『神のみぞ知るセカイ:女神篇』の「初めて恋をした記憶」が忘れられない

はじめに

みなさんこんにちは。ナガと申します。

今回は私が2013年の9月末に録画して以来ハードディスクレコーダーの録画一覧の最上部の定位置を守り続けているとあるアニメの最終回を紹介してみようと思います。

良かったら最後までお付き合いください。

これこそがアニメ最終回の頂点だ!!

今回紹介するのは、「神のみぞ知るセカイ 女神篇」の最終回です。

このいわゆる「神のみ」シリーズは個人的に大好きで、一応アニメもコミックスも全て鑑賞済みなんですが、アニメ版のこの最終回だけはどうしても忘れられないんですよね。

青春の、恋愛の痛みと苦みが全て詰まっているのがこの最終回だと個人的には思っています。普通の女の子が特別に憧れて、劣等感に押しつぶされそうになりながらも前を向き、自分が敗れた恋を肯定しようともがく等身大の姿に涙が止まらなくなります。

青春と恋愛模様を絡めて描くのが上手いのは、やはり京都アニメーションでしょう。「たまこラブストーリー」や「中二病でも恋がしたい」等はやはり京都アニメーションだからこそ作れた作品と言えます。ただこれらの作品は「人を好きになること」をキラキラとした肯定的で、甘酸っぱくも愛おしいものとして描いているんです。間違いなくリアリティを持って繊細なタッチで描かれているんですが、恋愛が孕んだ暗い部分を完全にシャットアウトしている印象があるんです。

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 その青春と恋愛に敗れた者の苦しみと嫉妬と葛藤、敗北感を逃げずに描き切ったのが「神のみぞ知るセカイ 女神篇」であり、その結実がこの最終回なんですね。

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今回は完全に時期外れではありますが、この最終回がなぜ素晴らしいのか?という点を詳しくお話していこうと思います。

*ここからアニメ「神のみぞ知るセカイ」のネタバレ注意です




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「神のみ 女神篇」最終回までの経緯を解説

「神のみ 女神篇」はテレビシリーズだけで見てもテレビシリーズ第3期に当たります。

まずこのシリーズの世界観を簡単に説明しておきますと、主人公の桂木桂馬という男子高校生のところにある日悪魔がやって来て、地獄から人間界に逃げ出した「駆け魂」を見つけて欲しいと依頼するんですね。

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©若木民喜・小学館/ユピテルの姉妹

「駆け魂」は人間の心のスキマに隠れこんでしまうと言います。そのためそのスキマを埋めることで捕獲することができるのだそうです。そのスキマを埋められるのは、恋愛感情であるということで、ギャルゲーマスターの桂馬が悪魔のパートナーに選ばれてしまったのです。

桂馬は悪魔との契約のために渋々、「駆け魂」集めのために女性攻略に着手します。桂馬が女性を攻略していく様を描いたのが、テレビシリーズ第1期と第2期ということになります。そして第3期である女神篇は少し毛色が変わってきます。

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第3期では、桂馬がディアナという女神から自分の姉妹を見つけ出してほしいという依頼を受けます。そして桂馬は女神がこれまで(テレビシリーズ第1期・第2期)攻略してきた女の子たちの中に宿っているという法則性を見出します。そしてそのこの中に眠っている女神を目覚めさせるのもまた恋愛感情だというのです。本作の設定では、恋愛感情を一度発展させても「駆け魂」が抜けた時にそれに関する記憶が消えてしまうことになっています。しかし、女神に取りつかれた女の子は過去に桂馬に攻略されたときの記憶、つまり彼に対する恋愛感情を取り戻しているのです。

攻略を開始する時点で2人の女神は既に見つかっていて、残りの4人の女神がこれまでに彼が攻略してきた女の子の内の誰かの中に宿っているということが分かり、桂馬は再攻略に乗り出します。

ここで「神のみ 女神篇」のどうしようもなく切ない設定を説明しておきましょう。今回女神が宿っていたのは月夜、結、栞、歩美という4人の女の子だったんですね。これは彼女たちが桂馬への好意の記憶も取り戻しているサインを見せたことから判明しました。ただそこには1つの誤算があったんです。

なんと女神や過去の記憶など関係なく、純粋に桂馬に好意を寄せている女の子がいたんです。

それが小阪ちひろという女の子でした。

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©若木民喜・小学館/ユピテルの姉妹

彼女は他の女神保有者同様に桂馬に対して好意的な行動を取っていました。そのため桂馬は彼女に女神が宿っていると勘違いしてしまうんですね。そして攻略に乗り出すのですが、最終段階にして桂馬は彼女が女神保有者ではないことに気づいてしまいます。となると、女神が宿っているのは必然的にちひろと親友の歩美という女の子に絞られます。桂馬がここでちひろの本気の告白に応えてしまうと、歩美の女神を目覚めさせることが難しくなってしまいます。そのため桂馬は強く彼女を拒絶します。

