映画『FAKE』より引用
目次
はじめに
みなさんこんにちは。ナガと申します。
今回はですね当ブログではあまり記事にすることがないジャンルにはなるんですが、ドキュメンタリー映画についてお話していこうと思います。
この記事では当ブログ管理人がこれまでに見たドキュメンタリー映画の中で特に興味深いと感じた7作品をその解説と共にお届けしようと思います。
良かったら最後までお付き合いください。
当ブログ管理人がおすすめする本当に面白いドキュメンタリー映画7選!
ではここから作品の紹介に移っていこうと思います。
あまりドキュメンタリー映画は見ないかなという方も良かったら参考にしてみてください。
『都市とモードのビデオノート』
当ブログ管理人はヴィム・ヴェンダース監督が大好きで、彼のドキュメンタリー映画であれば全ておすすめしたいという勢いなんですが、とりわけこの『都市とモードのビデオノート』という作品は彼の転換期にある映画です。
ヴェンダース映画に関してはうんちくを語り始めると、日が暮れてしまいますので、できるだけ簡潔にお伝えできるように努力します。
まず、彼のドキュメンタリー映画は常に自分とは違うジャンルで何かを表現しているクリエイターを被写体としています。
それは『Pina ピナ・バウシュ』しかり『セバスチャン・サルガド』しかり『ブエナビスタソシアルクラブ』しかりです。
さらに彼のドキュメンタリー映画の特徴として挙げられるのが、その人物がこれまでどんな人生を歩んできたかよりも、その人物の仕事ぶりや作品にスポットを当てる傾向が強いということです。
『Pina ピナ・バウシュ』なんかは彼女の人生というよりも、ひたすら彼女の生み出した「踊り」にフォーカスし続けますし、一方で『セバスチャン・サルガド』においてはひたすらに彼の撮影した写真に迫り続けます。
そして『都市とモードのビデオノート』という作品も、例に漏れず彼の仕事ぶりや作品にフォーカスしていくのですが、ここで面白いのが、この映画はヴェンダース自身の「映像観」のドキュメンタリーにもなっている点です。
『666号室』のような映画を見ていただけると分かりやすいのですが、彼は基本的にフィルム映画に強い思い入れを持っていて、テレビメディアないしビデオカメラというものに嫌悪感を示していました。
しかし、1980年代の終盤に製作されたこの映画をヴェンダースはフィルムカメラとビデオカメラの2つのデバイスで撮影しているのです。
これにより1つの映画の中で味わいの異なる2つの映像が同居しているという何とも不思議な映像作品に仕上がっています。
しかし、この映画を撮影していく中でヴェンダース監督自身の映像観が少しずつ変化していき、次第に彼がビデオカメラに映し出される映像に惹かれていく様子が描かれます。
映画とそして映像について考えていく上で、非常に重要なドキュメンタリー映画だと思いますし、ヴェンダースを語る上で避けては通れない作品でもあります。
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『FAKE』
この映画はもう見終わった後に鳥肌が止まりません。
ゴーストライター騒動で世間を賑わせた佐村河内守という音楽クリエイターに焦点を当てたドキュメンタリー映画となっております。
今の日本において、いや世界においてマスメディアという存在は非常に大きいもので、言わば我々の生きる世界に「もう1つのレイヤー」を創り出している存在と言えるでしょう。
彼らが伝える情報は必ずしも真実とは限らないし、もしかしたら歪曲されたり、焦点化され、拡大されたものなのかもしれません。
ただその情報は確かに「真実」を凌駕し、そしてその情報によって我々は「世界」を構築していくこととなります。
そんなマスメディアが作り上げた「佐村河内守」像は言わば「悪人」であり、ゴーストライターという姑息な手段を用いて音楽家として名を馳せようとしたある種の「詐欺師」です。
それに対して森達也監督は自分なりの視点で、自分のカメラで「佐村河内守」という存在を再定義しようとけしかけます。
それを見ていると、我々は佐村河内氏は実は「悪人」でも「詐欺師」でもなかったのではないかという方向に思考を絡めとられていくのです。
ただ忘れてはいけないのは、この映画自体もまた森達也という「信頼できない語り手」の1人によって撮られたものであるということです。
現代を生きる我々に情報というものが作り出す「世界」の恐ろしさと皮肉を突きつける衝撃のドキュメンタリー映画です。
森監督のドキュメンタリーはオウム真理教を題材にした『A』なんかも素晴らしいので、併せて鑑賞されることをおすすめします。
『意志の勝利』
レニ・リーフェンシュタール監督によって第2次世界大戦以前に撮影されたクラシック映画の1つです。
まず、この映画を見た時に私はどうしても1930年代に撮られた映画だとは信じがたい思いに駆られます。
自分で映画を撮りたい!!なんて考えているような方は絶対に見ておくべき1本なんじゃないかと個人的には思っている次第です。
確かにこの『意志の勝利』という作品は、戦後のドイツでナチズムに加担したとされ、強く批判されることになった点は言うまでもありません。
ただナチ党の党大会というものをある種プロパガンダ的なものを感じさせつつも、これほどまでに美しく描き出した功績は讃えられてしかるべきだと思います。
この作品は映像芸術として圧倒的です。
