【ネタバレあり】『アースクエイクバード』解説・考察:日本における「外国人」をリアルに描く

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『アースクエイクバード』についてお話していこうと思います。

ナガ
アリシア・ヴィキャンデルが美しい日本語を話すというだけで見る価値のある映画だよね・・・。

ハリウッドが描く日本ってすごく偏った印象が強いんですが、今作については、かなり自然な日本描写になっているので安心して見られました。

言語面に関しても日本語と英語の使い分けに違和感がないと言えば嘘になりますが、アリシア・ヴィキャンデルも非常に日本語が巧いですし、それほど気になりませんでした。

また、ハリウッド映画で日本を舞台にする際に、しばしば撮影の許可の問題で、韓国や中国で撮影されることがあります。

それについても本作は新宿や新潟県の佐渡ヶ島でロケをしているようで、よく見る「まがい物」感満載の日本描写とは一線を画しています。

さて、今回の記事ではそんな不思議なミステリー映画『アースクエイクバード』について書いていきます。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む解説・考察記事となっております。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『アースクエイクバード』

あらすじ

ある夜、日本に来て間もないリーという女性が殺害されるという事件が起きた。

日本で翻訳会社に勤めるルーシーは彼女の友人であり、そして殺害の容疑をかけられて警察に連行されてしまう。

彼女は取り調べを受ける中で、それまでに起きたことの敬意について語り始めるのだった・・・。

ルーシーはある日、道すがらいきなり一人の男に写真を撮られる。

彼は禎司という写真家のミステリアスな雰囲気に惹かれ、彼の家に通い、被写体となる日々を重ねる。

そんなある日、彼女は友人から、日本にやって来たばかりだというリーという女性を紹介された。

2人は共に過ごす中で友情関係を深めていくが、ある日リー禎司が出会ってしまい、意気投合してしまったことから3人の関係は少しずつ歪になっていく・・・。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:ウォッシュ・ウエストモアランド
  • 製作総指揮:リドリー・スコット
  • 原作:スザンナ・ジョーンズ
  • 脚本:ウォッシュ・ウエストモアランド
  • 撮影:チョン・ジョンフン
  • 美術:種田陽平
  • 衣装:小川久美子
ナガ
製作にリドリー・スコットがクレジットされてるね!

リドリー・スコットは自身の邸宅に日本人ハウスキーパーを雇っていたことや、何と言っても大阪を舞台にした『ブラック・レイン』を監督したことでも知られています。

監督を務めるのは、『アリスのままで』にて監督・脚本を担当したウォッシュ・ウエストモアランドです。

映画の出来も素晴らしく、主演のジュリアン・ムーアがアカデミー賞主演女優賞を獲得したことでも話題になった作品です。

原作は日本に在住した経験もあるイギリス人作家のスザンナ・ジョーンズです。

撮影には『お嬢さん』『IT イット』にも起用されていたチョン・ジョンフンが参加しました。

美術監督には、クエンティン・タランティーノ監督作品にもたびたび起用され、岩井俊二監督の『スワロウテイル』などの作品にも参加し、国内外で高い評価を得ている種田陽平さんがクレジットされています。

キャスト
  • ルーシー:アリシア・ヴィキャンデル
  • リリー:ライリー・キーオ
  • 禎司:小林直己
ナガ
アリシア・ヴィキャンデルが日本人に囲まれて異次元の存在感を発揮しているよね・・・。

主人公のルーシーを演じたのはアリシア・ヴィキャンデルです。

あまりの小顔っぷりに周囲の日本人俳優たちを完全に置き去りにするような圧倒的な存在感を放っていますよね。

アカデミー賞受賞経験もあるため、演技が素晴らしいことはもちろん、日本語が非常に美しくて感激でした。

リリー役には、『マッドマックス怒りのデスロード』などにも出演していたライリー・キーオが起用されました。

写真家の禎司役には、三代目 J Soul Brothersの小林直己さんが起用されました。

鮮烈なハリウッドデビューとなったわけですが、既に海外の批評家からも演技面を絶賛されており、もしかすると今後ハリウッドで注目の俳優に成長していくかもしれません。

ナガ
映画は現在Netflixにて配信中です!ぜひぜひ劇場でご覧ください!



