【ネタバレあり】『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』解説・考察:開国した日本で始まるシビュラの新たな物語

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですねアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』についてお話していこうと思います。

ナガ
いや~大好きなシリーズの第3期がついに放送スタートですよ!!

今年の年初に3か月連続で60分尺の劇場版が公開されまして、3作品ともかなり出来が良かったので、当然第3期にも期待が高まりますよね。

特に『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.3「恩讐の彼方に」』の終わり方は最高だったので、余計に楽しみにしてしまう部分もありますね。

このシリーズは基本的にシビュラシステムという巨大監視ネットワークのある近未来を舞台に、そのシステムを巡る物語を展開してきました。

もうこれ以上どうやって同じ世界観で掘り下げるんだ・・・と思ったこともありますが、続編を作る旅に新しい展開やテーマを見せてくれるので、いつもわくわくしながら見てしまいます。

テレビシリーズの第2期は正直出来栄えとしてはイマイチだったんですが、第1期と無印劇場版、SSのcase.2なんかはやっぱり素晴らしい内容でした。

そんな第1期放送開始時からずっと追いかけてきた作品の最新作ということで、毎週少しずつ考察を追記していこうと思います。

さて、本記事は作品のネタバレになるような内容を含む解説・考察記事となります。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』

あらすじ

日本は世界の崩壊に際してシビュラシステムを導入し、更には鎖国するという方針を取っていた。

しかし、今回の『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』から始まる日本は「開国」という選択をした状態となります。

ちなみに日本が開国に向けて、シビュラシステムを海外に試験的に輸出するという物語だったのが無印劇場版でした。

物語は新人監視官の慎導灼炯・ミハイル・イグナトフが着任するところから始まります。

炯・ミハイル・イグナトフがロシア系移民の二世で帰化準日本人であるという設定も、どことなく「開国」を感じさせる設定になっていますね。

そして時系列としては2120年が舞台になっている様で、『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1「罪と罰」 』が2117年の冬の出来事を描いていたので、大体その3年後くらいということになりますね。

 

第1話『ライラプスの召命』

霜月美佳は開国に伴う入国の管理を任されていた。そこに慎導灼炯・ミハイル・イグナトフが新しい監視官としてやって来る。

彼らは海の中へと墜落した巨大なドローンの調査に向かうこととなる。

移民の入国管理を任された炯・ミハイル・イグナトフは、執行官の廿六木天馬と入江一途に妨害される。

慎導灼は墜落したドローン内でハイパートランスポート社の会計士である旭・リック・フェロウズという男を捜索していた。

慎導灼はメンタルトレースという不思議な能力を持っており、の死ぬ前の行動を想像の世界で辿り、死体を発見することができた。

そしての死にはいくつか不審な点が存在していた。

彼の会社の部長である与根原が何か事件のカギを握っている様子だったが、与根原の犯罪係数はクリアだった・・・。

 

第2話『テウメソスの生贄』

慎導灼炯・ミハイル・イグナトフは能力と操作を通じて、事件の真相と手口に辿り着いた。

そこに絡んでいたのが、第1話でキーワードとして挙がっていた「サブプライム」だった。

日本の開国に絡んで、流入してくる移民を見込んで、住宅ビジネスで莫大な利益を得るためにハイパー・トランスポート社が金融商品を販売していたのだ。

慎導灼たちは監査請求をし、その秘密を掴もうとした。

すると、実行犯の1人だった与根原は色相が悪化し、上司の笹川は彼を「生贄」にし、逃げていった。

公安局は色相が悪化した与根原の確保に動くのだが・・・。

 

第3話『ヘラクレスとセイレーン』

東京では、移民政策を争点として東京都知事選挙が始まろうとしていた。

候補となったのは、アイドル政治家の小宮カリナと、アスリートの薬師寺・ヘラクレス・康介

しかし、そんな選挙を巡り、小宮のメンタルケア・スタッフである土谷博士がホテルの上層階から転落するという事故が起きたことを受け、公安局は捜査を開始する。

そんな時、土谷博士が死んだホテルに薬師寺陣営の第一秘書、リー・アキがいたことが明らかになる。

そんな不穏な動きの背後に何があるのかを、慎導灼炯・ミハイル・イグナトフは探り始めるのだった・・・。

 

