【ネタバレあり】『ターミネーター ニューフェイト』感想・解説:望んだのはこんな続編か?

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『ターミネーター ニューフェイト』についてお話していこうと思います。

ナガ
何度目の『ターミネーター2』の正統な続編なんだろ・・・(笑)

2作目以降不評が続き、どんどんとファンの心が離れていっている印象がある本シリーズ。

そんな印象を払拭しようと新しい3部作の1作目として公開された『ターミネーター 新起動』も批評的・興行的に不発に終わり、新三部作構想そのものが頓挫してしまいました。

そして今回も『ターミネーター ニューフェイト』を1作目とした新3部作の構想があるようですが、既に本作が1億ドル近い赤字を出すことが予想されています。

何となくまた3部作が実現することなく終わってしまいそうな雰囲気があります。

このシリーズってどうしても1作目と2作目が面白すぎるあまり、それ以降の作品がその呪縛から逃れられなくなっているように感じます。

低予算映画ながら、壮大な物語のバックボーンを打ち出し、ひたすらにサイボーグと人間の「追いかけっこ」で魅せた『ターミネーター』

一気にビッグバジェットムービーと化し、派手なカーチェイスなども交えながら、1作目の裏返し的な物語で見る者を圧倒したシリーズ最高傑作の『ターミネーター2』

ただこれ以降の作品は、言わばこの2作品の遺産を食いつぶしているだけの焼き直しかリブートにしかなっていません。

そのため『ターミネーター ニューフェイト』には、この負のサイクルを断ち切る役割が求められていると感じます。

焼き直しでもなく、オマージュ盛り盛りのリブートでもなく、シリーズの新境地を見せる作品が必要です。

ナガ
果たして本作はそんな作品になれたのかどうか・・・。

早速鑑賞してきましたので、本作について語っていきたいと思います。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む感想・解説記事となっております。

作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。




『ターミネーター ニューフェイト』

あらすじ

人類滅亡の日である1997年の「審判の日」は、サラ・コナーの活躍により回避された。

しかし、その後平穏に暮らしていた彼女の前に未来から再び派遣されたターミネーターが現れ、ジョンを殺害してしまう。

怒りと復讐の念に燃える彼女は、未来から次々に派遣されてくるターミネーターを破壊することだけを生きがいにするようになった。

ある日、メキシコシティで暮らす少女ダニーの下に、最新型ターミネーター「REV-9」が送り込まれ、命を狙う。

窮地に陥った彼女の前に、同じく未来から彼女を守るべく派遣されたグレースが現れ、交戦状態になる。

絶体絶命の状況ながらも何とか逃げ出した彼女は、サラ・コナーと合流し、「REV-9」を打倒するべく、「ある場所」を目指すこととなる。

テキサス州の森の中にあるその場所にいたのは何とジョンを殺害したT-800だった・・・。

 

スタッフ・キャスト

スタッフ
  • 監督:ティム・ミラー
  • 脚本:デビッド・ゴイヤー
  • 撮影:ケン・セング
  • 編集:ジュリアン・クラーク
  • 音楽:トム・ホルケンボルフ
  • 視覚効果監修:エリック・バーバ
  • 特殊効果監修:ニール・コーボールド
ナガ
まさかの監督がティム・ミラーですか!

低予算ながらもそのコメディ&アクションセンスで大ヒットした映画『デッドプール』の立役者でもあるティム・ミラーが、『ターミネーター』シリーズ最新作を手掛けることとなりました。

脚本には、DCヒーロー映画の脚本を数多く担当してきたデビッド・S・ゴイヤーが起用されています。

『ダークナイト』のような素晴らしい作品も手掛けた一方で、正直脚本的にはイマイチな『マンオブスティール』『バットマンVSスーパーマン』なども手掛けているので、何とも微妙な期待値です。

撮影は、低予算ながら見事なアクション映像を見せてくれた『デッドプール』から引き続いてケン・セングが担当しました。

編集にも、『デッドプール』にて独特のコメディメイドでキレッキレな編集を披露したジュリアン・クラークが加わりました。

音楽には『マッドマックス怒りのデスロード』『アリータ バトルエンジェル』の劇伴音楽も作曲したトム・ホルケンボルフがクレジットされており、こちらも非常に楽しみなところです。

キャスト
  • サラ・コナー:リンダ・ハミルトン
  • T-800:アーノルド・シュワルツェネッガー
  • グレース:マッケンジー・デイビス
  • ダニー・ラモス:ナタリア・レイエス
  • REV-9:ガブリエル・ルナ
  • ディエゴ・ラモス:ディエゴ・ボニータ
  • ジョン・コナー:エドワード・ファーロング
ナガ
まず最大の驚きはリンダ・ハミルトンの帰還でしょうか!