『アースクエイクバード』解説・考察(ネタバレあり)

タイトルに込められた意味を考える

『アースクエイクバード』という作品のタイトルは非常に意味深ですよね。

直訳すれば「地震の鳥」ということになりますが、著者が日本に在住経験があるということで、自身の恐怖を肌で体感したのではないかということは推察されます。

本作は2000年頃に著された作品ですが、彼女が日本に在住経験があったということですから丁度、阪神淡路大震災のような地震が日本を襲った時期ですよね。

やはり欧米諸国から見れば、日本は「地震の国」ですから、そのコンテクストが反映されているというのが、まず1点でしょう。

また、「アースクエイクバード」については、作中では次のように言及されていました。

写真家の禎司の明かしたところによると、地震の揺れが収まったときに鳥のさえずる鳴き声が聞こえるというのです。

その解釈を考えると、本作には2つの側面が見えてきます。

まず、禎司という男の正体ないし性癖に「アースクエイクバード」の側面が見られます。

Netflix『アースクエイクバード』より引用

彼は、女性を撮影するのが好きなわけですが、本作の終盤で彼が女性の死体に強く惹かれるという性癖を持っていることが明らかになりました。

つまり彼が撮りたいのは、死ぬ前にじたばたと暴れる人間が徐々に動かなくなっていき、そして命が燃え尽きるその瞬間に訪れる静寂と平穏なのだと思います。

それはまさに地震の揺れが収まった後に、平穏の訪れを告げるかのように聞こえてくる鳥たちの鳴き声の様でもあります。

そしてもう1つは、本作のルーシーが経験する大きな物語構造が「アースクエイクバード」的になっているという点です。

作中で、彼女の幻覚のような描写と現実の描写がシームレスに描かれ、見る者を困惑させることがしばしばありました。

これは、まさにルーシーの内に秘められた感情の「揺れ」の表出ですよね。

彼女の感情は常にネガティブな方向へと揺れ動いていて、そんな悪い想像と現実の間で戸惑っているのです。

そんなルーシーの内で揺れる思いが、どういう風に収束していき、そして平穏を取り戻すのかを描いた作品であるという点で、やはり物語の大枠に「アースクエイクバード」の側面が含まれているように思えます。

 

日本における「外国人」をリアルに切り取った作品

記事の冒頭でも書きましたが、日本という舞台や地名がハリウッド映画の中で扱われることはあるのですが、その描写は極めてステレオタイプ的であったり、中国と混同されていたりと、きちんと愛をもって描いている作品は決して多くありません。

そんな中で日本人スタッフも多く参加した『アースクエイクバード』という作品は、非常に日本の空気感をリアルに描けていると思います。

まず面白かったのが、外国人と日本のコンテクストの描き方ですよね。

冒頭の取り調べのシーンで、外国人は「日本語が話せないものだ。」という先入観で刑事が話し始めて、途中で日本語が分かるということに気がついてイライラする一幕がありました。

ナガ
これよくあるシチュエーションなんだよね・・・。

日本人が外国の方と話す時に「日本語上手いね~。」と言ってしまうケースは少なくないんですが、これは失礼な印象を与えることもあるので注意が必要です。

というのも、日本の人って相手が拙い日本語をしゃべてっていても、それが外国人であればお世辞のようにこの表現を使ってしまうので、相手が自分の日本語がまだまだと思っている人であればあるほど、それが嫌味に受け取られてしまうんです。

また、両親が外国の方で、その間に生まれた子供は日本に生まれつき住んでいるというケースも少なくありません。

そういう場合に、日本はやはり単一民族国家ということもありますから、どうしても見た目のイメージから英語で話そうとしてしまって、かえって相手を不快にさせてしまうこともあります。

また、その後のシーンで刑事が「独身だよね?もちろん。」と質問し、ルーシー「もちろん?」と返答するシーンが面白かったですね。

このシーンがなぜ面白いのかと言うと、ルーシーは極めて日本人に近い感性や価値観を持っているにもかかわらず、日本人の刑事は「日本にって来た外国人」というステレオタイプ的な物差しで彼女を推し測った質問をしているからなんです。

こういった日本における外国人のコンテクストをちょっとしたシーンの中で見事に作品に息づかせているのです。

そして本作最大の魅力は、アリシア・ヴィキャンデルが「日本人らしさ」を身に纏った女性を見事に演じ切っている点です。

本作には、ルーシーリリーという2人のキャラクターが登場しますが、日本歴の長い前者は価値観や言動が非常に日本的なんですよ。

メイクの施し方であったり、服装や佇まいも明らかにルーシーと対比的に描かれていますよね。

また、それだけでなく性格的な部分も左右していますが、非常にオープンで他人のパーソナルスペースにどんどんと入っていき、恋愛にも積極的なリリーは欧米的なイメージを纏っています。

対照的にルーシーは奥ゆかしい性格で、自分の思ったことを飲み込んで抱え込んでしまい、あまり表に出さないような印象を受けます。

ここには日本と欧米諸国における、人とコミュニケーションをとる際の美徳と言いますか、感性の違いが表れているようにも思えました。

ルーシーリリーは2人とも非日本人俳優が演じているにも関わらず、前者は日本人的であり、後者は非日本人的であるという違いを見事に作品の中で表現しているというわけです。