第4話『コロッセオの政争』

炯・ミハイル・イグナトフは移民であることで罵られ、暴力沙汰を引き起こし、停職処分を科される。

リー殺害の襲撃犯が仮死状態で運搬されていただろうと推察したたちは、フリージャーナリストの六合塚の協力を得て捜査を開始する。

一方、執行官の入り江の情報網を辿り、土谷博士のラボに辿り着いたたち。

そこに隠されていたのは、小宮カリナの政治生命を揺るがしかねない衝撃的な真実なのだった・・・。

そして彼女への襲撃の危険性が高まる中で、投票前の最後の公開演説が始まろうとしていた。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:塩谷直義
  • シリーズ構成:冲方丁
  • 脚本:深見真 冲方丁 吉上亮
  • キャラクター原案:天野明
  • キャラクターデザイン・総作画監督:恩田尚之
  • 撮影監督:村井沙樹子
  • 編集:村上義典
  • 音楽:菅野祐悟
  • 音響監督:岩浪美和
ナガ
正直に言うと、不安な陣容ではあるんだよね・・・。

まず、監督はもう『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズではお馴染みの塩谷直義さんですね。

そして期待と不安が入り混じるのが、この脚本とシリーズ構成の部分です。

深見真さんはこのシリーズの立役者ですしテレビシリーズ第1期や無印劇場版でも脚本・構成を担当されていました。

そして個人的に大きな期待を寄せているのが、吉上亮さんですね。

彼は『PSYCHO-PASS サイコパス』のノベライズを担当されたことで知られていて、とにかくキャラクターの魅力を引き出すのが巧いんです。

その功績を買われて、映画『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.1「罪と罰」 』の脚本にも大抜擢されるなどしています。

ただ、気がかりなのがシリーズ構成と脚本にクレジットされている冲方丁さんです。

ナガ
彼の小説は好きなんですけどね・・・。

『マルドゥック』シリーズ『シュピーゲル』シリーズも好きですし、ハードSF作家としてはむしろ大好きです。

しかし彼がシリーズ構成を担当した『PSYCHO-PASS サイコパス 2』は恐ろしく酷い内容でした。

とにかくグロテスクな描写を描きたいだけなんじゃないかというほどに、主題とプロットの薄さと粗さが目立ち、代わりにセンセーショナルなシーンだけが1期よりも増えていました。

このシリーズで唯一面白くなかったと感じたテレビシリーズ第2期の構成を担当した彼が、今回も構成に起用されているからこそ不安は大きいのです。

その他のスタッフたちももうお馴染みの顔ぶれですね。

キャスト
  • 慎導灼:梶裕貴
  • 炯・ミハイル・イグナトフ:中村悠一
  • 雛河翔:櫻井孝宏
  • 廿六木天馬:大塚明夫
  • 入江一途:諏訪部順一
  • 如月真緒:名塚佳織
  • 唐之杜志恩:沢城みゆき
  • 霜月美佳:佐倉綾音
ナガ
基本的にメインキャラクターはこの8人になるようですね!

新しい主人公となる慎導灼炯・ミハイル・イグナトフ役にはそれぞれ梶裕貴さんと中村悠一さんが起用されています。

どちらも超有名どころを起用してきたのは、流石『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズといった感じでしょうか。

そしてテレビシリーズ第2期から登場した公安局刑事課一係・執行官の青年である雛河翔を演じているのは、櫻井孝宏さんですね。

やはり知っているキャラクターがいると安心感があります。

執行官にも新しいキャラクターが追加されており廿六木天馬如月真緒大塚明夫さんや名塚佳織さんといった大物声優陣が演じています。

沢城みゆきさんや佐倉綾音さんは引き続きメインキャラクターとして出演ということになっていますね。

公式サイトのキャストページを見ておりますと、これまでのシリーズのおなじみのキャラクターたちもクレジットされておりますので、どういう風に物語に絡んでくるのかが非常に楽しみです。

特にSSのcase.3のラストで狡嚙は日本を目指すと発言しておりましたので、彼がどんな形で次世代の日本の物語に関与してくるのかは気になるところです。

より詳しい情報を知りたいという方は、アニメ公式サイトへどうぞ!

ナガ
ぜひぜひご覧になってみてください!



『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』解説・考察

第1話『ライラプスの召命』

ライラプスとは?

