【ネタバレあり】『2001年宇宙の旅』解説・考察:断線し、延長する「線」の物語とは?

アイキャッチ画像:(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですねスタンリー・キューブリック監督の傑作『2001年宇宙の旅』についてお話していこうと思います。

記事の都合上作品のネタバレになるような要素を含みますので、作品を未鑑賞の方はお気をつけください。

良かったら最後までお付き合いください。

『2001年宇宙の旅』

スタンリー・キューブリック監督が監督・脚本を担当した『2001年宇宙の旅』というのは、1968年に公開された作品です。

しかし、あまりにも撮影技術や世界観が時代の先端を走りすぎており、2018年を生きる我々がこの作品を見ても、全く遜色なく公開当時と同等の輝きを放ち続けているという異質すぎる映画となっています。

今なお新しいファンを獲得し、語り継がれている本作が今年、70mmフィルム上映、IMAX上映にてリバイバル公開されることが決定しました。

このあまりにも美しすぎる映像をいつの日かIMAXの大スクリーンで拝めたらと夢に見続けてきた当ブログ管理人としてはこのニュースを聞いて興奮が止まらなくなりました。

そしてこのタイミングでこれまで自分の中で明確な解釈を打ち出してこなかった『2001年宇宙の旅』という映画に自分なりの答えを出してみたいと思い、今回の記事の執筆に至りました。

この映画は公開以来多くの人に分析され、批評され、考察されてきた作品ですが、未だにその答えは出ていないんじゃないかと思います。というよりもスタンリー・キューブリック監督がこの映画に明確な解釈は存在しないと語っているように、絶対的な答えというものが存在しない作品とも言えます。

だからこそ自分なりにこの難解な映画に1つの解を見出してみたいと思いました。

『2001年宇宙の旅』解説と考察:断線し、延長する「線」の物語とは?

今回私が取るのは『2001年宇宙の旅』を映像的な側面から読み解くアプローチになります。

私自身これまでこの作品について他の人が書かれた批評や考察をほとんど読んだことがないので、私が今回書いていく視点は既出のものかもしれません。

ただ既出だったとしても、あくまでも偶然の産物であるということでご了承いただけると幸いに存じます。

人類の夜明け(THE DAWN OF MAN)

本作の夜明けは惑星を映し出す壮大なカットから始まります。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

月と地球と太陽と。それらが一直線に並び、「線」を形成している様を映し出すこのファーストカットは『2001年宇宙の旅』という映画が紛れもない「線」の物語であることを我々に印象付けます。

まず、映画が始まると映し出されるのは、人類誕生の時代、つまり400万年前の地球です。

そこは荒涼とした世界であり、どこまでも不規則的でカオスな世界でもあります。

そんな地上に1つの規則的な構造物が下りてきます。それこそが本作のキーアイテムとなるモノリスです。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

周囲の混沌とした風景から完全に「浮いている」その物体は、まさに本作の「線」を象徴する物体とも言えます。

点に向かって真っすぐな「線」を形成しながら聳え立つモノリス。その垂直な線が指し示すのは遥か宇宙。つまり人類の最初の到達点となる月です。

我々が地球で生活していると見えることはないですが、宇宙から地球を見るとその青い惑星には輪郭のような「線」があるように見えますよね。

最初のモノリスが人類に示したのは地球という輪郭「線」をモノリスが指し示す方角へと垂直に「断線」し、その「線」を月へと延長させることでした。

これが冒頭から続く地球の輪郭を映し出すカットや混沌とした世界に降り立つモノリスの存在を通じて端的に表現されています。

この時点で本作は既に「線」の物語を語り始めているわけです。

また、モノリスの影響を受けたヒトザルが最初に覚えるのは道具を使うという行為でした。

ここでも骨という「線」が骨という「線」を破壊するシークエンスが映し出され本作の「断線」のモチーフが印象づけられます。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

それから長い年月が経過し、人類は地球を脱し、月に隠されていた次なるモノリスへと辿りつきます。

月にたどり着くまでのシーンでも、浮遊する万年筆や宇宙食を吸引するためのストローといった「線」形のモチーフが作品に印象的に散りばめられています。

かくして彼らは月へと辿りつきますが、地球から延長された「線」の物語の終着点は月ではなく、まだ遥かその先にあることが判明した瞬間でもありました。

次なる目的地が木星であることがモノリスによって示され、人類は「線」を木星へと延長するために動き始めます。

木星使節(JUPITER MISSION)