そう考えた時に、その差異を浮かび上がらせることに成功しているアリシア・ヴィキャンデルという女優の底知れぬ演技力の高さに脱帽せざるを得ません。



ラストシーンが描こうとした本作のテーマ

Netflix『アースクエイクバード』より引用

本作『アースクエイクバード』の最大のテーマは「未必の故意」にも似ています。

この言葉は以下のように定義されます。

確定的に犯罪を行おうとするのではないが、結果的に犯罪行為になってもかまわないと思って犯行に及ぶ際の容疑者の心理状態。殺人事件の場合、明確な殺意がなくても、相手が死ぬ危険性を認識していれば、故意として殺人罪が適用される。

(2008-10-02 朝日新聞 朝刊 1総合)

ナガ
ミステリ小説などでは時々扱われる題材だよね!

ただ『アースクエイクバード』において、ルーシーリリーに危険な行為をしたわけでも、何か働き掛けをしたわけではないので、厳密には「未必の故意」とは少し毛色は異なります。

彼女は、誰か自分に関わりのある人が死んだ際に、その直前に自分がその人にした事件とは何も関係のない行動が、その人の死を招いてしまったのではないかとネガティブに考えてしまう傾向があります。

これまでリリー以外にも、劇中で階段から落ちて亡くなった山本さんなど5人の人が自分と関わって命を落としたと彼女は語っています。

自分が関わったことで、自分がその人に対してした行動が巡り巡って「死」をもたらしているのではないかとルーシーは1人で抱え込んでいき来ました。

とりわけ幼少期の頃に経験した1人目の「死」が大きなトラウマになっていて、彼女がたびたび森のビジョンを見ているのはそれが原因でしょう。

そんな彼女に、ある女性が「だけど言い換えれば、リリーはあなたを救ったのよ。」と告げました。

これは常に自分に責任があると考え、罪悪感に苛まれてきた彼女にとって1つの視点の転換にもなっていたように思います。

そしてラストシーンでは、その女性が自分がワックスで階段を磨いたのに、それを報告しなかったことで山本さんが命を落としてしまったと嘆く様が描かれました。

その後、ルーシーが言葉を発することはありませんでした。

必死に感情を抑えながら、涙を拭い、そして目の前のその女性に何か言葉をかけようと決意した表情を見せたところで物語は幕切れます。

ルーシーが目の前のその女性に見ていたのは、まさしく自分自身だったはずです。

殺意など全くなかったけれども、もしかすると自分の行動が他人の「死」を生んでしまったのかもしれないという罪悪感。

きっと、彼女はこの先も1人でこの悩みとトラウマに向き合っていかなければならなかったかもしれません。

彼女は、佐渡島から帰ってきた後、ショックで会社を休んでいました。そんな時に心配して家までやって来てくれた同僚を彼女は突き放しました。

また、禎司に対しても彼女は自分のことを語りたがりませんでしたよね。

ラストシーンに至るまでの彼女は、どこか他人と深く関わることを拒んでいて、自分のトラウマや不安、罪悪感は誰にも理解されないものだと思い込んでいるような節がありました。

しかし、自分と同じ罪悪感を背負って生きるその女性に出会えたからこそ、彼女はその人を通じて自分を「赦そう」と思えたのではないでしょうか。

そういう意味でも、『アースクエイクバード』という作品は、人と人が語り合い、支え合いながら前を向いて生きていこうとすることの美しさを表現していた作品のように思えました。

1人では抱えきれないことも、乗り越えられないことも、誰かと分かち合えば・・・。

そんな優しさと勇気をくれる1作でした。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は映画『アースクエイクバード』についてお話してきました。

独特な雰囲気のミステリということで、かなりそういった要素の部分で期待してしまったので、肩透かしを喰らった部分はありました。

本格的な謎解きミステリというわけではなくて、犯人が誰かという点は分かり切っているんですが、1人の女性が抱える謎を少しずつ解き明かしていき、それを優しく紐解くかのような作品でしたね。

それにしてもアリシア・ヴィキャンデルの演技は見事で、非日本人女優でありながら、「日本人らしさ」のような空気感を見事に身に纏っているので、リリーを演じたライリー・キーオとの対比が一層際立ちました。

そして、北米でも絶賛で迎えられている小林直己さんのサイコキラー感も抜群ですよね。

切れ目で、柔和な表情に見えるんですが、目は笑っていないようにも見えて、内に何かどす黒いものを秘めている香りがプンプンと漂ってきて、異質な存在感を発揮していました。

もう少し、作品的にブラッシュアップできる部分は多々ありましたが、ハリウッド映画作品で、日本をここまでリアルにかつ美しく描いてくれる作品もなかなか見れないので、満足でした。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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