©サイコパス製作委員会

第1話のサブタイトルが『ライラプスの召命』となっておりました。

ライラプスというのは、ギリシャ神話に登場する犬です。

狙った獲物は決して逃さないという運命に定められた猟犬のこととされています。

このライラプスは、テーバイの国を荒らしていたテウメッサの狐を退治するために駆り出されます。

ただ、このテウメッサの狐は「絶対に捕まらない」という運命を定められていました。

これにより、ライラプスは永遠にテウメッサの狐を追いかけ続けることになります。

最終的にゼウスが両者を石に変えてしまい、両者は互いに与えられた運命を全うしました。

ちなみに劇中で些々川哲也与根原という男に「俺たちは羊ではなく狐になるんだ」と言っていました。

ここで何となく、第3期の慎導灼炯・ミハイル・イグナトフライラプスであり、悪(追われる側)がテウメッサの狐という構図が見えました。

メンタルトレースをしている際に、慎導灼には犬の化身のようなものが憑りついたようになるので、このことからも明白ですね。

ただ今作の追われる側には、ダイアグラムというスキル(個性)があるようですね。

 

現代日本を思わせる世界観

エピソード0のインタビューの中で中村悠一さんも仰っていましたが、現代日本を意識した世界観になっているということでした。

確かに、そういわれて見てみると、実に示唆的な描写が散見されました。

まずは、移民政策の話ですよね。

現在、日本は欧米諸国などと比べても圧倒的に移民の受け入れに消極的です。

そんな中で今年に入ってから「特定技能制度」をスタートさせ、職業労働者として海外から移民を受け入れる方針を示しました。

日本は、高齢社会へと向かっており、徐々に労働人口が減少しています。

だからこそ、労働力として海外から技能実習生という形で移民を受け入れ、経済を循環させていきたい狙いがあるのです。

しかし、欧米では既に積極的な移民政策が国内に様々な問題を生み、反発が強まっているという現状もあります。

アメリカやイギリスではその傾向が顕著ですよね。

アメリカはメキシコからの不法移民に対して非現実的なまでに厳格な対応を推進するドナルド・トランプ氏を大統領に選出しました。

また、イギリスは移民政策への反対の気風が国内で強まり、「Brexit」つまりEU離脱が国民の投票で可決されました。

そういう意味でも開国し、移民を受け入れ始めたばかりの日本という『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』の世界観は現代日本を思わせます。

一方で、今作ではビフロストと呼ばれる組織が登場しており、彼らは今の日本の経済状況を見ながら、マネーゲームを楽しんでいる様でもあります。

これも今の日本政府が国民の生活をよくすることではなく、「日経平均株価」を高い水準で維持することにばかり固執している現状を思わせますし、同時に富裕層のマネーゲームと化した日本という国を虚しく感じます。

加えて、先ほどもお話したテウメッサの狐にも繋がることですが、『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』では言わば、犯罪を犯してでも成功し、そして警察の手から逃れ続けようとする悪の姿が描かれていました。

ただ、そういう人たちは、高額なメンタルケアを受けることで犯罪係数の上昇を誤魔化すことができるんですよね。

上級国民が罪を犯しても、逮捕されないという今作の設定は、どこか現実に起きた某ニュースを思わせる内容でした。

日本には、どんなに罪を犯しても逮捕されない「テウメッサの狐」のような存在が確かに存在しているのかもしれません。

『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズは常に、現在の世界や日本の問題を作品に反映させていましたが、今回もホットな問題を盛り込んできているように感じました。

 

慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフについて

©サイコパス製作委員会

『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』では、まず主人公がこれまでのシリーズからは一新されています。

慎導灼炯・ミハイル・イグナトフが主人公になるわけですが、この2人について気になるのは、やはり過去についてとその「メンタルトレース」と呼ばれる力ですよね。

過去について第1話で明かされていた情報では、前者は父親が何らかの有力者である可能性が高いこと、そして後者は海外の紛争地帯で育ってロシア系移民という背景を抱えていることが明かされています。

そもそもこの2人が強く結びついている所以も分からないのですが、1つ重要なのは、慎導灼の「メンタルトレース」の手綱を握っているのが炯・ミハイル・イグナトフだという点ですね。