前章から18か月後、宇宙船ディスカバリー号は木星探査の途上にありました。

まず面白いのがこのディスカバリー号の構造です。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

先端に球状の構造物が備え付けられた宇宙船は、シンメトリーの映像を愛するスタンリー・キューブリック監督の作品に登場する宇宙船としてはいささか不均衡ですらあります。

本作における球状の物体が基本的に惑星という物体であることから推察すると、ディスカバリー号の構造は惑星と惑星を「線」で繋ぐというイメージに基づいて作られたのではないでしょうか。

この章で印象づけられるのは、HALによる「断線」のシークエンスでもあります。

HALは人間によって作られた人工知能であり、これまで常に人間に従ってきました。つまり、人類が辿る「線」と平行な「線」を描き続けてきたわけです。

そんなHALが突然人類の描く「線」に対し、垂直な「線」を描き、人類の「線」を「断線」していくというのがこの章の中心命題と言えます。。

その綻びのきっかけは、ディスカバリー号の中央に設置されたAE35ユニットのトラブルでした。

先ほどの画像を見ていただければお分かり頂けるかと思いますが、AE35ユニットはディスカバリー号の中心線に対して垂直な「線」を描く形で設置されています。これもまた「断線」のモチーフなのです。

また興味深いのはHALはこれまで9000系の人工知能がミスを犯したことはこれまで「1」度もないという主張をしていることです。ミスが起きるとしたら、それは人工知能ではなく、人間のミスだとHALは主張するのです。

そしてそのこれまで「1」度も犯さなかったミスをHALは犯してしまいます。つまり人工知能が人間に反逆するという展開のことです。

ここまで「断線」とは「線」の延長に至るための前段階であるということを述べてきましたが、HALもまた自身を縛り付けていた「1」という1本の「線」で表現される数字を「」といった具合に「断線」することで自らの可能性を拡張、つまり「線」を延長したわけです。

加えてこの章では人間、ないしHALの命というものをも「線」のモチーフで表現しています。

HALが冬眠装置に入っている人間の命を奪う時の映像を覚えていますでしょうか?

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

心電図がスクリーンいっぱいに映し出され、冬眠装置に入った人間の生命は、文字通り生命「線」を「断線」する形で奪われていきます。

一方のHALも自身の回路という張り巡らされた動「線」をボーマン船長によって「断線」されることでその命を落とします。

そうしたいくつもの「断線」の物語を経て、ボーマン船長は木星行きの目的とモノリスの存在へと辿り着きます。

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木星 そして無限の宇宙の彼方へ(JUPITER AND BEYOND THE INFINITE)

謎多き名作『2001年宇宙の旅』の中でも特に多くの謎を孕んでいるのが、この最終章です。

この章もまたこれまで同様の「断線」と「延長」のモチーフを多く有しています。

先ほど少しだけ触れたように思いますが、スタンリー・キューブリック監督はシンメトリーの画面作りにこだわりを持っています。

『2001年宇宙の旅』を見ていると、お分かりいただけたかと思いますが、非常に左右対称のカットが多く採用されているんですね。

例えば、ボーマン船長がHALを停止させに行く際のカットを引用してみましょう。

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中心に柱があり、それを境界にしてシンメトリーを形成するような画になっていることがお分かりいただけたでしょうか。

しかし、この章ではスターゲイトのシーンを通じて、これまでのシンメトリーの均整の取れたキューブリック監督らしい映像が崩壊していくんですよ。

スターゲイト侵入直前のシーンがこれまた面白いんですが、一直線に並んだ太陽系の惑星が形成する「線」をモノリスが「断線」するような映像になっているのです。

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本作においては「断線」が「線」の延長へと繋がるということを述べてきましたが、ここでも「断線」のモチーフが登場し、ボーマン船長が描く人類の「線」を木星へと延長していくことになるのです。

そしてスターゲイトに突入すると、これまでの規則的な映像がどんどんとカオスへと帰していきます。

シンメトリーを形成するために必須とも言える中心「線」が「断線」し、混沌とした映像へと変化していくのです。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

そんな美しくも、抽象的な映像表現の先に待ち受けているのは、とある部屋です。

この部屋は直前の抽象的で混沌とした映像とは対照的に、極めて規則的で「線」のモチーフに溢れています。

その中でも注目したいのが部屋の床の紋様です。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

ボーマン船長がスターゲイトの果てにやって来たこの部屋の床は「線」と「線」が交錯する紋様になっています。

実はこの部屋の床と対照的な紋様が描かれた部屋が作品の冒頭に登場しているのを皆さんは覚えていますでしょうか?