全てのショット、アングル、演出が計算され尽していて、この映画を見ていると、劇中の党大会の熱気が80年以上の時を超えて、伝わってくるかのようです。
ぜひぜひチェックして見て欲しいですね。
『SiS 消滅の詩』
BiSやBiSHといった人気アイドルグループが所属するWACKという事務所が製作したドキュメンタリー映画なんですが、これはぜひ多くの人に見て欲しいです。
凡人が必死に努力して努力して、活躍する。それこそがある種の「アイドル」の醍醐味なんだと近年のアイドル業界はプロパガンダ的に打ち出してきたように思います。
しかし、WACKが製作したこの映画が我々に訴えかけてくるのは、もっと残酷で、目を背けたくなるような現実です。
凡人は結局、凡人でしかなく、いくら足掻いたところで「超人」には及ばないのであるという現実をまざまざと見せつけられます。
アイドルドキュメンタリーでありながら、そのアイドルをプロデュースしようとした1人の男にスポットが当たり、そして彼がアイドルを「殺して」しまう様が描かれる。
「お前は凡人なんだ」と突きつけられた1人の男とアイドルが、足掻き、それでも必死に前を向こうと足掻き続けた日々を綴ったこの作品は、アイドルが好きでなくとも、働くすべての人に何かを考えさせてくれることでしょう。
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『ニッポン国VS泉南石綿村』
『ゆきゆきて、神軍』や『全身小説家』といった傑作ドキュメンタリーを世に送り出してきたことでも知られる原一男監督の最新作はこれまた度肝を抜かれるような傑作でした。
8年という長い年月にわたる、被害者たちの戦いを215分尺で徹底的に描き切りました。
独特の編集を施してあり、映画内の時間が残酷なほどに淡々と進行していくのですが、その間に原告側の被害者たちがどんどんと命を落としていきます。
それとは対照的にこの人たちには感情があるのだろうか?とすら考えてしまうほどに、血が通っている感じが見えない官僚たちが何とも印象的です。
日本という国の政府や役人の体制への皮肉と共に、日本が孕んでいる問題を浮き彫りにしていきます。
全編にわたってインタビュー形式で展開される構成も斬新で、そこに様々なシリアスやユーモアが息づいている点に関しては、原監督の名人芸と評する他ないでしょう。
まさに「平成の日本」を描いたドキュメンタリーと言える1本ではないでしょうか?
『音のない世界で』
当ブログ管理人の脳裏に焼きついて離れないのが、この『音のない世界で』というドキュメンタリー映画です。
フランスのニコラ・フィリベールというドキュメンタリー映画監督の作品で、彼は他にも素晴らしい作品を数多く世に送り出しています。
その中でも一際輝いて見えたのが、この映画でした。
耳に障がいを抱えたいわゆる「聾者」の世界を描いた作品なのですが、この映画はエモーショナルな映画にしようなどという作為性を一切感じさせないんですよね。
フィクションになるとその傾向が特に強くなりますが、「障がい」という題材を「感動を導き出すための道具」と化している映画作品ってかなり多い印象があります。
しかし、この『音のない世界で』という作品は、ただひたすらに淡々と「聾者が生きている世界」を描き続けるだけです。
その世界の中で、手話と用いながら他人と関わり、生きていこうとする人たちの姿が強く印象づけられますし、それぞれが希望をもって生きている様が描かれることに見ていて幸福感を感じさせてくれます。
決して感動を煽ったり、同情を煽るような作風でもなく、見ていて、少し微笑ましさを感じさせてくれるような日常のユーモラスを雄弁に語る傑作ドキュメンタリーだと思います。
日本でも『Listen』という聾者の音楽に迫ったドキュメンタリー映画が作られていましたが、ありのままを切り取るというドキュメンタリー映画の良さが出た作品ですよね。
『ハーツアンドマインズ』
ベトナム戦争を題材にしたドキュメンタリー映画で、さらにはベトナム戦争終結前に製作されていた映画だというのが興味深いポイントです。
戦争がまだ行われている最中の映画でありながら、既にベトナム戦争に対する否定的な視点や、後に数々の映画で扱われることとなる兵士の精神的な部分の問題が鮮明に描かれている点に驚かされます。
また、戦争を実際に撮影した映像の数々は、どんな戦争映画よりも真に迫る迫力で、映画を見ている我々でさえもあのおぞましい戦場にいるかのように錯覚させられるほどです。
またただドキュメンタリーとして優れているだけでなく、映画的な演出や構成、編集も優れており、アカデミー賞長編ドキュメンタリー娼を受賞したのも頷けるクオリティです。
戦争ドキュメンタリーを見るのであれば、避けては通れない名作の1つでしょう。
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おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は当ブログ管理人がおすすめするドキュメンタリー映画を7作品ご紹介させていただきました。
自分で言うのもなんですが、かなりエンタメ性の低い、渋めのチョイスとなっております(笑)
ただ今回ご紹介した作品は、どれもドキュメンタリー映画として非常に優れたものばかりですので、お時間ある方はぜひぜひご覧になってみてください。
今回も読んでくださった方ありがとうございました。