冒頭の調査の際に、炯・ミハイル・イグナトフ「自分がロープを握ってないときに、死人の「メンタルトレース」なんてするな!」と諭していました。

その理由は後のシーンの会話で明らかになります。

これは放送開始前の特番でも中村悠一さんがおっしゃっていたことですが、「メンタルトレース」にはリスクがあるのです。

それが、犯罪者や死人にメンタルトレースすることで、その感情が自分の中へと流れ込んできて、色相の悪化につながるという点ですね。

それ故に、この力を多用するのは危険だということが何となくわかりますよね。

そして、個人的にもう1点注目したのが、OP映像の序盤のこのカットです。

©サイコパス製作委員会

このカットを見た時に、第1期の後期OPの終盤に登場する常守朱狡噛慎也が槙島を挟んで、拳銃とドミネーターを向き合わせたシーンを思い出しました。

テレビシリーズの2期にもドミネーターVSドミネーターの映像が用いられています。

とりわけ『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズにおけるこの描写が意味するところは、「正義と正義の対立」です。

そう思うと、第1話では共に巨悪を暴くべく立ち上がった2人ですが、今後、何らかの形で分断され、お互いの正義が対立するという展開が描かれる可能性は高いのではないかと思います。

特にOP映像のこのシーンの慎導灼の目は赤色なんです。つまり、自分の「個性」に取り込まれてしまった姿なのか?とも思いました。

もう1つ個人的に気になったのが、炯・ミハイル・イグナトフという名前です。

ロシア系ということでミハイル・イグナトフという名前に特に違和感はないのですが、わざわざ「大天使ミカエル」を思わせる名前にしていた点に驚きました。

ナガ
天使とは神の使いですよね!

『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズでは「シビュラ」や第3期の「ビフレスト」など、支配者側にギリシア神話や北欧神話などの神々やその神託を受けた者に纏わる名称をつけていることが多いのです。

とりわけ慎導灼「ライラプス」に例えられていますが、これはヘーパイストスという神の被造物たる犬です。

そう考えると、炯・ミハイル・イグナトフ慎導灼の2人が敵対するという可能性もありそうです。

 

第1話で気になった点

  • 如月が梓澤廣一の名刺をこっそりと持ち出したのはなぜか?
  • 慎導灼の父親は慎導篤志という男で、梓澤廣一からも一目置かれる存在である。
  • ラウンドロビンという新しいAI(システム?)の存在の意味とは?
  • 常守朱は「元監視官」となっており、さらに牢獄に囚われている?
  • 宜野座は霜月とは交流があるようだが、別の組織(外務省?)にいるようだ。(SSのcase.1以後どんな関係なのだろう?)
  • ビフロストたちの正体と目的とは?
ナガ
まあ第1話なので、どんどんと謎が浮かび上がりますよね・・・。

そもそも、常守朱がどこかに幽閉されているのが本作の大きなカギになってきそうですね。

霜月は何か悲壮な覚悟をしたように、慎導灼炯・ミハイル・イグナトフを信じ、2人が「真実」に辿り着いてくれることを願っています。

そう考えると、が何かを調査していて、闇の正体に辿り着いたけれども、巨悪に取り込まれてしまい、戻ってこれなくなったという見方はできるかもしれません。

ちなみに劇中で霜月が「そうやって深みにはまり抜け出せなくなったものが大勢いる」という話をしていましたが、この内の1人がなのかもしれません。

©サイコパス製作委員会

このシチュエーションが成立するのであれば、霜月は必死に自分の恩人である朱を救うべく、悲壮な覚悟をしていると考えられます。

また、本作では移民問題が密接に絡んでくることから外務省が物語に密接に絡んでくる可能性があります。

『PSYCHO-PASS サイコパス SS Case.3「恩讐の彼方に」』に登場した花城フレデリカは外務省の人間でした。

そして、第1話Cパートの映像から察するに、宜野座は今外務省に属しているのではないかということが推察されます。

第2話で宜野座狡噛は公安局行動課の人間であることが明かされました。

また、今作にはシビュラシステムの他にラウンドロビンと呼ばれるAIが登場します。

これがシビュラとどんな関係なのかも非常に気になりますし、今後の対立構造も気になります。

ちなみに本作の新しい組織・結社として登場したビフレストですが、MCUの『マイティソー』シリーズをご覧になった人であれば、聞いたことがあるのではないでしょうか?

