映画『デッドプール2』感想・考察:「ローガン以後」のヒーロー映画らしさとそれに対抗する可逆性

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回はですね映画『デッドプール2』の感想と考察を書いていきます。

本記事のテーマは「ウェイドの可逆性に突きつけられた死の深逆性」についてです。

記事の内容の都合上作品のネタバレになるような内容を含みますが、ご了承ください。

良かったら最後までお付き合いください。

感想・考察:ウェイドの可逆性に突きつけられた死の不可逆性

近年のアメコミ映画史に1つの大きなターニングポイントがあるとすれば、それはやはり『ローガン』ということになるだろう。ヒーローという存在はこれまで「死」という概念から解き放たれた存在下のように描かれていたのだ。

『バットマンVSスーパーマン』でも確かにヒーローの「死」は描かれていたが、そもそも映画のラストシーンで彼が生きていることが示唆されたためにむしろヒーローはあんな状況に追い込まれようと「死」なないのだということを強調したように思う。

参考:『ローガン』が描き出したヒーローの象徴的で普遍的な死とは?

ただ『ローガン」で描かれたウルヴァリンというアメコミ史に名を刻んだヒーローの最期はそういう類の「死」とは性質がまるで異なる。老いて、傷ついて死にゆく彼の姿はヒーローの最後と言うよりもまりにもありふれた死である。

ヒーローというよりも普遍的な人の死として描かれているのだ。ヒーローと言うこれまで「死」とは切り離されていた存在に初めて人間らしい普遍的な「死」をもたらした『ローガン』という作品がアメコミヒーロー映画の歴史においていかに衝撃的な作品だったのかは作品を見た人なら誰もが知るところだろう。

 

 

 

2018年4月に全世界に向けて公開された映画『アベンジャーズ:インフィニティウォー』。製作時期と公開時期を鑑みると『ローガン』が影響を与えているとは言い難いが、偶然か必然か「ヒーローと死」が重要なテーマとなっている。「ローガン以後」のヒーロー映画においてはもはやヒーローと「死」を切り離すことはできないものになってしまったのかもしれない。

参考:インフィニティウォーで完成したMCUに通底するハイデガー的存在論と死について

さて本作『デッドプール2』に話を戻そう。この作品が「ローガン以後の」ヒーロー映画であることは映画が自ら語っているではないか。本作の冒頭のシーンでいきなり『ローガン』のラストシーンの印象的なメロディと共にウルヴァリンの最期のシーンのミニチュアが登場する。そしてウェイドがドラム缶を爆破させて自殺しようとしている様が映し出されるわけだ。

ただ何とも面白いのがデッドプールというヒーローは数多くのヒーローの中でも特に「死」と距離を置いた存在であることだ。彼は体が引き裂かれようとも再生するし、銃弾の雨を浴びても平気だ。彼はしばしば「無責任なヒーローだ」と形容されるが、その無責任さと無鉄砲さは彼の「死」の可逆性、つまり不死身の特性に依拠するところが大きい。

しかし今作の冒頭で彼のそんな行動の軽さが悲劇を招いてしまう。最愛の彼女の死だ。彼自身が不死身だからこそ彼の頭の中から「死」という概念そのものが抜け落ちていたのかもしれない。だからこそ彼は突然、自分の身近に降りかかった「死」を受け入れられない。そして自分も死んで彼女の後を追ってやるなんてことを考えるわけだが、彼の特性がそれを許さない。

彼は水の深くの彼女のいる一室へと辿りつく。しかしそこには見えない壁があり、ウェイドは彼女の元に辿りつくことが出来ない。それは単純に生者と死者を隔てる壁なのかもしれないが、もっと言うなれば「死」の概念を理解しているかどうかの壁という意味合いが大きいのではないだろうか。

前作とそして本作の冒頭でもウェイドは基本的に敵対する人間を容赦なく殺害していく。R15+ならではのグロテスクさも1つの売りだ。しかし、それもまた彼自身の「死」という概念への不理解と軽視が故なのではないだろうか。コロッサスが本作中でしきりに「殺さないように」とウェイドに忠告するが聞く耳を持とうともしない。

FullSizeRender
(C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

そして極めつけは彼が「家族」を見捨てる2つのシーンだ。1つ目はケーブルを前にしてラッセルに対して「どうでもいい」と告げるシーンだ。ラッセルがその言葉に酷く傷ついているのも印象的だが、それ以上に彼を見捨てようとしたウェイドの言葉に彼の「死」の不可逆性に対する認識の甘さを感じる。もう1つはウェイドがXフォースの面々の「死」をただただ見ているあのシーンだ。あの時の彼にはどうしようもなかったと言えばそうなのだが、彼らを「家族」のようだと語っていた割には、彼らの死に対して何の感情も抱いていないようである。

