【感想・解説】映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」:天才の孤独、そしてその先へ

〇注意事項

 今回の記事の内容は、当ブログ管理人の解釈・見解から成るフィクションです。実在の人物や創作物の登場キャラクターが実際に発言したものではありませんので、その点を踏まえて読み進めていただきますようお願いいたします。

〇はじめに
 
 今回は映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」を語っていくのですが、それに際して2人のゲストをお呼びしました。それでは紹介させていただきます。

 まずはアニメ「ピンポン」より卓球選手の風間竜一さんです。風間さんは高校時代に、ユースの卓球世界選手権でチャンピオンになり、「ドラゴン」の異名を持つ天才と謳われました。現在もケガに悩まされながらも卓球選手として活躍しておられます。今回はどうぞよろしくお願いいたします。

2017-08-22-10-44-48
©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会 アニメ「ピンポン」より引用

 「よろしくお願いします。」

 次に、もう一人のゲストを紹介します。今作「ダンサー、セルゲイポルーニン」で主演を務められているダンサーのセルゲイポルーニンさんです。彼は英国ロイヤル・バレエ学校に入学すると際立った才能を見せ、19歳の時には史上最年少でのプリンシパルに抜擢されました。しかし、22歳の時に英国ロイヤルバレエ団を電撃対談。その後もバレエを続けながら、ダンサーや俳優としても活躍されています。今回はどうぞよろしくお願いします。

image
©British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd./2016 映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」予告編より引用

 「よろしくお願いします。」





〇天才の孤独、その先へ

 今回のトークテーマは「天才の孤独、その先へ」となっております。では、さっそくお二人にお話を伺っていきたいと思います。まず、お二人にそれぞれの家族についてのお話を聞いてみたいと思います。お二人にとって、家族とはどんな存在だったのでしょうか?

 「僕にとって、家族はとても大切でかけがえのないものであったよ。僕の家は貧しかったから、僕をバレエ学校に通わせるために、祖母や父は国外に出稼ぎに行っていたんだ。だからこそ、家族の期待にこたえなくてはならないというプレッシャーを感じていたし、何より自分がバレエダンサーとして成功することでバラバラになった家族を一つにすることが目標だったんだ。」

 「私は、父親が早くに他界しています。母親とは連絡を取っていません。高校時代は祖父が理事長を務める海王高校で卓球を続けていました。父親から教えてもらった卓球をただ『負けない』ために、勝ち続けるために続けてきました。家族は私にとって卓球を続ける理由であり、そして私を卓球に、勝利に縛り付ける鎖のような存在だったのかもしれません。」

 なるほど、お二人とも「家族」がそれぞれバレエや卓球を続ける大きな意味になっていたということでしょうか?

2017-08-22-10-40-43
©British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd./2016 映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」予告編より引用

 「そうだね。だからこそ僕は両親が離婚してしまって、その目標が達成されることはないと分かったときに、途方に暮れてしまったんだ。踊る意味を見失ってしまったよ。」

 「私は父親がすごく嫌いでした。事業に失敗して、大きな借金を抱え、親戚にそれを肩代わりしてもらい、最後はみじめに死んでいきました。祖父には、負けることは死ぬことと同義であると教えられたのです。だからこそ、私は父親のようにはなりたくないと勝つことにこだわり続けたのです。」

 お二人にとって、家族の持つ意味が少し異なるように思いました。では、お二人は何のために競技を続けてこられたのでしょうか?

 「僕は、さっきも言った通り家族のためにバレエを続けていたんんだ。そしてそれが無くなって自分のために踊ろうとしたんだけど、それはできなかった。結果的に何のために踊っているのか分からなくなって、絶望してしまったよ。このことが英国ロイヤルバレエを退団に至った大きな理由の一つだったね。」

 「私も初めは父親のために卓球をしていたのかもしれませんが、専ら自分のために卓球を続けていたと思います。負けは死を意味する、だからこそ自分が生きるために勝ち続けるしかありませんでした。」

 お二人が、非常に対照的な理由で競技を続けてこられたことがわかりました。そして、その両方に家族の存在が大きく関係していますよね。ここから今回の本題の一つである「天才の孤独」についてお話を伺っていきたいと思います。お二人ともバレエダンス界、高校卓球界でそれぞれ頂点にまで上り詰められましたが、「頂の景色」というものはどんなものだったのでしょうか?