ビフレストは地上から神々の住むアースガルズへと繋がる虹の橋のことを指しています。

そしてこの橋を使うのは、もちろん神であり、女神イリスです。

彼らがどんな形で物語に来るのかはまだ不明ですが、日本経済でマネーゲームのようなことをしていたのが意味深です。



第2話『テウメソスの生贄』

集団心理と組織

今回の第2話で1つキーワードになっていたのは、「赤信号みんなで渡れば怖くない」の理論ですよね。

マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学のチームが集団(群集)心理について研究し、とある発表をしていました。

というのも個人ではなく集団で行動した方が、道徳観・倫理観に関わる脳の領域の働きが鈍くなるというのです。

ギュスターヴ・ル・ボン『群集心理』という著書の中で、同様に集団精神によって群衆が個人では実行し得ないような暴力的で衝動的な行動をとることを指摘しました。

今回の第2話で描かれたのは、まさにそういう群集の心理というものでしたよね。

集団で誰が片棒を担いだのかが分からない状況になると、人は罪の意識を感じることなく暴力的な行動を取ってしまいます。

だからこそ集団で1人の人を殺すように仕向ければ、そのための作業の末端を担わせれば、色相を悪化させずに済むというわけですね。

ちなみにサブプライムのバブルとその破綻も、この群集心理がもたらす投資用語でいうところのハーディング現象が原因だったと分析されています。

人は物事の合理性を判断するよりも先に、集団の大多数と同じ行動を取ることに安心感を感じるようになります。

結果的に、サブプライムのような不合理な金融商品が集団の論理によって過熱していき、結果的に実体がないために弾けたというわけです。

このエピソードがきっかけで、かなり第3期の方向性というものも見えてきたんじゃないかなと思います。

まず、都知事選に立候補していた小宮カリナの潜在犯に対して見向きもしなかった(もはや人権を認めなかったと言っても過言ではない)は国が弱者を見捨てる構図と言いますが、「自己責任論」で突き放す様にも見えます。

そうした論調に「難民排斥」も含めて、人々が消極的な同意をし、直接手を下すことなく加担していけば、群集の論理が出来上がり、その意志は確かに「人を殺める」のかもしれません。

ホームグロウンテロリズムの考え方は、これに近くて、移民や難民に限らず、地域コミュニティで集団から疎外され、迫害された人が、過激思想に傾倒し、テロ事件を起こすというものです。

しかし、これだってその人物を地域コミュニティの中で追い詰めた人物が「犯罪者」になることはありませんし、結局は実行犯が悪ということになります。

私たちの社会は、今まさにそんな構造になってきているのです。

日本は間接制民主主義で、国民主権の国ですよ。しかし、国政選挙となっても投票率は50%付近という有様です。

では、現政権が何か失態を犯したとして、というより弱者に否定的な政策をとって、それにより追い詰められた人が殺人を犯したりなどしたら、責任は誰にあるのかと考えて見たら、その政権に消極的なりとも「同意」を示した私たちにもその一端があるんですよ。

私は今回の『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』で常森朱が国を揺るがす「真実」だと記述していることと言うのは、この構造ではないかと勘繰っています。

今作が突き付けるのは、私たちが集団の一員であるが故に目を背けている、たくさんの「見たくもない現実」なのかもしれません。

 

第2話の気になった箇所とビフロストの正体について

まず、常森朱慎導灼の父である篤志が繋がっていた可能性があることが彼の自室のパソコンのモニターに表示されていた情報から推察されます。

ここに書かれているトピックを1つ1つ読んでみると、「難民によるテロ」「厚生労働省大臣だった篤志の裏金疑惑」「被害者の実名報道」「犯人の犯罪係数が認められなかった?」などがあります。

実に我々の生きる現代社会のTOPICSを反映した情報たちだと思います。

「難民によるテロ」という危機意識の高まりは、難民を排斥する方向に集団心理を動かします。

第2話の中でやくざ者達が難民の受け入れに対して否定的な姿勢を示していましたが、難民がテロの原因になったのではないかという事実かどうかも分からない憶測的な情報が集団の不安を煽り、負のスパイラルを構築してしまうのです。

また、「被害者の実名報道」という点では、最近起こった京都アニメーションでの放火事件を思い出しました。

ナガ
後ほど第2話についていろいろと追記していきます!