それが、ヘイウッド・フロイド博士が月に向かう前に訪れた宇宙ステーションの床なんです。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

見ていただけると一目瞭然ですが、この床は「線」が平行に伸びているだけの紋様となっています。

つまり、ボーマン船長が終盤に訪れた部屋というのは、人類が「断線」と「延長」の果てに辿り着いた場所であるということを床の紋様の対比でもって示しているのです。

そしてボーマン船長はその部屋の中で少しずつ老いていきます。

その映像シークエンスにも注目したいところです。ボーマン船長は部屋を歩いているうちに、未来の自分の存在を目の当たりにします。

これは現在の自分から未来の自分へを結ぶ時間の流れを見えない「線」で映像の中に現前させている状態です。

しかし、その線が結びついた時、その「線」は「断線」され、現在の自己が、目の前に見えていた未来の自己へとシフトしていっています。

この一連のシークエンスは人の成長と時間の流れを「線」の断絶と延長で描いたものなのです。

その中で自身の生涯を終える間際にボーマン船長はモノリスに邂逅します。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

現れたモノリスは床に描かれた2つの方向へと向かう「線」を「断線」する方向に聳え立っています。

かくして彼はスターチャイルドへと生まれ変わることとなります。

ラストシーンをどう解釈するか?

もはや『2001年宇宙の旅』という作品のラストシーンは永遠の謎と言っても過言ではないでしょう。

スターチャイルドとなったボーマン船長が地球を見つめているという描写になるわけですが、これを今回はここまで展開してきた「線」の物語の結末として読み解いていきたいと考えています。

ここまで一貫して私が述べてきたのは、本作は「線」を「断線」し、「延長」する物語であるということです。

(C)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

さてラストシーンに登場するスターチャイルドは地球を見つめているわけですが、この2つには実は共通点が存在しています。

それは何かというと、輪郭「線」の存在です。スターチャイルドを閉じ込めるからの輪郭「線」と地球という惑星の輪郭「線」は実に近似的なものとして描かれています。

『2001年宇宙の旅』という作品が描いてきたのは、地球からの長い長い「線」を延長するための旅です。そうして旅路の果てに辿り着いたのがボーマン船長であり、スターチャイルドです。

しかし、そんな長い長い旅を経て進化を遂げたスターチャイルドですらも「赤ん坊」に過ぎず、自身を取り巻く「線」の内側に閉じ込められています。

そう考えると、本作の「線」の物語が描き出したのは、やはりどこまでも果てしなく続いていく終わりなき「線」の「断線」と「延長」の物語なのです。

木星に辿り着いたとしてもそこはゴールなのではなく、それは通過点に過ぎません。

地球を始点として描かれる「線」の終着点などどこにもありはしないのかもしれません。

それでも「断線」と「延長」を繰り返し、人類は少しずつ「赤ん坊」から成長していく。

『2001年宇宙の旅』のラストシーンは、そんなネバーエンディングストーリーの始まりなのだと私は受け取りました。

おわりに

いかがだったでしょうか。

この作品に答えなんてものはないんだと私は常々考えています。だからこそ今でも多くの人を惹きつけ、公開から50年が経過した今も新しい視点で語られ続けているのです。

公開から50年という節目の年にIMAXシアターでの上映、70mmフィルム版の上映が決まったのは、非常に嬉しいことです。まさに念願叶ったりという思いです。

これをきっかけに、また多くの人がこの作品の魅力に惹きこまれ、新しい視点から本作を読み解いていく流れが生まれたらならば嬉しいですね。

その際に、私が書いた本記事が少しでも参考になるようでしたら幸いです。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。

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参考:【ネタバレあり】『シャイニング』解説・考察:鏡と写真から本作の謎を読み解く!

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