『ターミネーター2』以降シリーズから遠ざかっていたリンダ・ハミルトンがシリーズに帰って来ることは感慨深いですよね。

そしてニューヒロインの1人であるグレース役には、『オデッセイ』『ブレードランナー2049』で知られるマッケンジー・デイビスが起用されました。

もう1人のニューヒロインであるダニー・ラモス役には、期待の新人ナタリア・レイエスが起用されています。

そして新型のターミネーターであるREV-9を演じるのは、ガブリエル・ルナですね。彼は『エージェント・オブ・シールド』などに出演していたことでもお馴染みです。

さらにジョン・コナーと若かりし頃のサラ・コナーがCGIで復活してスクリーンに帰って来た点も驚きでした。

より詳しい情報を知りたいという方は、映画公式サイトへどうぞ!

ナガ
ぜひぜひ劇場でご覧ください!!



『ターミネーター ニューフェイト』感想・解説(ネタバレあり)

『ターミネーター』シリーズの構成・時系列整理

本作『ターミネーター ニューフェイト』がしきりに『ターミネーター2』の正統な続編であるという点を強調していましたが、その点を理解するためにもある程度、シリーズの情報を整理しておきます。

まず、無印『ターミネーター』『ターミネーター2』は地続きの作品です。

1作目では、T-800サラ・コナーを殺害するために1984年のロサンゼルスへとやって来ます。

彼女は同じく未来からやって来たカイル・リースと共に、戦い、何とかT-800を打倒することに成功します。

そしてシリーズ最高傑作である2作目では、T-800が彼女の息子であるジョンの守護者として派遣され、液体金属のターミネーターであるT-1000と対峙します。

ナガ
まさにシリーズ1作目のインパクトを逆手に取った最高の続編だったよね!

ここで、サラ・コナーは1997年に訪れる審判の日(核戦争勃発の日)を防ぐべく、奮闘し、その未来を防ぐことに成功します。

ただここからが『ターミネーター』シリーズの迷走の始まりです。

まず、『ターミネーター3』が製作され、公開されるのですが、この続編においてはサラ・コナーが白血病で亡くなっており、物語はジョン・コナーの世代へと移ります。

3作目はそれほど酷いというわけでもないのですが、やっぱりラストの展開でかなり賛否を分けましたし、ここが黒歴史化されてしまった1つの要因でもあると思います。

というのもジョン・コナーが伴侶の女性と核シェルターの中で「審判の日」を見届けるというさしてカタルシスのない、というよりも『ターミネーター2』は何だったんだ?と感じさせられる結末なのです。

そして『ターミネーター3』を半ばなかったことにしつつ、『ターミネーター2』の続編の側面も持たせて、世に送り出されたのが『ターミネーター4』です(笑)

ナガ
ここで2作目の続編の2つ目が登場したわけか・・・。

4作目は確かに時系列で見ると、3作目から続いているように見えるんですが、3作目に登場した機関である「サイバー・リサーチ・システムズ」 (CRS) が登場せず、代わりにサイバーダインが復活してしまっているのです。

こうしてなぜか『ターミネーター3』は早々に黒歴史化されてしまいました。

加えてテレビドラマシリーズで『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』という『ターミネーター2』の続編を描いており、こちらは『ターミネーター3』とは繋がっていません。

こうして迷走を重ねたシリーズがリブート3部作の1作目として公開したのがターミネーター: 新起動/ジェニシスでした。

心機一転のリブートだった本作は、『ターミネーター』1作目と分岐した別の世界線の物語を描いています。

つまり1997年が「審判の日」ではなくなってしまった世界線であり、シリーズ1作目と2作目が辿った道とは別の方向へ物語は突き進んで行きます。

そして新たに3部作を立ち上げるとして、その1作目となったのが『ターミネーター ニューフェイト』であり、本作は再び、いや三度目の、いや四度目の『ターミネーター2』の続編と言えるかもしれません。

 

果たして見たかったのは、こんな続編なんだろうか?