さて、第2話の中で1つ重要なのが、常森の見ていたパソコンのモニターですね。

©サイコパス製作委員会

いろいろと重要な情報が隠されているように見受けられますが、とりわけ以下の点が理解できると思います。

  • ロシアからの招待客を乗せた乗客船が襲撃された事件。
  • 慎導篤志(慎導灼の父)はシビュラシステム開発の立役者の1人であり、それでいて裏金・献金疑惑が浮上した。
  • 常森朱が禾生局長(シビュラシステムが保有している人型デバイス)を銃撃し、緊急逮捕された。
  • 何かの55周年記念祭が行われた。(ロシアからの招待客はその式典のため?)

そしてもう1つ注目しておきたいのが、慎導篤志の名刺ですね。

©サイコパス製作委員会

ナガ
なるほど、の父はインスペクターだったんだ!

よって慎導篤志がシビュラシステムの開発に深く関わっていた人間であり、加えてビフロストとのつながりがあったことも理解できます。

さて、第3話を見ると、ビフロストはシビュラシステムに自分たちの存在を感知させることを警戒しているようにも見受けられます。

「私たちの存在を再びシビュラに知らせる結果になりかねないわ。」という言葉もありましたが、これを聞いて真っ先に違和感を感じるのは、「再び」という表現ですね。

つまりビフロストは一度シビュラにその存在を感知されてしまい、危機に陥りながらも何とか復活したと捉えるのが妥当でしょう。

そう考えた時に、先ほど「常森朱が禾生局長(シビュラシステムが保有している人型デバイス)を銃撃し、殺害」というトピックがありましたが、これが1つ重要なポイントになりそうです。

常森朱は数少ない彼女の正体を知る人間ですし、同時にシビュラシステムを信奉しているわけではありませんが、守るべきとも考えている人間です。

そう考えると、常森朱が禾生局長を殺害するとしたら、シビュラシステムの秘密が暴露されそうになったために、彼女を殺害して、それを伏せようとしたといったところでしょうか。

そしてシビュラシステムを脅かそうとしているのが、ビフロスト側であることは理解できますし、そこに慎導篤志が絡んでいた可能性は大でしょう。

そんな慎導篤志の息子である慎導灼とそれに絡んだ乗客船襲撃事件で兄を殺害されたであろう炯・ミハイル・イグナトフが、追っている存在となれば、それは必然的にビフロストということになるのでしょう。

ちなみに慎導灼を公安局に推薦したのは、他でもない常森朱のようですが、仮に彼の父親が黒幕だったとするならば、その大役に彼を据えるのは、いささか違和感があります。

そうなると慎導篤志はむしろビフロストと繋がりをもってその真相を暴こうとした内部スパイ的存在で、ただそれが発覚してスキャンダルを捏造・リークされ、政治生命を絶たれたと考えることもできます。

ナガ
は「必ず真実を見つけてみせる。父さん。」と告げていましたしね・・・。

であれば、今作の新しい2人の主人公がビフロストを追う利害も一致しているように思えてきますね。



第3話:『ヘラクレスとセイレーン』

移民を巡る選挙

第3話の中で描かれた選挙においては、とりわけ「移民政策」が大きな争点となっています。

日本でにおいては移民というものは、まだまだ馴染みが薄いですが、すでにヨーロッパやアメリカでは「移民政策」を巡る大きな選挙が既に行われてきました。

例えば、ドイツの国政選挙、地方選挙ではメルケル首相が移民政策を推進してきた一方で、国民からはそれにストップをかけるような風潮が強まり、移民排斥を志向するAfDという政党が躍進しました。

イギリスでは移民受け入れに否定的になったことが一因となり、Brexitつまり欧州連合からの離脱が国民投票で決まりました。

アメリカでは移民や難民に対して強硬的な姿勢をとるドナルド・トランプ氏が大統領選挙に勝利し、メキシコとの国境に壁を作るなどというとんでもない政策を打ち出しています。

とりわけ移民肯定派なのが薬師寺・ヘラクレス・康介であり、否定的(消極的)なのが小宮カリナという情勢となっていますね。

第3話の冒頭で、カフェでアフタヌーンティーを嗜んでいる女性2人が、移民または廃棄区画に住む人間たちに対して、排除して欲しい、見ているだけで色相が濁るという痛烈なヘイトを吐露していました。