 「僕は、ひたすら上だけを見つめ続けていたんだ。もっと高みへもっと高みへとダンスを続けるうちに気が付いたら天井にたどり着いてしまったんだよ。」

 それが本作で仰っていた「夢はもう全て叶えてしまった。」というセリフに繋がっているのでしょうか?

 「そうだね。考えられる限りの夢も目標もすべて達成してしまったんだ。そしてこれ以上上には何もないんだ。上り詰めるってことがこれほどにも苦しいことだとは思わなかったよ。」

 つまり、セルゲイさんにとって「頂の景色」とは「無」であったということでしょうか?

 「そう。もう超えるべき壁も、叶えたい夢もない。ひたすらに『無』だったんだ。」

 「私にとっての『頂の景色』はセルゲイさんに見えていたものとは全然違いました。」

 風間さんにとって「頂の景色」は「無」ではなかったのですね。

 「はい。セルゲイさんは常に上を見ていたとおっしゃっていましたが、私は常に下を見ていました。頂上に上り詰めても次々に下から私の地位を脅かさんとするものが登場します。だからこそ、頂上にいた時に感じていたのは、虚無感ではなく圧倒的な恐怖感でした。」

 風間さんは試合前にトイレの個室に籠る習慣があったとお聞きしたのですが、それは本当ですか?

 「ええ。あの薄暗い個室トイレこそが私にとっての『頂の景色』でした。負けは死を意味する、勝ち続けなければならないと常に追われている恐怖感にさいなまれ、試合前はよくあそこに籠ったものでした。」

image
©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会 アニメ「ピンポン」より引用

 常に追われているプレッシャーを感じ、その恐怖心から試合前にトイレに籠っていたと?

 「はい。まあそんな恐怖に駆られている自分の姿を他人に見られたくなかったということもありますが。」

 「そういう意味では、Take me to Churchで僕が踊っていた舞台は、まさに僕の『頂の景色』を再現したものだったね。陽光が差し込む穏やかで神々
しい空間でありながら、そこから出ることは叶わない。もはや上には天井があるのみ。優しい絶望とでもいうのかな。」

2017-08-22-10-40-06
©British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd./2016 映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」予告編より引用

 「優しい絶望」ですか?

 「ああ。おそらく、誰にも僕の苦悩はわかってもらえなかったんだ。最年少で英国ロイヤルバレエのプリンシパルに抜擢され、バレエ界の頂点まで上り詰めた自分を不幸だなんて思う人はいないんだ。そして自分としても、自分が目指し続けた聖域にいまや自分が経っているんだから、不孝なはずがないんだ。でもどこか満たされなくて。そんな僕の苦悩をあのダンスで精いっぱい表現したつもりだよ。」

 確かに、私も最初にあのPVを拝見したとき、聖域のような空間だと感じましたし、その中で優雅に踊るあなたのダンスに魅了されました。しかし、見返してみるとどこか満たされない表情で、まるで苦しんでいるようにも感じられました。その違和感の正体はまさにそういうことだったんですね。風間さんもPVをご覧になりましたか?

 「ええ。私の『頂の景色』もあれくらい美しく、輝いたものだったら良かったんですがね。私の場合テイク・ミー・トゥ・トイレット」でしたからね(笑)」

 なるほど。ありがとうございます。では、今回のトークもいよいよ最後の話題になりますが、お二人はそんな「頂の景色」のその先に何を見出して、今に至ったのでしょうか?

 まず、セルゲイさんはTake me to Churchを最後に踊りを引退するつもりだったと作中で仰っていましたよね。

 「そうだね。ダンスをやめるつもりだったよ。でもこの曲を踊っていて、ダンスを捨てる自分が想像できなくなったんだ。これをラストダンスにしたくないなあと強く感じるようになったんだ。」

 Take me to Churchの撮影中ずっと泣いていたというお話も伺いましたが・・・。

 「うん。ダンスを捨てるということがどれだけ難しいことなのか、その時になってやっと分かったんだ。だから捨てられないならば、これから自分はどうダンスと向き合っていけばよいのかひたすら考えていたんだ。」

2017-08-22-10-41-02
©British Broadcasting Corporation and Polunin Ltd./2016 映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」予告編より引用

 劇中では最後にあなたに憧れ、魅了される次世代のダンサーたちの姿が印象的に映し出されていましたよね?

 「そう。彼らが僕にとっての『ヒーロー』になったんだ。彼らにとても励まされた。そして、僕のような不幸なダンサーを生まないために、次世代の育成・サポートをすることを自分の目標にしようと思ったんだ。」

 それが「プロジェクト・ポルーニン」ですか?