(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film

公開前に海外の評価が流れてきて、そのコメントの中に「『ターミネーター』版『スターウォーズ フォースの覚醒』だ!」というものがあったんです。

ナガ
「フォースの覚醒」を大酷評した当ブログ管理人的には、もう既に嫌な予感はしていたんですよね・・・。

『ターミネーター ニューフェイト』を見て、率直に感じたのは、これを作るためにわざわざ『ターミネーター2』を掘り返す必要があったのか・・・という失望です。

というのも、見ていて全く目新しい部分もなく、ひたすらに過去作への目くばせばかりが目立ち、その展開の大半がシリーズのどこかで見たことがある要素のパッチワークなのです。

冒頭の服のくだりなんかはまだ、捻りがあるので面白いと思いましたよ。

タイムスリップしたら、まずは街の人間から服をかっぱらうのがシリーズのお約束なわけで、そこに本作は少し小ネタを忍ばせていました。

グレースは女性の衣類ではなく、男性の衣類を奪い、その後にやって来たREV-9は触れただけで衣服をコピーしてしまいます。

こういうちょっと捻りのある小ネタは面白いと思いましたが、それにしてもどこかで見たことのある展開とファンを喜ばせるためのオマージュが多すぎて、目新しさがないのは絶望的です。

  • T-1000とほとんど変わらない、無表情で追いかけてくる最強の敵REV-9
  • リンダ・ハミルトンの帰還とアーノルド・シュワルツェネッガーの登場
  • シリーズのどこかで聞いたことのあるセリフの繰り返し
  • 『ターミネーター2』で描き切ったように思えるT-800は人間になれるか?というテーマの焼き直し
  • 『ターミネーター3』とほとんど同じ敵の倒し方
ナガ
その他にも上げていくとキリがないですね・・・。

オマージュが悪いこととは言いませんが、物語の本筋に至るまで徹底的に過去作のパッチワークなので、『ターミネーター』シリーズの新作を見たという感慨深さもそれほど感じないんですよね。

何と言うか結局『ターミネーター2』の呪縛から解き放たれることがなかった続編という印象がどうしても強くなってしまいます。

特に、終盤の一番大事な局面で『ターミネーター3』とほとんど同じ展開を持ってくるってどうかしてませんかね。

ナガ
あのシーン「You are terminated.(お前を抹殺する)」というセリフまで同じですからね・・・。

さんざんコケにしてた3作目と同じシチュエーションを作品のクライマックスに持ってくる神経がイマイチ理解できませんでした。

また、肝心の物語の大筋は、『ターミネーター2』とほとんど同じで、T-1000のパワーアップ版であるREV-9がひたすら追いかけてくるだけで、特に捻りもないので、中盤くらいでかなり飽きてきます。

そもそも本シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンは、とにかく映画の革新性を追求してきた人物です。

とりわけシリーズ1作目は、かなり低予算な作品でありながら、サイボーグやAIへの恐怖をベースにし、壮大なSF設定とゾンビ映画のシチュエーションを掛け合わせた見事な映画に仕上がっていました。

続く2作目は、一気に予算も増え、大規模なカーチェイスなどを取り入れつつも、1作目の反転構造で見る者を翻弄し、さらには無表情で迫りくるT-1000という革新的で印象深いヴィランを生み出しました。

そんな常に映画の革新性を追求してきた彼が、仮にも製作で携わっている作品がこんなにも保守的で、既視感に満ちているのは、ただただ残念としか言いようがありません。

『ターミネーター3』は、確かにジェームズ・キャメロンが携わらず、後に「スープに小便をされたような気分だ」というコメントを残したことでも知られています。

しかし、そんな彼が製作として携わって、わざわざ『ターミネーター2』の正当な続編と銘打ってまで公開したかったのが、こんな映画なのかという失望は計り知れません。

ナガ
本当にキャメロンはこの脚本に納得しているんでしょうか・・・?