彼女たちは自分は彼らとは違う、自分が優等であり、逆に彼らが劣等であると確信している様でもありました。

そこで、同じく第3話の冒頭で慎導灼が話していた「肯定的固定観念」「否定的固定観念」の話が意味を成してきますね。

というのもアフタヌーンティーを楽しんでいたあの2人の女性はまさしく前者の「肯定的固定観念」を持っている人物です。

自分たちと蔑視の対象である移民や廃棄区画の住人が実質的には、同じ人間であるにも関わらず、すり込まれた意識によって自分たちが優等と思い込んでいるわけですよ。

一方で、移民とりわけ廃棄区画の住人は、自分たちが劣等であるという烙印を押されており、の話によるとコルチゾールという物質が過剰に生まれてしまうようです。

この物質は人間の思考力や記憶力を低下させることでも知られており、人間が正常な判断を下す際に妨げとなります。

本来、優等や劣等など人間の間には存在しないにも関わらず、こういった固定観念が人間の間に対立構造を生み、劣等側の人間を「非行」に走らせてしまうのです。

これはまさしく私たちの社会で今まさに起きていることでもあります。

そういう意味でもこのリアルな描写には恐ろしさを感じます。

また、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズの世界において、人間の優性・劣性を決定するのは、シビュラシステムなんですよね。

劇中で廿六木天馬薬師寺・ヘラクレス・康介陣営の親類に「一族の恥さらし」と罵られるシーンがありましたが、この差異を決定しているのもシビュラシステムでしかありません。

人間はもはや外部機関であるシステムが決めた優劣に肩入れし、妄信的に信奉し、それがあたかも客観的で妥当性がある証拠のように信じ込んでいるのです。

そういう意味でも「監視官も執行官もシビュラシステムに従って潜在犯の執行を行うが、その執行の是非を決めるのは人間の意思であるべきだ…。」というセリフこそ、私たちが立ち返るべき原点に思えます。

そしてそれが本シリーズの最初の主人公である常森朱の思想でもありました。

 

第4話『コロッセオの政争』

AIと人間らしさ

AI(人工知能)は近年、トレンドとなっており、様々な映画やアニメ、小説の題材となります。

しかし、その中には明らかにAIの特性を勘違いしたものやいたずらにAIの恐怖感を煽るような作品も多く玉石混交といった状態です。

そんな中で今作『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』もAIに言及しているわけですが、その視点は伊藤計劃氏の『ハーモニー』に近いのではないかと思います。

人間という生き物が、どんどんと非人道的な行為を繰り返し、地球を荒廃させていく中で、人間の意識をAIに外部化して、究極の調和と平和を実現することを描いたのが、この作品です。

『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズでは、シビュラシステムという人間の特性や性格、そして犯罪係数や将来までもを計測し、その人間のライフスタイルを決定づけます。

システムが望んだ生き方を選択し、システムが望まなかった生き方を諦める。そうして人類は意思決定プロセスや思考を徐々に外部化していき、「人間らしさ」を失っていくのかもしれません。

そうなった時に、私たち人間は、炯・ミハイル・イグナトフが指摘したようにAIの思考に紐づいたアバターと化していくやもしれませんね。

そこでも常森が追いかけてきた監視官も執行官もシビュラシステムに従って潜在犯の執行を行うが、その執行の是非を決めるのは人間の意思であるべきだ…。」という言葉の重要性が光ります。

AIはビッグデータに基づいて、分析し、最適解を導き出すことについては、人間よりも圧倒的に優れています。

その一方で、感情は持っていませんし、創造的な力についてはまだまだ課題が多く残っており、人間にとって代わるとは言いづらい部分があります。

しかしシビュラが求めている人間像は、あくまでもシステムに忠実な人間であり、そういう意味では炯・ミハイル・イグナトフの発言にもあるようにAIはシビュラ的なんですよ。

「シビュラ的」と「人間らしさ」の対立。そこに『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』はテーマの1つを据えているように思えました。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

最終回終了まで、毎週『PSYCHO-PASS サイコパス 3期』についての自分なりの考えを綴っていきます。

また、回を重ねてもう少し分析のための情報が揃ってきましたら、もう少し深い考察ができるようにしようと思っております。

ナガ
なかなか第1話の段階では謎の提起ばかりで、踏み込んだ考察は難しいですね・・・。

第1話としては非常に良い仕上がりだったと思いますし、新しい試みとなった1時間枠での放送も、じっくりのストーリーに浸れるので、良かったです。

ぜひ、また読みに来てください。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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