「好きなわけ、ないだろ。」

「ボクが、リアル女を好きになると思っているのか?」

「リアル女を騙してやったんだよ。バーカ。」

ちひろは酷く傷ついてその場を去っていきます。そして、桂馬は歩美の誤解を解くために、彼女の中にある最後の女神を目覚めさせるために奔走します。同時に世界の危機もタイムリミットも迫ってきていました。

「神のみ 女神篇」の最終回というのは、そんな歩美攻略のクライマックスとちひろの恋愛の結末が描かれる1話となっています。

「初めて恋をした記憶」に込められた青春のほろ苦さ

この最終回の前半パートは歩美攻略篇のクライマックスに当てられています。ここはまあ置いておきます。この最終回が素晴らしいのは後半です。

後半パートで描かれるのは、まさに「選ばれなかった者の苦しみ」だと思うんです。

全ての女神復活を成し遂げた桂馬とちひろの会話。

ちひろ:「ねぇ、なんで前夜祭。私とデートしたの?桂木が何の理由もなくデートしたりしないよね。私の中にも何か・・・何かあったのかな・・・。」

桂馬 :「いや、ちひろは・・・関係ない。」

ちひろ:「あーっ。良かった。これでまだ何か関係あったら最悪だし。」

ちひろ:「これでもうあんたと話しなくて済むわ。」

桂馬 :「そうだな。」

桂馬 :「ちひろ、今日のバンド聞くよ。必ず。」

ちひろ:「いいよー。すごい音聞かせてやるから!」

この会話シーン、神のみシリーズを追いかけてきた人なら既に号泣なんですよね。ちひろは自分の中にも何か、特別な何かがあったんじゃないかとどうしても期待してしまうのです。桂馬が自分を好きになってくれるだけの特別な何かが自分の中にあるんじゃないかと。

しかしそんな桂馬の答えはNOでした。ちひろには女神は宿っていませんでしたからね。その答えを聞いたちひろの虚無感と劣等感を噛みしめるような苦悶の表情が脳裏に焼き付いて離れません。

青春で、恋愛で、選ばれなかった者の苦しみを嫌というほどに感じさせるシーンでした。

そして彼女は文化祭でのライブに向かいます。彼女は2B PENCILSというバンドを結成していてそのメンバーには皮肉にも女神保有者だった結と歩美も含まれていました。さらに当日は同じく女神保有者だった中川かのんという女の子もボーカルとして参加しました。

2B PENCILSがその時歌ったのが「初めて恋をした記憶」という歌なんですが、この歌唱シーンがもう日本深夜アニメ屈指の名シーンと言って差し支えないと思う素晴らしさなのです。

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サビの少し手前で、急に音楽が止まり、ちひろはバンドメンバーの元女神保有者たちの背中から羽根が生えているように錯覚します。そして、見上げるとステージの上に女神たちが座っていました。

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そこに彼女が感じるのは途方もない劣等感と敗北感でした。自分は選ばれなかったんだということをまざまざと見せつけられたのでした。

そんなどす黒い感情を何とか振り払おうと必死にギターをかき鳴らします。

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©若木民喜・小学館/ユピテルの姉妹

 そして歌詞を全て歌い切ると、桂馬との思い出が脳内に溢れかえります。幸せだった彼女の最初で最後の初恋の記憶。終わってしまった、もう二度とは戻らない、でも後悔はしないそんな記憶。思い出せば絶対に痛みと苦しみを伴うような辛い記憶。

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©若木民喜・小学館/ユピテルの姉妹

それでも純粋で、かけがえのないちひろの「初めて恋をした記憶」

歌い終わった彼女はギターを抱きしめ、大粒の涙を流します。

底知れぬ劣等感と敗北感。選ばれなかったことの自覚。それでも甘酸っぱく、幸せだった桂馬との時間。自分がした恋は純粋で本物だったという確かな確信。

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©若木民喜・小学館/ユピテルの姉妹

いろいろな感情が渦巻き、涙となって彼女の中で溢れてしまったのでしょう。

アニメでは、青春や恋愛の美しく、輝いている側面にスポットを当てることが多いですが、この「神のみ 女神篇」はまさにそんな青春の暗く、悲しい側面を正面から描いています。

おわりに

この「神のみ 女神篇」ないしその最終回はまさに京都アニメーションが作った恋愛アニメの金字塔「たまこラブストーリー」の対になるような作品だと思うんですね。

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青春とそして失恋と。辛くて辛くて吐きそうなほどの思いを閉じ込めて、それでもマイクの前で歌い泣き崩れたちひろという1人の女の子の姿は、「選ばれなかった者」のある種の象徴です。そんな複雑な心境をこの上なく繊細にかつ丁寧に描写した本作はやはり青春アニメの金字塔ですよ。

私がこの最終回をHDから消せないのは、やっぱり本作を見るたびに勇気をもらえるからですね。どんなに打ちひしがれても、前を向けるような気がします。

ぜひ、みなさんアニメでもマンガでも良いので「神のみぞ知るセカイ」をチェックしてみてはいかがでしょうか?

まあ、今回散々「選ばれなかった者」だの言ってきたちひろさんですが、原作のラストではねぇ・・・・。う~ん。個人的にはあんまり納得がいってないんですけどね。




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