もっと言うなれば、このタイプの神話を解体して、次の世代の物語に落とし込む系のリブート続編も何度目だよ・・・という。

好みはあると思いますが、当ブログ管理人が一番嫌いな続編の作り方をされてしまったので、ただただ残念でした。



目指すべきは『ローガン』だったのでは?

当ブログの個人的な見解というか意見ではありますが、『ターミネーター ニューフェイト』が目指すべきだった方向性は、X-MENシリーズ最高傑作とも呼び声の高い『ローガン』だったのでは?と思いました。

ナガ
そういうテイストがなかったわけではないよね・・・?

もちろん、老いた旧型マシンということでT-800が最新型のターミネーターと戦うという展開を描いた点から考えても、そういう方向性がなかったと言えば嘘になります。

しかし、大きな問題はそもそも本作に登場するT-800(カール)はこれまでのシリーズにずっと出演してきたキャラクターではなく、本作の新キャラクターであるという点です。

『ターミネーター』シリーズにおいては、1作目でも2作目でもT-800はそのラストで機能停止してリセットされてきました。

そのため『ターミネーター ニューフェイト』に登場するT-800(カール)はX-MENシリーズのウルヴァリンのようなシリーズを背負ったキャラクターとは言い難いのが事実です。

ナガ
しかもどうしたってT2のラストの溶鉱炉に沈むシーンを超えられないんだよね!

そうなんです。T-800が命を賭して守るという展開はT2やT3でも何度も見た光景ですし、それでいてT2のラストの印象が強過ぎるので、もはやそれを超えることが不可能に近いわけです。

そのため、老いたT-800(カール)が命を賭してREV-9を倒すという展開には既視感と見劣りしか感じないのです。

そう考えると、『ターミネーター』『ターミネーター2』というシリーズの基幹となる2作品を背負って立つサラ・コナーを中心に据えた『ローガン』的な作品を目指した方が良かったのではないかというのが個人的な意見です。

幸いにも本作のテーマ性は『スターウォーズ フォースの覚醒』に似ており、「伝説とその継承」にあったわけですから、シリーズを背負ってきた伝説の英雄サラ・コナーの「死」を描いたとしても調和性はあったはずです。

ただ、それが出来なかった理由も分かるのは、今作がそもそも3部作構想の1作目だったという点ですね。

ナガ
『ローガン』という作品は言わば一度限りの必殺技なんだよね・・・。

個人的には、本作『ターミネーター ニューフェイト』は単発の作品にして、サラ・コナーが最後の力を賭して次世代の「ジョン」を守る物語にして欲しかったですかね。

 

人類とテクノロジー、不信感と分断の物語

本作において1つ印象的だったのが、メキシコとアメリカの国境線が物語の大きなキーになっていた点です。

この2つの国の国境線について考える時に、真っ先に頭に浮かぶのは、アメリカ大統領のドナルド・トランプですね。

彼は下火になりつつあったメキシコからの難民、不法移民の問題を扇動的に取り扱い、国境に壁を築くなどという無謀な公約を打ち立てて、国民からの支持を得ようとしました。

そういった背景を鑑みると、本作においてダニーを殺害すべく迫って来るREV-9が中盤以降ずっと国境の警備隊の服を着ているというのは1つ興味深い点だと思います。

というのも、近年ドナルド・トランプ氏の扇動的な発言に伴いメキシコからアメリカへ渡ろうとする不法移民の数はどんどんと増加しています。

下火になっていた不法移民の問題が皮肉にも、彼らを排除しようとする人たちの声と、彼らが押し上げた大統領の影響で、再び顕在化する事態となったわけです。

つまり、ドナルド・トランプ氏がありもしない幻想を打ち立て、それに踊らされたアメリカ国民が不信感を募らせ、結果的にその幻想を現実にしてしまったという皮肉めいた事態を引き起こしているんですね。

最近のニュースでは、彼の政策により多くのメキシコ人家族がバラバラにされているということが話題になり、批判が過熱しました。

本作『ターミネーター ニューフェイト』の国境の警備隊の服を着ているREV-9は、まさしくこういった国境の厳しすぎる警備が人と人とを分断しているという現状を反映させているようにも思えます。