 「その通りだ。ダンサーをサポートするチームというものがこれまでなかったんだ。だからダンサーは孤独に苦しむしかなかった。でもバレエにおいて大切なのは、衣装や舞台ではなくて、人なんですよね。だからこそ、ダンサーをサポートし、守っていく。これが僕の次なる目標に変わったんです。」

 なるほど。それがセルゲイポルーニンが「天才の孤独、その先に」見出したものだったんですね。では、風間さんはどうでしょうか?あなたが「その先に」見出したものは何だったのでしょうか?

 「私に『その先』を見せてくれたのは、高校時代のライバル星野裕でした。」

 星野裕というのは、あのドイツで卓球選手として活躍されている方ですよね?

2017-08-22-10-47-37
©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会 アニメ「ピンポン」より引用

 「ええ。私は当時2年生だった。星野にインターハイ予選の準決勝で敗れました。しかし、あの試合で彼が見せてくれたのは、頂のその先の景色でした。彼こそが私にとっての『ヒーロー』だったんです。私を薄暗い個室トイレから連れ出してくれたのは間違いなく彼でした。」

 試合に敗れたことで気持ちが楽になったということでしょうか?

 「いやそうではないんです。私はあの試合のさなか、星野に魅せられ、ふとあの頃の純粋に卓球を楽しんでいたころの自分を思い出したんですよね。」

 あの頃と言いますと?

 「生前の父と卓球をしていたころの記憶です。そもそも私にとっての『ヒーロー』は父だったんです。しかし、その父親はいなくなってしまった。私は、それ以来『ヒーロー』なんて信じないと思ってきましたが、心のどこかで『ヒーロー』を待ち続けていたんでしょうね。」

 なるほど。

 「だから私は、あの試合の最中に卓球を楽しむ感覚を思い出し、勝利への呪縛から解かれたんですよね。卓球なんてものは人生の気晴らしに過ぎないんですよ。」

 風間さんは「卓球にかける人生も悪くない」という発言に「いやだよ、絶対。」と答えていらっしゃいましたよね。高校時代の風間さんを見ていると考えられないようなセリフでしたが。

2017-08-22-10-46-41
©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会 アニメ「ピンポン」より引用

 「私の考え方が大きく変わったんですよね。卓球に勝ち続けることが人生、生きるために卓球をやる、それが私の高校時代でしたから。それを変えてくれたのは他の誰でもなく星野だったんです。」

 では、これからは誰かのために卓球を?

 「いえ。私は今までもこれからも自分のために卓球をし続けますよ。勝ちにこだわって怯えるのではなく、自分が楽しむためにこれからも続けていきます。」

 なるほど。では最後に一言ずついただいてもよろしいでしょうか?

 「僕が出演する映画『オリエント急行殺人事件』が12月8日より日本公開になります。ぜひともご覧ください。」

2017-08-22-10-38-48
©2017Twentieth Century Fox Film Corporation 映画「オリエント急行殺人事件」予告編より引用

 「ケガや成績不振から卓球日本代表から選考漏れしてしまいましたが、必ずまた代表復帰して見せます。応援よろしくお願いします。」

2017-08-22-10-45-03
©松本大洋・小学館/アニメ「ピンポン」製作委員会 アニメ「ピンポン」より引用

 では、お二人とも今回は本当にありがとうございました。

〇おわりに

 今回はセルゲイポルーニン、風間竜一という2人の天才に「天才の孤独、そしてその先へ」というテーマでお話しいただきました。一度は「頂の景色」に絶望しながらも、「ヒーロー」の存在に救われ、今なお挑戦を続けるお2人のお話に非常に感動しました。

 お2人のこれからの活躍を心よりお祈り申し上げます。

 再度申し上げておきますが、今回の記事の発言の内容は映画「ダンサー、セルゲイポルーニン」、アニメ「ピンポン」やその他のインタビューの内容をもとに、私なりの解釈・見解から創作したもので、該当人物が実際に発言したものとは異なります。ご了承ください。




ナガの映画の果てまでfacebookアカウント

当ブログのfacebookアカウントをフォローしていただければ、いち早くブログの更新情報をお知らせします!

おすすめのサービス

現在当ブログ管理人も活用しているU-NEXTでは4,500作品以上の映画が定額で見放題です。今なら31日間の無料体験ができます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です