このようにデッドプールというキャラクターは設定的にも「死」から縁遠ければ、その言動も「死」の不可逆性を軽視している様子が見て取れる。つまり本作の冒頭のデッドプールというのは、「ローガン以前の」ヒーロー像を踏襲したヒーローとも言える。

スポンサードリンク




ただそこにある種のパラダイムシフトをもたらすのが『デッドプール2』という作品であるから非常に興味深い。ウェイドはラッセルを何とかして救おうとする過程でそんな「死」の重みを実感することとなる。

敵対する人間は殺してしまえばいいと考えていた「無責任なヒーロー」が、ケーブルの「ラッセルを殺してしまおう」という提案に対して「待った」をかける。ウェイドはラッセルを殺さずに「救おう」と提案するのである。

そして終盤のシーンで大きな役割を果たしたのが、あの首の超能力抑制装置だ。あの装置の効果によりウェイドは不死身の特性を失っていた。つまりここで条件が『ローガン』の老いにより再生能力をほとんど失ったウルヴァリンの姿がウェイドにクロスオーバーするのだ。そして彼は可逆性を失った状態でケーブルが放った銃弾に飛び込んでいく。「死」の不可逆性へと飛び込んでいくのだ。

銃弾は命中し、ウェイドには『ローガン』的な普遍的でありふれた「死」が訪れる。彼はようやく命というものが失われたら二度と還らないものであるという事実を重く受け止めるのだ。そんな彼が再び海の底のあの部屋に向かうと見えない壁は失われていて、彼はヴァネッサと熱いキスを交わす。彼はようやく「死」を理解したのである。このシーンがa-haの「Take On Me」のPVのオマージュになっていることは言うまでもないだろう。

そうは問屋が卸さない

しかし、そこで終わらないのが『ローガン』とは一線を画す『デッドプール』らしさとも言える。ウェイドの中で起こった「死」の可逆性から不可逆性へのパラダイムシフトを上手く描いておきながら、何とケーブルのタイムマシンでそれを巻き戻してしまうのである。結果的に彼の「死」は帳消しにされてしまうのだ。

ただラッセルに人を殺めてはいけないと説き、自身も̪シニスターに手を掛けずに仲間と共に颯爽と去っていく。本作ではヴィランであったジャガーノートも気を失っただけで死んではいないのである。ここで「ローガン以後」のヒーロー映画としてはこの上なく良く出来た作品として本作は完結したかに思われる。

だが、またまたここで終わらないのが『デッドプール』らしさなのだ。ウェイドたちが殺さないことに決めた̪シニスターにドーピンダーの運転するタクシーが突っ込んでいくのだ。

ヒーローが決着をつけなかった物語に非ヒーローが決着をつけてしまうというオチが何ともシニカルだ。さらに『インタビューウィズバンパイア』のキルスティンダンストが如く彼が「殺し」に目覚めるのが最高にエッジの効いた締め方ではないか?

 

 

 

それに加えてポストクレジットシーンでは本作の描いてきたテーマをもうこれでもかというくらいに台無しにするシーンをぶち込んでいく。タイムマシンを使って「死」んだはずの恋人を生き返らせてみたり、逆に他作品での自分の黒歴史を「死」をもたらすことで抹消してみたりするわけだ。

『デッドプール2』はまさに「ローガン以後」のヒーロー映画のお手本を踏襲したような作品なのだが、そういう思わせぶりな印象を与えておいて、最後の最後でそれを全てぶっ壊してしまうという何とも『ローガン』に喧嘩を吹っ掛けるような作品なのだ。

ただそれがまさに『デッドプール』らしさではないだろうか?

文句なく面白いシリーズ第2作だったと断言できる。

おわりに

1回目に見た時は小ネタを追うのに必死であまりストーリー自体を深く考えるに至って無かったんですが、2回目を見ると本作のプロットが如何によく練られたものであるかという点が伝わってきました。

ちなみに私が2回本作を見て纏めた『デッドプール2』の映画オマージュネタ集は以下のリンクから読んでいただけます。正直数が多すぎてこれでも全然拾い切れていないと思いますが。

参考:『デッドプール2』解説:本作のオマージュネタを一挙解説!!

小ネタを探してみるのも面白いですし、プロットも私が今回書いたような視点やファミリー映画としての視点などさまざまな見方で楽しめるものとなっています。

ぜひぜひ1度とは言わず、2度3度と劇場で楽しんでほしい作品ですね。

今回も読んでくださった方ありがとうございました。




ナガの映画の果てまでfacebookアカウント

当ブログのfacebookアカウントをフォローしていただければ、いち早くブログの更新情報をお知らせします!

おすすめのサービス

現在当ブログ管理人も活用しているU-NEXTでは4,500作品以上の映画が定額で見放題です。今なら31日間の無料体験ができます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です