【ネタバレ】ドラマ「anone」第1話:感想・解説:「あのね」を奪われた少女の物語

〇はじめに

 みなさんこんにちは。ナガと申します。

 今回はですね本日放送スタートのドラマ「anone」の第1話についてお話していこうと思います。

 良かったら最後までお付き合いください。




〇第1話:あらすじ

 林田亜乃音(田中裕子)はその日、自宅1階の廃業した印刷工場の床下で、大量の1万円札の束を見つけ…。一方、通称“ハズレ”こと辻沢ハリカ(広瀬すず)は、清掃のアルバイトをしながら同年代の美空(北村優衣)と有紗(碓井玲菜)と共にネットカフェに寝泊まりしている少女。スマホのチャットゲームの中でだけ会える闘病中の“カノン”さん(清水尋也)と日々の他愛ない会話を交わすのが楽しみだ。ある日、友人とのドライブ中に札束の入ったバッグが捨てられているのを見たという有紗の記憶を頼りに、 ハリカたちは「柘」という町を目指すことに。「つげ」は、かつてハリカが祖母(倍賞美津子)と暮らした 幸せな記憶のある町の名前で…。一方、医者から半年の余命宣告を受け店を畳もうとしていたカレー屋店主・持本舵(阿部サダヲ)は、の客・青羽るい子(小林聡美)と意気投合し、二人で死に場所を探す旅に出ていた。カレー屋のワゴンで二人が流れ着いたのは柘という町。捨てられた大金がきっかけとなって、出会うはずのない人たちの運命の糸が引かれようとしていた。
ドラマ「anone」公式サイトより引用)

〇予告編

〇「臭い」が一つ重要な要素か?

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©Nippon Television Network Corporation ドラマ「anone」最新映像より引用

 阿部サダヲ演じる持本は作中でしきりにフリスクを食べていましたよね。つまり彼は口の「臭い」を気にしていると言えます。

 加えて、広瀬すず演じるハリカは、死体のあった現場を清掃する仕事に従事していて、そこでは死体の強烈な「臭い」が付き纏っています。またカノンとのチャットでハリカが使っているバーチャルキャラクターはガスマスクを装着していました。

 「臭い」はドラマ「anone」において重要なモチーフになると考えられますね。

〇坂元裕二のセリフSHOW

 坂元脚本と言えば、印象的なセリフ回しですよね。今回の「anone」第1話でも印象的なセリフが数多く登場しました。

持本:「今、ちょっと名言怖いんです。」

→持本は自分の父親が亡くなっているんですかね?自分のカレー屋を閉店して、自殺しようとしていました。そんな彼は、同じく自殺願望のある青羽るい子に出会いました。

持本:「努力は裏切りますけど、諦めは裏切りませんから。」

→学生で部活動をしていた時にさんざん言われましたね。「努力は裏切らない。」でも実際は「努力」って報われないことが多いです。「努力」は人を良い方向に向かわせてくれるとは限りません。しかし「諦め」は間違いなく人を良い方向へと向かわせません。この点で「諦め」は確かに裏切らないと言えるやもしれません。


「大丈夫は2回言ったら大丈夫じゃない。」

→このセリフはすごいですね・・・。「大丈夫!」って言い切る時って、多分相手に対して自分は大丈夫だ!ということを主張しているんですよね。ただ「大丈夫大丈夫」と2回繰り返す時は、自分に大丈夫だと言い聞かせている節がありますよね。だからこそこの場合は、自分の中に大丈夫じゃないのではないか?という懸念が存在していて、それを何とかして落ち着かせようとしているのかもしれません。そんな微妙な心理を表現した絶妙なセリフですよね。


持本:「フリスクにそんな生き死ぬを賭けるなんて・・・。」

→今回は持本のセリフが切れ味鋭かったですね。「フリスクを1つちょうど出すことすらできない人生です。」というセリフも響きましたが。フリスクは先ほど「臭い」が重要な要素なのではないか?と意見提起してみましたが、やはり重要なモチーフになるのかもしれません。フリスクは「臭い」を消すためのアイテムですからね。

〇「あのね」を奪われた少女「ハリカ」と「あのね」が出会う

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©Nippon Television Network Corporation ドラマ「anone」最新映像より引用

 劇中でも登場していましたが、「あのね」という言葉は子供特有の呼びかけの言葉ですよね。そして、広瀬すず演じるハリカの口癖であり、田中裕子演じる人物の名前、亜乃音(あのね)でもあります。

 ハリカという少女は両親に捨てられました。そして為貝という女性が経営する全寮制の学校で半ば「収容」まがいの扱いを受けていました。彼女には「あのね」という呼びかけでもって、自分の話を聞いてくれる両親という存在を奪われたんですよね。

 だからこそ彼女は自分より年上の少年彦星君に「あのね」という呼びかけでもって、話しかけていたわけです。彦星君はハリカの「あのね」を聞いてくれる、いわば彼女の親代わり的存在になっていたのかもしれません。

 そしてハリカはそんな親代わり的存在だった彦星君に、オンラインチャット上のカノンというアカウントを介して再会することになります。図らずもハリカはカノンに対して「あのね」というチャットを送信していましたね。

 だからこそ第1話の終盤のハリカの涙は印象的です。自分の親代わり的存在だった彦星君(カノン)の、自分の「あのね」を聞いてくれた大切な存在の「死」を悟ってしまったのです。