(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film

他にもアメリカではテロが発生したことで、イスラム教徒への地域コミュニティでの不信感や排斥が起こり、その結果として国内でテロリストを生み出してしまういわゆる「ホームグロウンテロリズム」が問題となっています。

人間というものは、不信感に常に苛まれている生き物であり、その不安から逃れるためにテクノロジーに頼ります。

アメリカ同時多発テロが起こり、大きな衝撃をもたらした時、アメリカ政府は、一般市民の通話やテキストメッセージに関する記録を収集するための監視プログラムを構築し、人々のコミュニケーションを管理しました。

『ターミネーター』シリーズにおけるスカイネットという存在もまさしくそうで、人間が自分たちの不安要素、危険分子を抹消するためにAIテクノロジーに頼ろうとしています。

しかし、人間というものは面白いもので、そうして自分たちが頼るテクノロジーにも強い疑念と不信感、恐怖を感じるのです。

その顕著な例がAIであり、映画を見ていてもAIが人間に反旗を翻す設定の作品は限りなくありますし、他でもない『ターミネーター』シリーズがそんな人間のAIに対する恐怖や不信を具現化した作品の先駆けとも言えます。

そして、そんな人間の不信感とAIテクノロジーへの傾倒が生んだ悪しきヴィランであるスカイネットないしターミネーターたちに、人間とターミネーターが力を合わせて立ち向かう様を描いたのがシリーズ2作目でした。

今回の『ターミネーター ニューフェイト』は、その主題をさらに掘り下げつつ、近年のアメリカとメキシコの国境の問題を絡めてアップデートしました。

人間がAIに対して抱く不信感、そして人間が人間に対して抱く不信感。

そういった負の感情が生んだ化け物がREV-9という形となり、ダニーたちに襲い掛かってきます。

そんなREV-9に対して、アメリカ人とメキシコ、人間とターミネーターが手を取り合って真っ向勝負を挑むのです。

本作における1つ印象的な設定が、T-800が家族を持って暮らしているというものです。

確かに『ターミネーター2』は溶鉱炉に沈みゆくT-800の親指を立てる動作で、AIにも人間性が宿り得るという可能性を示して見せました。

『ターミネーター ニューフェイト』は、そこをもう少し展開して、AIが人間と同じように家族を持って、平穏な生活を送っている様を描きました。

本作が、今を生きる私たちに伝えようとしていたのは、異なる国の人と手を取りあって生きることと、そしてAIというものを私たちの未来のパートナーとして捉え直すことの大切さなのだと思います。

私たちはAIというものを漠然とした理解で恐れ、自分たちの仕事を奪うなどという偏見めいたイメージで捉えています。

AIは確かに人間の社会を一変させるでしょうし、今ある人間の仕事を奪っていく可能性は少なくないでしょう。

ナガ
劇中でも工場の仕事がAIロボットに奪われるシーンが描かれていたね!

ただ、それは発想を変えれば、AIに私たちが仕事を任せることで、人間はよりクリエイティブな仕事に没頭できるということでもあります。

つまりAIというものに対して恐怖や不安を抱くのではなく、むしろその性質をしっかりと把握することで、よりよい未来を作っていくためのパートナーとして考えるべきです。

そのメッセージ性が、T-800が家族を持って暮らしているという設定に現れているように感じられました。

また、国や宗教、文化の異なる人間に対しても排他的で、非寛容の姿勢が目立つ時代になりつつあります。

アメリカではメキシコないし南米からの移民・難民に対する風当たりが強くなっており、ヨーロッパでも難民排斥の風潮が高まっています。

しかし、そんな不寛容の姿勢と不信感が新しいテロを生む原因になっていることも否定できません。

人間とAIが、様々な人種の人々が互いに手を取り合って前を向き、「ニューフェイト」を作っていくのだという力強い思いを、『ターミネーター』シリーズらしく伝えてくれたように感じられました。



