなくなりましたね…。
最終的に銀時が虚(高杉の肉体)を斬ることで戦いは終わるのですが、高杉は銀時にもう罪悪感は背負わせまいと声を掛けます。
- 自分を犠牲にして松陽先生を護ることで、かつての贖罪を成し遂げた高杉。
- そして虚を打倒することで、江戸と仲間を護った銀時。
きっと、2人は最後の最後でお互いの「護りたいもの」のために戦うことができたのでしょうし、だからこそそれぞれのやり方で虚と向き合いました。
かつて、師を斬り虚ろな目をしていた銀時。そんな顔は見たくないと告げる高杉。
やはり、今回の『銀魂 THE FINAL』のクライマックスにもたらされる特大のカタルシスはシリーズを追いかけてきてこそ味わえるものだとは思います。
だからこそ、これを味わうためにも、シリーズを追いかけてみる価値もあるのだとそう思っています。
マンガは全77巻と特大のボリュームにはなっていますが、改めて「完結」を迎えた『銀魂』シリーズを多くの人が鑑賞するきっかけになってくれると嬉しいです。
作画面はやはり物足りない部分も…
(C)空知英秋/劇場版銀魂製作委員会
さて、今回の『銀魂 THE FINAL』ですが、やはりアクションパートがメインということもあり、かなり作画のレベルの高さが求められる作品となっていました。
ただ、個人的にはどうしても「従来のジャンプマンガクオリティ」の域を出ていないアニメーションだなとは感じてしまいましたね。
というのも、近年映像化されたufotableの『鬼滅の刃』やMAPPAの『呪術廻戦』のクオリティが高すぎて、それに慣れて、目が肥えてしまったんですよ(笑)
むしろ今回の『銀魂』くらいの作画クオリティが、これまでのジャンプマンガの「スタンダード」だったと思いますし、それほど違和感なく見れていました。
しかし、それに違和感を抱かせてしまうくらいに『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』がジャンプマンガアニメの基準を一変させてしまったんですね。これはとんでもないことです。
『銀魂 THE FINAL』はアクションシーンも動画の枚数が少ないのか、止め画を繋いだような印象が強く、大規模な総力戦を描いているはずなのに、チープさが出やすい「引きの画」はかなり少なめで、極力作画のカロリーを抑えようとしている感が滲み出ていました。
シーンごとのムラもかなり目立ち、人物作画が所々で崩れてしまっていて、かなり気にはなりました。
それでも銀魂VS虚のラストバトルのところに関しては、気を吐いてくれたなという印象で、かなり見応えがありました。
こうしたジャンプマンガのアニメシリーズのクオリティの基準の移り変わりをも感じさせてくれる1本であり、今作を見ると、いかに『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』がとんでもクオリティなのかが端的に理解できると思います。
アニメ版ならではの演出に思わず涙が…
今回の『銀魂 THE FINAL』は基本的に原作の77巻に忠実に作られていて、オリジナル要素はほとんどありません。
まあ、さっちゃんのこのシーンで突然、映画館の音響のサラウンド効果を使って背後から「喘ぎ声」が聞こえるという演出をぶっこんできたのは笑いましたね。
それはさておき、『銀魂 THE FINAL』の唯一のアニメオリジナル要素とも言えるのが、ポストクレジットにインサートされた「3年Z組銀八先生」です。
これはアニメ『銀魂』シリーズを追いかけて来た人にはお馴染みというか少し懐かしいものなのですが、テレビアニメの放送後の次回予告編くらいのタイミングで時々放送されていたショートアニメなんですよ。
それをこの完結編のタイミングでしかも映画館のスクリーンで見れてしまうというのが、『銀魂』シリーズのファンからすると、たまらない演出なんですよね。
この「3年Z組銀八先生」で空知先生の『銀魂』クライマックスを巡るあれこれについても語られていますので、ぜひご覧になっていただきたいです。
おわりに
いかがだったでしょうか。
今回は『銀魂 THE FINAL』についてお話してきました。
一見様お断り感が強い内容ではありますが、まあ完結篇なのでそんな作品であっても、そんなものでしょう。
ただ、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』で目が肥えた最近のジャンプアニメを見ている人からすると、映像のクオリティには難を感じるかもしれません。
あとは、「3年Z組銀八先生」をスクリーンでやってくれたのも本当に良かったです。内容は空知先生がめちゃくちゃ「SEKIRO」をやり込んでいました、すみませんってだけでしたが(笑)
今作のために、テレビシリーズや原作を追いかけるのは、かなり骨が折れるとは思いますが、まあ銀時と高杉の物語の帰結を真に味わうためには、そうしたプロセスが必要にはなるでしょう。
良かったら、この「完結」のタイミングで『銀魂』を追いかけてみませんか?
今回も読んでくださった方、ありがとうございました。