【ネタバレあり】映画「空海 美しき王妃の謎」感想・解説:150億円かけて作られた猫映画

アイキャッチ画像:(C)2017 New Classic Media, Kadokawa Corporation, Emperor Motion Pictures, Shengkai Film

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回は映画「空海 美しき王妃の謎」についてお話していこうと思います。

みなさんはこの映画のタイトルを見て、どんな映画を想像しますでしょうか?

「空海 KU-KAI 美しき王妃の謎」!!

この作品のポスターを見てどんな映画を想像しますでしょうか?

この予告編を見てどんな映画を想像しますでしょうか?

あっ!これって空海の映画なんだ!!

あれっローマ人が迷い込んでるじゃん!!

主題歌はRADWIMPSだ!!

チャン・ロンロンの楊貴妃綺麗すぐる!!

この映画とんでもない予算をかけて長安の街並みを再現したんだって!?

ちょっとミステリー要素もあったりするのかな?

チェン・カイコー映画はやっぱり映像が凄いよな!!

いろいろなイメージをこの作品に持たれることでしょう。ただ一つ言いたいのは、この映画実はみなさんのあらゆる予想を裏切ってきます。

というのもこの映画、空海の映画じゃないんですよ。

実は「空海 美しき王妃の謎」という作品は、猫映画なんですよ(笑)。

あのチェン・カイコ―監督が150億円とも言われる予算をつぎ込んで作り上げたのは、なんと猫映画だったんです!!

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実はこの映画の中国タイトルは「妖猫伝」なんです。さらに言うなれば、英語のタイトルは”Legend of the Demon Cat”です。つまり「空海 美しき王妃の謎」というタイトルは日本興業向けの客寄せのためのタイトルに過ぎないんです。

この作品の本質は猫です(笑)

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映画「空海 美しき王妃の謎」

あらすじ・概要

弘法大師としても知られる真言宗の開祖・空海が遣唐使として中国に渡った若き日の姿を描く、日中合作の歴史スペクタクル大作。夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を原作に、「さらば、わが愛 覇王別姫」「始皇帝暗殺」の名匠チェン・カイコーがメガホンをとり、主人公の空海を海外作品初挑戦となる染谷将太が演じた。

8世紀、遣唐使として日本から唐へやってきた若き僧侶の空海が、詩人・白楽天とともに首都・長安を揺るがす巨大な謎に迫っていく。空海の相棒となる白楽天を中国の人気俳優ホアン・シュアン、物語の鍵を握る楊貴妃を台湾出身のチャン・ロンロンが演じるほか、日本から阿部寛、松坂慶子らが参加している。

映画com.より引用)

原作小説は夢枕獏さんの小説です。

全4巻から構成されているようです。お恥ずかしながら原作は読めておりません。

予告編

なぜ日本語吹き替え版のみの公開なんだ?

映画「空海 美しき王妃の謎」という作品を見終えて一番最初に感じた疑問は、なぜ日本語吹き替え版がこんなにも酷い出来なのか?さらに言うなれば、なぜ国内での上映がこの日本語吹き替え版に限られているのか?という疑問です。

高橋一生や吉田羊といった豪華な吹き替えキャストが発表されていましたが、総じて期待外れでした。その中でも酷いのが空海の吹き替えを担当した染谷翔太さんと丹龍役を演じた寛一郎さんです。。

染谷翔太さんは予告編等で公開されている中国語のセリフは非常に素晴らしいのに、なぜか自身が演じた空海の日本語吹き替えが絶望的にハマっていないという謎っぷりです。

こういうのを見ると、名探偵コナンの劇場版で、遠藤保仁役で声優に挑戦した遠藤保仁さんが絶望的に下手なボイスアクトを披露していたのを思い出しますね。

また丹龍役を演じた寛一郎さんですが、もう本当に聞けるレベルになかったです。全くハマっていませんでした。声が完全に役から浮いてしまっているんですよね。

この2人が目立ったのは否めませんが、他の吹き替えキャストも総じてハマっていませんでした。ただ、阿部寛役阿部寛は素晴らしかったですよ。これは間違いないです。

せっかく染谷翔太さんや阿部寛さんたちが中国語で役に取り組んだわけですから、日本語字幕版も公開してほしかったですね。

日中映画製作協定が結ばれる?

実は昨年の秋ごろに日本と中国は映画製作に関する協定を結ぶことで大筋合意に達しているんですね。

この作品は数年前から製作されていましたから、直接は関係ないのですが、日本と中国が協力することでこれだけ大規模な映画を製作することができるという1つの良いサンプルになったのではないでしょうか?