 「カノン」という言葉には「規範、基準」なんて意味がありますから、ハリカにとって彦星君(カノン)の死というのは、彼女にとってある種自分の規範的な存在を失ったということも意味しているかもしれません。

 そんな少女が林田亜乃音(あのね)という女性に出会うという運命は何か数奇なものを感じますね。

〇「ハリカ」と「ハズレ」

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©Nippon Television Network Corporation ドラマ「anone」最新映像より引用

 名前を奪われるという行為には、すごく重要な意味があります。ジブリ映画「千と千尋の神隠し」でも「名前」を奪うという行為には、その人物の自由を奪い、支配下に置くというような意味合いが込められていました。

 本作でも、ハリカは幼少期の全寮制学校で為貝によって「ハズレ」という名前を刷り込まれましたよね。これは彼女が身体的に、精神的に為貝に支配されてしまったことを意味しています。この精神的な支配が、彼女の幼少期の記憶を捻じ曲げ、改変していたのかもしれません。

 そんな「ハズレ」に「ハリカ」という名前を取り戻させてくれたのも彦星君(カノン)ですよね。つまり彼は、子供時代もハリカを学校から連れ出そうとしてくれた人物でしたが、成長してからもハリカを為貝の支配から、呪縛から解放してくれた人物なのでしょう。

 
〇アポートと羽

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©Nippon Television Network Corporation ドラマ「anone」最新映像より引用

 ハリカが「おばあちゃん」との思い出の場所「柘」を訪れた際に、地面から突然大量の鳥の羽が出てきますよね。この現象は「アポート」と呼ばれているみたいですね。ここでの羽というモチーフには「真実、高次元からの加護、高次との交信が始まったシグナル」という意味合いがあるようです。

 この羽が見えた後にハリカは突如語り始めた風見鶏との対話により、「おばあちゃん」の真実を知ります。つまり物語の展開を考えても「アポート」という現象の意味合いが如実に絡んできていますね。

 羽というモチーフは比較的ポジティブな意味合いがあるそうですから、このシーンがハリカという少女の人生が少しずつ良い方向へと向かっていくことをも暗示しているのかもしれません。


〇「お金」というモチーフがもたらす崩壊

 今回の第1話では間違いなく「お金」が重要な役割を果たしていました。

 持本のカレー屋にやってきた青羽は、券売機で金券を買おうとはせず、しかも自分が食べた「焼うどん」に対して「お金」を支払おうとしませんよね。

 ハリカがネットカフェで育んだ不思議な友人関係は、海岸のテトラポットの下で発見された「お金」でもって脆くも崩れ去りました。

 登場人物たちは、大金の入ったカバンを巡って必死の争いを繰り広げていました。

 ただ第1話の終盤に亜乃音が追いかけていた「お金」が全て贋札であったことが判明しますよね。

 「お金」というのは、人間関係におけるしがらみなんですよね。青羽は持本に対して「焼うどん」は「お金」を媒介とする店主と客の関係ではなく「プライベート」で作ってくれたのではないか?と尋ねました。

 ハリカの職場では給料、つまり「お金」を巡って他愛ないもめ事が勃発していました。

 ハリカのカノンのやり取りを見ていた、彼女の友人は「お金」目当てではないか?と指摘しました。

 ハリカの不思議な友人関係を崩壊させたのも「お金」への執着心でした。それまで身を寄せ合っていた少女たちの秘められた欲望を一瞬にして表出させてみせました。

 だからこそ、「お金」をびりびりに破り捨ててトイレに流したり、夜の海岸で必死に焼こうとする亜乃音の姿は、過去の人間関係に纏わる何かを清算しようとしているのではないか?ということを想像させてくれます。

 ただ第1話で唯一「お金」によって結びつかなかった関係性がハリカとカノン(彦星)なんですよね。これがまた泣かせます。

〇「動物」も重要なモチーフに?

 第1話には多くの動物が登場しましたよね。ハリカや亜乃音の部屋には猫がいました。

 そして海岸に犬を探しに来た2人組もいましたね。

 カノンは病院からハシビロコウが見える、そして自分はシロガオサキだと言っていました。

 またハリカの幼少期の回想には陸ガメが登場しましたね。

 動物も今後作中で重要な役割を果たすのかもしれませんね。

〇気になったシーン

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©Nippon Television Network Corporation ドラマ「anone」最新映像より引用

 第1話では、風力発電の風車が印象的でしたよね。全編を通してその風車は回っているんですが、ハリカとカノンの逃亡劇の回想では、風力発電の風車が止まっているんですよね。単に夜だったから風が止んでいるとも考えられるのですが、これは何か意味があるのではないか?と個人的に勘ぐってしまいました。

〇おわりに

 まだまだ導入も導入という感じでしたね。坂元脚本の「カルテット」も二転三転する怒涛の展開に繋がっていったので、今作「anone」もすごく楽しみですね。

カルテット Blu-ray BOX
松 たか子
TCエンタテインメント
2017-07-07



 かなり謎が散りばめられていたように感じますし、今後伏線になっていきそうなキャラクターや展開、モチーフも散見されました。

 これから毎週作品を見て、記事をしたためていきたいと思います。

 良かったら毎週読みに来てください。

 今回も読んでくださった方ありがとうございました。

〇第2話記事

https://www.club-typhoon.com/archives/21587879.html

 良かったら第2話の記事も読んでやってください!!




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