ただ女性の力強さを押し出しただけの作品ではない

近年ハリウッド映画界においてフェミニズム的な風潮はかなり強く、多くの作品で女性が全面に押し出されています。

ナガ
ただ雑に「強い女性」をアピールしようとする作品も多いよね・・・。

最近のディズニーが特にそんな感じですが、とにかく強い女性を描くことにこだわりすぎるがあまり、物語としての面白さが死んでいたり、逆に男性蔑視的になっている印象すら受けることもあります。

そもそも『ターミネーター』シリーズは、女性が主人公の作品と言うこともあるんですが、現代のフェミニズム的な価値観にそぐわないのは、サラ・コナージョン・コナーを生む人間だから重要視されているという設定ですね。

近年、女性を「子供を産む機械」のように捉えることは、タブーとされますので、その点でダニーという女性が、彼女の子供ではなく彼女自身の強さゆえに求められているという点が描かれていたのは、非常に良かったと思います。

ナガ
まあこれだけだったら、他の雑な「強い女性」アピールの作品と変わらなかったかもね・・・。

『ターミネーター ニューフェイト』が素晴らしかったのは、最初からダニーを最初から「強い女性」として描こうとしたのではなく、彼女の成長譚の中で「強い女性」として確立されるまでを描こうとした点だと思います。

(C)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film

冒頭での彼女は、ただ単に未来からやって来た守護者に守られて、逃げ回っているだけの存在に過ぎません。

もちろん運転の仕方も知らなければ、銃の扱い方も知りません。薬局では、男性の助けを求めて何とかグレースを運び出すことができました。

そんな彼女が、サラ・コナーグレースとの旅の中で、車の運転もそうですし、銃の扱い方も覚え、そして何より精神的に成長していきます。逃げるばかりだった彼女は、最後には自らが囮になってでもREV-9と戦う決意を固めるのです。

そして何より個人的に良かったのは、REV-9ダニーが打倒してしまうという安っぽい象徴性のあるシーンを設けなかったことです。

結局本作において、戦いを「ターミネート」したのは、T-800でしたし、ダニーにはREV-9を倒し切ることはできませんでした。

しかし、大切なのは、そこではありません。

逃げることしかできなかった少女が、銃の使い方も運転の仕方も知らなかった少女が、圧倒的な力を誇る敵の前に自ら立ち、そして立ち向かったというその精神的な成長にあるのです。

そしてラストシーンでは、彼女が自ら車を運転する様子も描かれていました。

近年のハリウッド映画は、「強い女性」を描きたいがあまり、物語の丁寧さや妥当性を失っている者すら見受けられます。

ただ、『ターミネーター ニューフェイト』はあくまでも丁寧に、何者でもなかった1人の少女が「強い女性」として確立されていくまでの確かな道のりを映画の中で描きました。

ラストシーンで、彼女が「今度はグレースを殺させない。」と言っていたのも印象的で、まさしく「守られる側」から「守る側」へという成長譚の結実としては完璧だったと思います。

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

今回は映画『ターミネーター ニューフェイト』についてお話してきました。

正直に申し上げると、キャメロンにとっては本当にこんなのが「正統続編」なのか?という疑問と失望が大きすぎました。

確かにアクション映画としては非常に見応えがありましたし、どちらかと言うとアメコミ映画風味のアクション仕立てになっていたのではないでしょうか。

飛行機での無重力コンバットやダムの激流の中での戦いなど、これまでのシリーズにはなかったような演出もあり、その点は非常に楽しめました。

ナガ
ただ、それにしても、ここまで過去の作品のオマージュだらけ、既視感だらけの作品をいまさら作る意義はどこにあったというのでしょうか。

というよりこのシリーズは、『ターミネーター2』の呪縛から抜け出せないのであれば、もう新作を作るのを諦めたほうが賢明だと思います。

だって、あの作品はもう非の打ち所がないほどに完璧な映画であり、どうしたって超えることはできないですよ。

であれば、今回の『ターミネーター ニューフェイト』もそうですが、似たようなテイストの脚本で勝負しても勝ち目はありません。

結局のところ、今作は過去作の遺産を食いつぶしただけの続編に思えました。

もうこのシリーズはこのままフェードアウトで良いんじゃないでしょうか・・・。

今回も読んでくださった方、ありがとうございました。

 

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