この協定の背景には日中の友好を深めていきたいということだけではない、思惑が見え隠れしています。

まず日本としては今世界第2位で、アメリカに次ぐと言われる中国映画マーケットに積極的に参加していきたいという方向性があると思います。さらには、日本だけではあまり予算をかけて作れないような大規模な映画を中国の後ろ盾(予算)を得ることで制作できるようにしたいという思いもあるのでしょう。

一方で中国では、日本のマンガ・アニメといったコンテンツが大変人気を博しています。そのためそういったコンテンツを取り込みたいという思惑があるように思います。

双方にメリットがある協定ですし、日本は基本的に他国と合作で映画を作る機会が少ないので個人的には大歓迎ですね。日本映画界がもっとグローバルな映画を撮れるように期待したいと思います。

実際の長安を再現?150億円の予算とチェンカイコ―監督のこだわりとは?

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本作を製作するに当たって、なんと6年間かけて唐代の長安の街並みを再現した街のようなセット、いやもはや1つの街を作り上げてしまったそうです。その規模は東京ドーム8個分とも言われています。

なぜCGで再現すれば良かったものを大規模な予算と長い年月をかけて実際に再現しようとしたのか?ここにチェンカイコ―監督の本作に込めた1つの思いがあると考えています。

彼が美しい映像に彩られた本作「空海 美しき王妃の謎」に込めたのは諸行無常の精神だと考えています。どんなに美しいものであっても時が経てば、やがてその美しさを失っていきます。

確かに幻術や幻は永遠に変わらず、美しいものを見せることができます。しかし、それは幻に過ぎません。現実にあるものはどんなものでもいずれ廃れていってしまうのです。

繁栄を極め、滅びることは無いとまで言われた唐の国も廃れていきました。楊貴妃も絶世の美女と言われましたが、老いや死には勝てません。しかし、それらはいつか終わりが来るからこそ美しいのです。いつか終わりが来るからこそ、その終わりの間際に一際輝きを放つのです。

一瞬の栄華を極めた長安の都。絶世の美女と謳われながらあまりにも早く世を去った楊貴妃。永遠ではない、移ろいゆくものだからこその美しさがそこにはあります。

チェンカイコ―監督は本作に印象的に登場する幻術(幻)をCGで、美しい長安や屋敷を実際のセットでという風に住み分けさせています。さらに言うなれば、本作のCGは少し違和感があります。これだけ予算がかかった映画にもかかわらずCGがぎこちないのです。

これは滅びや死を前にして輝く「現実」の長安や楊貴妃の美しさと白龍や丹龍らが魅せる「幻術」の紛い物の美しさを対比的に描こうとしたのだと思います。

しかしそれにしても映画のために街を作ってしまうなんてとんでもないですよね(笑)

本作を見る前に(見た後に)知っておきたい予備知識!!

本作「空海 美しき王妃の謎」は唐代の中国史を知らないと完全に置いていかれてしまう映画になっています。そのため詳しくはご自分で調べてくだされば良いのですが、簡単に予習・復習できるように本作に関係のあるキーワードをいくつか解説してみようと思います。

空海

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この映画の主役ですね。蜜教を学ぶために9世紀の初頭に唐を訪れたと言います。彼は唐で長安の青龍寺を訪れ、恵果和尚に支持しました。

主役ではありますが、これくらい知っておけば十分です(笑)。

白楽天

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日本では白居易として知られている唐代の詩人ですね。身分の低い家の出身でしたが、当時の唐で採用されていた官吏登用試験の科挙に合格し、官吏として朝廷に仕えました。

玄宗皇帝と楊貴妃について歌った「長恨歌」という詩が有名です。今回の映画「空海 美しき王妃の謎」を読み解く上で、「長恨歌」はマストです。というか「長恨歌」を知らないと、置いていかれる可能性が高いです。

禅僧と交流があったことは指摘されていますが、空海と面識があったかどうかは史実では定かではありません。

長恨歌

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長恨歌は白居易が玄宗と楊貴妃について歌ったと言われています。

春まだ寒いころ、華清池の温泉を賜った。温泉の水は滑らかに白い肌を洗う。
侍女が助け起こすとなよやかで力ない。こうして晴れて皇帝の寵愛を受けたのであった。
やわらかな髪、花のような顔、歩みにつれて金のかんざしが揺れる。芙蓉模様のとばりは暖かく、春の宵を過ごす。
春の宵はあまりに短く、日が高くなって起き出す。これより王は早朝の執政を止めてしまった。
王の意を受けて宴に侍って途切れる暇もない。春には春の遊びに従い、夜は夜で王の側に一人で侍る。
後宮には三千人の美女がいたが、三千人分の寵愛をいまや一身に受けている。

(長恨歌より)

これはまさに楊貴妃の美しさを様々な言葉で言い表した部分といえます。玄宗は自分の息子の嫁だった楊貴妃を強奪しちゃいましたからね(笑)それくらいご執心だったということです。

また本作中でも登場する李白も楊貴妃について詩を詠んでいます。

雲には衣裳を想い、花には容(かんばせ)を想う
春風、檻(かん)を払いて露華(ろか)濃(こま)やかなり
若し 群玉山頭に見るに非ずんば
会ず 瑶台月下に向かって逢わん

(清平調詞より)

この詩は李白が酒で酔っている時に、楊貴妃を目にし、その際に詠んだと言われています。ぜひ映画「空海 美しき王妃の謎」に登場するこの詩の「真相」をチェックしてみてください。

今はただ思い出の品によって私の深情を示したいのです。螺鈿の小箱と金のかんざしを形見にお持ちください。

かんざしの脚の片方と小箱の蓋をこちらに残しましょう。かんざしの小金を裂き小箱は螺鈿を分かちましょう。
金や螺鈿のように心を堅く持っていれば、天上と人間界とに別れた私たちもいつかまた会えるでしょう、と。
別れに際し、ていねいに重ねて言葉を寄せた。その中に、王と彼女の二人だけにわかる誓いの言葉があった。
それは七月七日の長生殿、誰もいない真夜中に親しく語り合った時の言葉だった。
天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝となりましょう、と。
天地は悠久といえどもいつかは尽きることもある。でもこの悲しみは綿々と続いて尽きる時はこないだろう。

(長恨歌より)

「長恨歌」の終盤に登場する「螺旋の小箱」「金のかんざし」「比翼の鳥」といった言葉は頭に入れておくと、映画で腑に落ちるポイントが多いと思います。

楊貴妃

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玄宗の寵愛を受けた絶世の美女。755年に起こった安禄山らによって引き起こされた安史の乱に際して、玄宗が部下たちと蜀に落ちのびる時に、部下をなだめるために自殺させられたと言われています。その死体は埋められたそうです。

とりあえずこれだけ知っておけば大丈夫かと思います。

玄宗

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唐代に最も栄えていたと言われる「開元の治」を実現した唐の皇帝です。政治にも熱心でしたが、徐々に一部の部下だけを寵愛し、さらに楊貴妃に入れ込むようになったと言われています。

これだけ知っておけば大丈夫です。

今回映画の中でも解説がある程度はあるので、かなり簡単にしか解説しておりません。ただこれくらいの最低限度の唐代の中国に関する知識を持っておくと、映画の見え方が変わってくると思います。この映画が一体どういう構造のミステリーになっているのか?を把握するためにも、ぜひ皆さん自身で今回紹介した5つのキーワードを調べてみてください。

*ここから少しネタバレを含みます。

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*ここから少しネタバレを含みます。

感想・解説:史実を壊さない歴史ミステリーの面白さ

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この映画「空海 美しき王妃の謎」という作品は史実にいろいろな疑問を突きつけていくんですが、決して史実を壊したりしないんですよね。

あくまでも歴史に対してこういう「解釈」があるんじゃないかという視点を提示する作品になっています。だからこそ面白いんですよね。

歴史の「空白」にこんな出来事があったんじゃないか?この人物には実はこんな考えがあったんじゃないだろうか?と考えるのは非常に楽しいことです。

楊貴妃の死の真相は?長恨歌に込められた意味とは?空海は青龍寺を訪れるまで何をしていたのか?いろいろな史実では分かり得ない「空白」をフィクションで彩ります。

ぜひ史実を知った上で、ご覧になって欲しい作品ですね。

 

 

解説:「長恨歌」を再解釈する物語。

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本作は白居易の詠んだ「長恨歌」を再解釈する物語なんです。

というのも白居易は実際に玄宗、楊貴妃の時代に生きたわけではないんです。彼が生まれ、詩人として活躍したのは、楊貴妃が死に、そして玄宗が没落した後の晩唐の時代なんですね。

つまり彼は「長恨歌」を詠むに当たって、既に「歴史」となった2人の物語を元にしたはずなんです。ただそうでありながら、なぜあれだけ生き生きと、まるで2人の姿を見ていたかのような詩を詠むことができたのか?という点に関しては、彼の才能以上のものを感じます。

この作品は(同原作は)「長恨歌」がなぜあのような形で完成を迎え、世に送り出されたのか?その裏にあったのではないかという空想の物語なのです。

だからこそ本作のラストシーンのセリフは印象的です。

「長恨歌を詠んだのは白龍だ。」

この詩において描かれた事柄を「空海 美しき王妃の謎」の作中で体験していたのは他でもない白龍でしたからね。白居易はこの詩を詠むに当たって、そんな美しい幻想を見ていたのかもしれませんね。

おわりに

この映画で描かれた当時はまだ詩作家として、禅僧として無名に近かった白居易と空海。そんな後に歴史に名を遺す2人の人物の、未熟さと若さが感じられるのもこの映画の素晴らしいところです。

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主題歌であるRADWIMPSの”Mountain Top”はまさに空海と白居易がこれから高みへと昇っていくことを象徴しているようにも感じられます。

そして同時に「山の頂」に昇りつめ、そして落ちていった玄宗と楊貴妃を象徴するような儚い歌にも聞こえますね。

空海と白居易のバディムービーとしても楽しめますし、ラブストーリーとしても切ないですし、歴史ミステリーとしても興味深い内容となっていました。

ただあくまでもメインは猫でした(笑)

チェンカイコ―監督が150億円をかけた究極の猫映画。ぜひご堪能ください。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。




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